ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

マスコミが作る駆け込み需要

2014-03-31 09:17:46 | 生活

昨日の雨と風で、スギ花粉はかなり落ちたらしく、私の花粉症の症状はかなり楽になった。今日は富士山がくっきりと見える。今日は晴天で気温が高く風も強いので残った花粉がかなり飛んで終わりが近づくだろうと思う。私にとってはこれからが春本番で、桜も見ごろだし、海棠やこぶしなど他の花も見ごろである。更にそれに続く青葉の季節も好きである。

今年度も今日で終わりで、明日から新年度に入る。テレビでは増税前の駆け込み需要を盛んに報道している。私はこれはもう報道というより「あおり」だと思っている。私自身は駆け込みの買物は一切していない。普段から自分で買い物をすることはあまりなく妻に任せていて、必要と思ったときに必要と思ったものを買うだけだからという面が大きいだろう。一般にアンケートをとれば多少は意識するがそれほど強くは意識しないという人が大多数ではないかと思う。

しかし、テレビを見るととてもそうは思えない。まるで国民全員が買いだめに走っているように感じる。これは私は大量に買っている人を撮ってその映像ばかりを流すからだと思っている。10人に一人が買いだめに走ったとしても日本全体では1000万人である。映像はいくらでも取れるし、実際に需要も無視できないほど上がる。しかし、その人数は少数派だという報道はどこにもなく、買い漁っている人ばかりが報道される。それで冷静な人の心も動かされる。

少し前の私ならここで「マスコミはけしからん」と結んでいたと思うが、今は少し違う。マスコミ、特に民放がああいった報道に走るのは仕方のないことで止められないものだという思いがある。彼らも商売である。見る人に受けるものを狙う。小保方さんのSTAP細胞にしても、みんなの党の渡辺代表の借入金にしても、面白い、国民に受けるからということで、マスコミの人が自分の生活のために報道しているのだと思っている。私の若いころの週刊誌はそんなイメージだった。タレントのスキャンダルを暴くのが週刊誌の仕事といったイメージがあった。今は大手新聞社、テレビ局が週刊誌化してきていると思う。特に最近はテレビの広告収入が減っており、そういった受け狙いの報道は増えることはあっても減ることは無いだろう。受け取る国民がそう思って受け取ることが必要である。

こういった流れの中にあって、NHKはビジネスモデルが違っていて貴重な存在である。しかし、最近はNHKが民放の視聴率の取れる手法を真似ているように思う。NHKがニュースで取り上げる問題も民放と大差なく、世界で大きな問題となっているクリミア問題などはごく一部である。そのNHKの姿勢を正すための会長や経営委員が重要だと思うのだが、どうも報道をまともにするための人選ではなく、政府に都合のよい報道のための人選になっているようである。

中国の人はマスコミを信用していない。いくばくかの真実は含まれているだろうという目でみて、報道の中から真実を拾おうという姿勢がある。日本国民にもそういう姿勢が必要だろう。インターネットがそれを手助けしてくれる。



イオンがスマホビジネスに参入する仕組み

2014-03-30 10:45:00 | 経済

イオンがスマホ販売に参入するというニュースが報じられている。最近、大手オペレータ以外のNTTコムとかIIJとかも参入しているのと同じ業態である。私がこのニュースを見て引っかかったのは日経の記事が端末販売に参入という書き方だったからである。

実態としてはイオンが自社ブランドで加入者を集める、具体的にはSIMカードを販売するのだが、ネットワークは日本通信のものを利用するという。その日本通信はドコモから一定のネットワークリソースを借り受けている。つまりイオンのオペレータビジネスにはドコモ、日本通信、イオンと3オペレータが絡んでいることになる。それぞれが利益を上げるわけだから利用者にとっては割高なものになるのではないだろうか?

