ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

日本経済はなぜ勢いを失ったか

2010-10-29 09:20:26 | 経済
私はイギリスの雑誌「Economist」を購読している。9月の初めころだったと思うが、長期的な経済を振り返った記事があった。それによると
・1980年代は皆がアメリカを追い越す国があるとすればそれは日本だ、と思っていた。日本の企業における終身雇用、社員の会社に対する高い忠誠心、細かい改善を繰り返して性能を向上させていくやり方、などがアメリカではできないものとみられていた。
・中国は政情が不安定でポテンシャルはあるもののまだまだ成長するには時間がかかる、あるいはうまくいかないかもしれない、と思われていた
・今年、中国がGDPで日本を抜くのは確実だが、日本が抜き返すと思っている人はいない。むしろ、中国は本当にアメリカを抜くかもしれない、と言う観測が強い。次に来るとしたらインドだろうと思われている。

Economistはなぜこうなったかという分析を書いていたがそれは記憶に残っていない。それほど印象的ではなかったからだが、「なぜ日本経済は勢いを失ったか」という命題は私の印象に強く残った。それを考えることによりこれからの日本に対する処方箋が見つかるような気がしたからである。

何かで、ちらっと見たのだが内閣府は2050年には日本はGDPで世界8位になるとみているそうである。GDPは人口X平均所得のようなものだから、アメリカ、中国、インドにはまず勝てないだろう。ロシアやブラジルにも抜かれるかもしれない。しかし、8位と言うことは後2カ国あるはずである。それはドイツ、フランスなのか、パキスタン、インドネシアなのか・・

人口が減ることは仕方がないとしても(これも移民を受け入れれば緩和できるはずだが)、平均年収がどんどん減るのはたまらない。これから何度かに分けて私の見方での「なぜ日本経済は勢いを失ったか」を書いてみたいと思う。

TPP参加の議論は政界再編をするくらいの大きな問題だ

2010-10-28 08:26:47 | 経済
TPP (Trans-Pacific Patnership),日本語では正式には環太平洋戦略的経済連携協定、の参加の是非を巡って政府内部でも意見が割れている。

TPPとは協定国間で関税、投資の規制などお互いの貿易に関する参入障壁を取り除き、自由に経済活動を行おう、という動きである。2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイが協定を締結したが、今年に入ってアメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシアが参加を表明している。2011年中に協定を締結しようとしている。

参加の是非を巡って、意見は対立し、内閣府は参加すれば3兆円のGDP押し上げ効果、参加しなければ10兆円の機会損失、と言っているのに対して、農水省は参加すれば8兆円のGDPマイナス、としている。政府内部で意見が割れており、大きな議論になっている。賛成派は仙石、前原といったメンバーで、反対派は小沢、亀井、と農水省系の大臣などである。

参加すれば国内の農業に打撃があるし、参加しなければ輸出企業に打撃がある、日本をどういう国にしようかというビジョンと密接に関係している重要な問題である。

マスコミは面白がって囃し立てて、誰が賛成で誰が反対、政界再編につながるなどと言っているが面白がっている場合ではない。本来日本のためにどうあるべきかを真剣に考えるべきだろう。この場合に、「選挙で勝てなくなる」と言うような観点での意見は排除すべきである。政治家内部の議論だけだとこの種の議論が浮かび上がってきてしまうのでそれを監視するのがマスコミの役割だと思うのだがそこは期待薄である。

野党は私の知る限り意見を言っていない。政府が決めたら、どちらに決めたとしても反対キャンペーンを張るつもりだろう。そういうネガティブな動きを封じるために、マスコミが今の段階で野党の意見を聞くべきだと思うのだが、これも期待できない。こういう野党とマスコミの中での動きなので日本の政治は誰がやってもうまくいかないのだと私は思っている。

合意が取れなければ動かない、というのが民主主義の原則なので動かない可能性は高いと思うが、私はぜひ参加すべきだと思う。日本の農業への影響は重大なので、参加して意見を言うべきだと思う。そのプロセスで日本の農業に対する長期的な政策が固まってくるだろう。それは日本の農業を世界的に競争力のあるものにしていくにはどうするか、という政策を確立することである。

今参加せずに2011年に協定が決まってしまえば後から参加することはほぼ不可能だろう。後から参加する日本のために決定を変えることはほぼあり得ないと思うからである。日本が条件をつけることを気にして、アメリカは既に牽制球を投げてきている。それだからこそ、牽制球をかいくぐってでも参加して意見を言うべきだと思う。

