ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

パナソニックが個人用スマホ撤退

2013-08-29 09:00:19 | 東工大

日経でパナソニックが個人用スマホから撤退すると報じられている。基地局ビジネスも撤退するとしている。パナソニックの携帯電話ビジネスには私の個人的な知り合いも少なからずいるので寂しい気持ちを禁じ得ない。しかし最近の様々な発表からいずれこうなるだろうとは思っていた。

これで日本の携帯電話はソニー、富士通、シャープ、京セラの4社になった。このうちソニーと京セラは長期間事業を継続すると思うが富士通とシャープのどちらかは脱落するのではないかと私は思っている。感心するのが京セラのビジネスで、後発ながら、Qualcommの端末部門を買収したり、サンヨーを買収したりしてじりじりとシェアを上げ、最近ではアメリカで工事現場用をイメージした特徴のあるスマートフォンをSprintに提供し、これからはVerizonに提供すると言っている。日本の端末ベンダとしては最も安定していると思う。これがアメーバ経営の威力だろうか。

パナソニックは個人用スマートフォンから撤退すると言っているが、企業用は残すという意味である。おそらくノートパソコンのレッツノートのビジネスイメージだろう。私は家電メーカであるパナソニックが携帯電話から完全撤退するのは難しいと思っていた。どこで特徴を出すかは難しいと思うが、おそらく細く長く続けると思う。

今年になってNECも携帯電話の主力部分の撤退を表明したが、残す部分の考え方が違う。NECはスマホをやめてガラケーを残すという選択をした。基本的にドコモビジネスで採算の取れそうな部分を残すという考え方である。一方パナソニックはスマホを止めるとは言っておらず、その一方でこの冬のドコモへの供給を止めると言っている。携帯電話ビジネスをドコモビジネスから一旦切り離し、家電メーカの立場で再構築しようという考えに見える。

通信機メーカと家電メーカの違いで、ある意味では当然の選択のようであるが、今後の携帯電話ビジネスとしてはパナソニックのほうが復活の可能性があると思う。特定オペレータに頼らずに広い視野で消費者が求める機能を考えてセグメント化し、特定顧客セグメントに合わせた特徴のある機能を考えてそれを実現し、可能ならば世界に売り込んでいくという、京セラに近いアプローチになっていくと思うからである。

このブログにも何度か書いたが、私は機能的特徴は別にしてFirefox OSの出来の良い端末をどこが出すかに注目している。


クラウドを誤解している日本政府

2013-08-28 08:16:45 | 経済

今日の日経に「自治体の観光情報、クラウドで民間に開放 総務省」という記事が出ている。この記事を読んで、日本の官僚は、あるいは新聞社も含めて、クラウドというものを誤解している、あるいは日本独自の定義をしているのではないかと改めて思った。

記事を読むと、「自治体の観光情報を公共クラウドで提供する」とある。公共クラウドなるサーバがあってそこに自治体の観光情報を集約し、国民に情報提供するというものである。私にはこれは総務省による観光情報サービスにしか見えない。

クライドというのは自分が管理している情報やデータをネットワークの向こうにあるサーバに預け、管理をアウトソースする仕組みである。この記事の内容で言うならば、自治体が作っている観光情報のサーバを総務省が一手に引き受けて管理し、利用料金を取る。それが自治体が管理するよりも安くなる、という話しである。利用者である国民から見れば、総務省は全く見えずに自治体のホームページにアクセスしていると思っているはずである。しかし、記事では総務省がサーバのアウトソースを受けるとは到底思われず、総務省が主導して観光情報を整備するような印象を受ける。これはクラウドとは全く別の動きである。

ドコモも、「ドコモクラウド」とか言ってネットワークサービスがクラウドであるような言い方をしていた。今は改められているが日本ではネットワークサービスのことをクラウドと呼んでいるように感じる。クラウドの本来の意味は、企業が自分の会社で管理する情報を社内サーバとネットワークを組んで管理していたのをその機能を外部のサーバに委託し、社内では端末だけあれば同じような仕事ができるようにする仕組みである。

