ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

良い教師の価値は計り知れない

2013-10-26 16:57:22 | 社会

イギリスの雑誌、The Economistに良い教師を評価したハーバード大学とコロンビア大学の教授たちの研究結果が出ていた。小学校高学年から中学生くらいの子供たちの教師である。その結果によると、良い教師に恵まれた子供の生涯収入は悪い教師に比べて1億円以上の開きがあるという。

一般に、教師の質の影響よりも家庭の質が良く言われる。つまり豊かな家庭の子供は貧しい家庭の子供よりも勉強についても有利で、生涯収入も高いという話しである。この影響を排除するために彼らは都市部の公立の小中学校の生徒を大規模に評価した。「良い」の基準は試験の成績がその教師の指導化にあったときにどのくらい上がったかである。

結果は学校間格差よりも学校内格差、つまり教師の個人的資質の差のほうがずっと大きいということだった。

また彼らは、子供たちの追跡調査をしている。良い教師に教わった子供は良い上級学校へ行く確率が高く、就職も収入の良い食に着く可能性が高い。まだ、生涯収入を判定できるほど調査をしてはいないが良い教師グループに教わった生徒と悪い教師グループに教わった生徒では生涯収入が1億円以上開く見込みだという。

以上は平均値の話で、子供の中には質の悪い生徒もいる。そういう生徒は普通のレベルに上がることが多いがそれには非常に長い時間がかかるということである。普通以上の生徒が大きく伸びるということだろう。

The Economistは教師の社会に与えるインパクトはこれほどに大きいのだから評価をきちんとして、良い教師は給料を上げ(ボーナスではだめだと言っている)、悪い教師はクビにすべきだと結んでいる。

極めて重要な指摘だと思う。教師の質は皆が感じている。特に小学校は一人で殆ど教えるので影響は大きい。しかし定量的に評価した資料は殆ど見かけない。まずは、こういった調査を行うべきだろう。不思議なのは日教組などの教師の側が評価を拒む点である。共産主義だからだろうか。評価をきちんとして質の高い教師を増やしていくようにすれば教師の社会的な地位も上がってくると思うのだが。今の日本では学校は子供を預かるところで、勉強するのは塾、というようなイメージがある。これを改革するためにも、教師の待遇にきちんと差をつけることが良い教師を増やすことになると思う。ただ、試験の成績で評価するのではなく、上から口出しをしないで任せることによって成功しているフィンランドの例もあるので、「どうやれば良い教師が増えるか」についてはまだ研究が必要だろう。


川の下を走る地下鉄

2013-10-25 09:14:20 | 生活

今、大阪に来ている。学会で発表するために昨夜の新幹線で来て、チサンホテル本町というところに泊まった。大阪の中心のビジネス街で船場、心斎橋などという昔懐かしい地名がある。着いたのは夜の11時頃だったので通りの建物を見ただけであるが、東京の丸の内と雰囲気が似ていると思った。

学会の会場は大阪大学の中之島センターというところで、大阪駅のある梅田の近く、中之島公園に会った医学部の跡地である。天気が良ければ本町から歩いていける距離だが、台風が来ていて雨が降っているのでできるだけ濡れないようにと、地下鉄で来た。中之島はその名の通り堂島川と土佐堀川にはさまれた中州である。

京阪電鉄の中之島線というのがあるので難波橋駅(なにわばし)から乗ったのだが、乗り換えの時に駅を見過ごしてうろうろしてしまった。北浜駅で乗り換えて中之島線に乗るのだが駅構内には出て250mとあったのですぐだと思い歩いたのだが見つからない。なにわ橋というのはあったのでこの近くのはずだと思っていたのだが見つからないので近くの人に聞くと「橋の上の川の中に駅があります」という説明だった。その橋を渡ってきたのだが気がつかなかった。橋の途中に駅があるとは思わないので橋の両側は見ていたのだがそれらしい入口はなかった。橋を渡るときは上流側を見て「増水しているな」等と思いながら歩いていた。駅は橋の下流側にあり、結構幅のある橋だったので気がつかなかったのである。

中之島線は土佐堀川の下を走っている。そのためかなり深いところを走っている。昔は無かったので調べてみると2008年にできたそうである。川があふれると大変なことになると思うが、対策は考えてあるのだろう。電車も通勤快速に乗ったのだが朝の8時台だが空いていた。しかも普通の通勤電車ではなく、片側が進行方向に二人ずつ向かい合わせで座る4人掛け、反対側は進行方向に1列で向かい合わせに座る二人掛けという通勤列車らしくない構成である。

