ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

琴奨菊の大関昇進と今後

2011-09-29 07:59:29 | 生活

関脇の琴奨菊が大関に昇進した。秋場所は12勝3敗、ここ3場所で33勝という堂々たる成績である。魁皇が引退して日本人大関が居なくなったところだったので相撲関係者は大喜びである。

横綱白鳳は琴奨菊と稀勢の里という二人の人気力士に敗れたものの13勝2敗で優勝し、20回目の優勝を飾った。相撲協会としては理想的な経過だったと思う。早くも横綱を目指して頑張れ、というような声があちこちから出ている。

しかし、私は横綱を目指すよりも、まず大関としてまともな無成績、コンスタントに10勝以上上げるようなことが重要だろうと思う。大関となると本人の意識も、相手の意識も変わってくる。特に将来性のある若手力士などは、力をつけるために立ち合いで変化するな、というようなことを良く言われる。これが相手が横綱、大関だと許される。確率30%でも成功すれば勝てる、といった奇策を相手は使ってくる。

琴奨菊はがぶり寄り以外にはあまり技を持っていない力士である。組んで受け止め、寄って行くという相撲の王道であるが、それができないような体制になると苦しい。それで横綱になるには圧倒的なパワーが必要なのだが、それは感じない。師匠の琴桜はやはりあまり技を持っていなかったが、横綱昇進の時には圧倒的なパワーが感じられた。琴奨菊は千秋楽の把瑠都戦で見せたように力負けしている。

正直、白鳳、把瑠都には分が悪いだろう。互角と思われる相手も4-5人いる。奇策で序盤で2-3番落とすと負け越しの可能性もあると思う。まずは10勝を目指せ、というのがしっかりした大関を育てるために言い方だと私は思っている。


東工大標準化討論会を実施

2011-09-28 11:13:29 | 東工大

昨日は、私が主催して東工大の教室を使って「東工大標準化討論会」を実施した。テーマは情報通信関係の標準化で個別の標準ではなく標準化活動をどう捉えるか、といった視点である。

産業界、大学、独立行政法人、政府関係など幅広く約125名の方に集まっていただいた。パネリストに論客がそろっていて、聴衆にも問題意識の高い人が多く、私がやりたいと思ってイメージしていたパネル討論会ができたと思う。質疑を含めて大学関係者は少なく、企業関係者が中心であり、大学が教育以外でどのような点で標準化に貢献できるかについてはそれほどアイデアは出なかったが、このような会を主催して意見交換をすることはできるし、それなりに有意義であることは確信できた。

元々一度限りのつもりは無く、何度か開催していくつもりであるが、今後どういう方向の話をして関係者の意識合わせをするか、今回のパネルを通じて知り合った人たちも交えながら、考えていきたいと思う。

こういうイベントを開催するには裏方の仕事が欠かせない。私は現在の立場では学生の面倒を見ているわけでもなく、使える人数が限られているのだが、私が関係している研究室の方に助けていただいて、最小限の裏方でこなせただろうと思っている。裏方の仕事を手伝っていただいた方にはあらためてお礼を言いたい。

懇親会も行った。予算はわずかであるが会話は盛り上がっていたと思う。大学というポジションを持っていないと「ウィトラ」の立場ではこのようなイベントを開催するのは困難であり、大学の存在感を改めて感じた。


危うさを感じさせる枝野経済産業大臣

2011-09-27 08:19:16 | 社会

枝野経済産業大臣が「東電の給与は高すぎる」と発言している。一国民としてはうなずけるものだが所轄大臣の発言としては問題だと思う。

東京電力は言うまでもなく民間の会社である。民間の会社の給与体系に口出しをするのは大株主でもない限りするべきではないしまたできないことである。友人と飲みに行って「東電の給料は高すぎるよなー」というのとは全く次元の違う、実力行使を背景にした発言であるだけに問題だと思う。

政府としては東電の原発補償で大幅に関わって救済することができるので政府は東電の極めて強いステークホルダーであり、発言する権限があると思っているから出た言葉だろう。しかし、給与体系に口出しするのは明らかにマイクロマネージメントで、それを言うなら東電を政府の会社にしてから言うべきことだろう。政府がいうならば、会社全体に対して「売り上げがこれだけの会社で給与総額が売り上げのX%になっている。これは他の業界、あるいは他の国と比較して大きすぎる。」というような言い方をして総額規制を行い、中身をどういう給与体系にするかは東電の判断にゆだねるべきである。

