ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

初めての本格的業務

2009-07-30 10:03:40 | 昔話
入社してからの仕事のことについて今回は書こうと思う。

入社時には素人だった私も次第に通信の技術を理解してきて、与えられた初めての本格的業務がインテルサットの研究プロジェクトだった。入社して3年目くらいだったと思う。

インテルサットは国際的な衛星通信の機関でアメリカのワシントンに本部がある。当時は通信方式がアナログからデジタルに変化している時期で、この研究プロジェクトは既に打ち上げている通信衛星を使って、できるだけ多くの情報を運ぶことのできる通信方式を開発することだった。

私のいたグループでこの研究プロジェクトを受けようということになり先輩と一緒に提案書の作成の仕事にかかった。その一環として以前述べた通信シミュレータの開発があり、これが私自身のとって大変良い勉強にもなった。

幸いにして研究プロジェクトを受注することができ、現在のシステムの問題点を明らかにして改善方法を提案し、最後は試作機を作って納入する、というところまでいった。試作機を作るには多くの時間とお金がかかり、これは実際に製品を開発している事業部に依頼したが、試作に至るまでの段階の方式検討や報告書の作成は私が中心になってやることになった。確か年間数千万円のプロジェクトだったと思うが、自分の仕事が会社の役に立っているという実感を持てた、という意味でも自分にとって大きな自信になったし、営業部、事業部など研究所の外の人との接触もできてきて、自分が一人前のなるには大きなステップだったと思う。

当時の通信衛星は大変高価なものであり、その利用効率を20%も上げることができれば大変な価値があるといわれていた。そこでさまざまな方法を駆使するのだが、高価なこのであるだけに、コストをそれほど意識せずに性能改善を目指せばよかったので研究としてはやりやすい分野だった。

当時国際通信では衛星通信に対抗する技術は海底ケーブルだった。当時の海底ケーブルは銅線でできており、これは敷設費用も高く、伝送速度は遅く、維持費は高いということで衛星通信が有力視されており、実際に通信衛星も次々と打ち上げられていたのだが、光ファイバーが発明されて、海底ケーブルのコストパフォーマンスが10000倍ほど上がり、衛星通信の効率を20%ほどあげるのではとても太刀打ちできなくなった。

衛星通信のほうは技術はかなり成熟しており、効率を2倍に上げる方式も極めて難しい(原理的に無理ではないか)というような状況だったので、国際通信は次第に海底光ケーブルに置き換わっていき、私の提案した方式も実用化されることはなかった。

研究者としてこのまま衛星通信をやっていてよいのか、と悩み始めた時期にも当たる

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