大阪の中心を走る電車としては珍しいものだと思った。


公務員改革の重要性

2013-10-23 09:44:52 | 東工大

最近、オリックスの宮内氏が規制改革の重要性と共に大変さを書いている。宮内氏は長年政府の委員会で規制改革に関わってきたので、議論の現場感覚があり、その大変さも実感できる。また最近の日経電子版には以下のような記事が出ていて、規制改革への官僚の抵抗が強まっている、というか規制改革が押し返されている様子が感じられる。アベノミクスの再3の矢、成長戦略は大きな危機に直面していると思う。

閣僚欠席時に医療基金が浮上、省益はこう忍ばせる

規制緩和、後退強まる 薬ネット販売全面解禁修正へ

ところで、宮内氏は、一連の政府委員会の経験、自分の実業家の経験から官業をできるだけなくして民営化し、官は締め付けをなくすべきというという結論に達している。この宮内氏の結論には基本的には私も賛成なのだが、私はこれに加えて二つの観点が重要だと思っている。その一つが公務員改革である。規制改革が進まないのは官僚の抵抗があるからである。

それを押し切ることも必要だが、官僚自身が全体最適を考えるようにする公務員改革も重要で並行して行わなくてはならないと思っている。現在、規制改革は抵抗を受けながらも推進の意思が政府に感じられるが、公務員改革は無くなってしまったように動きが感じられない。

民主党は公務員給与2割削減を選挙に打ち出して政権を取った。最初のほうこそ事業仕分けなどで動きがあったが公務員給与削減は全く実現せず(震災対応で2年間給与削減というのはある)、公務員改革はできていないと思っている。みんなの党も公務員給与2割削減を言っているが政権を取ったら実現できないだろう。維新の会は大阪で公務員の締め付けを行っているがあまり成功しているようには見えず、むしろ公務員の委縮を招いているように思う。公務員改革は殆どが失敗していると思う。岡山県が成功しているという話しを聞いたことがあるが、詳しい話は聞こえてこない。

私は公務員改革には二つのかなり異なる側面があると思っている。

一つ目の側面はニュースに出るような高級官僚の意識の問題で、これは彼らの価値観を変えることが重要だと思っている。なぜ官僚は縦割りで自分の部門の権限強化、予算獲得に走るのだろうか? 個人の地位の維持のためという側面のあるだろうが、むしろ組織を守るため、という意識が強いのではないかと思う。官僚自身が「ここで自分が頑張らないと日本が機能しなくなる」くらいの思いを持ってる人が多いのではないかと思っている。

私の知る限り、高級官僚は若い時にはものすごく仕事をするし、させられる。それは仕事の見返りとして与えられる給与に見合っていないほどの大変な仕事だと私は思っている。上司がそれだけに仕事を部下にさせるための動機づけは「ここで頑張れば将来は安泰」ということだと思う。その表れのひとつが天下りである。あれだけ言われてもさまざまに形を変えて天下りが起こるのは、その影響だと思っている。ただ、「天下りを止めろ」と叫んで官僚の待遇を悪くするのでは問題は解決しないし、無理にやれば政府の質が下がってしまうと思っている。

これに対する私の提言は仕事に見合った報酬を若い時から与えて、若い時の不要に安い収入を後で取り戻すような仕組みにはさせないことである。そのための給与体系も必要だし、人事評価も重要である。特に人事評価をきちんと行う仕組みをどうやって作るかが鍵だろう。

二つ目の側面は、一般公務員に対するものである。昔、公務員に対して「休まず、遅れず、働かず」という言葉があったが、今でも民間と比べてこの体質は公務員ではかなり強いと思う。これに対しては給与を2割削減するのではなく、業務効率2割アップを目標とすべきである。まずは給与削減や人員削減ではなく、外部委託している業務を内部に取り込んで支出を減らすべきだろう。しかし効率が上がってきて仕事が無くなってくれば人員削減ということも将来的にはあるかもしれない。多くの民間企業は人員削減ではなく新事業に乗り出すということで対応しているのだが「官業=効率が悪い」というイメージが続いたままだとそれは難しいかもしれない。ここでも重要なのは人事評価である。人事評価の仕組みをきちんと作れるかどうかが鍵となると思う。このあたりを北欧に学ぶべきだと私は思っている。

