ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

東芝の経営者の動きから経営者の人選を考える

2017-03-31 09:56:05 | 経済

東芝が再三決算発表を延期したうえ、半導体も、ウェスチングハウスも切り離して身を縮めようとしている。しかし、いったいどういう将来ビジョンを描いて様々な手を打とうとしているのかは一向に見えてこない。東芝の粉飾決算(当初は不適切会計と呼んでいた)が明らかになったのは約1年半前だが、それ以来、最初は第3者委員会を抱き込んで抑え込もうとした。これはあまりうまくいかなかったがそれなりのところで収まった。しかし昨年の決算の時点でアメリカの原子力発電の大幅赤字と不正もあるらしいことで決算発表ができずに上場廃止や、債務超過の恐れも出てきて、儲け頭の半導体事業を売却することで切り抜けようとしており、昨日臨時株主総会を開いて半導体事業の売却が承認された。

東芝は問題事業も抱えているが、技術力もあって良い事業も抱えており、最初に「不適切会計」が報じられた時には私も「東芝株が下がったら買おうか」と思ったくらいだった。しかし、そう考える人は多いらしく、株価はあまり下がらなかったので買わなかった。結果として買わなくて正解だった。従業員が優秀でも経営者が駄目だと会社はうまくいかない典型例だと思っている。

これまでの東芝経営陣の対応を見ていると、「東芝という会社を残す」ことが最重要と考えている感じがある。「どうやれば業績が底を打って上昇に向かえるか?」という発想ではなく明るみに出た問題をどうやって被害最小で切り抜けるか?」ということを最重要に考えている印象である。こういうやり方だと将来の展望は開けないので会社は時間とともに体力を失っていき、とんとんリストラを継続せざるを得なくなってくるだろう。

私は会社がこのような状態になった時に一番大切なのは、従業員の意欲を高めるような将来像をどうやって作るかだと思う。そのために会社をスリム化する必要があれば思い切ってやる必要があると思うが、それは会社を存続するための当座の資金を捻出するためではなく、場合によっては会社を倒産させても、きちんと立ち直るようにすることが経営者の役割だと思っている。会社が倒産すると外部から管財人が入ってきて経営者は交代させられる。現在の東芝経営陣はそれを一番恐れているように見える。

おそらく、現在の社長は一区切りしたら辞職せざるを得ないと覚悟していると思う。しかし、東芝には役員が40人いるそうだが、そのうち35人までは現在の役職にしがみつきたいと考えているだろうと想像している。特に、現在の職を離れると次の職を見つけられないような、自分に自信のない人は、現状維持を求める。だれが次の社長になるにしても、このような殆どが抵抗勢力の中で会社を改革していかなくてはならないので、剛腕が要求される。だから下降線をたどっている会社の改革は難しい。

人間誰でも自分が一番かわいいので、自分に不利になるような決定には反対するのが当然である。これをなくすことは不可能だろう。特に、自分の今の状態が地位としてピークだと思っている人は改革に対する強力な抵抗勢力になる。そもそも誰を幹部にするかという判断をする時点で、その人にとってそこがピークではなく、さらに上を目指すような人を選択するような仕組みにしておかないと、これからの厳しい企業間競争を勝ち抜いていくのは難しいのではないかと思っている。まだ伸びると思って引き揚げたけれどピーク感が見えてきた人は思い切って降格させることが重要だと思う。


トヨタが自動運転でNTTと提携

2017-03-23 08:51:27 | 経済

今朝、歩きながらNHK-AMラジオを聞いているとトップニュースに「今日は籠池理事長の証人喚問が行われます」というのを流していた。NHKは朝の時間は30分に1回くらい5分程度のニュースを流す。この中で毎回これを繰り返す。これは今日のニュースでも何でもなく、前から決まっていたことである。新しい情報は何もないのにトップニュースとして繰り返すNHKにはジャーナリズムとしてのセンスの無さを感じる。

さて、今日の話題のトヨタとNTTの提携であるが、こちらは今朝の日経新聞の1面トップ記事である。これは経営の問題か、メディアの暴走か?

日経によると、トヨタはNTTと自動運転の技術で提携するという。中身を見ると5G無線通信システムを使った自動運転制御を共同開発するというような内容なのでNTTドコモが中心だと思われるがNTT本体も関わるそうである。私はこれは筋悪の提携だと思っている。

まず、トヨタがNTTを相手として選んだという点が問題である。トヨタはグローバル企業であるのに対して、NTTはドメスティックな企業であり視野が狭い。技術開発に関しても日本勢は自動運転の開発ではかなり出遅れている。トヨタからすれば、幅広い自動運転技術の中で、自動運転技術、それも通信部分だけ日本の法制度などに影響の強いNTTと組む、程度のつもりかもしれないが、世界戦略的にはむしろ足を引っ張られるのではないかと思う。

