世の中は日産のゴーン会長の逮捕の話題で持ちきりである。フランスでは日産の陰謀説が根強くあるそうだが、私もこの逮捕には不自然なものを感じている。それは逮捕容疑が有価証券報告書の虚偽記載だという点である。このような違反は本来は企業である日産の責任になるべきで、個人の逮捕なら脱税が適当だろうと思っている。ゴーン氏が収入を少ないようにごまかしたというのはおそらく事実だと思うが、罰則の与え方に不透明なものを感じている。
今日の本題は、ゴーン氏の話ではなく、安倍総理が「消費税増税対策としてキャッシュレスの購入に5%の還元を検討するように指示した」という話である。来年秋の増税は2%なので5%の還元は明らかにやりすぎに見える。批判的に言う人も少なくない。しかし、私はこれは有力な手法だと考える。その理由は来年の景気後退がかなり明らかになってきたからである。
9月の自民党総裁選の前に私は「来年は景気後退局面に入るので経済運営が難しく、安倍総理は評判を落とす」と書いた。その時には「来年は景気後退する」と言っていた人はまだ一部だったが、現在はその意見が主流になっており、ちょっと不安要因があると株価が大きく下げるという状況になってきている。「この状況で消費税増税は無理だ」という人も増えている。今回の安倍総理の発言はこれに対して二つの狙いを示したものだと私は解釈している。
①消費増税の再々延期はしない
消費税を上げるというのは政権を取った時の約束であり、これまでに2度延期している。安倍総理は「リーマンショック級の経済後退が来ない限り延期はしない」と言っている。現状はまだ企業の利益は増加しているが、株価は調整局面に入っている。この状況だと一気に景気が暴落するようなことは起こりそうにない。私も更なる延期は好ましくないと考えている。
②来年景気後退が来る可能性は高い
その一方で来年の9月頃には景気後退局面に入っている可能性は高い。これに対して政府は何らかの手を打つ必要がある。消費税の増税を延期する以上の対策を打つ必要があるだろう。
安倍総理は以上のようなことを考えて5%還元の指示を出したと思う。景気に力強さが感じられない日本経済で、景気後退局面に増税すれば大きな影響が出ることが予想される。政府は公共事業などで対策を考える必要があるだろう。その対策のうちで、キャッシュレス決済を推し進めるために政府が補助金を付けるというのは有力な政策になると思う。現金の取り扱いには細心の注意が必要で大きなコストがかかっているが、これをIT技術で扱うようにすれば業務効率ができることは明らかである。キャッシュレス決済は中国では大きく普及しているが、それが別の技術に代わることはあっても現金決済に戻ることは無いだろう。
日本でも昔は給与支払いを現金で行っていたが今は銀行振り込みになった。当初は「ありがたみが薄れる」などと色々言われたが、今から現金払いに戻ることはないだろう。それと同じで使い始めて便利さを認識すれば、キャッシュレス決済も元に戻ることは無いだろうと思う。政府の経済対策はこのようなことに使うべきだと思う。