ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

唐津散歩

2015-04-30 09:35:22 | 生活

私用で福岡へ行ったので昨日は唐津に行ってきた。唐津はJRで行くのだが鹿児島本線などとは接続されておらず、博多からは空港から出ている地下鉄空港線の延長線上にある。私は16時の飛行機で帰ってきたのだが13時半頃に唐津を出れば十分に間に合うくらいの場所である。

朝10時頃に唐津駅を降り降りると駅前で「JR九州ウォーキング」というのをやっていて、参加無料なので丁度良いと思ったので申し込んだ。「どこから来ましたか?」と聞かれて「横浜から」と答えると受付の人は驚いていた。殆ど北九州の人が参加するようである。ガイドがつくわけではなく、胸にバッジを張って勝手に歩く。ところどころに道案内がある。バッジがあると見学料金などが割引になる。全体で7kmの歩程である。

最初に寄ったのが唐津焼の窯元である。唐津に行ったのは焼物を見たいという気持ちがあったので丁度良かった。気に入ったのがあったら買おうと思っていたのだが、1万円を超える茶碗やカップで買おうという気持ちになるのはなかなかなかった。

そこからしばらく歩くと商店街に出る。この商店街の中にも焼物を売っている店はたくさんある。その中で唐津焼ではないのだが白磁の皿で気に入ったのがあったのだが荷物になるので買わなかった。写真を見るとシャッター商店街のようだが、突き当りを右に曲がったところが本筋でそちらは活気があった。手前の矢印のような道案内が随所に置いてある。

更にしばらく行くと唐津城にでる。手前の端を渡って城のほうに向かう。唐津城は海を見下ろす岬にあり、城の向こう側は海である。

ウォーキングコースは天守閣には登らずに城のふもとを回って海岸に出る。小さな島がいくつもある。そこから旧高取邸、とか河村美術館とかいった名所を巡る。河村美術館では藤田嗣二展をやっていた。ピカソを意識したような絵が結構あり意外だった。この美術館は青木繁と関係が深いらしく、常設展示では青木繁の絵が結構あった。他にも明治の日本画家の絵が結構あるのだが、セザンヌを意識したような絵が多かったと思う。

更に行くと曳山展示場にでる。この写真のような大きな曳山がたくさんあって普段は屋内の有料の展示室で展示されているのだが、この日は祝日で外に出して子供たちが乗ったりして遊ばせていた。もちろん無料で触れる。写真は武田信玄の鎧兜。

曳山全体はこんな感じである。武将の鎧や、鯉などのキャラクターがある。

曳山はお祭りで使う物でその祭りの神がいるのがこの唐津神社である。曳山展示場のすぐ隣である。結構立派な神社だと思う。博多山笠は全国的に有名だが九州のお祭りではこのような山車にエネルギーを使うのだろうと思う。

神社の境内では生け花を展示していたが誰もみていない。「センスあり」はどれ? 私にはどれも結構センスありに見えたのだが・・

このあと、縄文時代の遺跡を通って唐津駅に戻る。約2時間半、12時半頃に戻ってきた。唐津全体のイメージがつかめた感じがして良かった。昼食を食べようと思ったのだが駅の近くのレストランはどこも満員で行列ができている。このウォーキングに参加人たちが入っているのだと思う。仕方がないので駅から少し離れた回転寿司屋で昼食をとって唐津を後にした。天気も良く、充実した唐津訪問だった。


ソフトバンクとIBMの連携

2015-04-22 09:29:51 | 経済

今朝の日経に「スマホ、AIと連携 ソフトバンクモバイル」という記事が出ていた。ソフトバンクは目の付け所が他のオペレータと違う感じがする。ソフトバンクが出血サービスで人型ロボット「ペッパー」を発売しているのは人工知能(AI)の将来を見越して学習能力をクラウドで高めることを狙っているといわれている。私は「ソフトバンクにそんなスキルがあるのか」と思っていたが今朝の発表で理解できた。IBMの人工知能「ワトソン」と組んでサービスを提供するという狙いである。IBMからすればビッグデータにつながる情報が手に入るし、ソフトバンクからすればブランドイメージがつく。老人ホームなどの顧客を囲い込みやすくなるだろう。良い経営判断だと思う。