この発言をきっかけに経産省の東電への介入が強まり、それが電力業界全体に広まっていく。これが菅政権時代に作成した東電救済のシナリオの真の狙いであり、枝野大臣はまんまと乗せられたという感じがしている。

前の鉢路大臣がどういう人だったかは知らないが枝野大臣に関してはとても適材適所とは言えないと思う。弁護士上がりなので経済の仕組み、会社の仕組みというものを理解していない、と感じる。正義感はあり本人は正しいことを言ったつもりで、確かに賛成する人もいるのだろうが、会社の仕組みを脅かす方向に行くと思う。総理候補になった前原氏にも同様の印象を持っている。

枝野氏自身、頭の良い人で、私利私欲から出た発言ではなく正義感から出た発言だとは思うが、総理、あるいは民主党の長老あたりが「あの発言は問題だよ」と注意してあげないと次第に問題を大きくしてきそうな気がしている。


100万人への避難勧告は妥当か?

2011-09-21 08:09:12 | 東工大

台風15号が来ていて名古屋市では100万人に避難指示、勧告が出た。これを聞いて私は「日本はどうなるのだろう」と改めて感じた。

日本に台風は毎年のように来ている。しかし100万人以上の人に避難勧告を出した。避難勧告というのは避難指示とは違って注意を促しただけである。しかし、100万人もの人がいったいどこへ避難するのだろうか。そもそも本当に100万人もが避難しなければいけないほど危険な状態なのか、私は大いに疑っている。

この勧告を出したのは名古屋市だが、本当に防災情報を持って体制ができているのかを大いに疑問に思った。守山区は実際に水浸しになったそうだが、その周辺の実際は影響がどのように出るか分からないところでも避難勧告が出たのだろうと思う。そこには責任逃れのために勧告を出しておいたほうが自分にとって安全だという発想を感じる。原発事故の時の「リスクはゼロではない」という発言と同じ臭いである。

ちょうど今朝の日経に菅直人前首相の福島原発の回想インタビューが載っていて、似たような傾向を感じる。私は菅氏に関しては自分の行動に関しては全て正当化するために発言していると思っているので信用していない。しかし共感できた部分はある。「東京電力にまともに話ができる人は二人しかいなかった。勝俣会長と、吉田所長である」という部分である。私もテレビを見ていてそう感じていた。他の人は皆責任逃れが最初に頭にきている、というのはあたっている感じがする。ここでまともなのは二人というのが「何人のうちの二人だろうか」、と思う。総理と接触する可能性のあった人から考えて、おそらく50人から100人のうちの二人だろうと思う。

随分少ない比率である。日本人は不意の事故が起こったような時にまともに動ける人はそんなに少ないのだろうか、と思う。私が想像するに、吉田所長より下の人では、まともな人の割合はぐっと増えるのではないかと思う。つまりそういう骨のある人は出世せずに、保身を考える人が出世しているのではないか、ということである。これが最近の日本の産業の弱さにつながっていると思っている。

私が勤めていた時にも、部長(部下50人程度)くらいまでの人事は実に良くできていたと思うのだが、上級管理職の人事には首をかしげることが少なからずあった。この上級人事の仕組みを企業から公務員まで見直すことが日本の活力維持にとって急務だと思っている。


働く人に求められるもの

2011-09-20 08:13:11 | 社会

今読んでいるThe Economistの特集記事に「The Future of Jobs」というのがある。Jobsはアップルのジョブズではなく「仕事」のことである。リーマンショック以降、世界経済の不安定な状態が続いていて、失業率は高止まりしている。アメリカは一時失業率が改善したように見えたが、実は仕事を持っている人の総数は増えておらず、仕事を探す人が減った、つまり職業安定所に通う人が減ったということだったので、しばらくしたらまた失業率は増加してきたともことである。

ヨーロッパでも失業率は10%程度で、特に悪いスペインでは失業率20%、若者の失業率は40%だそうである。良くこれで暴動が起きないものだと思う。この特集のポイントは、これは景気が悪いから起こったことではなく社会の変化の本質が、景気が悪くなったので顕在化したのだ、という点にある。

具体的に言うと、先進国のホワイトカラーの需要がどんどん下がっている。特にホワイトカラーで、定型的業務をやっている人はどんどん仕事を失っている、という話である。アメリカではこの種の失業には2パタンあって、一つはコンピュータに置き換えられるもの、もう一つはインドにアウトソースされるものである。コンピュータに置き換えることはできなくても、オンラインで仕事をする「Labor as a Service」が進行しているとしている。