話を規制改革に戻すと、規制緩和して国が口を出さないというのは問題が起こったときの責任も民間が負う、ということと対である。私は今の日本では、特にメディアが問題が起こったときに公的組織の責任を追及する姿勢が強すぎると思っている。個々の体質を改めないと、規制緩和はなかなか進まないだろうと考えている。


料理を作り始めた

2013-10-22 16:56:33 | 生活

今年に入って少しずつだが私は料理を始めた。とは言っても人に出せるようなレベルの物では無い。

きっかけは土、日にウィトラのオフィスに行って過ごすことが増えてきたことである。仕事をしているとは限らず、テレビを見ていることも多いのだが、特に日曜日などはNHKの将棋、囲碁と続けて見るとかなりの時間私がテレビを独占するようになる感じになる。ウィトラのオフィスで一人でのんびり見るほうが良い感じがしている。そこでウィトラのオフィスで昼食を作るようになってきた。

最初のうちは昼食を外に出て食べていたのだが、次第にパンなどを買ってきて食べながらテレビを見るようになった。そのうちに電子レンジで温めるものを買うようになってきたのだが、だんだんそれでも物足りなくなってきた。そこで8月終わり頃からフライパンを買ってきて野菜炒めなどを作るようになった。皿も無かったので一枚自宅から持ってきた。

食材をスーパーで買うと量が多すぎるので最近は朝家を出るときに余りものの野菜の切れ端を持って行って野菜炒めにする。調味料はまずごま油を買い、しばらくして塩を家から持ってきた。最近は醤油も買った。時々スーパーで卵やハム、ベーコンなどを買う。

料理の本などは一切読まず、適当に野菜を切ってごま油を入れて炒める。最後に卵やハム、ベーコンなどを入れる。全然形になっていない男の手料理だが、ごま油の香りが香ばしく、野菜の歯ごたえもあって結構自分では満足している。3回に1回くらいアルコールを一緒に飲むこともある。暑かったころは焼酎のロックや水割りを飲んでいたが、最近は焼酎のお湯割りかワインになってきた。焼酎はそば焼酎である。

ここへきてかなり涼しくなってきたので、焼きながら食べることをしたくなってきた。そこでポータブルのガスボンベ式のガス台を買ってきた。今はまだ鍋が無くフライパンだけなので炒め物しかできないが、もう少し寒くなってきたら鍋を買おうと思っている。まずは普通の煮物用のなべを買い、更に寒くなってきたら土鍋を買おうと思っている。

日本の男性は家事をしないと言われているが結構料理が好きな人はいる。5人から10人に一人くらいはかなり料理が好きで人にふるまう様な腕前である。私はとてもそこまでは行きそうにないが、こうして作る機会が増えてくると、そのうち勉強をしたくなってくるかもしれない。


無線通信システム研究会に参加した

2013-10-20 17:17:06 | 東工大

17日に電子情報通信学会の無線通信システム研究会で発表した。若い頃は良く参加していた研究会だが、企業で管理職になって以来、20年ぶりくらいである。今回は招待講演でご招待をいただいたので発表した。行ってみると参加者の数は多く、熱気を感じた。電子情報通信学会にはかなりの数の研究会があるがこれだけ活発な研究会は少ないだろう。大抵は他の研究会と共催などにして参加者を集めている。

発表内容も、充実していて、特に企業の発表にはその裏に膨大な実験やシミュレーションの裏付けが感じられた。うれしかったのは私が研究者であったことのライバルであった他の会社の研究者が多数参加していたことだった。久しぶりに旧交を温めた。発表終了後、懇親会があり、色々な人と話ができたのは収穫だった。

企業は今でもこの分野にかなりの研究投資をしていることが感じられる。しかし、事業的にはうまくいっていない。特に、この研究会で議論されているような無線伝送方式の分野は世界的に寡占が進み、その寡占の中に日本企業は入れていない。技術力にはそれほど差がないのだが、開発投資のやり方の違いが企業としての実力にかなりの差を生じさせていると思う。そこをどう挽回するかは第1戦の研究者よりもむしろ私のような年代の招待講演をするような人が経営者と一緒に考えるべき問題だろう。学会の良いところは異なった企業のOBが企業の垣根を越えて話しをできることである。

企業の投資余力も異なってきており挽回は容易ではないだろう。それこそ、イノベーションのジレンマで大きく技術を変えるようなことを検討する必要があるだろう。そして、そのような異質のイノベーションを起こすにはビジネスモデル自体を今とは異質のものにする必要があると思う。

