ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

アマゾンのビジネスモデル

2012-05-31 17:18:42 | 経済

最近、Amazon.comという会社に興味を持っている。いわゆるネット企業でインターネットで事業をやっている会社だが、アマゾンは他とちょっと違う側面を持っている。

アマゾンで有名なのは書籍のネット販売である。日本でも事業をやっているので専門書などをアマゾンで取り寄せた人は多いだろう。最近はキンドルという電子書籍の端末を出していて、これで小説などを読むことができる。E-inkという目に優しいディスプレイを使っていてパソコンの画面のように目が疲れない。早く日本で出してほしいものだと思っていたが、やっと今年の年末あたりに出るらしい。アメリカでは電子書籍の売り上げが紙の本を上回って本屋がどんどんつぶれているらしい。アメリカでは5年前から出ているのが日本ではなかなか出なかったのは著作権協会というか出版社との交渉が長引いたからのようである。

アマゾンが他の会社と違うのは自分で倉庫というか配送センターの大規模なものを持っていて実際の配送管理をしている点である。アマゾンは今や本に限らず色々なものを売っていて、日本では楽天が競争相手である。しかし楽天はネット上のマーケットを展開しているだけで実際の配送などは出品物を出している企業が行う。つまり楽天は昔のデパート(今でもそうかもしれないが)のようにネット上の店の「場」に対する出店料で稼いでいるのである。アマゾンは逆に企業から配送事業を請け負ったりしている。ただし、アマゾンが持っているのは倉庫で実際の配送には宅急便などを使っている。

倉庫とつながるのかどうかわからないが、郊外に大規模なコンピュータシステムを作ってそれを人に貸すクラウドサービスでもアマゾンはトップ企業である。このように実物に大規模に設備投資する点が一般のネット企業とは違っている。

アマゾンのことを調べるのにアマゾンについて書いた本をアマゾンのネット販売で買った。アマゾンはあまり自分のビジネスモデルなどを公開していないからである。しかし、この本は外れだった。ネット上で目次や一部立ち読みできる部分を読んで注文したのだが、詳しく書いてあったのは私の知りたい部分では無かった。まだ本屋でパラパラめくって買うことを決めるのに比べると精度は良くない気がする。

それでも、ネット販売は便利でこれから更に広がることは間違いないだろう。技術は進歩しており、問題点は次第に解決されていくと思う。ゆっくりなようでも10年も経つとかなり変わるのではないかと思う。その時に街の店舗数は減り、小売業はかなりダメージを受けているはずである。日本企業はそれに対する危機感が薄いような感じがしている。


安すぎる診療報酬

2012-05-29 10:25:24 | 生活

今日は、虎の門病院に行ってから大学に来た。以前書いたと思うが、副腎が腫れあがることに対する定期検査である。

私は副腎が腫れあがって大きくなりすぎる副腎過形成という症状を持っている。腫瘍の一種だそうだが良性なので特に手術の必要は無い。ただし大きくなりすぎてホルモンが異常に分泌されることになると問題なので半年に1回血液検査と、CTスキャンを受けている。これらの検査は先週行って、今日はその結果を聞きに行った。いくつか所見はあるものの異常というほどではなくまた半年後に様子を見ましょう、ということだった。次回はCTはやらず、血液検査だけにしましょう、ということだった。

今日の診療報酬は210円である。本人負担30%とみて元の値段は600円である。高給の医師の時間を15分ほど取って結果の説明と、これからの方針を聞いた仕事に対する報酬としてはあまりに安すぎると思う。先週の検査のほうは1万円ほどだった。血液検査とCTで半分ずつ位である。元値は3万円だろう。こちらが高いのか安いのかは判断できないが、多分高いのだろう。

こういう料金体系を取っている限り、患者を検査漬けにする病院は無くならないだろう。病院の経営が検査や薬で成り立っている感じだからである。このことは随分前から指摘されている。それなのにどうして改善されないのだろうか。制度を決める人たちが現行制度の恩恵を被っているから、としか思えない。民主党政権はこういうところにメスを入れるべきである。

薬品業界や、医療機器業界はこういう仕組みの上で利益を出せているのだろう。その利益を研究開発投資に回す、医師は多少不満はあるものの全体としては身分が保障される。一見うまく回っているようである。しかし、こういう制度を続けていくと、医師の技能向上の意欲が薄れ、レベル低下につながらないか、という感じがする。特に世界との競争に置いて遅れていくのではないだろうか。合理性から外れているのもは少しずつでも是正していく、という文化を持たない限り、いずれはその文化はすたれていくのだと思う。