元々、自分で設備投資をせずに他社のネットワークを借りてオペレータビジネスをする会社をMVNO(仮想移動体通信事業者)と呼んでいたがイオンの場合はMVVNO(超仮想移動体通信事業者)ということになるのだろうか? なぜイオンはオペレータと直接交渉しないのだろう?、などと思う。

私が想像するに日本通信はドコモから回線を借りているのだが、ドコモから借りる条件に制約があって、必要なだけ借りることができずに余分なリソースまで借りているので、イオンとしては日本通信から借りるほうがやりやすいということなのだろうと思う。

アメリカのオペレータでは大手のオペレータが加入者数を発表するときにホールセール(卸販売)という形でMVNO加入者をカウントしている。アメリカでトップのVerizonの加入者数の推移をみるとLTEが始まる前の苦しいときにはこの卸による加入者数増加が増えている。最近、日本でMVNOの発表が増えているのはドコモの加入者数が増えないという台所事情が関係しているのではないかと思う。

ところでMVNOというのはドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・モバイル、UQなどの実際にネットワークを持っている複数のオペレータから借りてブレンドすることができるのかどうか、ということである。禁止はされていないと思うのだが交渉は難しいかもしれない。しかし、ドコモとUQを組み合わせるなどすれば他社にはないサービスを打ち出せると思う。

ガラケーの場合にはパケットの方式がオペレータごとに異なっているため端末がどれに対応しているかで決まってしまうのだがスマホの場合にはそういった制約は無い。複数オペレータのネットワークを束ねるのは面白いと思うのだが・・

日本のオペレータは全産業界でもトップクラスの利益を上げているので、もう少しMVNOなどを活用して業界を活性化しても良いのではないかと思う。



ビル清掃事業の国際化

2014-03-29 15:24:36 | 経済

またまた英国Economist誌からのネタである。テーマはアウトソース企業なのだが、ここでいうアウトソース企業は開発や設計のアウトソースではなく、日常業務のアウトソースである。例えばビルの清掃、警備、社内カフェテリアといった内容である。この種の作業は日本の大企業の場合には殆どが請負子会社を作ってそこに委託する、という形をとっていると思う。しかし欧米では独立した会社のなっておりそれが国際化した大企業に育ってきているということである。

例えばビルの清掃を主要事業とするデンマークのISSという会社は株式公開で1500億円程度を調達する見込みと言われている。事業も清掃だけではなく、ビル全体の管理に手を広げてきている。また、フランスのSodexoという会社は、学校や病院での給食サービス事業から入って世界に事業を拡大している。この会社はPPP(Public Private Partnership)の枠組みによる公的サービスの民営化の動きに乗って事業を拡大した。そして、周辺企業を買収し清掃やビル管理にも事業を拡大すると同時に国際化を進めている。現在Sodexoは世界80か国で43万人雇用して売り上げ2.5兆円の企業に発展しているという。他にもビルの電力管理をしていたGDF Suezなどいくつかの会社が事業拡大とともに業務も拡大してあちこちで競合し始めているという。

最初は一つの分野でノウハウを蓄積して国内で事業を拡大し、次に国際化する。更に次のステップとして異なる分野でのサービスに参入する。そして競合が激しくなる。この一連の流れの中で生き残って世界の勝者となるのは単にそれぞれの分野で業務を効率化するするだけでなく、新しいサービスを生み出し続ける企業だろう、とEconomist誌は結んでいる。

私はこの記事から経営判断の観点と同時に、国の関与の側面も感じた。それはPPPというキーワードに象徴される政府の政策が影響しているのではないかという点である。いま日本での注力され始めている水ビジネスではフランスが強いという。そこにはPPPの枠組みによって早くから民間企業が参入してきた点が大きく寄与しているという。ハイテクではないが新しい産業形態を考える国の戦略が背後にあったのではないかと思っている。

私が会社に勤務していた時には、食堂、出張の手配、福祉、清掃などでそれぞれ子会社を作り、そこが定年退職者の第2の人生の職場になっていたと思う。業績が悪くなってこれらの企業がどのように整理されたかは知らないが、何となく独立させるというよりは統廃合して数を少なくしてきたという印象がある。