次に5Gシステムを使うとしている点であるが、これも筋が悪いと思う。5Gシステムというのは2020年あたりに最初の導入を目指している将来の移動通信システムであるが、これが広がるのは2025年、他の車も搭載しているとか、どこででも使えるとかいう状況になるのは2030年くらいになるのは確実だろう。今の流れからすれば5Gシステムそのものが失速する可能性もあると私は考えている。一方、自動運転の導入は2020年頃、内閣府は2025年には完全自動運転の導入を目標としている。5G無線搭載を自動運転の条件としてはとても間に合わないので、自動運転実現は無線通信は現在の4G (LTE) システムとカメラ、レーダなどを組み合わせて実現するべきである。5Gの普及を待っていては日本の自動運転導入は世界から5年も10年も遅れてしまうだろう。5Gシステムが広まれば、自動運転の事故率を減らすための有効なツールとして使えることは間違いないだろう。しかし、それは自動運転の導入を促進するものではなく、自動運転のパフォーマンスを上げるための道具として使うべきである。

今回のニュースは報道発表では無いようなので、NTTサイドからのリークに日経の記者が飛びついたものだろうと想像している。日本の時価総額1位のトヨタと、2位のNTTドコモ、3位のNTTの提携なので記者が飛びつくことは仕方がないだろうと思うが自動運転技術の現状、5Gシステムの動向を考えればたいした話ではないということは分かるはずである。日経社内にはこういうことが分かる人もいるはずなので、内部でもう少し練ってほしかったという気がしている。

今回の提携はトヨタにとってもそれほど重要な位置は占めていないと想像している。しかし、日本の自動車メーカは自動運転開発で出遅れているうえに、ホンダがGoogleと連携し、日産がマイクロソフトと連携することを発表しているのに対して、トヨタはITのジャイアントとの連携は発表せずに、ベンチャーへの出資や小さい企業の買収などを行って、自社で自動運転技術を開発する姿勢を見せている。そして、今回のような日本企業との提携のニュースが入ってくると「トヨタは大丈夫か?」と思ってしまう。


春の気分

2017-03-19 19:07:14 | 生活

すっかり春になった。今日は特に気温も高く、春の気分を満喫した。朝、散歩のために家を出て歩いて、西の方を見ると、いつもは丹沢の山が黒々と見え、その上に真っ白な富士山が頭を出しているのだが、今日はどちらも見えなかった。天気は晴れていて、改正と見え居る状態である。特に時に霧が出ているわけでもない。それでも山並みが見えないほど視界が悪いのは、「これが春霞か」と思う。

花もいろいろ咲いている。白梅はかなり散ったが、紅梅はまだ咲き誇っている。「咲き始めたのは同じような時期なのに、紅梅の方が寿命が長いのはなぜだろう?」などと思う。桃は今が満開の感じがする。白モクレンはかなり咲いて満開に近い。私の家の近くにある玉縄桜は2週間ほど前から咲き始め、今では葉も出始めているが、それでもまだ花はかなり咲いている。何となく心浮き立つような季節である。

この時期、嫌なのは花粉症である。私はスギ花粉症なので、最近は眼にゴーグルを付け、マスクをして歩いている。そうするとマスクから息が上の方に漏れてゴーグルが曇る。それも今日はあまり曇らなかった。気温が上がってきたからである。テレビなどでは花粉は「非常に多い」と報じているが、私にとっての花粉症は終盤になってきた感じである。私はヒノキの花粉に対してはアレルギーがないのでスギ花粉が終われば症状はなくなる。まだスギ花粉はあるが、症状が和らいできた感じはある。あと一週間でほぼ花粉症は終わり、本当に春を楽しめるようになるのではないかと感じている。


ピーターナヴァロの「米中もし戦わば」を読んだ

2017-03-17 18:10:52 | 生活

3月5日の記事にちょっと書いた軍事関係の本、ピーターナヴァロの「米中もし戦わば」を読み終えた。この本は20世紀終盤からの中国の急激な軍備拡張に対してアメリカがどう対応してきたか、中国の戦略はどうだったかを分析して、アメリカは今後どのような軍事戦略を取るべきかを書いたものである。軍事戦略と言っても戦争しようというわけでは無く、抑止力としての軍事力をどう持つかを中心に据えているが、本当に戦争になった時に勝てる体制でないと話にならない、というスタンスで書かれている。

文章はうまく、すらすら読めた。中国の戦略の分析に関しては、結構決めつけが多い感じはしたが「それは違うだろう」と感じた部分は無く、全て「ありそうな話だ」と思えた。中国は、今話題になっている南シナ海の軍事拠点を獲得したプロセスと同じ方法で尖閣列島にもアプローチしてきていることを知り、「将来大変だな。日本政府は耐えられるだろうか」と感じた。