北方謙三の「楊令伝」

2012-05-28 09:02:24 | 生活

北方謙三作の中国の歴史小説「楊令伝」を読み始めた。これは「水滸伝」の続編である。水滸伝に関してはこのブログにも書いたが中国の4大歴史小説の一つで、宋代後期のストーリーである。梁山泊と呼ばれる湖の中の小島に豪傑が集まって新しい国づくりを目指したが最後は宋に滅ぼされてしまう、というストーリーである。

北方謙三は歴史考証を入れつつ、自分なりにこの中国の名作を書きなおした。それが北方謙三の「水滸伝」である。今回読み始めた「楊令伝」はこの続編である。宋に敗れて全国に散らばった梁山泊の生き残りが再び集まって再起を目指す話なのだが、こちらは北方謙三の創作による歴史小説である。

全19巻の水滸伝を読み終えたときに既に「楊令伝」も出ていたのだが、私は何年か冷却期間を置いて、元のストーリーを忘れた頃に読もうと思っていた。それをすぐに読み始めたのは4月のハルビン出張がきっかけである。ハルビンで宋を滅ぼした「金」王朝の歴史を見てきた。この国は女真族という漢民族とは違う人種の国なのだが、水滸伝の後編ならこの金王朝の話しがたくさん出てくるはずだと思ったのである。

まだ読み始めたばかりだが予想通り、金国の立ち上げの話しがたくさん出てくる。自分が訪問した地とのつながりが感じられて興味深い。1巻目を読み終えて2巻目に入ったところだが今後の展開が楽しみである。


ドイツ経済好調の理由

2012-05-26 08:13:40 | 社会

経済不況にあえぐヨーロッパの中でドイツ経済は絶好調である。大幅な輸出超過、低い失業率、健全な国家財政、どれをとっても優秀な指標で、このブログでも何度か書いたがヨーロッパの他の国はドイツにたかろうとしているように私には見えている。なぜドイツ経済はこんなに好調なのか?

実はドイツは2007年頃、€1=¥160の頃から大幅な輸出超過だったのである。それが今は€1=¥100程度なのだから輸出好調は当然だと言える。ユーロは対円では大幅に下落しているが対ドルでの変動はわずかである。その意味では日本に対してだけ競争力が大幅にアップしたと言える。ドイツの輸出の内容は自動車をはじめとする機械産業が大部分である。中小企業で高い世界シェアを持つ部品を作っている会社も多い。この分野での競争相手は日本になることが多いのが好調の理由だと私は思っている。

それではドイツはユーロ高の中でどうやって輸出できるほどの競争力を獲得したのか?それはメルケル首相の前のシュレーダー首相の2000年頃からの経済改革が効いているという。シュレーダー首相は労働コストの切り下げを実現した。給与は会社が決めるものなので企業の社会保障負担(年金など)を大幅に引き下げたのである。失業保険の引き下げ、健康保険改革、公的年金の引き下げなどである。

これらが企業の労働コスト引き下げにつながり、ドイツの単位生産量当たりの労働コストは大幅に下がっている。この間、ヨーロッパの他の国の労働コストは全て上がっていた。シュレーダー首相は日本で言うと民主党に相当する労働組合をバックグラウンドとする政党の出身である。その人がこういった改革を行った。日本の民主党政権が行っていることと逆である。

ドイツ人は日本人と気質的似たところがある。森鴎外の「舞姫」を読んでもそれほどドイツ人の舞姫の考え方に日本人との違いは感じないし、「徒弟制度」と呼ばれる職人育成システムも日本の職人気質と良く似ている。

日経ビジネスにあるドイツ人経営者の話として以下のような話が出ていた。

『ドイツと日本は良く似ている。ブルーカラーが優秀で生産性も高く、常に改革を行って向上させている。違いはホワイトカラーにある。ドイツではブルーカラーの生産性向上がそのまま企業業績の向上につなっているのに対し、日本ではホワイトカラーの非効率に吸収されている感じがする。日本の企業を訪問すると、美人の受付嬢が出迎えてくれて、社長室に入ると美人秘書がお茶を入れてくれる。社長が説明する資料は多くのスタッフが時間をかけて作成している。社長が自分で資料を作成するようにならないと、今後の回復は難しいのではないか。』

政府のやり方にも問題はあるが、民間にもできることはまだまだありそうだと思う。

 

 


第3次産業革命?