そうではなくて独立させて他の会社の同様のサービスも請け負うようにする、そして更には国際化していくという方向にどうして進めなかったのかと思っている。出張の手配なども私が在職当時からHISなどの専門事業者のほうが効率が良く、「そういった企業にアウトソースすべきだ」というようなことは在職当時から言っていたのだが、私自身も本気で動かなかったので流れを作ることはできなかった。

日本はこういった分野では出遅れていると思う。その分、国内にはまだビジネスチャンスがあるのではないだろうか。大きな目で見るとこれからも水平分業が一層進むと思うので、子会社は全て「専業会社で水平分業の独立起業にできないか」といった目でビジネスチャンスをとらえる必要が経営者にはあると思うし、政府がそのための仕組みを整えることがアベノミクスの第3の矢である「成長戦略」につながると思う。



ヤフーがイー・モバイルを買収、なぜ?

2014-03-28 09:39:03 | 経済

昨日、ヤフーがイー・アクセスを買収するというニュースが飛び込んできた。イー・アクセスはKDDIが買収を検討していたところを、2012年の秋に孫さんが高額を提示して一気に自分で買収してしまった企業である。最近では同じソフトバンク傘下のPHS事業をやっているウィルコムとの統合が話題となっていた。そのイー・アクセスをヤフーが3240億円で買収する。ソフトバンクがイー・アクセスを買収したときは1800億円でこれでもKDDIにはとても手が出ない高額と驚かれたものである。今回のヤフーによる買収はウィルコムも一緒についてくるとはいえ、さらなる高額で私にとっては驚きだった。ソフトバンクにとっては一連の取引で利益が出たことになるのだろう。

しかし、この話にはどうも不自然さを感じる。それはヤフー自体がソフトバンクの系列企業だからである。調べてみるとソフトバンクは36%程度のヤフー株を持つ筆頭株主である。なぜ系列企業間でこのような巨額の取引を行うのか?

理由は電波免許に絡む話しか思いつかない。イー・アクセスをソフトバンクが買収してソフトバンクは加入者数の割には最も周波数を多く持つオペレータになった。イー・アクセスは買収直前にいろいろと周波数を総務省からもらっており、「ソフトバンクが買収するならその分を返せ」という圧力を受けていた。そこでソフトバンクは電波を返上する代わりにイー・アクセスを自社の完全子会社とすることをあきらめ、イー・アクセスの株を一部放出することを考えていた。今回の決定はこの路線に沿ったものであることは間違いない。しかし、実質的には孫さんがすべてを仕切ることになる、孫さん傘下の企業となることは間違いない。

ソフトバンクは資本の動かし方を含め、こういうところのやりくりが実にうまい。しかし、部外者から見ると法の抜け道を堂々とくぐっているような感じがしてどうも気に入らない。何か社会常識に反した行動に感じる。これですんなりソフトバンクが実質的にイー・アクセスの周波数を利用できるようになるのかどうかはわからない。しかし、こんなおかしな手法が横行するのも国が電波という限られた資源を無償で民間に与えているからだという印象はぬぐえない。海外では巨額の金を払わないといけないものが日本では無償で手に入る。そこで何とかして多くの資源を手に入れようと色々な人が暗躍する。

今回のイー・アクセスの買収劇は、「日本でもやはり周波数オークションを導入すべきだ」という思いを私に改めて感じさせた。


NHK杯 囲碁・将棋の決勝

2014-03-27 08:47:33 | 囲碁

日曜日はNHK杯の囲碁・将棋の決勝の放送があった。10時から11時半が将棋の決勝、その後に高校野球の中継が入って13時から14時半が囲碁の決勝ということで昼間の中心的時間帯をテレビの前で過ごした。

将棋は郷田九段と丸山九段の決勝でいずれもA級の実力者だがタイトル保持者ではなく若干物足りなさを感じた。内容は丸山九段の中盤での失敗が響いて一方的に郷田九段が勝った。この二人は同学年でさらに同学年として羽生三冠、森内二冠、佐藤九段、藤井九段という強豪がいて、将棋の強い人の超当たり年の学年である。皆40歳になったがまだ上位で頑張っている。