どこの会社でもITスタッフが居て社内システムを管理しているが、お金はかかるし、ITスタッフの能力には限界があるしで困っていた。それを解決してあげますというのが、IBMが言い出したソルーションビジネスで、IBMが企業内システムの構築を丸ごと請け負うようなビジネスを始めた。それまでサーバやネットワーク機器を売っていた日本のIT企業は4-5年遅れで一斉にこの分野に参入し、誰もかれもが「ソルーションビジネス」を言うようになった。しかし、この段階ではサーバなどは社内に設置され所有者は個々の企業である。

クラウドはその次の段階で、企業がサーバを持つ必要はない。ネットワークの向こう側にあるサーバを借りれば良い、というビジネスモデルである。自分がサーバを持っているかのようにして完全に独自のアプリを使うことも可能だし、ある程度用意されたメニューをちょっと合わせて使うイージーオーダー的な使い方もある。このクラウドサービスを提供するためには100万台規模の大規模サーバ群とそれを安定的に運用する技術力、そして何より、他の会社に情報を盗まれないようなセキュリティ技術が不可欠である。

日本の企業はこのクラウドサービスで大きく出遅れている。日本が巻き返すにはこういった技術力を急速に高めていく必要がある。しかし、これに対して日本政府が行っているのは「公共クラウド」のような概念であり、サーバの集約でしか無い。アメリカ政府は既に政府のデータを民間のクラウドにアウトソースし始めているというのに、これでは差が開く一方である。

今、政府が民間のクラウドを使うと言い始めれば、技術力の高いアメリカン企業が受注する可能性が高い。そこで今のような公共クラウドを日本の有力企業が押しているのだと私は思っている。しかし、これでは世界との差は開く一方である。企業内ITは企業活動にとってますます重要になってくる。トヨタや新日鉄、セブンイレブンのような企業にとってもITインフラ不可欠である。日本の産業界全体が遅れたITを使っているとしたらそれは日本全体の競争力低下につながる。

政府は日本全体の競争力という視点でクラウド技術を見てほしいものだと思っている。


「岩にしみ入る蝉の声」は何蝉?

2013-08-27 07:47:50 | 生活

今週に入ってやっと涼しくなってきたので私も外を歩く機会が増えてきた。公園を歩いていると、蝉の大合唱である。多くは絶え間なく鳴くニイニイゼミの声であるか、その中でひときわ目立つのが「ジー・ジー・ジー・ジリジリジリ・・・」というアブラゼミの声である。「カナカナカナカナ」というヒグラシの声も聞こえ始めた。蝉の声を聞いているとふと

「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」

という松尾芭蕉の句を思い出す。この句は山形の立石寺で詠んだもので「岩にしみつく」→「岩にしみこむ」→「岩にしみ入る」と推敲して変更して行った句として有名である。確かに変える度に良くなっている感じがする。しかし、うるさいくらいに鳴いている蝉の声を聞きながら、ふと「あの蝉は何蝉だろうか?」と思った。

声が目立つのはアブラゼミである。しかし、アブラゼミの声だとするとうるさい感じがして「岩にしみつく」が最も適しているように思う。そうすると最初の「閑かさや」というのとどうも合わない感じがする。だいたいあのうるさいアブラゼミの声を「岩にしみ入る」と感じるのだろうか、と思ってしまう。同じようなことを思った人が過去に居て論争があったらしい。

今の私の解釈は、あれは「実体験をもとに心象風景を句にしたものだ」ということである。つまり実際に蝉の声を聞いている時には「閑かさ」を感じることはない。しかし後で振り返ってみるとあのうるさかった蝉の声は閑かさの裏返しだ、と感じられるということである。それが多くの人の共感を呼んでいるのだろう。つまり、私の結論はうるさいアブラゼミの声を「岩にしみ入る」と表現したという解釈である。私にはとても思いつかない発想である。

もう一つ、蝉から連想するものに「風の谷のナウシカ」のオームがある。オームは仮想の昆虫で、象ほどの大きさがあり、芋虫のような形だが、その皮膚は武器になるほど硬く、銃弾も通さない。突進されると人には止めようがない圧倒的パワーを持っているのだが結局は人の戦いに利用されてしまう。オームは飛ばないのだが、蝉の抜け殻や、ベランダに落ちて死んでいる固い蝉の体を見るたびに私はオームを連想してしまう。

