ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

トム・クランシーの「米中開戦」

2018-03-25 16:31:24 | 生活

春たけなわで、今日は溝口まで電車で行って歩いて帰ってきた。緑ヶ丘霊園の立派な桜並木を見ようと思っていたのだが、細い道を歩いているうちにいつのまにか多摩川の支流である平瀬川に出て、コースを外れてしまった。そこから霊園だと遠回りになるので、そのまま川沿いに歩いて川崎北部市場のほうに出て戻ってきた。桜はまだ3部咲きくらいだが、周りには桜以外にも様々な花が咲いており、暖かい日差しの中の散歩は気持ちが良かった。この時期はスギ花粉がひどく、私は外を歩くときはゴーグルをしているのだが、例年は息がマスクからゴーグルの中に入ってしまいガラスが曇って困っていた。今年は家内がゴーグル用のマスクを買ってきてくれた。簡単な構造だが息が上に漏れにくくなっており、ずいぶん歩きやすい。スギ花粉も次の雨くらいで下火になるだろうと思っている。

最近、トム・クランシーの「米中開戦」を読んだ。これはアメリカ大統領も中国の国家主席も出てくるのだが、小説で内容は完全なフィクションである。「007」のようなスパイもので、読んでいて私はマット・デイモン主演の「ジェイソン・ボーン」シリーズの映画を思い出していた。話はサイバーテロから始まって戦闘に至るという内容なのだが、サイバーテロの描写にリアリティがあって面白かった。作者はかなりサイバーテロを勉強したのだろうと思う。最近、米中間で貿易戦争が始まるかもしれないと言われて株価が下がっているが、まさかそこまでは行かないだろう、と思っている。

途中のブックオフで三島由紀夫の「豊饒の海」4部作を買った。私はこの本を30年以上前に読んだのだが、今はどこかに行ってしまっていて、見つからない。先日、ターガート・マーフィーの本を読んだ時に「豊饒の海」にちょっと触れていて、また読んでみたいと思ったのである。それはかすかな記憶に残っている豊饒の海の最後のほうの「天人五衰」が現代日本を予測していたような感じになっていたのではないかと感じたからである。三島由紀夫は文章のうまい作家なのでじっくりと味わって再度読もうと思っている。


ターガート・マーフイの「日本ー呪縛の構図」

2018-03-21 07:45:41 | 生活

2月11日に紹介した掲題の本をやっと読み終えた。一気に読める本ではなかったが、日本人の私も知らなかったような日本の事実を含めた客観的な日本論であり、「今の日本はどうなっているのか?」というような疑問を持っている人にとっては頭の整理と新しい見方を与えてくれる本だと思う。

「呪縛」とは何かを明示的に本の中で示してはいないが、私は第2次世界大戦での敗戦後の体制、軍事と外交をアメリカにゆだね、経済復興に全力投球した故のアメリカからの呪縛を意味していると解釈した。著者は「日本は独立国というよりもアメリカの属国のような状態だ」と指摘している。おかげで日本は奇跡的な経済復興を遂げ、世界有数の住みやすい国になっているので一概に悪いとは言えないが将来に大きな不安を残している、としている。

著者は政治、経済、文化の広範囲に亘ってどの団体にも属さない独自の視点で分析を行っており、全体が連携している。一部を切り取って紹介すると誤解を生みそうなので、興味を持った方はぜひ自分で読んでみていただきたい。私は多くの部分で賛成もしくは納得できたが、一部これまでの見方と異なっていて納得できない点もあった。

私にとって新しい情報として印象的だった点として「ニュー・ジャパン・ハンズ」と呼ばれるアメリカ人のアメリカ政府に対するアドバイザーグループの存在がある。著者によるとこのグループは戦後の日米の日本政策決定に対して非常に大きな影響力を持っていたが、彼らの行動は日本のためを思ってというより自分たちの立場を維持することが最優先である、と説明されている。真偽のほどはわからないが、いかにもありそうな話だと思った。