囲碁のほうは関西棋院の結城九段と日本棋院の河野九段の決勝でこちらは大熱戦だった。三連覇がかかっていた結城九段が少し苦しそうだったのだが、取れそうだった中央の数目の石を取りにいかずに、逆に自分の石をかなり大きく捨てて代わりに辺の地をとった作戦が成功して逆転した。河野九段とすれば中央の石を取りに行ったのが判断ミスだった。結城九段はこれでNHK杯三連覇である。毎回最初から始めるトーナメントシステムで三連覇は大変なものである。囲碁界は長い時間を使って戦う7大タイトルのうち6つを井山九段が持っており、残った一つの十段位を結城九段が持っている。今高尾九段の挑戦を受けていて防衛なるか、というところである。

長い時間の結城九段の囲碁を見ていて感じるのは気分のむらがあり、崩れてくると取り戻そうとして無理をしてさらに崩れてしまう、といった精神的な弱さがあるという点である。ところがNHK杯戦ではそのような気分のむらは感じられず、無理っぽいと思ったら多少不利でも自重して次のチャンスを待つ、という戦い方をしている。やはり「テレビの囲碁では自分が強い」という自信があり、それが次のチャンスを待つ自重につながっているのかと思う。自分に自信を持つことの大切さを感じる。

囲碁も将棋も棋士の戦いは楽しめたのだが、表彰式になってNHKの重役が表彰状を読み上げ最後に籾井会長の名前を読んだ時には違和感を感じた。「そうか、あの人の名前でやっている棋戦なんだ」と改めて思わされ、優勝カップが何か薄汚れたものに感じてしまった。このブログでも籾井氏の会長就任記者会見の発言について取り上げたが、その後の動きを見てもますますNHKの会長にふさわしくない人物だと思う。NHKの人事は海外メディアからも問題視されており、早く辞めさせないと将来安倍政権の致命傷になるような気がしている。


東日本大震災からの復興の遅さはなぜ?

2014-03-25 10:30:39 | 社会

3月11日が過ぎてしばらく経ったが、3月上旬は東日本大震災の爪痕の話題が多く報道された。私の持った印象を一言で言うと「3年も経ったのになぜこんなに復興が遅いのか?」ということである。読者諸兄も同様の印象を持たれたのではないだろうか? 

原発事故のあった福島第1原発周辺は仕方ないとして、津波の被害に会った三陸地域での復興は遅すぎる気がする。阪神大震災の時の神戸市では3年も経つともう被災地とか仮設住宅とかいうイメージではなく、再開発のイメージが強かったと思う。

テレビの報道などは復興の遅れている地域を重点的に見せて「こんなに悲惨だった。今でも困っている人がこんなにいる」ということを見せることを目的にしているので、必要以上に復興が遅れているように感じさせられているのではないか、と思って仙台市内の復興状況を調べてみた。

2013年5月(約1年前)の読売の記事で「中心地区は人口増と再開発、震災復興をけん引」という見出しで仙台市内中心部には人口増加が続いている、という評価になっている。仙台市の人口は2012年から1年間で約1万人増加しているそうである。特に仙台駅前東口では再開発が進み川崎駅前のようなイメージらしい。

つまり、復興が進んでいないのは元々人口減少が進んでいた漁師町のようなところであり、都市部では復興が進んでいるということらしい。人口減少が進んでいた地域はそれが加速したということであり、元に戻すという発想自体がおかしいのではないかと思う。

テレビでもやっていたが高さ10メートルの防潮堤を作っていた町が津波でやられたので今度は15メートルにする計画だという。しかし、3年経って住民からは防潮堤が巨大すぎる、海の状態が見えずかえって危険、別のことに予算を使ってほしい、という声が出ているという。宮城県はそれに反対している。県の言い分は防潮堤の存在を前提に県全体の防災計画を作って推進中なので一部住民の意見で今更変えられない、ということである。明らかにボタンの掛け違いである。