松尾芭蕉も宮崎駿も私には到底作り出せないような感性を持っていて、すがすがしさを感じさせてくれる。彼らの卓越した感性に乾杯。


ILC誘致は本当に日本のためになるのか

2013-08-23 13:15:24 | 経済

国際次世代加速器ILCを日本に誘致しようとしているグループが候補地を北上山地に絞ったということが報じられている。ICLとは素粒子物理学の実験に用いられる装置で50キロメートルのトンネルの中で素粒子を加速させて衝突実験を行う装置である。最近時々新聞紙をにぎわすヒッグス理論などの素粒子物理学の理論を検証するために使われる。建設費は8000億円以上かかるのでスポンサーが難しく、今は日本しか手を挙げていないらしい。今回のILCの特徴は実験設備だけでなく、研究者が集まる国際都市建設計画も含まれていて、仙台と盛岡の途中に作る計画になりそうである。

東北地方の復興と絡めてこの分野の研究者は誘致活動を政府に働きかけているのだが、私は疑問に思っている。資産によるとILCの経済効果は45兆円で、加速器建設の一時効果が12兆円、その副次効果による産業発展の経済効果が33兆円で計45兆円、とある。この数値は私には、結果として1日に数十台しか車が走らない高速道路を、「回収できるだけの経済効果がある」と言って建設を開始したときの見積もりのようだと思っている。

仮にILCが建設されたとして、そこでの実験結果が産業界に影響を及ぼすことはまずないと思われる。期待できるのは国際研究都市ができることだが、そういう地盤のない東北地方に果たしてどれだけの人が住みつくだろうか、実験する時だけ来る、というようなパタンになって都市としては成立しないのではないかと思う。

このことを書く気になったのは私のような慎重論をあまり見かけないからである。日本学術会議では結論を出すのはまだ早い、2-3年後で良い、ということになっているらしいので慎重論、反対論はあるらしい。ただしそれが表に出てこない。ひょっとして「自分の分野の研究費が削られる」と恐れている他の分野の研究者が反対論を言っているのではないかと思う。この建設と利害関係のない人がきちんと考えて意見を言うべきだと思う。

私もそれほど根拠があって行っているわけではない。自分自身、基礎研究は大切だと思っているほうだと思っているが、それでも試算は甘すぎるように思う。利害関係者間で議論するばかりでなく、第3者が議論する土壌が欲しいものだと思う。


ジェフ・ベゾスがワシントンポストを買収

2013-08-21 14:41:47 | 経済

少し前のことであるが、アマゾンの創業者であるジェフ・ベゾス氏がアメリカの名門新聞社ワシントンポストを買収したというニュースがあった。アマゾンが買収したのではなく、ジェフ・ベゾス個人が買収したそうである。買収金額は2.5億ドル、約250億円で随分安い感じがする。それでもジェフ・ベゾスは個人でワシントンポストを買えるほどの金持なのだろうか。アマゾンの時価総額が8兆円くらいあり、その20%弱の株式を持っているそうだから、1.5兆円くらいの資産はありそうである。ただしアマゾンはこれまで利益はあまり出して居ないのでベゾスが現金をたくさん持っているとは考えにくく、株式交換で買収するのだろう。

調べてみると、ベゾスに限らず、ウォーレン・バフェットもアメリカの地方紙をかなり買収しているらしいし、世界長者番付のベスト10に入っているコッホ兄弟もシカゴ・トリビューンとかロサンゼルス・タイムズを買収するという噂があるらしい。大金持ちが新聞社を買収して自分に都合の良い記事ばかりを載せるようになるのではないだろうか。アメリカでは内容の信ぴょう性は読者が判断するのだろうか。

アメリカの新聞社は経営状態が悪く、読者の購読料は収入の27%しかないそうである。収入の基本は広告料であり、アメリカの新聞社は読者よりも広告主を見た記事を書いていると言われている。そこをベゾス氏は今回の買収で読者を対象とした記事を主体とすることを狙っているらしい。アマゾンお得意の「リコメンド機能」を使って読者に興味のある記事を自動的に選別して見せることにより電子新聞価値を高めようとしている、とこれは英国エコノミスト誌の観測である。これはこれで面白そうに思う。いずれにせよ、アメリカでは新聞記事も内容の妥当性は読者が判断する、という性格がありそうである。

