ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

私の2018年

2018-12-28 10:24:15 | 生活

今日が仕事納めの方が多いことだろう。ウィトラも今日で今年の仕事は最後にしようと思っている。今回は私個人にとっての子に1年を振り返ってみようと思う。

2018年は私にとっては良くない年だった。最大の残念な出来事は自分が中心的に動いて取りまとめた自営無線のブロードバンド化の話が進まなかった点である。報告書としては内容のある提言を取りまとめたと思っているが総務省は動かなかった。実質的には無視されたと思っている。その理由は総務省内の権限だけでは動かせない、他の省庁とのかかわりのある部分がかなりあり、そういった点に対して総務省は動こうとしなかったということだと理解している。内閣府は後押ししてくれたがそれでも総務省は動かなかった。

日本の通信行政は方向性を見失っている。10年前くらいまでは通信事業者が業界の中心にいて、総務省は通信事業者の意見を聞きながら様々な手を打つことで、トレンドから外れることは殆どなかった。それがインターネットの普及によって通信事業者の存在感は下がってきて、米国で言えばGoogleのような新興企業が新機軸を打ち出すようになってきた。日本の通信行政はこれには対応できず、世界で大きな流れになってから動くような後手後手の対応なってきている。

ウィトラに関しても今年は業績が良くなかった。顧客が減少し、一時は「合同会社」を閉めようかと思ったが、思い直してまだしばらく続けることにした。技術的観点では私の専門である無線通信には飽和感が強く、面白い話が少なくなっているので、最近はブロックチェーンやソフトウェアのアジャイル開発のような、自分の専門ではないがこれから影響の大きそうな分野を勉強した。専門家とは言い難いが、いっぱしの見識を語るレベルにまではなったと思っている。

健康面では全般的に調子が良かった。病院へ行ったのは虫歯の治療と、秋の「丹毒」くらいだった。丹毒も軽症で済んだ。健康面では「食事の初めに野菜を食べること」に注意している。特に昼食を自分で作って野菜をたくさん食べるようにしているのが健康に寄与していると思っている。更に午前中に自宅からウィトラのオフィスまで2時間ほど歩いて通っているのが体に良いと思っている。体力は少しずつ低下しているので注意を払いつつこれからも生活していきたい。

皆様も、健康に留意しつつ、良い年の年末年始をお迎えください。


平成30年を振り返る

2018-12-25 10:17:17 | 社会

2018年も残り僅かになってきた。この1年間の世界を振り返ってみようと思う。

この1年間、世界はかなり悪くなったと思う。1年の間に世界は随分ギスギスしてきた。その原因がトランプ政権にあることを私は疑っていない。私が最近の動向で気になっているのは「ポピュリズム」という言葉がほとんど使われなくなったことである。この言葉には非現実的な政策を掲げて人気取りをする政治家に対する非難の意味合いが含まれている。ポピュリズムは少なくなったから言われなくなったのかというと私はそうは思っていない。むしろ、それに慣れてしまって珍しくなくなってきたので使われなくなったと思っており、それが世界にとって危険だと思っている。

ポピュリズムは失敗が明らかになってきている。最初の動きは英国のBrexitで、これが国民投票で決まった時に「独立記念日だ!」などと言っていた連中はEUとの具体的な手続き交渉からは逃げ出し、比較的穏健なEU反対派のメイ氏が首相となって何とか交渉をまとめるとまたそれに反対している。英国は政治的にも経済的にも存在感を下げており、失敗は明らかなのでもう一度国民投票をやれば今度はEU離脱は決まらないだろうと思う。

米国のトランプ氏のポピュリズムも失敗が明らかになってきつつある。トランプ氏の場合はポピュリズムの前に利己主義であり、自分の権益を守ることが最も重要である。ユーラシアグループのイアン・ブレマー氏がテレビ東京のインタビューで「トランプ氏には政治的信条が無いので自分の立場が危うくなれば何でもやる。北朝鮮やロシアと手を組むということもあり得て、それが最大のリスクだ」と語っていたが、私もその危機感を共有している。

