ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

読み応えのある学士会会報

2015-07-29 14:06:36 | 生活

私は学士会の会員で定期的に学士会会報が送られてくるが、最近送られてきた「第913号」(2015年7月号)は内容のあるものだった。この号は明示されてはいないが「戦後70年総括」と言う特集を意識したものと思われ、元東大総長の佐々木毅氏をはじめとして何人かが異なった側面について寄稿しているが、私にとって印象的だったのは小峰隆夫氏の「日本経済の歩みから学んだこと」と保坂正康氏の「昭和史から学ぶこと」である。それほど長くはないので本文を読んでいただきたいが内容を簡単に紹介する。

小峰氏は通産省で経済白書の作成などの深く関わった経済官僚であり、経済面から戦後日本を振り返っている。第1次、第2次の石油危機やニクソンショックによる円対ドルの変動相場制の導入により1ドル360円から250円に変わった時や、その後のプラザ合意により1ドル120円まで上がった時の影響や、バブル時代とそれが破裂した後処理、財政再建の問題などに関して経済白書に「国民が不安に思うから」と言う理由で政治家からの横やりが入り記述を外されたと言う裏話などが書かれている。著者は「資産性の向上無くして経済の活性化無し」を結論としているが、私にはむしろ現実を直視しない、あるいは国民に見せない政治家の姿勢への問題意識が印象的だった。

保坂氏の内容は第2次世界大戦中の日本政府の政策を直視すべき、と言う内容である。戦争中は政府は特殊なことどうをするものだが、それを考慮しても、この時期の世界史的に見た日本政府の特殊性として
①軍が政治を動かした(首相よりも軍が上に立った。ヒットラーは首相になっていた)

②兵士を確実に死なせる軍事作戦(特攻、玉砕戦)の採用(こういう作戦を取った国は無い)
③捕虜の扱いをめぐる国際条約の無視(戦争にもルールがある)
を挙げている。軍内部にも色々な意見があり、著者は石原莞爾と東條英機の違いなどを解説している。今、政府は第2次世界大戦を「現代」から「過去」に移そうとしており、「過去」になってしまう前に我々の歴史観を確立すべきだろしている。

私もこのブログに何度か書いているが、この時期の日本政府を日本人としてどう見るか、「我々の過去の一部」と見るのかドイツのナチスに対する姿勢のように現代日本人も彼らを否定するのかは現代日本人にとって重要なテーマであると思う。

このブログの読者には学士会員の方もおられると思う。普段は読まずに古紙回収に出される会報かもしれないが、今月号は読んでみられることをお勧めしたい。



暑い夏に歩く

2015-07-28 14:25:01 | 生活

最近、暑い日が続いているが私の歩行量は今年の初めから少しずつ増えていて一日、2万から2万5千歩を歩いている。雨の日はあまり歩けないが午前中に1万5千歩以上歩いており、朝の6時半に家を出て2時間ほど歩いて8時半頃にウィトラのオフィスにつく。今の時期は歩き終えた時は汗びっしょりになる。シャワーを浴びて着替えて、さっぱりしてから仕事に入る。生活リズムとしてなじんでくるとなかなか気持ちの良いものである。

午後からは電車に乗って大学に行く。その電車の中で居眠りをするのがまた習慣のようになってきた。私は朝起きる時に目覚ましをかけておらず、自然に目が覚めていて、寝不足感は無いのだが、それでも昼食後に一時的に眠くなる。足に疲労が溜まった感じがして足を上に上げたくなる。オフィスにいれば足を机に載せたいし、電車の中では足を組みたくなる。そうしていると自分でも気がつかないうちに眠ってしまう。10分か15分位なのだがそれでずいぶんすっきりした感じがする。それ以後は眠気を感じることは無い。

夕方、大学から帰る時はその日の調子によって歩く距離が変わる。午前中雨だった時などは、大岡山から自由が丘まで歩いてから電車に乗り、あざみ野駅で降りてからも自宅まで30分ほど歩く。疲れを感じる日は大岡山から電車に乗りあざみ野駅からはバスに乗る。

こうして歩く量が増えたおかげで体重が少し減ってきた。最近、ここ数年間で始めて65Kgを切った。この調子で夏を過ぎれば64Kg台で定着するのではないかと思う。積極的に体を動かして体重を抑えたいと思っている。


