ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

AppleがPartnership on AI to Benefit People and Societyに参加

2017-01-31 16:24:55 | 東工大

最近、Amazon、Facebook、Google、IBM、Microsoft、が共同で立ち上げたPartnership on AI to Benefit People and SocietyにAppleが参加するとの発表があった。この団体はその名が示すように、AIが社会に対して脅威ではなく役立つようにするにはどういう点に気をつけなければならないかを議論する団体で昨年の9月に立ち上げられている。トランプ大統領に関する殺伐としたニュースが繰り返されるアメリカで、清涼剤のような印象を受ける。

言うまでもないがAIは多くの人の仕事を奪う可能性がある上に人間がAIに命令される時代が来ることも容易に想像できる。それを考えて社会的に警戒感が出ていることも事実である。能力的にはAIのほうが人間を超えたとしても、「人間がAIをコントロールする最後の判断を抑えるにはどうするか?」は考えておかなくてはならない。アシモフの「ロボット3原則」のような単純なものでは間に合わないだろう。

AIのほうが明らかに優れた結果を出せるのに、能力の劣る人間の判断を優先することは、競争社会では負けにつながってしまう。ルールを決めたとしても破る人が必ず出てくるだろう。しかし、利益最優先で動くと人間味のない判断になり、人間が圧迫される可能性が高い。これは極めて難しい問題であるが、世界で最も技術力が高いと思われる企業が集まって、こうした問題を議論し、抑制を効かせつつ新技術を広めていくのは重要なことだと思う。企業だけならば、「一般人には分からないように、利益最優先にしよう」というような話になることも考えられるが、この団体は学者(AI研究者)だけでなく、倫理研究家、ユーザなども入れて議論するとのことなのでそれなりにまともな結論に落ち着くことが期待できると思う。

最近、トランプ氏の言動に対して「あの人はビジネスマンだから・・・」というようなことを池上彰氏がテレビなどで盛んに言っているが、普通のビジネスマンはトランプ氏のような行動はしない。ビジネスマンに対する冒涜だと私は思っている。池上氏の中では「ビジネスマンは利益だけを求めるもの」政治家は「国民の幸福を求めるもの」と定義しているような印象だが、実態は逆の場合も少なからずある。今回の大手IT企業の動きなども明らかにそうで、政治家よりもビジネスマンのほうがまともな社会判断ができている。言うなら「トランプ氏は2流のビジネスマンだから・・・」にしてほしいものだと思っている。


トランプ氏は正直なだけ?

2017-01-27 17:23:55 | 社会

前回の私の投稿に対して、近江商人型は理想で実態は皆ゼロサム型だ。他の人はそれを隠して近江商人型に見せていただけだ。というようなコメントをいただいた。私は通常はコメントにはコメント欄で返すのだが、長くなりそうなので新しい投稿として整理しようと思う。

トランプ氏が大統領に就任してから1週間が経過し、色々なコメントが出ているが、殆どはトランプ氏の行動原理がディールで問題を解決しようとするゼロサム型であることは認めていると思う。その上で、他の人はどうなのかを論じてみたい。

確かに「三方良し」は理想主義的で現実はそんなきれいごとではないだろうという感じはある。しかし、私は歴代の大統領が本心はゼロサムで「相手を出し抜こう」と思って行動していたとは全く思わない。本心で思っていなければ必ずそれは言葉の端端に出て見透かされると思う。「三方良し」は建前、「自分だけ良し」が本音ではなく、両方が本音だと思っている。具体例として私が設立時から関与した3GPPという世界の技術標準を作る団体の議論を振り返ってみる。

3GPPは1999年にはじめて移動通信の世界的技術標準を作るために結成された団体である。多くの通信オペレータとメーカーが参加している。オペレータは地域性が強いがメーカーはお互いにライバルである。相手のシェアを取るかとられるか、ということを常に意識しながら議論している。それでも「相手からどうやってシェアを奪うか」というゼロサム的な競争原理ではなく、「移動通信産業全体を発展させよう」という「三方良し」的な行動原理を標榜していた。もちろん競争もしているわけだから、自分の会社が一番大事であるから利害が合わない場合もあり、その場合は戦う。しかし、参加企業は基本的に「三方良し」的な行動原理で行動していたと思う。中にはトランプ氏のような行動をとる企業や個人もいたがそのような人には周りの人が集まらず、意見は通らない。3GPPにおいては「三方良し」は間違いなく機能していたと思う。