今回のタイトルを西暦ではなく「平成30年」としたのは天皇誕生日の天皇の記者会見を見て感じるところがあったからである。現在の天皇が皇太子から天皇になったのは56歳の時だが、今回のインタビューは自分が天皇として語るのは最後かもしれないという思いを込めて、皇太子の頃を含めて自らの人生を振り返ったもので、人間性も感じられる素晴らしい記者会見だった。象徴天皇の意味付け、国民への思い、世界との関係、歴史観、家族への思い、それぞれに味わい深い内容だったが、私にとって最も印象的だったのは「日本に来た外国人を社会の一員として温かく受け入れてほしい」と語った点である。この言葉の影響は小さくない感じがしている。

私自身が「平成」を振り返ると、天皇の言葉ではほとんど触れられなかった「経済停滞」が平成30年間で最も強く印象付けられている。丁度日本の不動産バブルがはじけた時代と平成の初期が重なったため、この現象になっているのだが、バブル崩壊で経済がダメージを受け、そこから復活するときに発展の中心が大量生産というハードウェア技術から特許やイノベーション、ソフトウェアと言った広義のソフトウェアに移行する時代と重なったために、平成の時代には日本では一度も景気の良さを実感できなかった、と思っている。「日本経済の弱さはソフトウェア開発力の弱さに起因している」ということはこのブログで何度か書いているので、今日は少し違った観点から見てみたい。

ソフトウェア事業のハードウェア事業都の最大の違いは製造原価がほぼ「ゼロ」であるという点である。つまり、ある分野で優れたソフトウェアを開発すれば似たようなものは簡単に淘汰されてしまうということである。営業活動に経費はかかるので普及初期には複数のソフトが共存するが、普及が進むと淘汰されやすいということである。勝つためには「世界一」を確立することが求められる。同時にイノベーションも必要である。このような事業では一部の人のアイデアよりも幅広く良いアイデアを求めて、良さそうなものを次々と改善していくような体制の構築が必要である。最初は小さな組織で始めたアイデアでも事業が拡大するにつれてどんどん幅広いアイデアを取り入れるような体制にしていかなくてはならない。そのための仕組みがオープンイノベーションなのだが日本人はこれが苦手である。参加者が増えてくると気の合わない人も対立する人も増えてきてマネージメントが難しくなる。そこで自分の命令を聴く小さなグループで閉じて仕事をしようとする傾向が強いので、現代のソフトウェア中心のビジネスの時代になかなか日本企業が存在感を出せないのだと思っている。この日本人の傾向を変えるには教育から変えていかないといけないのではないかと思っている。


米中経済戦争はこれから始まる

2018-12-12 18:00:58 | 社会

世の中では米中経済戦争などと言っているが、私はこれまではアメリカが一方的に吠え立てて、中国は受け流しているとみていた。しかし、今回のHuaweiに対する仕打ちに対しては中国が本格的に反撃の構えに入ったと感じている。Huawei副会長に対する容疑もあいまいで、私はアメリカが理不尽に仕掛けたと感じている。

以前も書いたが、私はこれまで中国政府は「トランプ政権が続いてほしい」と思って動いていたと思う。もちろん関税をかけるなどの中国にとってマイナスの行動をしているのだが、それは対処可能で、むしろ、日本やヨーロッパの心が米国から離れていくことにメリットを感じていたと受け止めている。しかし、今回のHuaweiに対する仕打ちは限度を超えたと見えて本格的に反撃の構えを見せた、というのが私の印象である。

その一つはカナダを脅したことであり、具体的にはカナダ人を拘束したことである。これも理由は不明であるが、何らかの根拠をこじつけるのだろう。もう一つは中国でiPhoneの不買運動が始まったことである。こういった動きはこれまでも時々あったのだが中国政府が抑えてきた。それを今回は解禁した。今後のアメリカの出方で、この動きはどんどんエスカレートするだろう。

現実的問題として、本格的経済戦争になった時に、中国として一番困るのはアメリカの技術を使えなくなることだろう。その中心がITのチップセットである。例えばQualcommのチップセット、CISCOのルータ、Intelのチップセット、WindowsのOSなどである。これらについて差し止められても中国で対応できる体制の中心になるのがHuaweiである。そのHuaweiに対して攻撃を加えたことで、中国側は反撃に出始めた。これは世界経済に対する非常に大きなダメージになるだろう。