こうした非現実的な復興計画が至る所にみられる。私はこの責任は民主党政権、特に菅総理の時期にあると思う。総理に指導力が無く、災害を予算獲得のチャンスと見て、大規模な工事のために予算獲得のために動く人たちが跋扈した。それをコントロールできずに、大枠の復興計画を作ってしまったことが現在の状態を作っていると思う。

現在やるべきことは、このような復興計画を抜本的に見直すことだと思う。今からでも遅くない、長々と続く三陸海岸に高い防潮堤を作る意味は本当にあるのか? 復旧でなく復興という言葉を使っているのは、元に戻すということでは無く新しい国土の形を考えるということなのだから、産業が少なく人口流出が続いていた地域を元に戻そうということには基本的に無理があり、新しい三陸地域の形をどうするかを考え直すべきだと思う。同時に現在の復興計画を策定する時に中心的に動いた人達の責任追求も考えるべきだと思う。



新潟大学での学会に参加して

2014-03-21 10:32:55 | 東工大

今週は、新潟大学で行われている電子情報通信学会の全国大会に参加している。この2年くらいはこの大会には参加しているのだが、これまでは私が副委員長を務めている標準化のセッションに参加し、夜はそのメンバーでの懇親会、というのが殆どのパタンだった。今回は、学生にも発表させており、私自身も技術セッションで発表しており、水曜日が私自身の発表、木曜日が学生1の発表、金曜日が学生2の発表となっており、新潟に2泊して色々な人と旧交を温めた。現在もまだ新潟大学におり、内職でこのブログを書いている。

ホテルは、私のお気に入りのドーミーインが改装工事中で宿泊できなかったために、新潟駅の近くの新潟東映ホテル、というところに泊まった。朝食付きで一泊4000円とかなりリーズナブルの価格だが、部屋もそこそこで悪くないと思った。朝食もおいしかった。夜の部は飲み会になるのだが、10人ほどの集まりで酒飲みが多く、地酒を次々と一升瓶で注文して、コップ酒で飲んだ。どれもおいしかったが最後のほうは味が分からなくなってきていた。かなり飲んだと思うのだが二日酔いにはならなかった。食べ物では佐渡の牡蠣がおいしかった。

木曜、金曜は天気が良ければ新潟の街を歩いてみようと思っていたのだがあいにく2日間とも雨だったので、少し遅めにホテルを出て大学でセッションに参加していた。細かい技術の話しよりは全体の動向を知りたいと思ったので、専門の移動通信のほかに、「思考と言語」のセッションとか、「知的環境とセンサネットワーク」のセッションに出てみたが、特に感じるところはなかった。

それにしても、アンテナ・伝搬の発表が多いのには驚いた。花形である移動通信よりもかなり多い。大部分が大学の研究発表である。複数のアンテナを使って制御するMIMOのような技術は移動通信のほうに含まれていて、アンテナのセッションはアンテナそのものの設計に関わることである。私もアンテナのセッションで発表しているので、人のことは言えないのだが、ビジネスとして見ればアンテナはごくわずかしかビジネスにはなっていないと思う。それなのにどうしてこんなにアンテナの研究発表が多いのだろうと思う。アンテナを研究している大学の研究室が多いということを意味しているのだろうと思うのだが、これからアンテナビジネスが大きく花開くとも考えにくく、産業界の需要とマッチしていないのではないかと思う。

前に、半導体の分野の企業の研究者が大学教授になっている例が多いと書いた。半導体も日本の産業としては負け組に入っている。大学の研究と社会の需要をマッチングさせるような仕組みが必要なのではないかと思う。

 


ウクライナ問題に対する日本の立ち位置

2014-03-20 10:54:52 | 社会

ウクライナ問題というよりクリミア問題はどんどん進展してかなり危険な状態になってきていると感じている。これに対して日本政府がどう対応しようとしているのかは今一つはっきりしないのだが、基本的にはアメリカに従いつつロシアを刺激しないようにしようとしている、という感じである。日本はウクライナからは遠く、影響はあまりないのだから、客観的な立場でモノを言うべきだと思っている。