好ましいニュース3題

2015-07-24 13:59:34 | 社会

今日は好ましいと感じられるニュースがいくつかあった。

ひとつは参議院の議員定数に関する合区法案の成立のニュースである。この法案が成立しても一票の格差は約3倍ということでまだまだ不十分であるが、4.7倍から3倍に減ったという意味では大きな進歩と言えると思う。この点に関しては採決では反対したが公明党の態度を評価したい。連立与党を組む「公明党が県にまたがった合区を進めるべし」と言って民主党を組む態度を示したので、孤立を恐れる自民党が渋々同意したという構図だと報じられている。公明党があのような態度に出なかったら、安保法案と同様に、自民党の意見でこの法案は前に進まなかっただろうと思う。1票の格差3倍と言うのはまだ不十分である。裁判所の判断では「違憲状態だが、選挙は有効」といって更なる格差是正を促す可能性が高いと思う。合区が可能になれば次のステップは容易になると思うので、この一歩は大きいと思う。

この法案のニュースで気になった点もある。合区される鳥取、島根、徳島、高知の議員はあくまで反対と言っているらしいが、どういうロジックで反対しているのだろうか。ニュースなどを聞く限り、「おらが県から議員が出ないのは困る」という単なる駄々っ子がゴネているだけのように聞こえるが、そうなのだろうか。鳥取県の有権者数は50万人弱で全国の有権者数が約1億なので0.5%を切るくらいである。これに対して参議院の定数は小選挙区146名、比例区96名である。しかも3年ごとに半数ずつ改選することにしているので小選挙区の選挙単位での改選数は73名である。従って、鳥取県がら議員を出そうとすれば、改選数を200名以上、つまり参議院全体の定数を500名程度にしないといけないことになる。彼らはこういったことを提案しているのだろうか。それとも、全部小選挙区にして、1回で全て改選という(こうすれば1票の格差を1倍にできる)主張をているのだろうか? マスコミはこういった点を報道してほしいと思う。

他のニュースは経済ニュースである。日経がイギリスのメディアFinantial Times(FT)を1600億円で買収するというニュースである。日程電子版はFTの記事を良く紹介しており関係が深いとは思っていたが買収するとは思わなかった。これは日経が世界に打って出ようと言う強い意志の表れで、これで日経の質が「世界の中の日本」を見るようになってくれればありがたいと思う。もう一つは明治安田生命がアメリカの生命保険会社スタンコープを6246億円で買収するというニュースである。この買収の成否は私には判断できないが「その意気やよし」と言う印象を持っている。金融界も世界に向けて動き始めており、いくつかの失敗例があっても、いずれ成功するのではないかと思う。

 

 


ヒラリー・クリントンの経済政策

2015-07-22 11:42:50 | 社会

アメリカの次期大統領の本命tされるヒラリー・クリントン氏の経済政策が報じられている。以前から言っていた「中間層を厚くする」と言う主張と「キャピタルゲインを規制する」と言う方向性だと理解している。

「キャピタルゲイン規制」は私が以前から主張している「投資を奨励し、投機を抑制する」というのと同じ方向だと認識しており、期待している。ヒラリー氏も経済成長の重要性は十分に認識していると思うので、経済を冷え込ませないで投機による利益、いわゆる自分が儲けた分だけ他の人が損をするゼロサムの利益をどう抑制するか、具体策として何を打ちだしてくるか、期待している。私は税率による制御が良いと思っているのだがヒラリー氏は何を打ち出してくるだろうか。

「中間層を厚くする」に関しては望ましい方向性だとは思うのだが「無理ではないか」というのが私の印象である。このブログに何度か書いたようにトマ・ピケティ氏の指摘するように資本の拡大が実体経済の拡大よりも早いのはある意味で資本主義の必然なのではないかと思っている。仮に「投機」を規制したとしても、「投資」による利益が実体経済の拡大を上回るだろうと思う。更に、ピケティ氏の分析には含まれていない要素としてICT技術の進歩があり、個人がつける経済的付加価値が拡大していくので、普通の経済原則に沿えば経済的格差が拡大していくのは必然ではないかと思っている。貧困層の増大は好ましくないのでこれをどうするか、が課題となる。

一つの方法は給与体系を付加価値に比例させないように規制をかける、つまり収入面で格差拡大を防ぐ方法である。このために経済界に対して規制をかける。ヒラリー氏はこの方向を模索しているようだがこれは無理ではないかと私は思う。