良く「大きなトレンドは読むことができるが、近場の予測は外れる」と言われる。大きなトレンドとは

・インターネットの利用はますます広がる
・事業はグローバル化する
・ロボットは将来広く使われるようになる
・ビッグデータを使ったクラウドサービスは普及する

などである。これに対して近場の話とは

・腕時計型端末はどうすれば売れるか
・センサネットワークではどの技術が本命になるか
・太陽光発電に対する補助金政策はどうなるか

などである。大部分の企業はこれらの近場の将来を読もうとして必死になり、ある時は賭けに出る。これをリスクを取るとこだと考えているように見える。これは多くの失敗の上に一部の運の良い、或は優れた着眼を持つ企業だけが成功する。ソフトバンクも近場の読みもやっているが、むしろそれに対する投資は抑制的に見える。他のオペレータと違って大きなトレンドを読んで手を打つ動きもかなり感じられる。トレンドは読むが、具体的な動きは徹底的に利益志向で動く。自社開発にこだわったりせずに世界の一番強いものと組もうとする。成功したときの自分の取り分をどこにするかは考えてある。利益志向が強いので評判は良くないが、こういうのが経営力だという感じがする。



今、「私の履歴書」が面白い

2015-04-20 17:15:43 | 生活

日経新聞に連載されている、「私の履歴書」は有名人が一月かけて自分の過去を振り返るものだが、今月のニトリ創業者である似鳥昭雄氏のは特に面白いと思う。

たいていの人は、若いころの話は面白くても、後半になると自慢話を聞かされるような感じになって興味が失せるのだが、似鳥氏の場合は20日になってもまだ失敗談が出てくるので面白いのだろうと思う。読者として著者の不幸を喜ぶという感じではなく、失敗談とそこから立ち直る過程に人間味を感じて面白いと思うのだろうと思う。一般的なサラリーマン社長は、若いときには失敗をしても、ある程度以上のレベルになると失敗をしなくなり、それだから社長になれたということなのだろう。その点、創業者の社長は何度も失敗して、そこから這い上がるという経験をしているので面白い話を書きつづけられるのかな、と思う。

それでもニトリは時価総額約1兆円の大企業であり、(NECより大きい)、書こうと思えば成長を始めてからの成長を持続させるための方策も書けることはたくさんあるはずである。それをまだ会社が小さいころの失敗談を長く書いているのは似鳥氏の意思によるもので、この時期の話のほうが読者に参考になると考えていることは間違いないと思う。たいていの人は最初の3回くらいで済ませてしまうところを20日まで伸ばし(ひょっとしたら最後までかもしれない)、失敗とそこから立て直す過程を詳しく書いてくれる似鳥昭雄氏には親近感を抱く。

私の履歴書でこういう書き方をする人がもっと増えてくれるとありがたいと思う。


ノキアがアルカテル・ルーセントを買収?

2015-04-15 09:18:27 | 経済

今朝、通信インフラ企業に関する大きなニュースが入ってきた。フィンランドのノキアがフランスのアルカテル・ルーセントを買収する、という情報である。日本語のニュースでは「買収交渉に入った」という感じだが、今朝のBSのフランスのテレビ局の報道ではほとんど決まりの感じである。政府が売却したがっていて、経済界が反対しているという状況のようである。実現すれば大変なビッグニュースである。

考えてみればノキアがドイツのシーメンスを買収し、フランスのアルカテルがアメリカのルーセントを買収した時点で大きな驚きだった。しかし、2社とも業績を思うように伸ばせず、大規模買収は行わずに自力で市場拡大してきたスウェーデンのエリクソンと中国の華為が業績を伸ばしてきた。今回の買収でアメリカ・ドイツ・フランスの政府系通信インフラ企業がまとめてフィンランドのノキア傘下に入るということになる。それでもエリクソンに勝てるかどうかという状況である。通信インフラは国家機密が情報として流れるのでアメリカ政府はかなり保守的な動き方をしている。アルカテル・ルーセントはそのおかげでこれまで食いつないできた感じだが、政治力に頼ると新生ノキアも危ないと思う。

これに対して日本企業はどうか、日本ではまだNEC、富士通、日立の3社が事業をしている。日立は撤退に近いイメージでNECと富士通の2社に近いと言えるかもしれない。それにしても日本国内の小さなマーケットを争っていて、世界のダイナミックさと比べると及ぶべくもない。もはや買ってくれると企業も見つからず、そのうちひっそりと幕を引くことになるのだろうと思っている。私が実際にかかわった事業分野であるだけに何とも寂しいことである。