日本では、大手の新聞に出れば信用する、という社会常識があるように思う。ちなみに日本の新聞社では読売、朝日、毎日、日経、産経のいずれも株式を公開していない。会社が誰のものか分かりにくい構造になっている。ただ、日刊新聞に関しては会社の主要株主は新聞発行業を主要事業とすべきでその事業から手を引く時には株を主要事業者に売らなければいけないという法律があるらしい。つまりビルゲイツやウォーレンバフェットが日本の新聞社を買うことはできない。

私は、このブログでも何度も書いたように、マスコミの報道を批判的に見ているが、大部分の人はそうではないだろう。法律が新聞の正当性を担保できているようにも思え無いので、開かれた新聞社はどうあるべきか、日本国内で議論があっても良いように思う。


解決策の見えないエジプトの内乱

2013-08-19 09:51:12 | 社会

このところ、エジプトの内乱が世界のニュースとしては最大の話題となっている。今はエジプトの問題だが、近隣諸国に広がる可能性があり、しかも欧米諸国もどうしたらよいか分からないという状況に見える。

エジプトは長い間ムバラク大統領の独裁政権が続いていた。それがアラブの春で民衆が蜂起しムバラク政権を倒した。立役者は「ムスリム同胞団」と呼ばれる宗教組織である。選挙が行われムスリム同胞団をバックにしたモルシ大統領が選出された。しかしモルシ氏は経済政策を勧めず、イスラム色を強く打ち出して国民の反発を買った。国民がデモを行うと強権的に抑圧しようとした。そこで軍がモルシ大統領を排除して暫定政権を作った。これに対してムスリム同胞団が怒り、デモを繰り返すとともに暴徒化して教会を襲撃したりしている。それを軍が力で抑圧し多数の死者が出ている。

筋から言うと暫定政権のほうが筋が通っているように見える。しかし、現在の政権はいわばクーデターで政権を獲得したようなもので正当性が疑われている。しかもデモ隊から多数の死者が出るような軍の抑圧は人道的にも問題がある。一方のムスリム同胞団は長年地下組織で抵抗運動を行ってきたのでテロ組織的性格も持っている。しかしテロ組織というには支持者も多く、一度は選挙で勝ったくらいである。欧米は選挙をさせようとしているが、選挙がまともに実施できるのかどうかも分からない。

独裁政権と戦うには強い信念が必要である。その強い信念は宗教心に裏打ちされているものが大きい。一方で大部分の人は世俗派と呼ばれ、国が特定の宗教で縛られることを好まない。しかしこういった人の中には強い信念を持っている人は少ない。今は誰もどうしたらよいか分からない状況で、この状態は長く続くような気がする。

エジプトの隣のリビアもイスラム政権に対する反発があり、似たような状態にあるらしい。まだ内戦が続いているシリアでもアサド政権が倒れればその後は似たようなことになるのではないだろうか。政教分離が当たり前の日本にいる私にはどうも理解できない話だが、アラブ地域はイランを始めとして政教分離していない国が多い。これが問題の根源のような気がするのだが、政教分離すべきというのは内政干渉になってしまうのだろうか。

国が国民に対して特定の宗教に合わせた行動を強いるのは問題だと思うのだが・・


FRB議長後任の議論

2013-08-16 16:37:05 | 社会

アメリカのFRB議長ベン・バーナンキ氏の後任人事が色々と取りざたされている。バーナンキ氏は日本で言えば日銀総裁に相当する地位の人だが、大胆なQE3を実施して景気を上向かせ、最近ではQE3の終了をちらつかせている。金融緩和と出口戦略をきちんと考えている感じがして高く評価されていると思う。そのバーナンキ氏の任期が来年1月で切れる。次の議長は出口戦略の実施を世界経済の動向を見ながら探らなければならず、大変難しく世界経済への影響の大きな地位である。

現在話題になっているのは、クリントン政権で財務長官だったサマーズ氏と、現在FRB副議長のイエレン氏(女性)が有力候補である。ここで話題にしたいのはどちらが良いかということではなく、どちらが良いという議論の進め方が日本と大きく違うな、と感じているということである。

