ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

安倍総理、中国との協調は良い方向性だが・・

2018-10-27 09:19:23 | 社会

安倍総理が中国を訪問して、歓迎を受け、「競争から協調へ」と発言して、今後仲良くやっていく方向性を示している。同時「ODAは役目を終えた」と終了を宣言している。この時期に、中国に接近する一方、北朝鮮問題や南シナ海問題でもいうべきことは言っているようで(あまり報じられていないので正確には分からないが)、今回の訪中は意義深いものだと思う。

今回の訪中の意義は米国に対するメッセージの意味合いが大きいと私は思っている。要するに、中国に接近する姿勢を見せることによって、「日本に対して理不尽なことを言うなら中国に接近しますよ」という牽制球を投げているのだと理解している。従って、経済協力は話しても政治的にクリティカルな点に関しては譲らずに平行線を保っている。中国側も同じ思惑で、まだ「日本を米国から引き離す」というレベルにはなく、牽制球程度の意識だと思っている。その際にODAの中止を申し入れたのは適切なタイミングだったと思っている。

今回の安倍総理の訪中は意義深いと思っているのだが、気になる点がある。それは「競争から協調へ」という言葉である。この言葉が今回の訪中の代表用語のように報じられている点が気になっている。私に言わせれば「競争から協調へ」ではなく「協調の精神を持つ競争へ」というのが正しい言い方だと思う。競争はなくなるわけでもなく、減るわけでもない。ただ、競争一辺倒では無い関係にしようということで、これはキリンとアサヒのような企業間の関係でも当然のことである。ビール市場でキリンとアサヒは激しく競争しているが、同時にビール市場を盛り上げようと協調している。それと同じことである。

安倍総理も、このことは当然理解しているはずだと私は思っている。しかし、「競争から協調へ」といえば「競争しないで仲良くしましょう」と聞こえてしまう。競争が社会原則の中心にあると思っていれば、「競争から協調へ」とは言わずに他の言い方を考えるはずだと思っている。その意味で総理自身の意識に若干の問題があるように私は感じている。

以前紹介したターガート・マーフィーの「呪縛の構図」にあった、「日本は政治的にはアメリカの子分」という現状認識はそのとおりだと私も思っている。トランプ大統領という俗悪な大統領が出た現在、その日米関係を変えるチャンスだと思っている。日本がアメリカ離れを実現したとして、どこか別の国と特別仲良くなるのではなく、戦国大名のように「周りは全て敵」という基本認識の上で、出来るだけ摩擦を起こさず、多くの国と仲良くやっていくというのが目指すべき方向になっていくだろう。

トランプ大統領が2期続けるか、1期4年で終わるかは不明だが、トランプ政権が終わってまともな政権に米国が戻ったとしても、日本は以前の日米関係ではなく、中国やヨーロッパとの距離感を計りつつ米国と付き合うという独立性を高めた日米関係を求めていくべきだと思っている。


日本のIT投資不足をどう捉えるか?

2018-10-17 10:29:30 | 経済

日曜日の日経新聞の1面トップに「日本はIT投資が不足している」という記事があった。情報通信白書を引用して、「21世紀に入ってアメリカではIT投資がどんどん増加しているのに、日本ではほとんど伸びていない。これからはAIなどでIT技術の使いこなしが鍵となるので、もっとIT投資を増やすべきだ」という趣旨だった。情報通信白書も同じような趣旨で書かれている。一見、もっともな意見のようだが、私は違和感を感じた。

私に言わせると、日本の課題は「IT投資が不足している」ことではなく、「IT技術の利用が不足している」ことであり、その問題はIT投資を増やすことで解決するかどうか、疑問に感じている。日本のIT投資は伸びていないことは事実である。それは、経営者が尻込みしているからではなく、過去のIT投資がコストの割に十分な成果を生んでいなかったからだと私は認識している。なぜそうなるかというと、日本のIT技術が低いからである。殆どの企業は自社ITシステムを作るときに社内にIT部門を作り、そこで要求条件を整理して、ソルーション企業に発注する。この社内のIT部門、日本のソルーション企業共に、先進国の中ではかなり技術力が低いと私は思っている。結果として高い開発コストをかけて、使いにくいシステムが出来上がる。修正を要求すればまた高い費用を請求される。