なぜこんなことになってしまったのか? いろいろな理由があるが世界標準が確立されてきた点が大きいと思う。通信インフラ機器は一般人の目に触れない装置でデザインは関係なく、コストパフォーマンスを決める技術力と営業力で決まると思っている。元々は日本企業もそれなりの技術力を持っていたはずだが、世界市場に出遅れ、世界市場は上記のようなグローバル企業で占められていくにつれて売り上げ規模の小さい日本企業は開発投資も小ぶりになり、次第に技術力の差が拡大してきたのだと思っている。事業を売却するといった経営判断もできなかった。標準化で世界市場が拡大したときの一つの典型的な負けパタンだと思っている。

今、その余波がIoTというインターネット活用技術によってはるかに幅広い産業界に及ぼうとしている。日本企業もIoTをどう取り込むかを勉強しているようだが、本質的問題は技術としてのIoTよりも、IoTによってグローバル化する将来の業界に合わせてビジネスモデルを変更していけるかどうかという点にあると思っている。


統一地方選挙の一票の重み

2015-04-14 10:05:15 | 社会

日曜日に統一地方選挙第1弾があった。私の住んでいる横浜市青葉区でも知事選挙、県会議員選挙、市会議員選挙があった。全体としては大きな風は吹かず現状維持だったと思う。私の居る青葉区では市会議員選挙で民主党が議席を失ったが、これは2人候補者を立てたという選挙戦術の失敗によると思う。全体に投票率が下がっているのが気になる点である。特に若者の投票率が低いので、年金を減らして若者を有利にすることを訴えて選挙戦を戦う政党などが出てきても良いのではないかと思う。

国政での一票の重みは良く議論されているが、地方選挙ではどうなのだろうか、と調べてみた。横浜市議会選挙で最も多く得票して落選したのが港北区の候補で9811票、最も少ない得票で当選したのが西区の候補で6676票なので約1.5倍の格差である。投票率などもあるので正確なことは言えないが港北区と西区では約1.5倍の格差のようである。やはり同じ市内での格差はそれほど広がらないのだと思う。

神奈川県全体になると格差はもう少し大きく、最も多い得票で落選したのが私の住む青葉区の14000票、最も少ない当選者は寒川町の6649票なので2倍強の格差である。格差是正の仕組みは比較的重みの軽い地方議会で実践して良い方法を国会が取り上げるというのが良いのではないかと思っている。

私が提案したいのは以下のような方法である。地方議会のような中選挙区制では区割りはよほど極端に差が開かない限り変えないで、議員定数を変えればよい。現在の区割りからできるだけ少ない増減数で最大格差が1.2倍以下になるような定数是正案をコンピュータで複数打ち出し、その中のどの割り方にするかはくじ引きで決めるという方法である。宝くじの当選を決めるような方法でも良いと思うが公正なくじ引きであることを担保する。国勢調査のたびにこれを行って機械的に定数を変更するようにしておけば問題は出ないのではないかと思う。ある程度小さな都市で、議会ではなく市長がこういった案を提示し、議会の承認を得る方法でとっかかりをつかむのが良いと思う。広まっていけば比較的スムースに導入されるのではないだろうか。

小選挙区制の場合には区割り自体を変えないといけないので選択肢が多く難しい。これは国政なので問題も大きい。基本的には人口の少ない選挙区を周辺の選挙区と合併させて人口バランスをとるしかないだろう。そうすれば議員定数も減るので丁度良いのではないだろうか。人口の少ない選挙区を周辺選挙区と合併させるという制約をつければ、ゼロ増XX減の基本方針で、XXの値を決めさえすればコンピュータで可能なパタンを打ち出せる。あとはくじ引きでやればよいと思う。県の境界を越えて合併させないというような条件を付けるとややこしくなるがこの条件は国政については必須ではなく、外せばよいと思う。

とりあえず、市町村議会の区割りで上に書いたようなことをやる人が出て来ないかな、と思う。



不透明感漂う次期アメリカ大統領選挙

2015-04-13 17:22:00 | 社会

来年のアメリカ大統領選挙に向けてヒラリー・クリントン氏が立候補を表明した。抜群の知名度を背景に本命視されているが、私は、次回の大統領選挙全体に不透明感というか不安感を感じている。

その原因はヒラリー・クリントン氏がこのところ急に老け込んだように感じるからである。スマホのメール問題で釈明したあたりから、クリントン氏に「老い」を感じるようになった。化粧のせいなのかもしれないが、どうもパワーが落ちてきて老人の雰囲気になってきている気がする。選挙は来年で当選すればそこから4年間の任期である。メディアでは「老けた」という声はあまり聞かれないのだが、「大丈夫かな」と思うのは私だけだろうか?