結果として、移動通信市場は拡大したが、日本企業は世界でシェアを落とした。しかしそれは標準化の議論に負けたからではなく、別の経営戦略的要因が大きかったと私は思っている。

トランプ氏は中国との貿易でアメリカが赤字だと文句を言っている。しかしこれはむしろ歴代のアメリカ大統領をはじめアメリカ企業が求めたことである。中国人がアメリカ人の30%給料で80%の仕事をしてくれるからどんどんアメリカ企業が中国に工場を作る。結果としてアメリカ人の失業者が増えた、というのが過去の経緯だろう。それはアメリカ企業の大きな利益につながった。それでは中国は損をしたのか? 中国人はそれまでアメリカ人の10%の収入だったのが30%に増えたので、中国も得をしているのである。損をしたのは中国人の3倍の給料をもらいながら同レベルの仕事しかしていなかったアメリカ人労働者である。私は歴代のアメリカの大統領が、発展途上国に損をさせようと思って行動したとは全く思っていない。

日本には建前と本音という言葉があり、建前は嘘で、本音は本心のような言い方をする。特に日本のメディアは「トランプ氏の狙いは何なのか?」「小池都知事の狙いは何なのか?」と建前(公式発言)を軽く見て本音を探ろうとする。私はこの態度が大嫌いである。本音を探るのではなく、本来どうするべきかを探るのがメディアのやるべきことだと思っている。大きな組織では必ず上の顔色を窺い、気に入られようとする人が出てくる。「三方良し」を目指せ、と言っても、自分の会社だけの利益を考えようとする人はかなりの数になる。トップが「自分だけ良し」を目指せと指示すれば、その組織全体が「嫌な奴」になると思っている。

そうはいっても、トランプ氏も単に我欲を出しているだけではなく計算はしているのではないかと思っている。つまり、中国人の給与が上がってきて、中国で作るメリットが薄れてきている。中国に出て行った工場をアメリカに戻したほうが良いという機運が出てきている状況なので、アメリカに工場を戻すことが現実味を帯びている点を計算してと私は思っているし、経済界もそう評価していると思っている。しかし、それは脅しをかけて自分に有利にしようとしても良いことにはならない。

このブログに何度か書いたように私は「ゼロサムで稼いだ金には税率を高くするべきだ」という考えを持っている。相手を損させて儲けるのは抑圧すべき行動で、相手に喜んでもらって儲けるのが奨励すべき行動だと思っている。

 


トランプ新大統領の就任演説を聞いて

2017-01-21 09:51:25 | 社会

話題のトランプ氏がアメリカ合衆国の大統領に就任し、就任演説を行った。私はハイライト部分をニュースで見ただけだが、感じたところがあるので書いておこうと思う。明日になれば新聞に全文が掲載され、多くの人がコメントすることは分かっているのだが、他の人の意見を一切聞かない状態で、私の感じたところを書き留め、私と同じ受け止め方をする識者がいるかどうかを楽しみに見守りたいと思う。

今回感じたことは、トランプ氏の価値観は「ゼロサム社会」だ、ということである。つまり儲かる人が居ればその分だけ損をする人が居る、というのが基本的な考え方にあり、自分が所属するアメリカ合衆国、あるいは自分自身とその支持者を儲かるようにしよう、というのが彼の政策になるということである。これは近江商人の「三方得あり」という関係者全員が儲かるようにしようという思想と対極をなす考え方である。歴代のアメリカ大統領は近江商人型、中国やロシアはトランプ型だと私は考えている。

彼が「アメリカを偉大にする」というのは「他の国を痛めつける」、ということと強くリンクしていると思う。自分が儲けようとすると相手は損をするので交渉は基本的にはうまくいかない。そこを妥当な線に落とし込むのが交渉力だと考えていると感じた。日本がアメリカと貿易交渉をするときに相手の価値観が近江商人型からゼロサム型に変わったことを理解して交渉に臨まなくてはいけないと思う。