発注側の企業からすれば、日本のソルーション企業のレベルが低いならば外資系のしっかりした企業に発注すればよい。しかし、外資系の企業は要求を全て受けてはくれず、発注後の仕様変更に関してもなかなか受け入れてくれない。それで使いやすい日本の企業に発注する。そして、途中で思いついた色々な変更を依頼し、受けてもらう。結果として当面の要求は満たしているが、中のプログラムがぐちゃぐちゃになっていて、完成後の変更は殆どできないようなものが出来上がる、というのが日本のITシステムの問題だと私は思っている。

私と同様に感じている人は多いはずである。私の見方では問題はIT投資を増やしても解決しない。ITシステムの開発手法、発注者と受注者の関係や契約の進め方などに入り込んでいる「日本的慣行」にメスを入れないと解決しないと思っている。しかし、情報通信白書をはじめとする公式の文書でこのような指摘は見たことが無い。日経新聞は実態を踏まえているはずだが、冒頭で紹介した記事からはこのような雰囲気は感じられない。それはプロである発注側のIT技術者、受注側のソルーション提供企業のどちらにも都合が悪いので情報を出さないからである。発注側の経営者は漠然と「IT投資はコストパフォーマンスが悪い」と感じているが、その内容を分析できるほど詳しくない、というのが実態だろう。

10年ほど前、インド企業のソフトウェア開発力が高いと注目を集めていた。しかし、その後インド企業がソフトウェアの分野でトップに躍り出たということはなく、むしろ停滞感が漂っている。これはこの10年ほどの間にソフトウェアの開発手法が変化してきたからだと思う。日本企業はソフトウェア開発について、発注側も含め、抜本的に見直す必要があると思っている。


囲碁AIプログラムが教えてくれること

2018-10-14 07:39:17 | 囲碁

現在、囲碁の名人戦挑戦手合いが進行中で、先日第4局目が行われ、井山名人が挑戦者の張栩9段に対して3勝1敗とリードした。この碁の解説を名人戦のスポンサーである朝日新聞のサイトで関西棋院の坂井8段がFacebookのAIの読み筋や判断を加えて解説していたのだが、そのAIの内容が印象的だった。

囲碁のAIプログラムと言えばGoogleのAlpha Goが有名で、おそらく今でも一番強いのだろうが、Googleは読み筋などは公開していない。FacebookのELFという囲碁AIは形勢判断や、読み筋を公開してくれるので解説に使える。日本のDeep Zenなども同様である。形勢判断は黒から見て勝つ確率をパーセントで表示している。

今回の名人戦第4局に関していうと、序盤の30手くらいで黒番の張栩挑戦者の勝つ確率が80%になった。しかし、1日目の終わりの頃には50%くらいに戻していた。2日目に入って午前中に張栩挑戦者が失敗して井山名人が80%以上有利になり、90%を超えるところまで確率は上がっていった。どちらが有利かという判断は人間のプロ棋士の判断もだいたい一致しているのだが、人間はなかなか80%有利と言った判断はしない。坂井8段によると1目損をすると10%確率が変化する、ということで、70%くらいといっても2目差、というレベルだそうである。私はアマチュア高段者のレベルであるが、序盤の2目差は全く判断できず、自分なら好みの判断が優先しそうである。プロの坂井8段でも「ELFの判断を全面的に信用しているわけでは無いので70%くらいまではあまり気にしない」と言っていた。それよりも確率がある一手を境に大きく変化することがあり、そのような場合には「この手は悪いのではないか」と考えて自分でも深く検討するようにしているそうである。

ELFは次の1手のお勧めの手を出しており、それはなかなか正確である。坂井8段もそう言っているし、今回の名人戦で控室で検討していたプロたちの意見も一致していた。ある局面で、控室の棋士が気づかなかったうまい手を井山名人が打った時に「さすが井山」という声が上がったそうである。朝日の記者が「今は名人がコンピュータと同じ手を打つと「さすが」と言われるのですね」と言っていた。