ニューヨークタイムズはだいぶ前にイエレン氏が良いと打ち出した。一方ワシントンポストはサマーズ氏が良いと打ち出した。民主党の一部の議員は民主党政権時代に財務長官だったサマーズ氏に疑問を呈している。要するにそれぞれが自分で考えて「誰が良い」という意見をはっきり打ち出している。これらの意見を聞きながら最終的に決断するのはオバマ大統領である。

日本ではどうか、黒田日銀総裁が決まった時にも日本のマスコミなどは「誰が有力候補」ということは盛んに書いており、「安倍総理とだれそれは近い」等と言っていたが、「誰が良い」とはっきり言った人はいなかった。要するに観測や予測をするだけで自分の意見をはっきり言う人は殆どいない。そして決まると経歴などを調べ上げて「こういう理由でこの人を選んだのだろう」というまた観測記事を書く。失言をすれば一斉に叩く。自分の意見を持っている人が殆ど居ない感じがする。

日本では誰が良いとはっきり言うのは選挙の応援演説のように応援して当然、というような立場の人ばかりである。今回アメリカで、イエレンが良い、サマーズが良いと言っている人たちは、立場上そういうのが当然、という人たちという感じがしない。自分たちで考えて議論をし、自分たちが出した結論を発表している感じがする。

日常的に考えて結論を出し、それを公表するということをやっているから、鍛えられるのだと思う。日本は全く逆でそこを避けて通るから鍛えられないのだと思う。これは政治家の育成、経営者の育成につながっていると思う。


靖国参拝問題で思うこと

2013-08-15 09:00:51 | 社会

今日は終戦の日。この時期になると必ず大々的に報道されるのが政治家の靖国神社参拝問題である。なぜ報道されるかといえば近隣諸国から「日本は戦争を正当化しようとしている」と言って反発を受けるからである。反発を受けることを承知の上でどうして政治家は参拝をしたがるのだろうか?

安倍総理は「戦没者を慰霊するため」と言っている。しかし、諸外国が問題にしているのは戦没者全体ではなくA級戦犯が靖国神社に祭られているからである。A級戦犯を分祀すれば良いではないかという議論があるが、実行される気配はない。戦没者は靖国神社以外にも全国各所に祀られているので他の所でも良さそうに思うのだが、靖国神社にこだわっている。安倍総理は今年は外交問題に配慮して、参拝を取りやめ、私費で玉串を奉納した。私費ならば公表しないで「今年は参拝しない」とだけ言えば良さそうなものだが、どうも私費で玉串を奉納したということは国民に知ってほしいような感じである。

日本国民は全体として戦争責任をどう考えているのだろうか? 諸外国は、一部の政治家と日本軍が国を誤った方向に導いたとして極東裁判で「戦犯」を規定している。日本国民にとってもあの政権は犯罪的政権だった、と思っている人は多いだろうと思う。その一方で、かなりの人は「戦争に負けたから指導者が戦犯にされるのは仕方がないけれど、戦争に突入したのは当時の状況からして仕方が無かった」と考える人もかなりいて、そういう人たちへのメッセージを政治家は出しているのかと思う。

同じ敗戦国、ドイツではどうなのかをウィキペディアで調べてみた。色々な意見があって難しいが、歴代首相は毎年周辺国に戦争を謝罪すると同時に「あれはナチスのいう特殊な政権の犯罪」としているようである。ドイツ国内では「ユダヤ人虐殺は犯罪行為」ということにはほぼ全員が合意しているが、戦争に突入したことに関しては賛否両論あるらしい。もちろんドイツの政治家はナチス全体について語り、戦争に突入したことの是非を語ったりはしない。

個人として色々な意見があることは構わないが、公人として発言したり、メディアに報道されるような行動をとる時は、きちんと説明できるロジックを持つべきだろう。今の靖国神社参拝は論点をぼかしているだけでロジックはできていないと思う。