もう一つ印象的だったのは沖縄の普天間返還問題についてで、現自民党政権は「辺野古移設が唯一の解決法だ」と言っており、翁長知事などは「無条件返還」を言っている。著者は「現実的な解決策は普天間の嘉手納との統合しかない」と言っており、「これが進まないのは普天間を利用しているアメリカ海兵隊のエゴである」と指摘している。私自身、「普天間の解決策がどうして辺野古移転しかないのか?」と疑問に思っていたが、ほかの案を聞いたことがなかったので「これしかないのか」と思っていたのだが、この本を読んで視点が変わった気がする。野党などはどうして嘉手納との統合案などを言わないのか、「これが日本の呪縛の構図なのか」と感じている。

自分の見方と会わないのは小沢一郎氏に対する評価である。著者は小沢一郎氏を「最大の改革者」と高く評価しており、小泉純一郎元総理を、「改革者のふりをして小沢改革を元に戻した人物」、安倍総理を「さらに古い体制に戻そうとしている人物」と評価している。私の小沢氏に対するイメージは「権力の亡者」である。小沢氏は「小選挙区制による政権交代のある政治体制」「権力を官僚から国民(選挙で選ばれた政治家)に取り戻す」と言って活動していた。著者はこれらを高く評価しているのだが、私はこれらは「彼が権力を奪取するための方便」と捉えていた。しかし、今回この本を読んだことをきっかけに少し違う角度から見てみようと思っている。

日本経済に関しては、バブルの構造とその後の対応策などを分析していて、基本的には賛成できる。但し、21世紀に入ってからの停滞感に関して、私は「ソフトウェア技術による世界の新しい産業革命」についていけていない、と認識しており、この原因は日本の教育や文化と深く関連していると思っているのだが、著者は全くこの点には触れていない。巻末に津田大介氏との対談があり、津田氏はこの点を理解していると思うのだが、対談で全く触れていない点は残念だった。

私は約1年前にピーターナヴァロの「米中もし戦わば」を読んだことをこのブログに書いているのだが、知名度は低いがターガート・マーフィーのほうが刺激される面は、はるかに多かった。



日本の経常収支について考える

2018-03-08 17:58:07 | 経済

1月の日本の経常収支が発表になった。7年ぶりの大幅な経常黒字と言っているが、中身は第1次所得収支が1.5兆円の黒字、貿易収支は7000億円程度の赤字ということで所得収支が大幅黒字という状況はますます顕著になっている。この点は2月9日にも書いたのだが今回はこの第1次所得収支についてもう少し考えを深めてみたい。

第1次所得収支は配当金や利息の受け取りと言われているが、中身を見ると、日本企業が海外企業を買収したりして利益を得るFDI(Foreighn Direct Investment)による利益はわずかで、大部分が債券などの利息や配当だという。

この配当を受け取っているのはどういう組織なのかを調べようとしたが見つけられなかった。以下は私の推測である。私は日本の海外投資が増えているのは、GPIF(年金を管理する機構)などがアメリカ国債などの外債を大量に購入しているからではないだろうか。大手の銀行なども買っているように思う。これは日本国内の金利が非常に安いからで日銀の低金利政策と関連していると思う。日銀が低金利政策を続けているのは、企業が借金をしやすくなって、日本国内での資金の循環が良くなることを狙ってのことだが、実態としては低金利は貸し出しには回らず、外国債を買うという行動につながっているのではないかと思う。

アメリカやヨーロッパは金融緩和の出口に向かっており、金利を引き上げる方向である。特にアメリカは具体的に金利引き上げを始めている。このままでは金利差が開くので、ますます大手金融機関の外債購入が増えるだろう。低金利政策は国内の資金循環の活性化にはつながっていないと思う。そうかといって、日銀が金利引き上げに動くと、円高になり、日本の実体経済に悪影響が出る。今は日米の金利差が開いているのも関わらず円高方向に向かうという不思議な動きになっているので、ここで日本が金利を上げるというのは動きにくいだろうが、いつかは金利引き上げに動かないといけないのだろうと思う。