2012-05-25 08:33:00 | 経済

イギリスの雑誌The Economistを読んでいると今は第3次産業革命の入口ではないか、という記事が出ていた。

エコノミストによると、第1次産業革命が御存じ蒸気機関の発明による機械的動力の入手、第2次産業革命がT型フォードに始まる大量生産、そして今が第3次産業革命である。それは半導体、インターネット、ソフトウェアなどではなく、3次元印刷だという。

3次元印刷とは印刷技術を使って立体的なものを作る技術である。私の知る限りこれで作られているのはモックアップと呼ばれる造形モデルである。デザインの感触を確認するために設計情報をコンピュータに入れて段ボールのような素材を吹き付けて、3次元の形状を作りだす。実際に形になったものを見るとコンピュータの画面では気付かなかったような問題点に気づいたりするのでデザイナーには以前から使われている。iPhoneのデザインにも使われているだろう。

エコノミストが言っているのはこの技術を使って最終製品を作るという話である。印刷段階で色々な成分を混ぜ合わせてそれを何層にも塗り固めて立体的なものを作っていく。こうすると完全に内部に塗り込めた回路基板などを作ることができて設計の自由度が大きく上がる。高度な職人技が無くても非常に滑らかな外部仕上げができると言ったことになる。製造装置もプリンタの大きなようなものなのでそれほど巨大にはならない。しかも無人生産なのでコストも将来的には下がる。これが製造現場を革命的に変える、というのが記事の趣旨である。

エコノミストは技術雑誌ではないので技術的な話題を取り上げることは稀である。それが最近この技術を2回取り上げているから、よほど気にいったのだろう。現在まだ大量生産されるものでこの技術で生産されているものは無いが、軍事技術などでは相当真剣に検討されているという。軍事製品には良いかもしれない。中の構成を見ようとして壊すと回路自体を壊してしまうので技術を盗むことが極めて困難である。しかし、民生品にはコストがかかり過ぎで無理なのではないだろうか。生産速度もそれほど上がらないと思う。

この技術がいつ頃民生品の生産技術として使われるようになるかは不明だが、まだ10年は出ないと思う。しかし、10年後には第3次産業革命を起こす技術として色々なところに取り上げられ始めているかもしれない、とは思う。


ギリシャはユーロ離脱の準備か

2012-05-24 08:38:05 | 経済

今朝の日経新聞で、ギリシャを始めとする南欧の国々で銀行救済策が相次いでいると報じられている。特にギリシャはユーロ離脱に備えて預金の30%が引き出されたとある。これに対してギリシャ政府が銀行に梃入れしたものである。

少なくともギリシャ国民は自分の預金の価値が下がる危険性を感じて預金をギリシャ国外の銀行に移しているということだろう。更にユーロ離脱が現実味を帯びれば預金はもっと引き出されるだろう。これは仮にギリシャがユーロ離脱を行った場合に残っている資産がどんどん減ることを意味している。つまり残っているのは借金だけというようなことになる。

そんな中で新通貨を導入すれば、その価値は必要以上に下がる。今、ギリシャの資産を半分にすれば持ちなおせるとすると、それが実質的に1/3とか1/4とかになることを意味しており、それだけインフレがひどくなることを意味している。ただし行き過ぎればそれを買い戻す人は出てくる。こうして安定状態に近づいていくのだろうが、その間は大きな混乱に見舞われることになる。

このような場合にもユーロを下ろさない人がいる。それは老人だったり、外国の銀行とは縁のない生活をしている人たちだろう。大半は貧しい人たちだと思う。この人たちは虎の子の預金の価値が下がってしまい生活できなくなるだろう。ある程度早い段階で預金封鎖をしないと貧富の差は大きく広がると思う。ユーロ離脱をすればこれは避けられず、ギリシャ政府がこうした人たちを救済しようとしてドラクマを乱発すれば貨幣価値はさらに下がることになる。こうした通貨難民に対してはヨーロッパ諸国が救済する必要がある、それをうまくやれば、根本的な解決になるのではないかという気がする。

