民進党の蓮舫党首が代表を辞任した。本人の弁によると東京都議選挙の惨敗が直接の理由ではなく、党内をまとめきれなくなったからだと言っているが、両方は密接に関連していると思う。
東京都議選挙の状況を見ると、民進党の議席数は公明党や共産党よりもはるかに少なく、泡沫政党としか呼べない状況になっている。政権の受け皿などと議論をできる状況ではないと思う。
その本質的な理由は民進党には政党としてのアイデンティティが感じられず、選挙互助会にしかなっていない、ということだろう。民進党には自民党出身、社会党出身、民社党出身に日本新党、さきがけ、自由党、社民党、維新の会などの人たちが流れ込んで訳の分からない状況になっている。小沢一郎氏が代表になった時に自民党を攻撃して政権を取り、右派を中心に政権運営をしたのだが、元々党としての方針を持たずに反自民で政権を取っただけなので腰が定まらず次の選挙では大敗した。それでも一時期政権を担った効果は大きく、かなり人材が育ったと私は思っている。しかし、野党になってからも一向に党内をまとめることはせずに更に維新の会の一部を合流させるなど、選挙互助会の様子を一層強めているのが現在の状況で、選挙で負ければ誰もついてこなくなるのは当然だと思う。
このままでは旧社会党のようにじり貧を続けるだけであり、いくら安倍政権に批判が強まり支持率が下がっても票が民進党に流れていくことは無いだろう。私は国民が求めているのは安倍総理とは異なる「保守」陣営だと思っており、それが都民ファーストの会の大躍進につながったのだと思う。あれは都民ファーストを積極的に支持するというよりも現在の自民党への批判票だと思っている。
選挙では支持母体を持つことが重要で、民進党の支持母体は「連合」に代表される労働組合である。ところが日本の労働組合の体質は極めて古臭く、私には「働く労働者」ではなく「働かない労働者」のための意見を代表していると思う。つまり、企業に採用されて、働きが悪くても一定以上の給料をもらい続けるような人のために活動をしているとしか思えない。最近連合が残業代をなくす「高度プロフェッショナル制度」容認を取り消したのがその典型である。「高度プロフェッショナル制度」の対象となるような人には連合を支持している人は殆どいないと思われるにもかかわらず、こういう動きが大きな政治勢力として影響を及ぼす、これが民進党のみならず日本全体の政治に悪影響を及ぼしていると思う。安倍総理はそのことを認識しており、国会答弁でもしばしば「民進党は労働組合が支持母体なので・・・」という言い方をしている。
現在は経営者と労働組合は対立する関係ではなく、経営者は労働者を大切にし、労働者は会社経営の意識をもって仕事をしなければ、会社が成り立たない時代である。それにもかかわらず労働組合は「経営者と一緒になって業績を良くする」ことよりも「経営側から多くの賃金を勝ち取る」ことを目標にしている。このような労働組合は弱体化して当然である。
民進党にとってベストな方向性は労働組合の意識を変えることである。しかし、これが民進党にできるとは思えない。それならばいっそのこと、労働組合の意見を聞かず、日本経済の将来を考える方針を打ち出すべきであると思う。こうすると、必然的に民進党は分裂する。そして旧社会党や共産党を母体とした労働組合を支持母体とする政党が誕生するだろう。それでも、「新保守」を打ち出して、浮動票の確保を狙うほうがはるかに政権交代の可能性は高いと思う。今でも民進党の主流派は「保守」であると私は思っている。