まず、ウクライナに置いて大統領を追い出し、クーデターの形で暫定政権が誕生した。この時には死者もかなり出た。主に政府側が反政府側の人を殺したのだと思っている。そうではあっても、武力による政変は一般的には非難されるべき行動である。しかし内容をみると大統領側にもかなり問題があったようなので暫定政権を非難することはせずに、「ウクライナの国内問題だから」といって中立を保つべきだと思う。

ロシアは、この状況を見て「ウクライナに住むロシア人が虐待されている」と言って、ロシア人が一番多いクリミアに派兵した。クリミアで実際にロシア人虐待があったとは報道されておらず実態は不明だが、何十人も死亡ということは無いと思う。この行為によって死者は出ていないようだが、これは非難されるべきである。これに対して非難声明を出し、クリミアから撤兵するようにということは言うべきだろう。

次に、クリミアで住民投票が行われた。欧米は住民投票をやるなと盛んに言っていたが、ここまで言うのは内政干渉だろう。この点にはコメントしなくて良いと思う。住民投票の結果、クリミアの独立とロシアへの併合が圧倒的多数だった。ロシアは独立を認め、併合も認めた。圧倒的多数の住民が独立を求めたのでロシアがこれを承認したこと自体は非難するに値しないと思う。しかし、クリミアを併合するのは明らかにやり過ぎである。ウクライナは、暫定政権とはいえ、クリミアの独立宣言は無効、と言っているのだから、そこが解決してから、併合すべきである。従って併合に対しては非難声明を出すべきだと思う。

Finantial TimesやEconomistといったイギリスのメディアはかなり強硬な態度をロシアに対して取るべき、という論調である。それは、プーチン大統領の「国外に住むロシア人を守る」という理由で派兵したことに対して強い反撃をすべきだというのがポイントである。これをうやむやに認めてしまうと、次はウクライナに住むロシア人を守る、グルジアに住むロシア人を守る、と言ったように次々と拡大するのが目に見えているから、というものであり、この点には賛同できる。

このように、内容を分析してそれぞれの行為に対して非難する、しない、を明確にすべきだと思う。結果としては「ロシアを非難しつつも、欧米よりは弱いトーン」という現在の政府と同じ対応になるのだろうが、どうも今の日本政府の対応は他国の顔色を伺いつつ行動しているようで毅然とした態度が感じられないのが気になっている。


民主主義の劣化

2014-03-18 11:03:30 | 社会

原題は「What’s gone wrong with democracy ?」という英国Economist誌の記事である。ここ数年、私が漠然と感じていたことをエコノミスト誌が真正面から取り上げた、という印象なので今日はこの記事を紹介したい。

民主主義が世界で力を持ち始めたのは20世紀に入ってからであり、世界を統治する仕組みとして一気に広まったのは第2次世界大戦後、アメリカが世界のリーダになってからだとしている。それで世界の新興国がどんどん民主主義を採用して行った。ところが21世紀に入って民主主義は世界的にはむしろ減少してきているという。その原因となったいくつかの出来事があった。

一つ目がロシアの専制政治への回帰である。エリツィンによって共産主義に終止符を打ったロシアがプーチンによって別の形の専制主義に入った。二つ目がイラク戦争(アメリカがイラクに武器があると嘘をついてイラクに侵攻した)である。三つ目がエジプト革命の失敗である。ムバラク大統領を追放し選挙で選ばれた政府がムスリム同胞団によって極端なイスラム教に走り、国内で内乱のような状況になり、軍がクーデターを起こして実権を握った。その後のエジプトは未だに不安定である。

先進国の民主主義は万全かと言えばそうではない。ほぼ世界全体の先進国で政府債務は増加している。これは選挙に勝つために、遠い将来への投資よりも近い将来のためのバラマキを重視するからである。ヨーロッパではユーロ危機に陥ったし、アメリカ議会が昨年一時期、予算遂行不能の状態に陥ったことは記憶に新しい。