この問題は難しい課題で、考えれば答えが出るとは限らない。しかし、心の片隅には常に止めておいて何かのヒントをアイデアにつなげるようなことを考えようと思う。


囲碁名人戦、井山挑戦者が6冠に

2013-10-18 08:15:14 | 囲碁

昨日、以後の名人戦第5局があり、挑戦者の井山棋聖が山下名人を破って4勝1敗で名人位を奪取した。これで井山氏は7大タイトルの内6タイトルを独占する快挙である。残る一つのタイトルである十段位は昨年の今頃は持っていたのだが、今年の春に関西棋院の結城九段(現十段)に取られている。

内容的には去年より物足りない感じが残った。山下名人が自分のペースに持ち込めない碁が多かったように思う。昨日の午後は私は学会に出席していたのだが、他の人の講演を聞きながらインターネットで名人戦中継をチラチラ見ていた。ずっと井山挑戦者が有利だと思っていた。ところが自分の講演の順番が回ってきて講演を終えて席に戻って改めてみるとどうも逆転している。私は白120の点を打たれてしまったのが失敗だったと思っている。優勢になったときは戦いを避けて囲いあいにするのが勝ちやすいのだが、計算を間違えたのだろう。井山氏にしては珍しい判断ミスだと思う。

その後、再逆転したのは山下名人が無理に頑張ったからである。山下名人も形勢判断ができていなかったのだろう。おそらく持ち時間が亡くなってきていたのだろうと思う。時間がなくなると乱れるのが、日本の棋士が中国、韓国に勝てない最大の要因だと思う。

今の日本囲碁界が井山6冠が頭一つ抜けており、それに続く、張栩、山下、高尾、羽根、河野の5強が挑戦者として勝ちあがってくるという形でこの6人はそれ以外の棋士に殆ど負けていないというデータを今年の初めに示したが、最近は張栩の調子が落ちてきていて他の棋士に結構負けるようになってきている。以前「張栩の碁が荒れている」と書いたがその影響が成績に出てきたのではないかと思っている。

井山6冠には来年春の十段戦の挑戦者になって全冠制覇してもらいたいところだが、その前に来週21日からの天元戦の挑戦手合いで挑戦者の秋山九段に勝ち、24日からの王座戦の挑戦手合いで挑戦者の張栩九段に勝たなくてはならない。挑戦手合いの同時進行で体力的に大変だと思うが秋山九段よりは地力が上だし、張栩九段は調子を落としているので両方勝つ可能性は高いと思う。その次に棋聖戦が待っており挑戦者は今回負けた山下前名人または村川7段だが、やはり山下前名人が出てきたほうが大変だろう。

最後の十段戦は挑戦者決定プロセスがトーナメントなので勝ち抜くには大変だが、敗者復活制度があり1度は負けてもまだ挑戦者になれる可能性が残っているので、今の井山氏の力なら挑戦者になれる可能性はかなりあると思う。これからの各種挑戦手合いが楽しみである。


テレビでネットの書き込みを紹介するのはいかがなものか

2013-10-17 07:57:12 | 社会

最初に、昨日のブログは私の認識の誤りであり、それで東急を批判するようなことを書いたことをお詫びし、記事を削除したことをお断りしておきたい。昨夜のテレビで風が一番強かったのは朝の8時頃だという報道があった。私は駅に止まっていた電車の中に居てそのことを全く把握していなかったし「台風が通り過ぎて天気も回復しているのに電車を止めるなんてあり得ない」と思ったことと、電車に閉じ込められていらいらしたことが重なってあのような記事を書いてしまった。

最近、インターネットが情報源として有力視されていることから、テレビでもネットのアクセス上位のトピックを紹介することなどが増えてきている。中にはネットの書き込みを紹介している番組もある。しかし、ネットの書き込みは昨日の私のように個人が誤解に基づいて書いていることも多いし、悪意を持って書きこまれることもある。それをテレビで紹介するのはかなり危険なことだと思う。

今朝のテレビ朝日では、昨日の台風で大島の土石流が起こったことに対して町が避難勧告を出さなかったことに関しての書き込みを紹介していた。当然、「けしからん」という意見もあるし「仕方がない」という意見もある。私個人は「夜中に大雨の中で避難勧告を出すのはかえって危険である。夕方6時に避難勧告の判断をできなかったのが失敗だった」という町長の談話で十分だったと思うが、マスコミは町長の責任を問いたいようである。