確かにこういった傾向はあるだろう。これは英語圏であるアメリカやイギリスでまず進行してそれから次第に他の国に波及していくのだろう。クラウドの進展と同様にもはや止められない流れだろうと思う。日本では日本語の壁があるので、浸透には無借り長い時間がかかると思われる。言い換えると、日本の企業はそれだけコスト高の状態が続くことであり、アメリカ企業との競争では苦しい状態が続くだろうと思われる。

それでも、私が会社に入社した時と、今では職場環境は大きく変化している。それは「職場の花」と呼ばれた高卒や短大卒の女子の事務職が激減している点である。多くの会社は採用を止めて、機械化したり、必要な場合には派遣の人を入れたりしている。これが男子を含めたホワイトカラーに波及して、20年も経てば企業からホワイトカラーの人数は激減するのではないかと思う。

アメリカ政府は既にこのことを認識している。その表れが以前紹介したFCCのNational Broadband Planにある、「ブロードバンドは今は使って便利なツールだが10年後には使えない人は著しく不利になる社会インフラになる」というくだりである。そう考えて、国民全員がブロードバンドを使いこなせるようにする取り組みを始めている。日本は派遣禁止を政府が言い出したりして、失業者を出さないように企業に強制するような方向に向かおうとしている。これでは世界との差は開く一方だろう。

私は大学という教育機関にいて、これからの人材は何を身につけるべきかを考えようと思っている。少なくとも、将来コンピュータに置き換えられるようなスキルを学生に身につけさせるのではなく、最後までコンピュータ化困難なスキルが重要なのだろうと思っている。標準化のディベート能力を高めさせようと思っているのはその一環だが、これから学生と話しあいながら、「今後40年必要とされるのはどんな能力か」を見極めて、その能力を高めさせるように努めていきたいと思っている。日本の教育界はそういった視点での改革が殆どできていないと感じている。


大学の出張精算で感じたこと

2011-09-16 17:48:54 | 東工大

私も大学の仕事で出張をするようになってきた。先週は韓国、今週は北海道に来ている。

出張精算の手続きで大学は企業とかなり異なることを知った。企業の場合には出張手続きは殆ど企業がして本人はチケットをもらうだけなのだが大学では本人が手続きをして金額を事務に請求する。これは私がコンサルティングをしていた時にはそういうやり方だったので違和感はない。違和感を覚えたのは大学は飛行機の搭乗券を提出することを求める点である。

企業の場合には、コンサルティングの時代を含めて搭乗券を求められることは無かった。いくらかかったかという、チケットの購入証明を求められただけである。なぜ搭乗券を求めるのかというと、本当に出張したことを証明するためであることは明らかである。企業の場合には出張は会社のためにするので出張報告なり出張先から出張元に連絡するなどして出張結果がどうであったかを報告するのが常識である。従って、手続きだけして実際は出張しないというようなことはあり得ないし、仮にキャンセルになればすくにそのことが分かるので搭乗券は必要ないのだろう。

一方大学では、特に教授はどこに出張したかということを報告すべき相手はいないし、報告義務はない。事務局は出張内容には興味を持っていないし、学部長なども個々の教授がどういう出張をしたかということには興味は無い。しかし、出張に伴い経費は支払うので出張したことの証明が必要になるのである。

しかし、これは良く考えるとおかしなシステムである。経費を支払う人が成果を期待していない。だから行動を追及するというシステムに思える。考えてみると大学教授は中小企業の社長のようなもので極めて独立性が高い。それは研究という性格上ある程度必要なのかもしれないと思う。それならば大学は出張費用というようなものを一切支払わず、教授の采配に任すべきだろう。教授の成果を評価して予算をつける、それをどう使うかは完全に教授任せ、というのが本来あるべきシステムのように思う。

そうは言っても教授も公務員なので一定の縛りで経費を受けるべきというのも現実としては理解できる。その場合には実際に出張に行ったかどうかではなく、出張先で何をしたかを他の人が把握できるようなシステムを作るべきだろう。学科単位か何かで他の教授がどういうとことに出張したか、そこでどういうことをしてきたかを把握するようにすれば、出張して観光だけしてくるような人は自然と分かるだろう。