二つ目の方法は給与格差は認めておいて累進課税と言う税体系によって格差拡大を埋めていく方向性である。このほうが現実味は高いと思うが、これも国家間の競争がある現代社会で経済的強みを維持できるかどうかは不明である。

三つ目の方向として、経済格差も認めておき、税率もそれほど差をつけない現在のアメリカの体制を維持して、ビル・ゲイツのように金持ちが自ら福祉活動に資金をつぎ込む福祉社会を実現することである。このためには社会哲学の共有が不可欠で、「寄附をしないほうが得だ」と言う雰囲気が社会に充満していてはとても機能しないだろう。だが、この方法は追求する価値はあると思っている。

私自身、どうしたら良いのかは分かっていないが、この点に関してもヒラリー氏が何か、納得性のある解決策を打ち出してくることには期待している。

 


大学教育について考える(2)

2015-07-17 17:11:15 | 東工大

私の大学勤務も残り半年を切った。現在大学では教育改革が進行中である。国立大学も法人化され、実力をつけなくてはいけない状況にある。私は特任教授と言う立場で投票権などは持っておらず意見を言う立場にはないので詳しくは知らないのだが、どうも根本的な見直しにはなっていない印象である。前回は大学で[スキル」を見いつけさせるべきだと書いたが、今回は授業内容について書いてみたい。

東工大の授業メニューはOCWと言うシステムで公開されておりシラバスと呼ばれる授業概要はインターネットで見ることができる。東工大の工学部の学部生向けの授業メニューを見るとなんと全体で960科目もある。この中には必修科目と選択科目があるはずだが、それはちょっと見ただけでは分からない。しかし授業メニューを見ると「供給側の論理」が圧倒的に優先されている感じがする。つまり教授達が自分の研究室に学生が来る時に勉強しておいて欲しい科目が並んでいると言う感じである。私はこの点に違和感を感じる。学生に教えるべき内容は教授達が教えたい内容を並べるだけではないだろうと感じるのである。

私の出身校である京都大学の工学部のカリキュラムを見ると全科目の一覧表は無く、1,2年目は一般教養、3年目は専門の準備、4年目は専門科目、というような書き方になっている。この一般教養は人文・社会科学系、自然・応用科学系、外国語系、現代社会適応科目系、拡大科目となっている。京都大学は総合大学であるだけに科目の幅は広く、基礎をきちんと教えるようにはなっているが、やはり供給側の論理は感じられる。私の感覚で言うと現在社会適応科目系をもっともっと充実させるべきであると思う。大学と言う一般社会から離れた場所で仕事をしている教授達は一般的にこの分野はあまり得意では無く、外部講師を招聘する必要が出てくるので充実は難しいのだろうが、大学教授でもこの分野を語れるように訓練すべきだし、必要なら社会人を外部講師としてどんどん招くべきだろうと思う。

そもそも大学は「教養とは何か」をきちんと考えるべきだと思う。文学の分野で言えば紫式部や清少納言は「教養」と捉えるが、又吉氏の「火花」のような最近の芥川賞は教養と捉えないような感覚が大学にはあるのではないかと思う。しかし最近の芥川賞や直木賞はどういう傾向にあるか、文学は低調になってきていてアニメにクリエータは動いてきておりアニメで質の高い作品が最近は出てきている、と言った話のほうが現代では「教養」として適しているのではないかと思う。経済学で言えばケインズの経済学などよりも会社の仕組み、株式の仕組み、投資の仕組みなどのほうがむしろ重要な「教養」なのではないかと思う。

私の意見は即物的すぎるのかもしれないが、こういったことを含めて「本来どうあるべきか」を大学改革では議論してもらいたいと思っている。


ギリシャと安全保障法案、私にとって好ましくない決定

2015-07-16 11:14:32 | 社会

今週に入って二つの大きな決定があった。ギリシャ問題の支援解決と日本の安全保障法案である。どちらも良くない決定だったと私は思っている。

まず、ギリシャ問題。あれほどEUの緊縮財政要求に対して反対をあおったチプラス首相が、一転して緊縮受け入れを表明し、EUもこれに応じて支援を決定した。国民投票で緊縮拒否の結果が出た時にこの結果を予想したした人は殆どいなかっただろうと思う。EUは今後3年間で11兆円の金融支援を行う方向で交渉を開始するが、私はEUが支援決定をしないでつなぎの資金の実を供給しいつでも資金供給を止められるようにして数か月様子を見るべきだったと思っている。