このようなことに対するネットの書き込みは何でもあり得る。マスコミがその中で自分に気に行ったものを取り上げて自分の責任を回避しつつ視聴者にある方向付けを行い始めると極めて危険だと思う。今朝のテレビ朝日の取り上げ方は両方の意見を取り上げていて抑制が効いていたと思うが、それでもある印象を視聴者に与えたと思う。意見を言うならネットの意見を取り上げるのではなく、自社の意見として言うべきだと思うし、国民の声として取り上げるなら個別の意見ではなく統計情報として取り上げるべきだと思う。

このようなマスコミの行為は他の人の意見を紹介するいわゆるリツイートに相当するものだが、マスコミがこれを行うと極めて影響が大きいので何らかの規制があってしかるべきだと思う。しかし、法律で縛ることは極めて難しく、ガイドラインを作るのが精いっぱいだろう。しかし政府が委員会を開いてガイドラインを議論するというようなやり方では現実に追いつけない気がする。

その対策として以前このブログに書いた「サイバー交番」の設立を改めて思う。不適切な書き込みや、リツイートなどに関して注意を与えると同時に将来必要になるかもしれないネット上のルールのための情報を収集する意味でサイバー交番の必要性は高まっているように思う。サイバー交番から「この書き込みは表現が過激です」というような注意を与えられればそれだけでかなりの抑制になるような気がする。


日本の大学のレベル低下について

2013-10-15 12:53:12 | 東工大

日経ビジネスの最新号に日本の大学が地盤沈下を起こしているという特集記事が出ている。私も大学に籍を置く身分なので興味深く読んだ。世界の大学ランキングで日本の大学がその地位をじりじりと下げているという。私の所属する東工大の学長もそのことを問題視して対策を打とうとしており、最近、4年間で修士号をとれる体系を打ちだしたところである。東工大に限らず各大学の学長レベルは強い危機感を持っている教育の現場を変えることはできていないというのが実態である。

なぜ、日本の大学は他の国と比べて地盤沈下しているのか、社会の要請が変化しているのに対して追随できていないということだと思う。日本の大学の体系は明治時代に作られ、おそらくその頃には時代の要請に合った教育体系だったのだろうが、技術が進み世界がグローバル化して時代の要請が変わってきたのに対して日本の大学は変化が遅く、取り残されそうになっているということだろう。なぜ日本の大学の変化が遅いかというと、日経ビジネスも指摘しているように教授会が基本的な物事を決めているという点にある。

私自身、特任教授という立場であるので教授会に出席することはできる。しかし重要事項を決定するときの投票権はない。正式な教授では無いので情報入手のためのオブザーバ参加という形だからである。その代わり、入試などの様々な大学運営に関する仕事を免除されている。そんな訳で自分に関係のある事項が審議されるとき以外は出席していない。

この、「自分に関係ないからと言って出席しない」という態度が良くない。特に大学改革という面からみると参加して提言すべきだと分かっているのだが、投票権のない立場としてはどうしてもそうなりがちである。私は投票権のある正規の教授たちにとっても大部分は私とそれほど変わらないのではないかと思う。

教授にとって重要なのは良い学生を取ること、自分のところにいる学生がきちんと卒業できること、研究費をもらえること、の3点で後のことは教授会の話題ではなく、自分で管理するべきことだと考えていると思う。つまり、研究内容や授業の質、論文の内容などは教授会でとやかく言われることではなく自分で努力して改善すべきことだと考えていると思う。自然なことだと思う。

そういう訳で、大学のランキングが下がった、という話しは「困ったね」という話しにはなっても自分一人で解決できる問題でもないので解決に取り組もうという教授は稀だろう。日経ビジネスでは学長に権限を持たせればよいと言っているが、私はそれぞれの教授が本気で考えるような仕組みにしなければ学長の意欲と権限では大学改革は難しいのではないかと思っている。私立大学では学長の権限を強めることができ、立命館大学などは意欲的に取り組んでいるがそれほど成果は出ていない。大学の評価は研究と、教育という2本立てで、どちらも成果として見えてくるのに時間がかかるので方針をぶれずに継続させることが難しいからだと思う。