対する共和党もさえない。このところ共和党には日本の民主党のような野党根性を感じる。議会では過半数を握っているのだが、どうも話を前に進めようというよりも、民主党の足を引っ張ることに注力している感じがする。候補者も小粒な感じがする。

アメリカのパワーは落ちてきたというけれど、それでもまだ世界最大の経済大国であり、先進国でしっかりとした経済成長が見込まれているのはアメリカだけである。そのアメリカがこんな調子で、中国も、人口減少が始まり、人件費が上がって世界の工場ではなくなってきているうえに不動産バブルの後始末がある。ヨーロッパは全体的に経済がパッとしないところへ持ってきて、中近東やロシア、トルコなどの地政学的リスクの影響を受ける、という状況になると2016年の見通しは暗いことになってしまう。シリコンバレー発のインターネットを利用した様々なイノベーションによるアメリカ経済の強さは続くと思うのだが、経済は好調でも政治は不安定、ということになると、世界全体にリスクが高まるような気がしている。



良いニュース2題

2015-04-10 10:19:56 | 生活

ブログのテーマとして取り上げるのは「おかしい」と思うことが多いのだが、昨日は「良いな」と思ったニュースが2件あった。

一つは天皇陛下のパラオ訪問である。高齢であと数年すれば訪問する体力がなくなるだろうという自覚があり、天皇の意思でかなり無理をして訪問を決めた感じがする。テレビで訪問の様子がかなり詳しく報道されたが、真摯に戦没者を弔う気持ちがあふれていた。政治家の靖国神社参拝には政治的とが感じられ、気持ちよくない印象があるが、それとは性格が大きく異なっている感じで好感が持てた。おそらく国際的にも良い影響があったと思う。今上天皇に限らず、日本の皇族はノブレスオブリージェをきちんと体現している感じがする。私は特に天皇信奉者ではないが、皇室に対する私の持っているイメージは何十年もかけて次第に良くなってきている。

ところで、パラオは独立国だが、運営はうまくいっているのかと気になった。世界地図で調べるとインドネシアやオーストラリアの東側にはパラオ、ミクロネシア、パプアニューギニア、ソロモン諸島、ナウル、マーシャル諸島、バヌアツ、ツバル、フィジー、キリギス、トンガ、サモア、ニウエ、クック諸島とたくさんの国がある。いずれも人口も少なく経済力もない国である。もう少しまとまってEUのように連邦制を目指してはどうか、と思った。余計なお世話かもしれないが・・。

もう一つは子供が蹴ったサッカーボールが道路に飛び出し、避けようとしてバイクが転倒して運転手が死亡した事件に対して、最高裁の親の賠償責任を「無し」とした判決である。細かい事情を知らないが、当然の判決で、1審、2審の判事はなぜ賠償責任を認めていたのか、という感じがする。報道では、子供の行動が原因で事故などが起こった時には親の賠償責任を認めるのが通例だったというから、1審、2審の判事は前例に従っており、最高裁の判事は自らの価値観で判断したということだろう。子供が起こした事故に対してある程度親の責任があるのは事実だが、ケースバイケースできちんと判断を下した最高裁の判事には、前例を覆したという意味で勇気ある判断であり、敬意を表したい。飼い犬が道に飛び出して事故を起こしたらどうなるか、ベランダに置いていたものが強風で飛ばされ人の頭に当たったらどうなるか、いずれも持ち主に一定の責任はあるものの、ケースバイケースできちんと判断すべきだと思う。本件に関して、1審では裁判員が関わっていたと思うが、裁判員から異論は出なかったのだろうか?裁判官が結論を誘導したのではないかという点が気になる。検証しておいたほうが良い気がする。



コマツとGEの提携、ネット時代の新潮流

2015-04-08 08:22:45 | 経済

今朝の日経1面トップにコマツとGEがIoT(Internet of Things)で提携する、というニュースが流れている。これは将来産業界全体に影響を与える大きなトレンドの具体例だと思っている。

日経では先行するGEにコマツが乗ったような書き方をしているが、私はむしろ逆で、GEがコマツのビジネスモデルを真似て新機軸を打ち出したのだと思っている。コマツはKOMTRACKSという建機の稼働データをインターネットで収集し、解析して、運用やメンテサービスにつなげるネットワークを独自に通信オペレータと契約して構築し、他社を差別化して業績を伸ばしてきた。GEはこのコマツのビジネスモデルを真似て、発電所や航空機エンジンをモニタリングするサービスをIndustrial Internetとして大々的に打ち出し、有名になっている点がGEが先行したという印象を与えているのだろう。

