今から、体制を作って考え始める会社は多分勝ち組にはなれず、衰退していくだろう。資本力にある会社は買収が欠かせない。その理由はこの分野ではブランドの影響が非常に大きいからである。
今日のテーマは、iPadではなくグーグルの影響拡大である。それはグーグルが電話サービス「Google Voice」をアメリカで既に始めているということ、そしてそれに続いて「VP8という新しい画像コーデックを無償で公開する」と発表した点である。それほど騒がれていないが知る人ぞ知るという感じである。
画像、特に動画は情報量が多く、いかにして画質を劣化させないで情報量を圧縮するか、というコーデックの技術が極めて重要である。無線で動画を流すようになると、特にその圧縮技術が重要になる。これまではMPEGという団体で策定した標準が主流で、モバイル用に開発されたH.264という方式が主流と見られていた。
MPEGというのは一社だけではなく複数の会社が集まってできている標準化団体で、別にMPEG-LAという特許管理団体を作って、過去に特許訴訟なども行われている。使う側の業界はH.264に対してMPEG-LAが何を言い出すかとびくびくしていた。
そこへGoogleの今回のVP8の発表である。こちらは無償であることを宣言しているので、業界は歓迎しており、半導体メーカーなど多くの会社の賛同を集めている。おそらくこれがデファクトスタンダードになるだろうと私は思っている。
これはインターネットをますます発展させると同時に、大きなインパクトを産業界に与える。多くの会社で抱えていた画像コーデックの研究者は失職するだろう。電話も含めてインターネットに移行すれば、NTTやドコモなどの通信事業者はただ伝送路を提供するだけになり、売り上げは下がるだろう。これまで不況に強いといわれていた通信事業者もリストラを余儀なくされるだろう。
日本の情報通信産業の規模はここ数年横ばいである。しかし今後は無料のサービスが増えて下がっていくことだろう。情報通信のつける付加価値は上がっているにもかかわらず、必然的に産業規模は下がっていく。情報通信をやっている会社は保有技術を利用して出版などの他の事業分野に進出していけばよいのだが割り切れない思いがある。