安倍総理も「世界のトップ100の中に日本の大学を10校入れる」と言っている。どうするかは分からないが、効くのは大学ランキングが補助金の額に影響する、ということだろう。そうすれば教授たちも本気で取り組む。その際不可欠なのは良い教育をし、研究成果を出している教授は手厚く処遇し、逆の教授は身分を脅かされる、と言った教授の評価制度を導入することだと思う。人を評価することは人間関係の軋轢を生みやすいので、日本の社会では全体的に不得意である。入学試験、入社試験、資格試験などが重要視され、一旦中に入ってしまうと後は安泰という傾向の強い日本社会はこの「評価をしたくない」というところから来ていると思う。それを絶えず評価されるという社会に作り替えていくことが根本的な解決につながると思う。

 


ラジオを買った

2013-10-11 15:05:58 | 生活

万歩計をスマートフォンにダウンロードして歩く時間が増えてきたので、歩いている途中でラジオを聞きたくなってきた。

そこでヤマダ電機でAM/FMのラジオを買った。乾電池式と充電式があったが乾電池を取り換えるのが面倒なのでやや値段が高いが充電式の物にした。ここ2-3日はラジオを聞きながら歩いている。1日平均1時間半くらいは歩いているのでその時間が有効に使えるような気がする。今のところ殆どFMを聞いている。FM東京かNHK-FMである。

朝、九品仏から大岡山まで歩く時は殆どFM東京である。NHKはクラシックばかりなので変化に乏しいからである。以前はFM横浜を聞いていたのだが、東京ではFM東京のほうが電波の状態が良いのでFM東京になる。昼に大岡山の大学からウィトラに移動するような時にはNHKを聞くことが多い。週末に自宅の付近を歩きまわればFM横浜を聞くだろう。

万歩計で歩数を計るようになるとやはり歩く量が増える。自分は目標を持ったほうが良い性格なのだと改めて思う。歩く量が増えて1日に1万3千歩くらいになると疲労を感じる。夜も早く眠くなるような気がする。これが慣れてくると1万5千歩、1万7千歩と疲労を感じるまでの歩数が増えてくるだろう。ここ数日は季節外れの暑さが続いて、歩くと大汗をかいていたのだが、それも今日くらいで終わりだろう。汗をかくとその時は気分が良くないのだが後味は良く、気持ちの良い状態がしばらく続くような気がする。

大学の授業も始まり、論文も書いたりしたのでこの一月ほどあわただしい思いをしていたがそれも落ち着いてきた。10月は健康の秋にしたいと思っている。


アルカテル・ルーセントがつぶれそう

2013-10-09 08:39:15 | 経済

今朝のNHKのBS海外ニュースを聞いていたらフランスの放送局がアルカテルールーセントがつぶれそうだという報道を流していた。

アルカテルはフランスでは圧倒的規模を持つ通信機器会社で日本で言えばNECと富士通を合わせたようなものである。そのアルカテルが2006年アメリカのルーセントと合併した。合併した会社がアルカテル・ルーセントでフランスの会社ということになっているのでアルカテルが優位の合併といえるだろう。

ルーセントはアメリカのNTTに相当する通信会社AT&Tが独占禁止法の問題でアメリカ政府によって分割されたときにできたアメリカの製造メーカーでアルカテルと同様に通信機器を作っている。世界最大の研究拠点と言われ、ノーベル賞受賞者を何人も出しているベル研究所の研究者は大部分がルーセントに移り、これまた大変な企業である。

合併後のアルカテル・ルーセントは業績が思わしくなく、赤字続きでじり貧である。昨年5000人の従業員削減を発表し今年また10000人の従業員削減を発表した。テレビでは中国の華為技術にやられた、彼らの力を過小評価した、と言っていた。

ちょっとネットで調べてみると、ノキアがアルカテル・ルーセントの買収を検討しているらしい。ノキアは世界最大の端末メーカーだったがスマートフォンが現れてからシェアが激減し、最近、マイクロソフトに端末部門を売却することを発表している。インフラ部門はドイツのシーメンスのネットワーク部門を買収し、ノキア-シーメンスネットワークスという名前で活動しており、長い間ノキアのお荷物だったのだが、今年に入ってシーメンス株を全て買い取り、ノキアになっている。更に端末部門を売却してノキアはインフラの会社となることが決まっている。実現すればフィンランドの会社が、アメリカ、ドイツ、フランスの圧倒的トップ企業を買収することになり、感慨深いものがある。それでも、スウェーデンのエリクソン、中国の華為技術に及ばないという点がまた感慨深い。

これに比べると日本企業はダイナミックさが少ないな、と改めて感じた。