イギリスの雑誌、The Economistに良い教師を評価したハーバード大学とコロンビア大学の教授たちの研究結果が出ていた。小学校高学年から中学生くらいの子供たちの教師である。その結果によると、良い教師に恵まれた子供の生涯収入は悪い教師に比べて1億円以上の開きがあるという。
一般に、教師の質の影響よりも家庭の質が良く言われる。つまり豊かな家庭の子供は貧しい家庭の子供よりも勉強についても有利で、生涯収入も高いという話しである。この影響を排除するために彼らは都市部の公立の小中学校の生徒を大規模に評価した。「良い」の基準は試験の成績がその教師の指導化にあったときにどのくらい上がったかである。
結果は学校間格差よりも学校内格差、つまり教師の個人的資質の差のほうがずっと大きいということだった。
また彼らは、子供たちの追跡調査をしている。良い教師に教わった子供は良い上級学校へ行く確率が高く、就職も収入の良い食に着く可能性が高い。まだ、生涯収入を判定できるほど調査をしてはいないが良い教師グループに教わった生徒と悪い教師グループに教わった生徒では生涯収入が1億円以上開く見込みだという。
以上は平均値の話で、子供の中には質の悪い生徒もいる。そういう生徒は普通のレベルに上がることが多いがそれには非常に長い時間がかかるということである。普通以上の生徒が大きく伸びるということだろう。
The Economistは教師の社会に与えるインパクトはこれほどに大きいのだから評価をきちんとして、良い教師は給料を上げ(ボーナスではだめだと言っている)、悪い教師はクビにすべきだと結んでいる。
極めて重要な指摘だと思う。教師の質は皆が感じている。特に小学校は一人で殆ど教えるので影響は大きい。しかし定量的に評価した資料は殆ど見かけない。まずは、こういった調査を行うべきだろう。不思議なのは日教組などの教師の側が評価を拒む点である。共産主義だからだろうか。評価をきちんとして質の高い教師を増やしていくようにすれば教師の社会的な地位も上がってくると思うのだが。今の日本では学校は子供を預かるところで、勉強するのは塾、というようなイメージがある。これを改革するためにも、教師の待遇にきちんと差をつけることが良い教師を増やすことになると思う。ただ、試験の成績で評価するのではなく、上から口出しをしないで任せることによって成功しているフィンランドの例もあるので、「どうやれば良い教師が増えるか」についてはまだ研究が必要だろう。