内政でも同様である。トランプ氏は「国民に権力を取り戻す」とか「国民のために働く」とか言って、「国民」という言葉を何度も出しているがここで言う国民は合衆国国民全体をさしていないと思う。①トランプ氏自身ととの家族、②自分に直接的利益をもたらす関係者、③トランプ支持者、までが彼の視野にある国民であり、反対派は国民の範疇に入っていないと思う。だから戦闘的なものの言い方になっていると理解した。国民は③の人たちを指しており、この人たちを満足させることが目的になると思う。

今後、減税や財政出動を行うだろうが、従来の大統領のように全体を考えた政策を打つのではなく、一部の自分の支持者に対して明確なメリットが感じられるような財政の使い方を目指すと思われる。そして「トランプを支持したほうが得だ」と思う人が増えて、トランプ支持者が増えることが狙いではないかと推測している。当然、議会との摩擦は大きくなるだろう。

このやり方は基本的には失敗するはずである。人間は1%の収入増は殆ど感じないが、1%の収入源には強く反応する。損のほうに敏感なので、ゼロサムの行動原理では、満足する人は不満を漏らす人に比べてかなり少ないはずであり、現在のトランプ支持者の40%のアメリカ国民の内、本当に良くなったと感じるのは10%程度に留まるはずだと私は思っている。期待外れになる30%の人たちが不満の声を上げるときがトランプ政権の終わりになる時だが、それは1年以内には起こりそうにないと感じている。


将棋ソフト不正利用疑惑、「ごめん」で済む話ではない

2017-01-18 13:59:11 | 囲碁

日本将棋連盟が将棋ソフトを不正に使った疑いがあるとして、三浦九段を3か月ほど出場停止にした。三浦九段は「濡れ衣だ」と主張して、将棋連盟は第3者委員会を立ち上げた。最近結果が出て、結論は「シロ」だった。疑惑を主張した渡辺竜王は謝罪のコメントを出し、谷川将棋連盟会長は辞任を表明した。将棋連盟がもし、これで済ませるつもりなら社会常識を大きく欠いた動きだと思う。

三浦九段は竜王戦の挑戦者に決まっていた。三浦九段は出場停止の決定のおかげで挑戦権をはく奪され、替わりに丸山九段が挑戦した。竜王戦の賞金額は4320万円でタイトル戦中最大である。三浦九段が挑戦していたら1/2の確率でタイトルを取る可能性があり、仮にタイトルを取ったとすると1/2の確率で翌年防衛する可能性がある。更に翌年・・・と加算していくと期待賞金額は1年分の賞金である4320万円になる。これに加えて他の棋戦にも出られなかったので、対局料だけで5000万円程度の損失を与えている。更に、「悪人」のイメージを与えたブランド価値を加算したくらいの賠償金を払うべきであると考える。

谷川会長は辞任するにしてもこの処理をしてから辞任するべきだったと思う。谷川会長は一時無敵であった将棋の強さに加えて、人格者で知られており、それだから連盟の会長に推挙されていたのだと思うが、一連の「ソフトカンニング問題」に対する将棋連盟の対応はお粗末以外の何物でもない。やはり、棋士としての能力と、連盟という組織を運営する能力は全く異なったものだと考えるべきだろう。

囲碁の日本棋院のトップは理事長と呼ばれているが、棋士が勤めることもあるが、財界などからの人がトップを務めることのほうが多い。現在の理事長も棋士ではない。やはり経営とプレーヤーは分けて考えるべきだと思うので囲碁界のほうが健全な体制になっていると思う。

大相撲も、大相撲協会の役員は全て力士で占められているので将棋界と同じ問題があると思っている。相撲界で八百長疑惑などの問題が出た時の対応がしっくりしないのも、横綱として実績はあったかもしれないが、組織運営に関しては素人の人が運営しているからだと思う。他の日本の伝統芸能も同じような問題を抱えていると想像する。これを機会に体制を再検討するべきだと思う。


どんど焼き

2017-01-16 09:50:29 | 生活

昨日の日曜日、近くの琴平神社で行われるどんど焼きに行ってきた。昨年初めて行って、「良いな」と思ったので今年も行った。

どんど焼きは役目を終えたお札や松飾を直径2メートル、高さ3メートルくらいの大きな円錐形の大きなやぐらに組んで焼き上げる。午後3時点火なのだが、私はテレビで雪の中を走っている京都女子駅伝を見てから神社に向かったので着いたときには3時15分くらいだった。