この問題に関する意見では自民党内も割れるだろう。本来なら政界再編を行い、この問題に対する取り組み姿勢で政党が組み直されるべき、と言うくらいの問題だと思う。

気がつくと冬支度

2010-10-27 08:25:23 | 生活
今朝は、昨日北海道で雪を降らせた寒気が南下してきて、冷たい朝だった。気温は10度くらいで日中の最高気温も15度くらいだと言う。

実は私はこれくらいの気温が好きである。会社まで歩いてきてもこれくらいだと汗ばむ程度で済む。20度もあると汗びっしょりになる。10度という気温は体にとってはちょうど良いのだが、手が冷たくて困る。手の甲から汗が蒸発するからだろうか、手の甲が冷たく、かじかんだような感じがする。手袋をしたほうが良いのかもしれない。

道端の畑も作物を収穫したあと何も植えておらず土だけになっているところが見受けられる。こういうところに冬を感じる。ナスも残り少なくなってきており、トマトは終わっている。元気の良いのはニンジンくらいである。田んぼも稲刈りが終わって、ところどころに藁が積み重ねてある。こういう風景を見ると冬支度が始まっている感じがする。

ラジオではデパートでお歳暮の受付が始まったと言っている。この間まで暑かったのにもうそんな時期かと驚くが、考えてみれば10月下旬、お歳暮とか年賀状とかの商戦が始まる時期なのだ。今年は夏が長かったせいか特に季節の移り変わりが早いと感じる。

一度くらいは山に紅葉狩りに行きたいものだと思う。暑い夏の後急に気温が下がると紅葉は特にきれいになると言われているから・・

紙の本に対する愛着

2010-10-26 07:01:10 | 生活
読書の秋ということで最近メディアでは読書に関する情報が多く流れている。今朝の毎日新聞に、国民の読書行動に対する調査結果が出ていた。

読書時間は増えたか?という質問に対しては「減った」が70%強と多い。私自身はここ数年は変わっていないと感じているのだが、若い人が減っているのだろうか? もともと読んでいない人が減ったら殆ど本に触れていないということだろうか、と思う。

電子書籍に対しては「読んだことがない」が86%以上であり、「読みたいと思わない」が77%である。私は読みたいと思うのだが、興味のない人が多いのだなと思った。そもそも、本を読みたい人が少ないのではないかと思った。あるいは食わず嫌いが中心なのではないかと思う。紙の本に愛着がある、とか本の装丁が気になる、とかいった本を資産と考える人が結構多いのだが、音楽メディアの方で言うと、レコードからCD、インターネットと比較的簡単に流れて行った。質の高い電子書籍が出るようになれば、意外に簡単に移行するのではないかと思う。

アメリカでアマゾンのキンドルを買った人の読書行動はどうなっているのだろうかと思う。やはり紙の本も買って、旅行に出かけるときだけキンドルを使っているのか、紙の本はキンドルでは買えないものだけになっていて、本を読むというのは家の中でもキンドルになっているのだろうか? 私は後者ではないかと思っているが、こういうデータがあると興味深い。

日本の電子書籍はまだうまく行きそうにないと感じている。日本の会社では無理で、アマゾンJapanあたりが本気で動かないとできないのではないかという印象を日本の書籍業界に対して持っている。ハードの技術はあるのに惜しいと思う。

ふんわりの時間

2010-10-24 20:37:12 | 生活
今朝、散歩をしながらラジオを聴いていて「ふんわりの時間」という番組がなかなか良いな、と思った。DJの中嶋朋子と言う人が色々な人にインタビューをするFM東京の番組である。今日のゲストは角田光代という作家の人だった。

この人の作品を読んだことはないが、読みやすそうな本を書く人だろうな、という感じがした。二人の柔らかい感性が伝わってくる感じがして気持ちの良い番組だった。私は作家よりもむしろ聞き手の中嶋朋子と言う人に興味を持った。知識も多く、語彙も豊富でなかなかの人物ではないかと思った。

調べてみると「北の国から」の蛍役の人だとある。そうすると30代だろうか。声の感じからはかなり年配の人のように感じて人生経験があって落ち着きのある人のように感じたのだが、以外に若い人なのかと思った。