中国は単に軍事行動を起こすだけでなく、メディアを利用して世論を味方にする、国際法は都合の悪いところは無視して都合の良い点をうまく利用する、といったことは書かれており、中国はあらゆる知恵を絞って、問題が起こった時にアメリカから経済封鎖されることを避けようとしている、ということは理解できた。3月5日の記事に書いたように、軍事戦略の目的は殆どの場合、経済力を強めることであり、中国経済がどうしてここまで強くなったかの分析もあるかと期待したのだがこの点に関しては物足りなかった。「この20年ほどのアメリカの対中戦略は大失敗だった」と断定していて、もっとはっきりした対応策を打たないといけない、という提言をしており、トランプ大統領の政策はかなりこの人の影響を受けている、と感じた。

私が納得できなかったのは中国の分析よりもむしろアメリカの政策に対する評価である。軍事戦略に関しては私は知識を持っていないので「そんなものかな」と受け止めたのだが、中国のWTO加盟を認めて、工場をどんどん中国に移転していったのは大失敗だと断定している点には違和感を感じている。1980年代に日本がアメリカにどんどん輸出していったあたりで、アメリカは「製造拠点としては勝負できないので、知的資産で勝負しよう」というプロパテント政策を取り、製造拠点はどんどん国外に流出する代わりに、シリコンバレーを盛り立て、そこから情報通信を中心とする新しい産業を育成してその覇者となったアメリカの政策は成功した、と私は認識している。

仮に、中国に拠点を移さない、アメリカ国内に製造拠点を残す政策をアメリカが取っていたら、中国の台頭は遅れるので、アメリカと中国の力関係という意味では中国の発展が遅れて今より良いかもしれない。その場合、日本の経済は今よりずっと良く、アメリカの経済は今よりずっと悪いだろう、と私は思っている。今、トランプ大統領はピーターナヴァロの意見を入れて製造業をアメリカの戻そうとしているように見えるが、これでアメリカ経済が良くなるとは私は思っていない。財政出動するので一時的には景気が良くなるが、それはバブルであり、本質的には非効率な行動をとるので、バブルがはじけた時には大きな痛手を負うだろうと思っている。

中国はここまで非常にうまくやってきた。それは、政策的にうまい方法を取ったというだけでなく、情報を盗むとか、国際ルールに従わないとかいった、他の国から見ると好ましからぬ行動も含めて、結果として経済力を強めることに成功し、軍備も拡張できてきたと著者は指摘しており、それには賛成である。しかし、今中国は曲がり角に来ていると思う。輸出重視から内政重視に舵を切っているがなかなかうまくいっていない印象である。このあたりの、中国経済の曲がり角をどう見ているのかの分析が、今後の中国の軍事行動を予測するうえでも不可欠だと思うのだが、それは含まれていなかった。

基本線で賛成できない部分もあるが、私にとっては新鮮な情報も多く、著者がトランプ大統領の発言や行動にかなり大きな影響を与えていることはうかがえる本だった。


気になるヨーロッパの反イスラムの動き

2017-03-12 19:46:51 | 社会

今年に入ってからの世界の政治的な動きはアメリカ、北朝鮮、韓国などに集中していた印象があるが、選挙が近づいてきてヨーロッパの動きも気になるところである。

最近オランダとトルコの間で揉めているが、オランダで反イスラムの動きが急激に高まっていて選挙の行方にも影響を与えそうだという。今回の揉め事も、トルコのイスラム系の集会が、オランダ人の反イスラム感情をあおるのではないかとしてオランダ政府がけん制したことが発端だと理解している。オランダで反イスラムの感情が高まっているのはやはりテロリストの動きが問題であると言われている。

私は以前から知りたいと思っていることに「一般のイスラム教徒はイスラム過激派をどう思っているのだろう?」という点がある。「イスラム教自体はそれほど過激な宗教ではない」とか「私たちは過激派ではない」とか言っているのをテレビなどで聞くことはあるのだが、IS、アルカイダ、ボコハラムなど次々とイスラム教を行動原理とする過激派が出てくるのは、イスラム教徒にそういった人たちを受け入れる余地があるのではないか、と感じている。

日本でいえば、オーム真理教はほとんどの日本人が敵視しているが、やくざや右翼に対してはそれほどの強い嫌悪感を感じない。少なくとも私の若いころにはやくざが映画の主人公になったりして、やくざに対して恐怖感や嫌悪感を持ちつつもある意味で「美学」を見ていた部分はあったと思う。少なくとも中近東のイスラム教徒にはこのような感情があるのではないか、それがイスラム過激派が無くならない原因ではないかと私は感じている。但し、これはニュースなどから見聞きすることによる私の想像である。インドネシアやマレーシアなど東南アジアのイスラム教徒は違うかもしれないと思っている。