既に炎は大きく燃え上がり、時々竹筒が「バン」という大きな音を立てて弾けるような状態だった。3時から3時半までは、抜刀術の演武が行われ、様々な剣術の型が演じられる。演武が終わるまでは危ないので見物客が日に近寄らないように止めているが、演武が終わることには竹もはぜることは無くなり火の回りに近寄れる。それでも近づきすぎると、暑くてたまらない。一部の参加者には団子が配られ、それを長さ2メートルくらいの竹串の先に刺して火に近づけて焼く。

私は今年は行くのが遅かったので団子はもらえなかったのだが、皆と一緒に火の回りに近づいた。火は熾火になっているがそれでも顔がほてるほどの熱気である。この煙にあたると健康になるなどの言い伝えがあるらしいが、昨日のような寒い日でも体は温まり、家に帰る20分ほどの歩きの間も暖かさは残った。寒かったので火の温かさが一層印象的だった。

 


2017年を迎えて

2017-01-06 17:19:20 | 社会

あけましておめでとうございます。

激動が予想される2017年は連日穏やかな好転の下で平穏に始まった。しかし私は2017年は世界に大きな変動があり、日本にもその影響が及ぶだろうと思っている。

最大の問題は政治問題である。1年間のうちにどこかの国の政府が関わる国際紛争が起こるだろうと思っている。その時に、国連が機能しないことが明らかになる。それは世界全体に不安感をもたらし、世界政治全体の不安定要素となると考えている。紛争が年末まで起きなければ、変動は来年になる可能性が高い。

多くはトランプ氏の閉鎖的経済政策を問題だと言っている。トランプ氏は既に個別に工場移転に対して攻撃するなどをしているが、このような動きで全体を動かすことはできない。法律を作ったりして関税を高めるなどは簡単にはいかないだろう。トランプ氏の閉鎖的経済政策はマイナスだと思うが、その影響が出るのは年内ではなく来年以降だろう。その一方で財政の大盤振る舞いをするので、むしろ年内はアメリカ経済ではプラスの面が多いと思っている。しかしそれはバブルなのでいずれ弾けることを肝に銘じておかなければならない。

私はアメリカのリスクは人種差別などで大規模デモが起こり国内政治が不安定になることだと思っている。イデオロギー的理由で起こる大規模デモなどはいつ起こるか分からないというリスクはある。大統領選挙でトランプ氏に投票した人達も、貧富の差は詰まるどころかむしろ広がることにいずれ気が付くだろうが、トランプ氏の経済政策のメッキがはがれるのは年内ではないだろうと思っている。

私個人に関していうと、昨年生活パタンに大きな変化があったので、今年はこのパタンを継続しようと考えており大きな変化は考えていない。昨年強化し始めた囲碁も今年も継続的にやろうと思っている。

囲碁に関しては今年に入って大きな出来事があった。世界のネット碁で謎の棋士が出てきて、世界の一流棋士に連戦連勝しているのである。現在、日本の囲碁界では井山裕太氏が7大タイトルの内の6個を抑えているダントツの棋士であるが、世界では井山氏は10指に入らない。中国や韓国には彼より強い人がたくさんいるのだが、その人たちが全くかなわない打ち手が現れた。既に世界のトップ棋士を相手に20連捷以上している。井山氏も戦っているが簡単に負けた。まるで漫画の「ヒカルの碁」の謎の棋士「サイ」である。昨日、Googleが実はあれはアルファ碁だ、と明かした。

囲碁の世界では、トップ棋士同士で戦って20連勝など考えられない。明らかに実力が違う、というべきだろう。昨年3月に韓国のイ・セドル氏がアルファ碁に1勝4敗で皆に「負けた」と言われたが、この調子でいくと、イ・セドル氏が人間で唯一アルファ碁に1勝した人、ということになりそうである。私は何局か棋譜を見たがそれほど圧倒されるという感じはない。昨年のイ・セドル氏との対局で見せた「人間は打たないような手」もほとんど見られない。しかし、形勢判断が実にしっかりしていて優勢とみると全く無理をしないで勝ち切ってしまう。形勢判断の正確さが人間と大きく違うという印象である。「勝ちに行く」というより「負けにくい」打ち方をするので連勝が続いている感じである。このアルファ碁と世界トップの人間との対局はとても参考になる。ぜひ続けてほしいものだと思っている。