その一方で非民主主義の中国は大きな成功を収めている。中国は共産党独裁であるが、政府は国民のことを考える態度を示しているし、国民の満足感も高い。民主主義のインドは経済発展が遅れている。これはインドでは選挙に勝つためにばらまき投資に税金が使われてインフラ投資が遅れているからだという。中国の成功はルワンダ、ドバイ、ベトナムなどの政治形態に影響を与えているという。

だからと言って、エコノミスト誌は民主主義以外の政体が良いかもしれない、という方向には向かっていない。民主主義を再び強化するためにどうすべきか、様々なことを上げているが、なぜ将来も民主主義であるべきなのかについては説明がなく、当然のこととしている。この点はもっと掘り下げてほしかった。

提言には様々なことがあるが、特に「なるほど」と思うようなことはなく、良く言われていることがほとんどだった。ただ、先日私がこのブログに書いた「住民投票をもっとやるべき」という線に沿った提言で「税金が安くてサービスも少ないのと「税金が高くてもサービスが良いのとどっちが良いか」と言った類の住民投票をもっとやるべきだ、という提言があったことを記しておきたい。ここでのポイントは「税金が安くても効率化すればサービスを上げられる」という良いことだけを言う住民投票ではなく、住民に選択を迫る点である。これには大賛成である。

民主主義が本当にベストの統治の仕組みなのかを含めて、じっくりと考えていくべきだと思う。



井山棋聖、4勝2敗で防衛

2014-03-17 08:31:41 | 囲碁

井山棋聖が山下九段の挑戦を受けて戦っていた囲碁の棋聖戦7番勝負は井山棋聖が4勝2敗で防衛した。最初から井山棋聖が3連勝し、あっさり決まってしまうかと思われたが、そこから山下挑戦者が2勝を返し、白熱してきた。しかし第6局を井山棋聖が制してタイトル防衛に成功した。

内容的にも面白かった。二人とも戦い志向なので激しい読みのぶつかり合いになる。しかし、全体的には井山棋聖のほうが一枚上という印象である。井山棋聖が勝つ時は危なげなく勝っているのに対して、山下挑戦者が勝つ時は優勢になっても激しい追い込みがあり、辛くも逃げ切ったという印象があった。従って、井山棋聖が2連敗した時にも精神的に追い込まれたというような問題がなければ最後は井山棋聖が勝つだろうと思っていた。

その井山棋聖は7大タイトルのうち6冠を制しており国内では圧倒的な強さを示しているのだが世界戦では中国、韓国の棋士になかなか勝てない。世界戦は持ち時間が短いので長い持ち時間の日本スタイルの碁を一度、世界戦の優勝者と井山棋聖の間で企画してくれないかな、と考えているが実現は難しいだろう。囲碁のプロ棋士は日本棋院または関西棋院に属しているのだが、この棋院が現状の棋戦の運営をするただの事務方になっていて、運営力というか企画力が乏しいように思う。何となく、大相撲協会と似ているような感じを受けている。プロ棋士以外の人材を理事に入れるなどの活性化の対応が必要だと思う。

7大タイトルのうち6冠を抑えている井山棋聖にしても年間勝率は7割台である。囲碁界では過去に坂田名人が1年間だけ勝率8割に達したことがあるが、それ以外は勝率が高くても7割台である。将棋界では羽生名人が7冠を制覇したことときに年間勝率8割3分を達成しているのが過去最高である。そう考えると大相撲の横綱白鵬の年間勝率9割を超える成績は超人的に思える。白鵬の年間勝率はここ数年間9割を超えている。アマチュアスポーツでは例えばレスリングのアニマル渡辺選手の国内外含めて189連勝という記録があるが、プロ制度がが定着している相撲以外の競技でスポーツや囲碁将棋などを含めて年間勝率9割を超える人は他に見たことがない。大相撲の横綱は過去にも年間勝率9割を超える人がいたようである。瞬時の動きで勝負が決まる大相撲でこの勝率が達成できるのはなぜなのだろうと思うと同時に、改めて横綱白鵬の偉大さを思う。