日本でも、森園学園の籠池理事長の教育方針などは、私には「おかしい」と思えるし、むしろ嫌悪感を感じるのだが、少なからぬ日本人が賛同しているようである。このように国民に少なからず賛同者がいるような考えは、反対者がいてもなかなか消えはしないだろうと思う。普通のイスラム教徒が、イスラム過激派を本心でどう見ているのか、知りたいと思っている。


韓国とマレーシアの司法について思う

2017-03-10 20:21:45 | 社会

今日、韓国の最高裁の判断が出てパククネ大統領の弾劾が決定された。これで警察が本格的に元大統領を捜査することになるという。しかし、私には朴大統領がそれほど大きな憲法違反をしたようには思えない。友人に意見を聞いたというのだが、それがそれほど重大なことだろうか? 友人に便宜を図ったというが裏口入学のような香菜会話のように感じる。どうも韓国では警察、検察、裁判所すべてが世論を気にして判断しているように感じる。本件だけでなく、産経新聞の記者の扱い、盗まれた仏像の扱いなど、世論に押されているケースが結構あるように感じている。司法がしっかりしていない国ではいつ犯罪人に仕立てられるかわからない感じがあり、住みたくないと感じる。

その一方で金正男氏の暗殺事件を扱っているマレーシアの司法はしっかりしていると感じる。マレーシア警察は今まで殺されたのが誰かについて明言を避けてきたが、今日やっと殺されたのが金正男氏であるという発表をした。結論を急がずじっくりとデータを集めて一つ一つ結論を出していく感じで、捜査の進め方に信頼がおけるものを感じる。発表も公表できる部分とできない部分をきちんと分けている感じがする。同時に、北朝鮮政府の様々なゆさぶりには毅然とした対応をとっている。こちらは司法というより行政の範疇かもしれないが、本件に関するマレーシア政府の扱い方には、「背筋がピンと伸びた」姿勢を感じ、好ましいと思っている。

一般的には司法の信頼性は文明の進展度と相関があるように思うが、文明という意味ではマレーシアよりも韓国の方が進んでいるだろう。しかし、司法の公平性、透明性に関してはマレーシアの方がはっきり上だと感じる。マレーシアの司法は日本より上ではないか、日本でこのような国際問題に絡む事件が起きたらこんなにきちんと対応できるだろうか、とまで思う。

こういった観点でアジアで一番しっかりしているのは多分シンガポールだろう。マレーシアはシンガポールと近いので学んでいるのかもしれないな、と思う。


キンドル本を読むことが増えてきた

2017-03-05 15:48:47 | 生活

私は4年ほど前に手術を受けた時にキンドルを買って何冊かの本を読んだのだが、その後はキンドル本も買うこともなく、読む本と言えば定期購読している雑誌は学会誌、あるいはブックオフで買う北方謙三の小説などだった。ところが昨年あたりからまたキンドル本を買い始めた。Googleの本やIoTの本などの技術分野の本は本屋で探すよりアマゾンで買うほうがはるかに便利で、価格も若干安い。そして今は軍事戦略のキンドル本を読んでいる。これは新聞に公告が出ていたのを見て読んでみたくなったものである。

今は終わってしまったのだが日曜日の午後に「日高義樹のワシントンレポート」という番組があってジャーナリストの日高氏がアメリカの軍事関係者にインタビューをしている番組があり、私は時々見ていた。その時の印象として、軍事関係者は世の中のをきれいごとではなく現実的な眼で見ている、必ずしもそのそのまま信じないにしても参考になる部分は多い、と感じていた。

今読んでいる本は中国の軍事戦略について中心的に描かれているが、技術的にも遅れていて、資金もそれほどなかった中国がどのようにして軍事力を増強してきたが、軍事力で最も重要なのは抑止力であり、そのためには相手に恐れられるような軍事力を少ない予算でどう持つかが重要である。そのためには確実に相手を倒せるレベルではなくても、相手に甚大なダメージを与えられる手段を持ち、それを防止する手段を持つためには非現実的なコストがかかるようにすることである。そのための一例として「地下の万里の長城」があるそうである。中国が大陸間弾道弾を持っていることは良く知られている。しかし、その拠点をつぶされてしまえば役に立たなくなる。従って発射場所を移動可能なようにして、どこから撃ってくるか分からなくするために5000km に及ぶ地下道を建設して、その中を高速で移動して予測がつかない場所から発射できるようにする、という話である。

これだけでなく、様々な軍備の戦略が描かれている。まだ最初のほうしか読んでいないのだが、なかなか面白いと感じている。軍事力を増強する目的は経済的優位性を確立することである。実際に戦争をしようとは思っていなくても経済的リスクを軽減させるための軍事関係者の考え方は参考になる面が多いと感じている。