作家との話なので本の話が多く、本を大切にする姿勢が二人から感じられたのだが、この番組は今後も時間があれば聞こうと思った。

日本人エンジニアの満足度は最低、米国人とインド人は高い満足度示す

2010-10-22 15:19:53 | 経済
EE Times の調査結果で、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、インドで実施した結果をまとめている。
この記事にははっきりとは出てこないが、私はソフトウェアエンジニアの職場が3K職場になってきていることが、この結果に大きく影響しているのではないかという危惧を持っている。EE Timesの読者だからハードウェア関連が多いのだろうが、ソフトウェア技術者の比重が高くなるような母集団で調査すれば日本の技術者の低い満足度は更に顕著になると思う。

以前書いたように日本のソフトウェアエンジニアの仕事、特にソルーション事業と言われた仕事は大幅に減ってきている。これはクラウドの台頭による。組み込みソフトのようなハードと密着したものは良いがそうでない普通のC言語で書くようなソフトは需要が減ってきているうえに国内市場も外資系の会社に取られてきていると思っている。仕事が無いので安値で受注して、質の悪いソフトを作り次の仕事が取れないと言った負のサイクルに入っている会社が少なからずあると私は思っている。

この傾向は今後収まるどころかむしろ加速して、来るだろう。そうするとソフトウェア技術者の雇用問題が大きく浮かび上がってくると思う。ソフトウェア技術者、それも職を失うような技術者は、上司あるいは顧客から「こういうソフトを作れ」という仕様書をもらってプログラムを作るタイプの人だろうから、スキルの展開が難しい、いわゆるつぶしの効かない人たちになるのではないかと思う。

菅総理は雇用問題を第1の重点事項に挙げているが、このソフトウェア技術者問題に早い段階から取り組んでいかないと大変なことになるのではないかと思う。おそらく次に衆議院選挙よりは前にこの問題は顕在化すると思っている。

厚生労働省の郵便不正事件の実態は?

2010-10-22 08:52:55 | 社会
厚生労働省の村木厚子元局長が、部下に不正を指示したとして逮捕、起訴され、それが裁判で無罪となり、検察特捜部の捜査の仕方が強引で証拠隠滅、改竄を行ったと言って大きな問題になっている。

昨日は検事総長が謝罪すると言うところまで来て、検察のあり方自体が問われている。私が一連の報道を見て感じるのは、「元の事件の真相はどうだったのか?」ということである。最近は検察内部の動きを報じるニュースばかりで、元の事件は忘れ去られてしまったようである。

調べてみると、大阪地検は村木氏の指示で元係長が嘘の証明書を作ったという点を取り下げて、元係長が単独で、障害者団体を証明する嘘の証明書を発行した、というように起訴事実を変更して裁判は継続しているようである。

元々、特捜部が乗り出してきたのは政治家が圧力をかけているのではないか、という疑惑があったからだろう。その政治家の圧力は全く無かったのか、あるいは直接係長に行ったのか、この辺りが本来事件としてどうだったのかを調査すべき点で核心になる部分であるが、そのあたりはさっぱり報道されない。

興味本位でマスコミが報じているのでこういうことになるのだと思う。

第3世代移動通信の標準化(2) WCDMAに決まる

2010-10-20 10:32:17 | 昔話
1994年秋に始まった無線方式検討会は約2年間継続した。
当初26提案あったが議論を重ねるうちに、システム全体ではなく部分的な技術提案は他の提案に取り込まれたり、取り下げたりして1年後にはTDMA方式2提案と、CDMA方式4提案に集約されていった。更に1年間、実験結果を提出したり、議論を重ねたりして、1996年末にはWCDMA方式とすることが合意された。

それまでの日本の通信技術の標準化はNTTが主導して他の会社が一部の要素技術を盛り込む、と言うやり方だったのに対して、この時は初めて色々な会社が方式提案をして、それを議論を続けながら絞りこんて行く、というプロセスを踏んだのだが、初めてにしては非常にうまくいったと思う。やはりシステム構築経験のあるドコモの存在は大きかったが、他の会社にも機会を与え門戸を開いたことで業界全体の意識が上がったと思っている。

これはこの会議のリーダであった当時のドコモの取締役と、事務局であった当時ARIBの佐々木秋穂氏(故人)の貢献が大きかったと思う。私自身は最初の1年間はNEC方式を推す発言をしていたのだが後半は話をまとめるために他の方法を攻撃する発言が多くなっていった。攻撃は嫌われるものだが、一つにまとめたいという意図は伝わっていたと思う。