韓国の電力危機

2013-08-14 07:13:56 | 社会

暑い夏が続いている。このところ夕立が続けて起り、雷が落ちて電車が止まっている。考えてみれば夕立ちで雷が落ちて停電になるなどは以前からあったのだが、ここしばらくは起きていなかった。昔の風物詩が戻ってきたような感じである。特に日曜日はまだ日差しがあるうちに夕立が来たのでそのおかげで気温が下がって涼しくなった。月曜日には雷が落ちて私の家でも2度停電になった。どちらも2-3分で回復しており、このあたりに今の電力ネットワークの強みが出ていると思う。デスクトップパソコンは停電になると書きかけの資料などが消えてしまうがノートパソコンは大丈夫である。蓄電の便利さを改めて感じた。

ここからが今日の本題、韓国の電力危機の話である。日本でも史上最高気温41度を記録したりしているが、韓国にも熱波が到来していて電力不足が大きな問題となっている。韓国は役所に冷房禁止を通達しており、市中を巡回して冷房が効きすぎている店などを摘発しているという。気温は35度を超えており、冷房を切ると大変だろう。韓国は規制をやり始めると日本よりも徹底している。

韓国はどうして電力危機に陥ったのだろうか。どうも福島原発の事故が影響しているようである。福島原発の事故以来、原発に対する監視が厳しくなった。以前なら見過ごされていたような小さな事故が大きく取り上げられ、原発停止に追い込まれている。そこへこの夏の猛暑が来たので大騒ぎになっているということらしい。

一方日本では去年まで大騒ぎされていた電力不足は報道されず、熱中症ばかりが報道されている。去年までの電力不足騒ぎはどこへ行ったのだろうか? ネットで調べてみると電力会社が発電能力を過少申告していて電気代値上げのために危機感をあおったのだという。事実ならマスコミはもっと注目すべきだと思う。関西電力管内では大飯原発が再稼働したので8基の火力発電所が休止中だとある。ネットではこれを電力会社の不誠実だと騒ぎ立てている人がいるが、私はそれくらいの余裕があったほうが良いと思う。

実態はどうなのか、休止中だった火力発電所を再稼働させ、高値を承知で燃料を買い集めて電力不足を二り切ったということだろうと想像している。一息ついたので今は燃料費を下げるためによりシェールガスを含めた安い燃料購入の交渉にあたっているというのが現状だろうと思っている。こういう燃料購入計画は10年単位の長期契約になる。一度決めると簡単には変更できない。

マスコミはこういった実態を含めて国民に日本のエネルギー政策の実態を報道すべきだと思う。


情報通信白書を読んで

2013-08-13 14:48:58 | 経済

今年7月に総務省が発行した情報通信白書を読んだ。従来の白書と比べていくつかの改良点がある。

まず、今まで必ず含まれていた経済学者の分析が無くなった。その部分は経済学者に丸投げしたような感じで、そこにだけ特殊な経済分析の手法が用いられていて、読みにくく、納得間も薄かったのだが、それが無くなって読みやすくなったと思う。データの再利用を正式に認めたのも今年からだと思う。

内容は、最近の話題であるスマートフォン、クラウド、ビッグデータ、サイバーテロ、その他重要と思われるものは網羅的に取り上げて、国際比較や日本の向かっている方向が書かれている。キーワードは情報通信の利活用と国際戦略である。選んでいるトピックスも適切だしキーワードも正しいと思う。しかし残念ながらこれで日本の情報通信産業が反転攻勢に出るような感じは受けない。どうも供給者の論理で書かれている感じがするからである。

内閣府の国家情報通信戦略を読んだ時にも同様の印象を持った。今うまく言っていない日本の大手情報通信機器メーカの視点で書くから説得力が弱いのだと私は思っている。一例を言うと、今年の白書には「G空間」という詳細な位置情報データベースを構築する話が出ている。こういうデータベースがあると様々な用途に使えて安全安心や産業発展に寄与するとある。しかし私の印象では地図会社が仕掛けて、「データベースを作るから買い上げてください」というストーリーに乗った感じがしている。本来ならそれを使ってサービスを提供しようという会社が「Google Mapと比べてこういう値段でこういう情報を提供してほしい」あるいは「Google Mapではこういうところが不足しているからそれを補完してほしい」と言った話が行間ににじみ出てきてほしいのだが、どうもそういう点が感じられない。

後少しの所なので惜しいと思う。