私が入社したことには会社にはタイムカードというのがあって何時に会社に来て何時に会社を出たかを記録に残していた。しかしそれは意味がなく、会社にいて何をしたかが重要なので、今タイムカードのシステムは単純作業の人を除いて殆ど無くなっていると思う。大学教授はもっとも創造性が求められる職業である。行動ではなく結果で評価するシステムを作り上げるのは国にとって不可欠なことだと思う。

 


サッポロも意外に暑い

2011-09-16 07:48:14 | 生活

今、学会で札幌に来ている。今週は私が長年出ていた3GPPが福岡であり、そちらに出たい気持ちもあったのだが、先に札幌に学会のほうに出るのを決めてしまったので反対方向に来ている。

札幌は涼しいと思って背広を着てきたのだが結構暑く、歩いていると汗ばんでくる。駅前のホテルに泊まって北大で行われている学会に参加しているのだが、北大構内に入ってからが遠く、歩いて30分くらいかかる。東京よりはもちろん涼しいが、上着は不要という感じである。

電子情報通信学会のソサエティ大会という学会で私の参加していた国内の学会としては最大級だと思っていたが、使っている部屋は大学全体から見るとごくわずかで、北大の規模の大きさが伺われる。

札幌には私自身1年ほど住んでいたので懐かしさを感じる。私の従姉妹が住んでいて夕食を共にして現状をいろいろ話し合った。今日から大通公園で北海道特産市だそうで、のぞいてみたいと思っている。

学会に出るのは10年以上ぶりである。私は標準化会議に出るようになって以来、そちらのほうが面白く、学会はすっかりご無沙汰していた。最先端の研究発表を聞くよりも、教授たちがたくさん集まっているような、動向を議論するようなセッションに参加している。やはりそれぞれの人が独自の見識を持って話しており、「こういう意見交換の場は悪くないな」と改めて感じた。

私は「国際標準化と技術イノベーション」時限研究会のパネル討論会でパネリストとして出た。プログラムを見る限り統一性の無いパネルのように感じていたが、司会の浅谷教授の仕切りがうまく、結構議論は盛り上がった。私はこういう研究会があることを知ったのも始めてだったが、阪大にも標準化を授業としているショットしたグループがあることを知ったり、技術標準ではなくスキル標準(ソフトウェア技術者の)の話を聞いたりして結構有益だった。

終了後個懇親会で来年の副委員長を引き受けることになった。始めて参加した会で唐突な感じはしたが現在の役員だ度と話した感じで違和感は無かった。タイトルも現在の私の講座のタイトルと近いので、うまくアクティビティを高めていけるように思う。


出口の見えないギリシャ経済の立て直し

2011-09-15 08:33:26 | 経済

最近また、ギリシャ政府の経済的破綻がクローズアップされてきている。一時、オランダの首相だったと思うが、ギリシャをユーロから切り離すことを提言していたが、最近フランスとドイツはユーロ堅持を言っている。

ギリシャ政府も財政破綻を何とかするために、支出の切り詰めや公務員給与の切り下げを行い、ギリシャでは大規模なデモやストが行われた。最近のイタリアが似たような状況である。しかし、ギリシャの財政は好転していない。経済が縮小して税収が減って財政赤字は改善しないという状況である。私は一時的にギリシャユーロというようなものを導入して通貨切り下げを行うしかないのではないかと思っている。

こうするとギリシャ通貨は価値が下がり、ギリシャの品物の価値は下がる。ギリシャから見れば輸出品は値下がりして輸入品は値上がりすることでバランスが取れてくる。国民は物価が上がるという経済的に苦しい状態に陥るがいずれ輸出が増えて改善してくる。

収入が下がるのと物価が上がるのは同じように思うが大きな違いがある。それは借金の価値が上がるかどうかである。通貨切り下げならば借金の価値も下がる。しかし収入減少では借金の価値は変わらない。相対的に借金返済の重みが増すために生活改善につながらないのだと私は思っている。

これまで、借金を8割返せばよいとか、7割返せばよいとか言った、返済を減額するという話は聞いたことがない。借金は全額返済するか、破産して踏み倒すかで、どちらかが大きな痛みを伴うことになる。通貨切り下げは借金の価値を部分的に下げる効果がありこれが有力だと思っている。

一旦ユーロから切り離して、経済が安定してくればその時点での通貨変換比率、1対1.5とかでギリシャユーロを再びユーロに組み込む、これが解決策ではないかと思っている。