ELFは読み筋も公開している。次の1手のお勧めの手をまず示し、その時の勝つ確率を表示する。私はネット放送で画面を見ていただけなのだが、読みの進め方としては、一手目に対する相手の手、その次の自分の手、と次々と読んで行って、数10手先まで読んでいるようである。そのたびに確率は微妙に変化する。二手目、三手目も適当に選んでいるのではなく、良さそうな手から選んでいる点が優秀である。ある程度まで行ったところで、2番目のお勧めの手に関して同じようなことをする、というやり方に見えた。最優先のお勧めは前の段階で読んでいたものなのでそう大きく外れることはない。これは人間の読み方と非常によく似ており、読みを進めるエンジンはコンピュータのほうがはるかに強力なので、人間は勝てないということになる。GoolgeのAlpha Goも同じようなアルゴリズムなのだろうか? 私は少し違うような気がしていて大変興味を持っている。

坂井8段はELFには殆ど勝てず、「師匠」として研究用に使っているそうである。このような状況で10年後、20年後もプロ棋士という職業は続くのだろうか? 気になるところである。

ELFはOpen Sourceで自分でプログラムを書き換えることもできるそうである。単に囲碁を強くするだけでなく、AIの考え方を人間に解説する、という観点で今後、研究が進むことを期待している。


トヨタ、日産、本田の自動運転がらみの提携について

2018-10-07 18:25:05 | 経済

最近、日本の自動車大手企業が相次いで自動運転関連の提携を発表した。

このうち最も大きく報じられたのはトヨタとソフトバンクの提携である。これは今年1月にトヨタが発表した新しい車の利用形態e-Paletteを実用化することが狙いだといえる。これからは自動車はユーザが所有する自家用車は減ってきて、商用車が便利に使えるようになる。その商用車市場を開拓しようという狙いだと私は理解している。

日産はGoogleのAndroid Autoに踏み込む提携を発表した。Android AutoはスマートフォンのOSであるAndroidを車用に改造したものでカーナビその他のサービスを提供するシステムは既に商用化されており、日産でも搭載車をすでに発売しているので、今回発表したということは、それよりも踏み込んで自動運転につながる部分で日産の要望を聞いてもらおうということだと理解している。

本田は自動運転に関してGMと組んでライドシェアの車を開発するというからトヨタとコンセプトと近い物だろうと想像している。

これらのうち最も筋が良いと思うのは日産である。Googleが自動運転で最先端の企業である、ということがそう思う大きな理由の一つであるが、それよりも重要な筋の良さは、現在の車から自然に移行していく意向シナリオが立てやすいからである。トヨタと日産は法律など大きな変更が必要とな、実用化のに通しが立ちにくい。最も筋が悪いと思うのはトヨタで、ソフトバンクが相手では特に重要な技術を入手することもできずに、ビジネスモデルのアイデアをもらえる程度に終わるだろうと感じるし、世界展開もできそうには思えない、というのが第1感である。GMはアメリカの企業なので法規制の問題などがクリアされやすいが、自動車産業に与えるインパクトはわずかだろうと感じる。

日産の場合はカーナビがより便利になるとか、渋滞情報が得やすくなるというところから次第に自動運転につながっていくと思う。

自動車業界ではもう一つの大きな流れとして、駆動部のガソリンエンジンから電気自動車へという流れがある。2-3年前はTeslaの大躍進や各国政府の電気自動車政策の発表があって自動車の電動化が大きな話題になっていた。私はこれはハイブリッド車でトヨタがあまりに強すぎるので危機感を覚えた各国政府が一気に電気自動車に舵を切ったと思っている。トヨタは電気自動車に出遅れているといわれていたが、調べてみるとこの面での打ち手は見事なもので、駆動部分がどう変化してもトヨタの地位は安泰だろうと思っている。しかし、自動運転のようなソフトウェアに関してはセンスが良いとは思えない。