経済評論家には「景気が悪いときに緊縮財政をやってうまくいくはずがない」などといってギリシャを支援すべきという意見も見られるが、これはこれはギリシャ国内で国民が政府に言うべき言葉である。EUはギリシャをコントロールするわけではなく債権者の立場である。今のギリシャ政府は借金を踏み倒すことが目的で、国の財政を立て直すことが目的ではないのだから、立ち直るわけはないと思う。失業者にいろいろ支援をしても働く気のない人は借金を返せるわけがないのと同じである。ギリシャを擁護するエコノミストには「自分の金をギリシャに貸す気があるのか?」と問いたい気分である。おそらく半年後くらいにはまたギリシャ経済が悪化し、「緊縮財政のせいだ」と言って借金棒引きを要求し、また問題が復活するだろう。今度ユーロ離脱となればヨーロッパの傷は今よりさらに大きくなる。

もう一つは日本の安全保障法案の可決である。私はひと月ほど前に書いた、「法案の趣旨には賛成だが、違憲なので今国会に通すのは反対」という考えから全くぶれていない。趣旨に賛成なら賛成してもよさそうに思われるかもしれないが、「明らかに違憲」の内容を、解釈の問題で捻じ曲げた法案を通してしまうことは憲法の存在を無視していることで、歯止めがなくなってしまう。今の安倍政権が戦争をするとは思えないが今後の選挙の結果次第では日本が本当に戦争に走るような政権を誕生させてしまう可能性は十分にあると思う。

マスコミでは「国民の理解が進まない」と言っているがこれ以上丁寧に説明しても何も変わらないだろう。安倍総理が説明しているのは「安全保障法案は必要だ」という私も既に納得している点であり、「憲法違反ではない」という説明は殆どないし、あっても説得力に欠ける。時間をかけても「違憲ではない」という説得力のある説明が出るとは思えない。このような事態になったのは政府与党にそれだけの力を与えた国民の責任である。これまでは力を与えても「憲法」という縛りが与党に対してあったのだが、今回の法案でその縛りは大幅に緩められた。つまり、国民は選挙での選択に失敗が許されなくなってきたのだが、選択を失敗しない民主主義などはおそらくあり得ないだろう。仮に失敗しても一時的な問題で致命傷にならないようにするための「憲法」を緩めてしまったのだから大問題である。

これで憲法9条の改正が発議されれば、今回の安全保障法案は「合憲」という解釈の上に立っての憲法改正なので「更に戦争をしやすくなるために憲法改正」ということになるだろう。憲法改正が国民投票で可決される可能性は低くなり、現行憲法のままでどんどん形骸化が進むだろう。流れをどうやって止めるかを国民はこれから考えないといけないと思う。


新国立競技場予算審議に見る日本の脆弱さ

2015-07-09 09:22:23 | 社会

オリンピックに向けた新国立競技場の工事予算が承認された。これまでの各国の実績とケタが違う金額で、予算の見積もり誤差だけで北京の鳥の巣が二つ作れてしまうというずさんな元の予算を見直したものである。私がここで問題にしたいのはこの予算が良いかどうかよりもその決め方である。

予算は有識者会議で審議されたものだが、もともとのデザインを決定した建築家の安藤忠雄氏は欠席している。最大の問題点は12人の全員一致で予算案を承認している点である。委員には民主党系の人や東京都の人も含まれていたが、民主党系の人が疑問は呈したものの最後は全員一致で承認している。仮に問題点を指摘していても結果として残るのは「全員一致で承認」である。

私はこの決め方に日本の民主主義の脆弱さを感じる。これだけおかしな数字が出ていて、「おかしい」と思った人は多かったに違いない。しかし有形無形の圧力がかかり「仕方がない」と皆同意したものだと思う。日本人が最後まで反対を続けるのは自分または自分の所属する団体が直接損失を被る場合くらいで、それ以外はかなりおかしなことでも全体の流れに賛成してしまう。

今、国会では安保法制が議論されているが、国の行く末を決めるときにも同じような力が働くのではないだろうか。日本が第2次大戦に突入したのも同じような雰囲気ではなかったかと思うし、最近の企業の不祥事なども大部分はこのような、社長の意向におかしいと思いながらも反対できないという構図から来ていると思う。自分の意見が違っていてもきちんと主張できずに流れに任せてしまうという性格が日本人には強いと思う。