2月9日の時には「第1次所得収支が黒字なのは良いことだと思う」と書いたのだが、これは必ずしも良いことではなく、むしろ日銀の苦境を表しているのではないかと最近は感じている。

このあたりをきれいに解説した記事は無いものだろうかと思っている。


今年の国会は貧弱

2018-03-03 14:51:17 | 社会

現在、通常国会が開催されているが、「今年の国会はつまらない」と感じている。最もあまりテレビ中継を見てはいないのだが・・

こう書くと、「国会はいつもつまらない」というコメントが入りそうだが、私はいつもはそれほどつまらないとは思っていない。それなりにきちんとして質問をしたり、回答をしたししている論議があるのだが、「メディアがニュースで取り上げるのはつまらない部分だ」というのが私に一般的な国会に対する認識である。

今年の国会がつまらないと私が感じるのは、安倍総理が「働き方改革国会」と位置付けており、政府の提案する「働き方改革の方針」に対して私が懐疑的な見方を見方をしているからである。私が、最も「まし」だと思うのが「裁量労働制」や「高度プロフェッショナル制度」なのだが、これの実績の整備に対して野党がかみついて流れされようとしており、駄目な法案ばかりが通るような印象を私は持っている。

一つの大きな目玉は「長時間労働の是正」であるが、「一月の最大残業時間を何時間にするか?」というようなことばかり議論している。私はこれは本質を外していると思う。私は「必要な時には一月150時間残業でも200時間残業でもやればよい」と思っている。それを「最大100時間に規制して超えた場合は罰則を設ける」「一月100時間の残業は多すぎる」といった議論をしている。全くポイントを外していると思う。100時間残業したからと言って健康を害することは殆ど考えられない。それを禁止することは企業の柔軟性を欠くことになり国際競争で負けてしまうだろう。

問題は従業員が意にそぐわない残業を命じられて断れず健康を害してしまうようなケースである、これに対する対策の本質はそう残業時間の規制をすることではなく、無理に残業をさせて健康を害したような場合に厳しく罰することである。日本企業の問題は、明確な残業命令が無いのに何となく残業していて、しかも従業員が断りにくいような雰囲気を作っているという、企業内の仕事に対する管理方法である。時間ではなく「明確に命令しているか」「従業員に無理強いしていないか」といったところを監査すればデータが出てくるような仕組みを作ることが重要である。

基本的には残業命令が無いのに残業するのは企業も従業員も双方違反しているので双方を罰する、というようなルールが良いのではないかと考える。その上で、タイムカードを押させた後で会社に戻って残業させる、というような悪質なケースは重大な罰金の対象にするのが良いのではないだろうか。要は「無言の圧力で残業させる」「命令されていないのにダラダラ残業する」というような状況をなくし、「残業を命令した」という証拠を残させることが長時間残業対策になると思う。そして総残業量を減らして、業務効率化を推進するには残業時間の割増賃金を平時の2倍にする、等大幅にアップするべきである。野党はこういった提案をするべきだと思うのだが、その気配は見えない。

業種によっては命令されて残業するのではなく、本人が必要性を感じて残業するようにしないと管理が困難な仕事もある。これが裁量労働や高度プロフェッショナルに相当するわけで、野党が反対の大合唱をしているのだが、これは不可欠だと思う。この場合には従業員の意識(価値観)が企業と一体化していることが重要である。しかし、心の中を証拠で示すことは困難である。このような自律的従業員に対する圧力を軽減する手法は従業員のモビリティを高めることだと思う。私の若かったことには殆ど考えられなかったが、「ライバル会社に転職する」ことを容認するような社会にすることが重要だと思う。この点に関しては何が法律で決まっていて、何が決まっていない業界の慣行的なことなのかを把握していないので具体案は書けないが、政府はこのような方向に制度を動かしていくのがあるべき姿だと思う。