もし、豊田社長が言い出したE-Paletteに社内の誰も「センスが悪い」と言い出せないのだとしたら、トヨタにとって大きな危機になると思う。


週末の京都旅行

2018-10-01 09:59:56 | 生活

昨晩の台風は今年一番の強風だった。私は寝ていて風音を聴いていただけだが、今年一番の強風であることはよく分かった。今朝は台風一過、良く晴れており、いつものように朝の散歩であたりの様子を見てきた。あちこちに大きな木の枝が落ちている。金木犀のある所では歩道がオレンジ色になるくらい花が散っている。赤い小さな実がたくさん落ちているところもあるし、銀杏が大量に落ちて独特の匂いを放っているところもあった。意外だったのは柿の実がそれほど落ちていないことである。この時期、柿の実はかなり色づいている。もちろん落ちているのもあるが、あれだけの強風であったにしては意外に落ちた実は少ない。子孫を残すための自然の仕組みはそれだけ強力なのだと感じた。

土曜日には京都に大学の同窓会で行ってきた。現在の総長が同級生で会うのを楽しみにしていたのだが、台風対策の打ち合わせが入って抜けられない、と彼は欠席だった。京都には父の墓があるので午前中に墓参りをするのだが、雨が降っていてやりにくかった。夕方の同窓会の時間までかなり時間があったのだが雨だとあまり観光をする気も起きず、ずいぶん早めに会場について持って行った小説を読んでいた。

この時期、京都の宿はなかなか取れず、私は京都から二駅の大津駅前に宿を取っていた。夜の9時に同窓会が終わって大津まで行く途中で京阪電車に乗ったのだが「明日は午後から次第に運行本数を減らし、午後3時には全面ストップする」とアナウンスしていた。宿について受付のところで「明日の電車運行は乱れるようです」と言われた。私が「京阪電車も止まると言っていた」というと「京阪はこのあたりでは一番災害に強い電車で、それが止まるということは他はもっと悪くなる」と言われた。実は、私は今回の帰りに北陸の温泉にでも寄って帰ろうと思って調べていて、天気が良ければ予約しようと思っていたのだが、それどころではないことが分かった。

泊ったのはスーパーホテル大津駅前というところで大津駅から徒歩3分で朝食付きで5500円だった。部屋も比較的広く、寝間着の他に枕も何種類かありチェックインの時に選んで持っていける。朝食もしっかりしたものだった。コストダウンのために、鍵は暗証番号式でチェックインの時に暗証番号を書いた紙をくれる。チェックアウトはフロントに寄る必要は無く、そのまま帰る仕組みになっている。なかなかコストパフォーマンスの良いホテルだと思った。

日曜日の朝、7時頃に大津駅に行ってみると、在来線は8時から本数を減らして、午後から運休、新幹線も夕方からは運休すると言っている。これはまっすぐ帰ったほうが良いと判断した。米原まで快速で行ってそこから小田原まで新幹線に乗ることにする。米原、名古屋の次は小田原に停まる「ひかり」があるのでそれに乗ることにした。運休のアナウンスが出ているので混んでおり指定席は取れないという。

米原発9時少し前の「ひかり」に乗り、小田原到着は10時半過ぎだった。自由席は混んでいて座れなかったが、1時間半ならば耐えられる時間だった。小田原から町田まではロマンスカーに乗ってゆったりとして、新百合ヶ丘からバスで帰った。

今回は首都圏でもJRが午後8時から全面運休の措置を取った。「まだ、雨も風もたいしたことが無いのに、やりすぎではないか」と思った人が多いと思う。どうも「早め早めの対策」取るように、と政府から指示が出ていたようである。結果として首都圏でも強風が吹き荒れ、早めの対策は悪くなかったように思う。テレビは電車が運休ということで中継などをしていたが、雨も風もたいしたことはなく、空振りの空気が流れていた。テレビは予防ではなく実際の災害が起こった時に「大変だ」と騒ぎ立てるのが自分の使命だと思っている感がある。テレビ局が電波をもらっているのは本来、防災・減災の目的があるからである。しかし、本来の減災のための情報提供という方向にテレビ局が舵を切るのはまだかなり先のことになるだろうと思う。