評論家などは、ギリシャがユーロ離脱すれば、スペインもイタリアも離脱してユーロ崩壊につながるという人が非常に多い。私にはどうしてそういう意見が出るのかが理解できない。スペイン国民もイタリア国民もギリシャの様子をかたずをのんで見守っており、それがうまく行くようなら離脱の方向につながるだろうが、現在の緊縮予算よりもさらに悲惨なことになるのなら緊縮予算を受け入れる方向に向かうだろう。うまく行くようなら本当にユーロ離脱したほうが良いのだがその可能性は非常に低い。少なくとも短期的には、混乱で街に生活できない人があふれるはずで、それを見て自分たちも離脱したほうが有利と考える人はわずかだろうと思う。

むしろ、ギリシャを離脱させまいとさらなる支援をしたりすれば「ゴネ得」と見て、離脱をちらつかせる国民は南欧全体に広がると思っている。

私は、一部の専門家はドイツからもっと援助金を引き出すためにユーロ崩壊を言っているのであり、他の大部分の人は良く分からないまま、そういう論調が多いので、何となくもっともらしいユーロ崩壊を言っているのだと思っている。


茂木政調会長の質問

2012-05-23 11:39:37 | 社会

今朝のブログを書いた後で、自民党の茂木政調会長の質問をラジオで聞いていて、自民党を見直した思いになった。

意見が違っている部分はさておき、合意できる部分を抽出し、ここまで話しをつけよう、という提言が多数含まれていた。本来は政府の側から出すべき妥協案を自民党の側から出したということで自民党を見直した。

谷垣総裁の議論はいただけないものが多いが、実務を抑えている政調会長からこのような建設的な意見が出てきたことで、自民党内部で変わりつつある、という印象を与えてくれた。生活保障の金額の削減など国民には耳の痛い提言も含まれている。

今後の自民党の動きに期待が持てる。


増税の国会審議を聞いて

2012-05-23 08:25:52 | 社会

今、国会で「税と社会保障の一体改革」の集中審議が行われている。私は審議を聞いていて次第に増税反対の気持ちが強くなってきている。

このブログにも何度か書いたが「増税はいずれ必要になるだろう」という思いは変わらない。しかしやはり何度か書いた「一体改革が目的ではなく増税が目的ではないか」という懸念はますます強くなってきていて、ほぼ確信に近いところまで来ている。野田総理は「一体改革」「身を切る改革」などと何度も繰り返し発言するがこの関係の具体案はほぼ全くといってよいほど進まない。増税法案が通ってしまえば「財政が改善し始めた」といってまたバラマキを始めるのは確実な感じがする。

会社でも経営が傾いた時に節約して黒字化を目指すのは普通に行うことだが、それで赤字が減ったからといって改革の手を緩めれば本質的な改革が遅れるだけである。それを長年続けていればどんどん会社の体力は落ちていく。その好例がコダックである。一時は12万人ほどいた従業員が30年間に1万5千人ほどまでに減って、今年の1月に破産法の適用を申請した。30年間じり貧を続けた結果である。本質的な解決策を取らずに30年間縮小を続けた企業の従業員にとってはもっと早く抜本的な対策に打って出て失敗したら倒産のほうが良かったのではないか、と思ってしまう。

今の日本の向かっている方向はこの方向に見える。根本的な解決策に向かわずに痛みの少ない治療を続けて体力を奪い続ける、その結果体力を次第に失っていく。野田総理は「増税は痛みを伴う改革だ」というかもしれない。しかし、その先に病気が治るという展望は見えない。痛み止めの注射のような感じである。同じ注射を打って痛い思いをするなら、病気を治す薬を入れてほしい。日本の病は癌のような深刻な病である。副作用を恐れず癌細胞を取り除くような治療が必要なのに、その方向性は全く見えない。

仮に今国会を通ったとしても増税の実施は2年後だし、その時には再度国会審議にかけることは政府方針として決まっている。その方針を維持して来年の通常国会で出すと言われている社会補償の具体案と一緒に来年審議するほうがはるかの説得力があると思う。その時期になれば、本当に一体改革の名に値するのかどうか、いやでも明らかになるだろう。国家公務員の給与削減も後1年で元に戻すかどうかなどについても具体的な審議ができるだろう。

「待ったなし」なのは増税ではなく、一体改革だと思う。

 


ギリシャがユーロ離脱するとすれば

2012-05-21 08:16:49 | 経済

今日はギリシャがユーロ離脱するとすればどうなるかを考えてみよう。

基本的にはギリシャ政府が独自通貨(昔のドラクマ)を発行するのだろうが、その場合少なくともギリシャ公務員の給与はドラクマで支払われることになる。政府はドラクマをどんどん印刷する。現在国民が持っているのはユーロなのでドラクマを店などで使えるようにするために一定の変換レートで銀行でユーロをドラクマに変えることにするのだろう。ギリシャ国内の銀行で持っているユーロは自動的にある換算レートでドラクマに変換するのだろう。