アメリカやイギリスでは与党の中でも意見が割れて決まらないことは時々ある。政党は考えの近い人が集まっているので大部分の政策に関しては政党内で合意するが、たまに同じ政党内でも意見が割れて、議員が自分の政党と反対の案に投票したりする。日本では政治家にとって政党は選挙で当選するために器であり、中の議員の考え方はバラバラなので、国会での投票時には政党のと同じ案に投票するように強制する。今の安保法制に関しては与党内でもこのような現象があると思う。このような国で憲法違反が明らかな法律を解釈論で通すことの危険性を改めて感じる。



WiFi Firstというサービス

2015-07-07 17:11:12 | 経済

またまた英国Economist氏からの情報であるがアメリカで「WiFi First」と言うサービスが広まっているという話である。

現状、電話のインターネット化の進行は着実に進んでおり、国際電話の年間利用時間は年間5600億分、これに対してSkypeの利用時間は2500億分でSkypeだけで全世界の国際電話の半分を利用している。インターネット電話のサービスは他にもあるので実質的には国際電話に関してはインターネット電話のほうがむしろ多くなっていると考えることができるだろう。国際電話の料金を考えるとある意味では当然だと言えるし、インターネット電話の品質も良くなってきたので企業が国際電話会議を行う時にどんどんインターネット電話に移行してきた点が大きいのだろう。

このような状況を受けて、WiFi Firstと呼ばれるサービスがアメリカとフランスのベンチャーから出てきている。これは携帯電話のデフォルト利用をWiFiにするものでWiFiが使えない時にはMVNO(現状Sprintを利用)でモバイルオペレータのネットワークを利用する。WiFi-Mobile Networkのハンドオーバーをサポートしていているのは現状はGoogleのNexusだけだそうであるが、他の端末でも使えないことはない。料金はデータも含めて$5から$40だそうである。現状、電話を含めた料金体系と言う意味ではドコモのカケホーダイがあるがこのWiFi Firstはドコモの半額程度と言うことができる。

国際電話の例で明らかなように、通信オペレータにとって国際電話の利益率は高い。それを値下げをせずに放置すると、抜け道ができた時にトラヒックはどんどん抜け道のほうに流れていく。モバイル通信で言うとローミングサービスに続いて電話サービスが国際電話のような状況になっていくと思う。Apple SIM等と言う概念が出てきているように当面は国際ローミング、中期的に電話料金をモバイルオペレータが下げて行かないと、次第にMVNOにトラヒックが移行して行くように思う。

今、3GPPではU-LTEという5GHz無線LANの周波数帯でLTEを利用することを検討している。3GPPなのでオペレータがLTEトラヒックのオフロードとして使うことを想定しており、もナイルオペレータでないと使えないような技術条件を何か入れるのかもしれないが、IEEE802委員会が対抗して誰でも使えるU-LTEを標準化すればそれを止めることはできないだろう。WiFi FirstにとってはLTEとの親和性が良くなり好ましい方向性だと思う。


レベルの低い毎日の社説

2015-07-07 10:43:22 | 東工大

日頃から毎日新聞の社説はレベルが低いと感じていたが、今日はまさにその典型だった。今日の社説は2件あり以下のようである。

ギリシャ問題について:
ギリシャの態度はけしからんが、ギリシャがユーロ脱退すると世界経済に大きなインパクトがある。EU首脳の英断を望みたい。

韓国との関係:
世界遺産問題で日本は韓国に振り回されたが、これで対話の窓を閉じてはならない、両国政府はうまくやってもらいたい。

どちらも、片方の意見を採用すればもう一方が困るまたは怒る、という問題であり、それに対して「政府はうまくやってもらいたい」という意見である。考えた結果の会社の意見とは到底思えず、願望を述べただけである。これで社説と呼べるだろうか?難しい問題に対して自分の解決策はなく、両方を立てるように「うまくやれ」と言い、政府がどちらかを立てればマイナス面を強調して政府を批判する。こういった新聞社の態度が日本の世論に影響しているような気がする。今、自民党の圧力の問題で日本国内は大騒ぎしているが与党経験のある政党は内心では似たようなことを考えているだろう。