コマツのシステムは自社利用で顧客サービスにつなげるという閉じたシステムであるのに対して、GEはインターフェイスを標準化してコアとなるソフトウェアも開示して他社を巻き込んだ流れとした点が大きく異なっている。今回の動きもコマツとGEでビッグデータを共有するとしている。GEは将来の利益の源泉は仕組みづくりよりもデータ量にあると見切っているのだろうと思うし、これは正しい認識だろうと思う。

このコマツとGEの動きの違いに日米の企業の違いを感じる。コマツはこれまでKOMTRACKSを活用することで業績を伸ばしてきたが昨今のIoTブームで競合他社でも容易に同様のサービスを提供できるようになることが見えてきて、次の一手を模索していたものだろう。しかしコマツにはGEのように大胆な発展に向けた方策は思い浮かばなかった。それは技術の核となる部分がソフトウェアにあり、コマツのソフトウェア技術は他社に勝てるようなレベルではないからだと思っている。GEのソフトウェアも同様に強くはなかったが、GEは投資をしてソフトウェア技術者をかき集め、ソフトウェア技術を短期間で強化してきた。これができるのは人材の流動性の高いアメリカだから、と言えると思う。GEのソフトウェアが本物かどうかはまだわからないが、少なくとも立ち上げに成功したことは間違いない。一方のコマツは日本企業としては先進的な動きで一定のシェアを確保できるが、次第にGEのソフトを利用する場面が多くなってくると思っている。

私が関わってきた日本の通信業界がこういった動きで存在感を示せなかったのは残念である。構想力のある人物がいればもっといろいろな動きができたと思っているが、日本の通信業界はIoTではなくM2Mに注力してきたのが間違いだった、という印象を持っている。M2MはMachine-to-Machine Communicationのことでモバイル通信でグローバル化してきたヨーロッパのオペレータの発想である。内容はIoTとよく似ているが言葉が示す通り、M2Mは通信オペレータが通信料金を稼ぐための手段、という色彩が強く、ユーザ視点が弱いために広まらなかった。IoTでユーザ企業の利益を考える、という方向に動いていればもっと存在感を出せただろうに、と思う。

この動きは産業界全体に広がっていき、日本企業は全体として地盤沈下を起こすのではないかと危惧している。特効薬は私には思いつかず、当面は強みの残る部品事業などに特化して生き残り、ソフトウェア開発力を学校教育から見直して強化していくような政策が将来の日本のために必要ではないかと思っている。



パテントトロール対策を考える

2015-04-07 09:49:47 | 経済

科学技術の進歩を特許と言う形で公開し、公開した人に独占的使用権を与える特許制度は技術進歩に多大な貢献をしてきた。アメリカは1980年代の日本からの輸出攻勢に対抗するために技術イノベーションを重視する「プロパテント政策」を取った。最近はそれが行き過ぎて歪を生じていると感じている。

パテントトロールとは自らは研究開発を行わず、どこか他の会社から特許を買って、別の会社に特許料を請求する主に法律家の集団である。メーカー間の特許交渉はお互いに相手の特許を使わせるクロスライセンスになり、弱いほうが使用料を払うという形になるのだが、トロールの場合には自分は何も製造しないので特許交渉では圧倒的に有利になる。トロールと言うのは「化け物」を意味しておりイメージが悪いと訴訟を起こされたりするので最近はNPE(Non-Practicing Entity)と呼んでいる。

最近は特許の売買や企業の買収が増えてきてこのNPE問題が急増してきている。メーカーが特許を積極的にNPEに売るような例も出てきた。標準必須特許などでこれをやられると業界全体の発展の妨げになる。特許は本来それを使って事業をする人が保有すべきはずの物なのに、この流れは特許本来の趣旨に逆行していると思う。アメリカ政府も対応策の検討に入っているらしい。

現在、特許料の算定は、特許を利用した製品の何%と言う形で算出され、その値は特許の製品に対する貢献度で決まるのが普通である。これに対して私の考えでは、裁判所が特許料を裁定する時に特許権者の遺失利益、つまり本来特許を自分が自分が独占していたら得られたはずの利益、を考慮すべきである。遺失利益と利用者が得た利益のバランスで判断するというのはどうだろう。こうするとNPEはわずかしか特許料を取れないことになる。街の発明家などもビジネスできないことになる。