皆、ドラクマの価値が下がることは分かっているので、誰もドラクマを持ちたくない。そこで銀行でお金を下ろす人が続出して取り付け騒ぎが起き、銀行が次々と倒産するだろう。それを防ぐためにはユーロ離脱を宣言した後、預金封鎖を行い引き出せる金額を制限せざるを得ないだろう。それを見越して金持ちは5月に入ってからどんどん預金を下ろしているという。この過程で大きな不正が発生しそうに思う。

仮にスムースに言ったとしても物価は上がり、生活できない人が続出するだろう。その状態を乗り越えれば生活は落ち着き、輸出競争力もついてきて回復してくるだろうが、それまでに街には犯罪者や浮浪者があふれ大変なことになるだろう。輸入品は高くて買えないのだが食料品は自給できそうなので何とかやっていけるだろう。いずれにせよ大きくせいかるレベルを落とさざるを得ない。ドイツなどのEU諸国はギリシャに対して財政援助をして最低限の福祉が維持されるようにする。韓国も同じような状態を経て復活してきた。

大混乱が起きるが、復活のシナリオはできるだろうと思う。ギリシャの例はスペイン、イタリアなどの危ない国の参考になるだろう。今、世界的に株価が下がっているが、他のEU諸国や他の国への影響は限定的だと思う。

G8サミットではギリシャがユーロに留まるように宣言を出しているが、ここ2-3年のようにEUがギリシャと交渉してずるずる支援金額を増やすよりは、毅然とした態度を崩さないほうが良いと思う。ユーロ離脱と緊縮財政のどちらが良いかを比較してギリシャ国民が結論を出すべきだろう。いずれにせよ、ギリシャ国民が生活レベルを落とす覚悟をしない限り復活はありえない。どちらが覚悟しやすいか、ということである。私にはユーロ離脱のほうが覚悟をしやすいと思える。

EU者国はギリシャがEUを離脱したときの状態を考えて人道的な見地から支援をする仕組みを考えておいたほうが良いと思う。

 

 


為替による経済調整機能

2012-05-17 08:48:12 | 経済

ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてきており株式市場などは神経質に反応している。ギリシャがユーロ離脱したらどうなるかを考えるために独自通貨を持っている場合の為替レートがどのような経済調整機能があるかを考えてみよう。まず日本のような独立通貨を持つ国が円の為替レートが突然半分になったらどうなるかを考えてみる。

輸入物価が2倍になり、それが影響して賃金も国内物価も上がる。円貨での賃金も物価も2倍になれば元の戻ったことになる。しかし、預金と借金は価値が下がる。つまり預金をたくさん持っている人は損をして借金をたくさん持っている人は得をする。

預金をたくさん持っている高齢者は損をして住宅ローンを抱える中年は得をする。若年層は預金も借金もあまりないのでそれほど影響を受けない。つまり、高齢者からの所得移転が起こることになる。もう一つ、膨大な借金を抱える国家財政が大きく助かることになる。

更に一気に物価が2倍になる訳ではなく時間をかけて上がるとすれば、その間、日本製のものは安くなり、国際競争力が上がる。これを狙って低金利を始めとする金融緩和策が取られてきたし、更に一層金融緩和を行うべきだという金融緩和論者の論点だと思う。

問題は移行過程において思惑により経済が動くことである。誰も損をすることが分かっているのに黙っている人はいない。預金をするより借金をするほうが得だとなれば、借金をして家を買ったり投資をしたりする。つまり実際には必要のない需要が生じてバブルになる。しかも金融機関系のほうが実体経済より動きが早く経済を先読みして動いてしまうため実体経済よりも先にバブルが来てしまう。更に国際競争力の観点から自国の通貨が安いほうが有利なため通貨安競争も生じてしまう。

バブルを防ぎつつ、思惑の投資を抑える方法は見つかっていない。これが近年の資本主義の行き詰まりの状況だと思う。

こういった背景から私は「投機を抑制すべき」ということを何度も書いている。そこの仕組みが見つからない限りなかなか良い解決法は見つからないだろうと思う。

ギリシャの話はEU内部の話なので少し条件が違う。長くなるので次の機会にしよう。