ウィトラのつぶやき

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囲碁の井山裕太7冠への国民栄誉賞はまだ早い

2017-12-14 10:25:25 | 囲碁

将棋の羽生善治氏が竜王戦挑戦手合いで勝って竜王位につき、これで全てのタイトルで永世竜王となることが決まり、政府は囲碁で全てのタイトルを独占している井山裕太7冠(羽生氏は現時点では2冠)と合わせて、国民栄誉賞を与えることを検討している、と発表した。囲碁ファンとして大変うれしいことだが、私は井山氏の国民栄誉賞は「まだ早い」と考えている。

羽生氏の国民栄誉賞に対しては諸手をあげて賛成である。永世のタイトルは棋戦によって条件が異なっており、名人は通算5期、竜王は連続5期または通算7期などとなっている。要するに一時的に調子が良いからタイトルを取ったということではなく、歴史に残るタイトル保持者として認定された、ということである。羽生氏は数々のタイトルを獲得しているが、年齢的にピークを過ぎており(47歳)、今回の竜王位獲得も本人も「ラストチャンスかもしれない」と言っていた戦いを勝ち取り、永世竜王となったことで全棋戦で永世タイトルを獲得した。大きな区切りだと思う。

一方、井山7冠のほうもすごい。昨年春に、全タイトルを制覇し、7冠保持者となったのが、秋の名人戦で高尾氏に敗れ6冠に後退した。そして1年間、他の棋戦で全ての挑戦者を退け、名人戦でリーグ戦を勝ち抜き再び挑戦者に名乗りを上げて高尾名人を破り7冠に復帰した。その後、王座戦と天元戦でも挑戦者を退けている。あの羽生氏でさえ、一度は7冠を制覇したものの一度7冠が崩れてからは、再び7冠制覇は実現できていない。ある意味で羽生氏よりもすごいということができる。

それにも拘らず、私が「井山氏に国民栄誉賞はまだ早い」と思う理由は、井山氏はまだ成長途中だからである。井山氏はまだ28歳で、本人も「まだ強くなれる」と思って修行をしている最中だと思う。井山氏は日本国内では無敵だが、中国、韓国には負け越している相手がたくさんいる。テニスの錦織圭のような立場である。そして本人がまだ上を目指している最中に、人生で一度しか与えない国民栄誉賞を与えようというのは本人の向上心をそぐような意味もあるのではないかと思う。

野球のイチローが国民栄誉賞を与えられようとしたときに「まだまだ業績を伸ばすつもりなので、賞はいただきたくない。私が現役を引退するときに国民栄誉賞にふさわしいと思ったらその時考えてほしい」と言って辞退した。私はこのイチローの態度が非常にすがすがしいと感じており、「井山氏もこのような態度を取ってくれると良いな」と思っている。もっとも、受けたからと言って井山氏を非難するつもりは毛頭ない。本来的には与える側が考えるべきことだと思う。

 


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