現在、私が一番気になっているのは台湾のTSMCの動きである。TSMCの作る最新のチップセットはIntelを超えており、米国企業もこぞってTSMCを使っている。TSMCからすればアメリカも中国も上顧客なのだが、両方から「相手側に売るな」と圧力を受けた場合にどうするか、私は迷った挙句、結局中国側につくのではないかと思っている。そうなると最新のiPhoneも作れなくなる。

韓国のSamsungがどちらにつくかも非常に微妙なところである。これは私には分からないが現在の韓国の文政権が中国寄りなことを考えても結局は米国側につくような気がしている。ただし韓国は必至で両方に売ろうとし続けるだろうと思う。中国では半導体製造企業を必死で立ち上げているがまだTSMCやSamsungに及ぶような状態ではない。

こういったTSMCやSamsungへの働きかけが既に水面下で動いていると思うが、そのような動きは中国のほうがうまく、仮にSamsungとTSMCが中国に取り込まれると、アメリカ経済への打撃は計り知れないと私は思っている。

日本企業へも両方から圧力がかかると思うが(既に通信関係では動き始めた)、日本への圧力は韓国ほど強くはないと思う。日本企業の場合は半導体製造装置が重要だが、これを「中国に売るな」と圧力を掛けられると中国も困るが、その企業の業績も倒産に近いほど困ることになるだろうと思う。


北京出張で感じたこと

2018-12-07 10:07:01 | 生活

月曜日から水曜日まで仕事で中国の北京に出張してきた。中国に行ったのは6年ぶりくらいだったが、大きく変化していて驚いたのでそれを整理して書いてみようと思う。

・QRコード決済が殆ど 
最近、中国に行った人は殆ど皆、中国のAlipayとWechat PayというQRコード決済がどこででも使われていることに驚いた、と言っているが私も全く同感である。店舗だけでなく屋台のようなところでもスマホで決済する。レストランのメニューもQRコードで読み取る。そうすると単なるメニューではなくその店の売れ筋ランキングのようなものが付いてくる。地下鉄もQRコードで乗れる。私は現金で買い物をしたのだが、「現金でもいい?」と聞かないといけないような雰囲気だった。私の会った複数の人は「今年に入ってから現金で買い物をしたことはない」と言っていた。但し、バスはパスモのようなNFCカードなので、チャージ機に現金を入れてチャージしないといけない。タクシーは中国版UBERである滴々で呼ぶと何分後に来ると表示が出て大体の料金も教えてくれる。現金が皆無という訳では無いが、バスに乗らない人は本当に現金不要という気がした。

・WeChatは便利
中国の人はほとんど全員WeChatを使っている。これは日本で言うとLINEに相当しており、私はLINEを使用していないので比較は困難なのだが、便利そうだと思った。特に、自分の話した言葉が録音されていて、「あの時何と言ったかな?」と思ったときに聞き返すことができる。音声認識で文章に変換してみることもできる。翻訳もできるそうである。100%正確ではないが大体の内容は確認できるそうである。他の人とのやり取りを転送することもできるが、この場合は写真(PDF)のような形式に変換されており、アドレスのような個人情報は行かないようになっている。

・北京の拡大は凄い
今回の訪問先は北京の中関村ソフトウェアパークという産業地域だった。中関村というと北京大学、清華大学のあたりを連想するのだがこのソフトウェアパークは5環路の外側で清華大学からは10Kmほど北にある。前回私が行ったときには殆ど林か畑という状態だったのだが、今は多くの先進企業(代表はBaidu)が集まっている。これは驚きだった。

・皆、不動産バブルを警戒している
これも複数の人に聞いたのだが皆、不動産バブルを警戒している。株は上がったり下がったりしているのだが、住宅はしばらく上がらない期間はあるものの10年前と比べると5倍程度になっているそうである。中国では国内株式投資にも制約があり、国外の動産・不動産に投資するのはかなり強い制約がある。その一方で貧富の差は拡大しているので、富裕層の金は不動産に向かっているという。これは危険な兆候だと感じた。

全体としては日本よりも勢いがあり、東京と北京を比べてもお互いに「自分が勝る」分野があり、総合的に見て現在では東京がやや上だが、10年もすると北京が上に来るように感じた。