96年末までの無線方式検討会は非公開の議論だったが、合意を受けて正式にARIBとしてITU-Rに提案する日本案を作成すべく、公式の標準案作成プロセスが動き始めた。その際に、佐々木さんから私に無線伝送方式を作成するグループの議長をやらないか、という打診が入った。合意したと言っても基本的な方式を決定しただけであり、標準仕様として作成するにはまだまだ長い道のりである。これを動かすには相当のエネルギーをつぎ込まないといけないので「必要なら上司に話をつけてあげる」と言われた。

以前、書いたと思うが当時の私の上司は殆ど私の活動に関しては任せてくれていたので、特に口添えの必要はなかった。むしろ、私の仕事上のスポンサーであり、製品開発をする事業部の了解が必要だと考え、事業部のキーパーソンに話を入れてもらって、私自身の社内向けの活動が手薄になる分、事業部側の体制を強化してもらった。

これ以降、私は佐々木さんの指導を受けながら本格的に標準化活動に乗り出していくことになった。

生物多様性、種が減ることは何が問題なのか

2010-10-19 10:52:25 | 生活
名古屋でCOP10という国際会議が開催されている。

コペンハーゲンで作戦開催されたCOP15は地球温暖化がテーマだったが、COP10は生物多様性がテーマだそうである。報じられているのは多くの生物が絶滅に瀕しているという点である。

私が最近感じているのは昆虫がすごく減っているということである。秋だとトンボがたくさん飛んでいる、それも赤トンボとか鬼ヤンマとか色々な種類のトンボが居たと思うのだが、今は歩いていても殆どトンボを見かけない。春には蝶々が減っていることを感じる。あまり意識はしていないは蜘蛛なども減っているのではないだろうか?だがそれが国連で問題にすべきことかどうかは私にはわからない。

生物多様性会議での話題は薬になるような生物(植物)を先進国が取り尽くしてしまうことに対する補償問題だそうである。こういう問題は経済問題なので、生物多様性の枠組みで議論するよりも資源管理(クジラの捕獲などと一緒に)の問題として議論すべきだと思う。

そもそも生物多様性のゴールはどこなのか、と思う。地球上にある生物の一部が死滅していって新しい種が生まれることは自然の摂理だろう。人間が特定の種を絶滅させるのは問題だが環境の変化についていけなくて一部の種が絶滅してしまうのはある程度仕方の無いことなのではないか、と思う。

どこまでは自然の摂理として容認できて、どこからは環境破壊とみなすべき、その理由は、根拠は、を話し合うのが本来の趣旨だろう。こういう話ならば世界中の国を集める必要はなく、生物学者などがある程度いて活動している国が集まって話せばよいことだと思う。

西安の写真

2010-10-18 10:42:35 | 旅行
今回の西安出張では、市街地からかなり離れたホテル周辺の写真しかないが、一応Upしておこう。
ホテル周辺である。御覧のように何もないところである
ホテルの外観である。丸みを帯びら5階建ての建物である。


ホテルのロビーである。かなりゆったりした空間でゴージャスに作ってある
ホテルのバー側からみたロビー風景である。
要するに周りに建物が殆ど無く、市街地から10Kmほど離れたところにかなり立派なホテルがある。
なぜこんなところにホテルを建てたかと言えば、この辺りが大規模開発地域だからである。現在あちこちで
工事を行っており4-5年もするとこのホテルの周辺には高層ビルが立ち並び、このホテルは新興地域の一等地にあるということになる、というのがホテルのオーナーの読みだろう。ホテル自体は2年ほど前にできたらしい。現に周辺では至る所で工事を行っている。
10年前の上海のプドン地区がこんな感じだった。今は高層ビルが立ち並ぶ大都会である。しかし、私は西安に関しては果たしてそんなにうまくいくか疑問に思っている。
まず、中国人の内陸から都市への移住の速度が下がってきている。既にかなりの人が出稼ぎに来ていて残された人が減ってきているし、出稼ぎに来てもうまく職を見つけられずの戻る人も増えてきている。第2には世界の工場としての中国の地位は下がってきているという点がある。最近の中国では労働争議などがあって賃金が上がり、中国に工場を作ることの魅力は減ってきている。先進国が新しく工場を作るとすればインドか、ベトナム・タイと言った東南アジアになるのではないだろうか。
日本企業でも中国に魅力を感じるのは生産基地としてよりもその内需に対してだろう。その場合、新しい都市としての成功が見えてくれば進出するだろうが、成功が見えるまでは進出は控えるはずだと思う。日本で言えば港北ニュータウンくらいの規模のものを西安の郊外に作ろうとしている。私には成功よりも失敗の確率が高いように思われる。