テレビの時事番組などでもこういった態度を取る人が多く、私は苦々しく思っていたのだが、ある人によると一見何も考えていないように見えても、あのような人は時事番組のコメンテータとしては必ず必要で、局は意識してそういう人を入れているそうである。それは国民の中に同じように思っている人が多いはずで、それを代表しているということである。それを自分は別の考えを持っているのだが、国民はこのように思っているのではないかと忖度して発言すると見透かされてしまうので、本当に分かっておらず素朴な疑問や期待を持つ人が番組内に必要だから、という説明だった。国民の意見が分かれているときはそれぞれに対してそういう人が必要で、しっかりした意見を持つ人を入れる余地がなくなる。それが日本の時事番組の作り方だ、という記事を読んで、私は「テレビはそんなものか」と思うようになり腹は立たなくなった。しかし、社説までそのレベルではやはり腹立たしい。

税金は上げずに、借金を返し、物価は安定させて、国民の収入は増やし、福祉は充実させる。そんなことが現実にできるのかどうかは考えずに政府にそれを要求し、どこかで問題が出るとその部分を批判する。それがマスコミのあるべき姿だと信じて情報発信を続け、国民がそれを信じるようになれば、日本のギリシャ化もあり得るだろう。

金が無ければ支出を減らすのは王道である。チプラス首相が、安倍総理のように金融緩和をして経済を上向かせ、借金を返済するというシナリオを持っているならまだしも、「皆で借金を踏み倒そう!オー」という態度では見捨てられて当然だと思う。ロシアや中国が救済に入る可能性はあると思っているがその時には必ず表に出ない裏の契約が入るだろうと私は思っている。その裏の契約は政府幹部にとって好ましく、国民にとって好ましくないものになるだろうとも思っている。


ギリシャ問題の今後

2015-07-01 08:36:51 | 経済

本日、ギリシャが期限までに借金を返済せずにデフォルトに陥った。世界の株価やユーロは一時的に下がったがその後戻っている。一部の投機筋が動いただけで全体としては織り込み済みだったということだと思っている。

マスコミなどは今後の国民投票で緊縮を受け入れるかどうかが大きな問題だと騒いでいる。外れてはいないと思うが、ポイントをついてもいないという感じを私は持っている。私の気持ちは5月14日にギリシャについて書いたときから変わっていない。私が思うのはヨーロッパ全体にとってシナリオは、以下の3つで

1.国民投票で緊縮を受け入れ、解散総選挙、中道右派の政党が政権を取る

2.国民投票で緊縮を拒否、ギリシャはEU離脱

3.国民投票で緊縮を受け入れ、シリザが方針転換(現体制で緊縮財政にする)

好ましい順番に並べてある。

国民投票ではおそらく緊縮を受け入れになるだろうと思う。その時の賛成と反対の比率が問題で大差ならば1.になり、僅差ならば3.になるだろうと思う。チプラス首相が辞任したとしても、政権がシリザにあるうちは3.と解釈すべきだと私は思っている。

日本の先の民主党政権を見ていてもわかるように、もともと実績もなく国民をあおって選挙に勝ったような政党には難しい問題に対する遂行能力は無い。まして、選挙公約と全く異なる方針を運営することはできない。シリザが実行する限り、緊縮財政にすると言いながらぐずぐずと動きが悪くいつまでたっても借金を返せる体制にならないという状況が続くと思っている。国民投票で大差で負ければさすがに総選挙になると私は考えている。

今のEUの首脳もおそらく同じ思いだろうと思う。EU立場は国民投票の結果どうなれば債務免除などとは全く言っておらず、ギリシャは既にデフォルトしているので、強い言い方をすることが可能である。国民投票で緊縮財政を受け入れたとしても、うわべだけの緊縮受入れならばやはりデフォルトさせて支援打ち切りに出るだろうと思う。おそらく裏でギリシャ国内に対して情報操作していると思うが、それとは別に公式メッセージとしてどのような発言をするかは興味深いところである。

日本政府は今は野次馬のような立場でこの問題を見ており、金融関係者や投資家だけがやきもきしていると思うが、今後日本が資金援助している東南アジアなどで似たような事態が起こる可能性はある。政府や日銀は今のEUの対応をしっかり分析して、どこが良かったか、どこが悪かったか、を分析しておくべきだと思う。政府ならばEUの動き、ロシアや中国の動きなどの内部情報もある程度は入手できると思うのでしっかり分析してもらいたいと思う。