私はそれでも良いのではないかと考えている。特許が価値を持つのは実際にそれを使って利用する人にとってなので、街の発明家がスマートフォンに関する発明をした時には、Appleから特許料をせしめようとして行動するよりもAppleに特許を売ることを考えるほうが自然だと思うのである。ネット上でそのような特許を売買するビジネスができても良いと思う。

企業は社員の発明を買い上げる方向に世の中は動いている。その場合の報奨金制度なども整備されてきているが、他の企業から特許を得る場合もこれと同じ枠組みで考えることができるのではないだろうか。つまり、買い上げた後でも、このような発明者に対する報奨金はあって良いと思う。しかし、訴訟を起こして儲けようとする法律家に有利な法律にしておく必要はないと思っている。



世界の歴史11「アジアの征服王朝」を読んだ

2015-04-06 08:27:06 | 生活

以前書いた「アジア征服王朝」を読み終えた。「征服王朝」とは中国から見て中国人以外の人種が中国を征服した王朝という意味で、「金」「元」がそれにあたる。「清」もそのカテゴリーのはずだがこの本では扱われていない。主題はモンゴル帝国であり、モンゴル帝国ができるまでの中国北西部の歴史を書いている。

万里の長城の外側の地域は元々遊牧民で、王朝という概念は無く、部族単位で動いていて長老が部族を仕切るという形態だった。単位が大きくまとまるようになったのは唐の時代の外交政策が大きく影響しているという。唐は中央アジアは自ら統治することはせず、税金も取らなかったが名目上「州」というような名称を置き外交官を派遣してシルクロードを確保する形をとった。これが遊牧民に「まとまって国としたほうが得だ」という認識を与え、戦いの末、大きな地域を確保する王朝ができてきたというのである。中央アジアはトルコ系、イラン系、中国系の様々な民族が入り乱れて暮らしており、それを大きくまとめたのがモンゴル帝国ということである。

文献が中国に多いせいか、全体的に中国から見たモンゴル帝国という書き方になっており、文化的に「宋」の文化をどう引き継ぎ、あるいは壊して、次の「明」につないでいったか、という書き方になっている。著者は「宋」の文化を高く評価しており、宋文化に対しては詳しい説明がある一方、肝心のモンゴル帝国に関しては極めて簡単な記載しかない。例えば全体で400ページのうち、「宋」の興亡に関しては150ページほどを割いて政治制度、文化などを書いているのに対して、ジンギスカンに関しては生まれてから死ぬまでの記載が10ページほどしかない。文化的な説明ももっぱらフビライの作った「元」の文化や制度の説明になっている。あれだけ広い領地を一代でまとめたジンギスカンに関しては殆どは「何年にどこと戦って勝って併合し、次にどこと戦って・・」という様な記載だけで終わっており、全く物足りない。「タイトルに偽りあり」と感じた。

ちなみにジンギスカンは中国から中央アジア、アラル海、カスピ海、黒海沿岸まで戦いで勝って統治し、ポーランドあたりまで攻め込んだらしい。一方中国は北半分をまとめただけで、南側は宋王朝が逃げて打ち立てた南宋が残っていた。これを倒し「元」としてまとめたのはフビライである。私が知りたかったのはジンギスカンがどうやってあれほど広い地域を統治できたのかである。ただ戦争に強いだけではなかったはずだと思っている。中央アジアには後に「ティムール帝国」ができるが、この始祖であるティムールはジンギスカンの子孫だといううわさがずっと残っていたそうである。ジンギスカンは「外から来た悪辣な征服者」ではなく、「中央アジアに出た英雄」と捉えられていたようなので、単に軍事だけではなく民政も優れていたのではないかと思っているが、ジンギスカンの民政はほとんど紹介されていない。

著者はモンゴル史の専門家だというが、資料が殆ど中国の資料のせいか、中国史の中でもモンゴル帝国という感じで全く物足らなかった。著者もモンゴル人の書いた資料の少なさを言っているが、学者の創造力の乏しさも影響しているのではないかと感じている。

「モンゴル帝国」とタイトルについている本が何冊か出ているのは知っているが、学者の書いた本なので似たような感じなのではないかと思って手を出しかねている。塩野七生氏の「ローマ人の物語」のように史実と想像力、自分の歴史観などを交えて、なぜあれほど少ないモンゴル民族があれほど戦争に強かったのか、戦争に勝った後に少ないモンゴル人で広い地域を統治できたのか、を書いた本は無いものかと思っている。