日本でも夕張市のような財政破綻した都市ではこういうやり方を考えても良いのではないかと思う。


ドコモ・富士通、サムスンとスマホ向け半導体開発

2011-09-13 08:21:28 | 経済

今朝の日経新聞の記事のタイトルである。

携帯電話用の無線部分のチップを共同開発する会社を作るという話で、ドコモ、富士通、サムスンに加えてNECとパナソニックも加わるそうである。この分野は会社員時代に私が深くかかわっていた分野なので、見過ごせない気持ちがある。しかし、既に勝負はついたと私は思っている。今から巻き返せるとは思えない。

これから技術はLTEに移行していくので新技術が必要になるのは分かっているがチップとしては相当長い期間、WCDMA、cdma2000、GSMなどと共存する必要があるだろう。それでこのメンバーで勝てるチップを作れるとは思えない。しかもLTEのチップは既にかなり出回っている。記事にはQualcommのシェアが高まっていて独占になるのを気にしているとあるが、既にQualcomm以外に、ST-Ericssonとルネサスエレクトロニクスは少なくともチップを出すことが明らかで、更にドコモは台湾のメディアテックにも技術供与している。独占を避ける手は他にもあるだろうと思われる。

最近、Qualcommのシェアが高まっていて、特にスマートフォンではシェアが高いのは事実であるが、それは無線技術の幅広さに加えて、Snapdragonという、メインの高機能CPU、更にグラフィック処理をするGPUでも極めて高い性能を出すものを同社が開発していて、統合チップセットを出しているからである。このような統合チップセットを出せるほどの力を新会社が持つとすればそれはSamsung中心に動くしかないだろう。しかし、日本勢とSamsungがうまくやっていけるかどうかも疑問である。

こういうことをやりたいという気持ちは理解できるが、勝ち目は殆ど見えないはずである。経営判断としては問題だと思う。


アメリカ、特許先願主義を可決

2011-09-12 08:06:12 | 経済

アメリカ議会が特許先願主義を含む特許の包括的改正案を可決した。これまで日本を含めてアメリカ以外のすべての先進国は「先願主義」を採用していたのに対して、アメリカだけは「先発明主義」を採用していた。「先願主義」とは最初に特許申請をした者が発明者とみなされて特許権を受けるという考え方である。これに対して「先発明主義」とは最初にアイデアを思いついた人が発明者とみなされて特許権を得る、という考え方である。一見、「先発明主義」が合理的なようだが、アイデアを思いついたということを証明するために、あるいは審査するために多くのエネルギーが費やされていた。

先願主義ではアイデアを思いついても出願しなかったということはその重要性に気付いていなかったということであり、あとで重要になったからと言っても手遅れであるという考え方である。アメリカは今のスマートフォンの動向を見てもわかるように特許訴訟の多い国であるが、更に特許に対する基本的考え方が違っているために、多くの摩擦を他の国と引き起こしていた。先発明主義では証明できる形で記録を残しておけばいつでも特許化できるために、アイデアがありながら出願しない、そして広く産業界で使われるようになってから出願する、ということが可能で産業界に大きな影響を及ぼす。このような特許を「サブマリン特許」と呼んで特許検索しても出れ来ないので実業界では大きなリスクとなっていた。これが無くなることは好ましいことである。

1980年代、ジャパン・アズ・ナンバーワンなどと言われて日本の産業成長が著しかった頃、アメリカは製造業では日本だけでなく韓国、中国、インドと続くアジア勢には将来的にもかなわないと判断して、知的財産で勝負する方針を固めた。その結果として特許重視政策が続いていて、シリコンバレーなどでベンチャーが次々と生まれ発展していったのも、知的財産を重視する国の政策とあっているので安定したスポンサーが生まれたからだと私は考えている。この辺りが「モノづくり重視」の日本と若干姿勢が違っていたと思っている。

しかし、この政策はパテントトロールとか言って特許を買い集めて裁判を起こして金にする集団が横行したり、最近のスマートフォンの動向に見られるように過度の特許重視につながり、特許自体が産業発展を阻害するような側面が見えてきた。折しもアップルやグーグルといった新しい産業をけん引する会社がアメリカから出てきたために、アメリカ政府は特許政策を全体的に見直したのだと想像している。

IBMは以前からこの傾向を指摘していて、今回の改正を歓迎しているので、今回の改正は単に「先発明主義」を「先願主義」に変えただけでなく特許訴訟が減少していくような知的財産の在り方に関する大きな変革につながっていくものだろうと想像している。