ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

郵政改革は振り出しよりも更にマイナスに戻る

2010-03-31 08:49:18 | 社会

鳩山首相が亀井大臣の案を飲み、郵政改革に対する政府の方針が決定した。

新聞などのニュースを読む限り、議論はほとんど封殺されて、揉めると民主党のイメージが悪くなるので鳩山総理に一任しよう、ということになったようである。

おそらく鳩山総理は亀井大臣の案を深く理解しないで「うんうん」といって後で「総理も了解している」と言われて了承するしかなくなったのだと思う。鳩山由紀夫その程度の人物である。

今回の亀井大臣のやり方は典型的な議論をしないで物事を通す日本的なやり方である。案を作ってトップや有力者に立ち話や電話で話をする、トップなどは深く理解しないで「うん」という。そして「了解してもらった」ということで他の人に話をして了解を取り付ける。反対しそうな人で、反対しても抑え込めそうな人には一切話をしない。

今でも使われているのかもしれないが20年前の日本企業の取締役会などで良く使われていた手である。

すごろくで「振り出しに戻る」という言葉があるが、今回の結論は小泉元首相の郵政改革を振り出しを超えてさらにマイナスに振った感がある。どうしてこんなことになったのだろうか?

原因の一端は小泉元首相自身にあると思う。彼は政治生命をかけて郵政改革を推進したにもかかわらず「なぜ郵政改革が必要なのか」をきちんと説明していなかったのである。

私自身も4年前の郵政選挙のときに「なぜ郵政民営化が必要か?」をきちんと理解していなかった。なんとなく郵貯の金額が大きいので問題なのだろう、と思った程度である。それが小泉元首相が舞台から去った後の反対派の揺り戻しの原因になったし、今回の決定にもつながっていると思う。

現在ん私の理解は「郵貯が国民の預金を国債に回す仕組みだから」という点である。郵貯は貸付のノウハウを持っておらず、ほとんどの預金を国債の購入に充てる。政府は大量の国債を発行して色々な事業を行う。その事業のプロセスで政治家としての「うまみ」がつきまとう、というのが郵政民営化反対派の狙いだと思っている。

郵政問題では亀井大臣の動きだけが目立っているが、私は背後に小沢幹事長の影を感じる。亀井大臣、小沢幹事長、自民党の何人かの有力議員などが国債発行による国の事業で潤っていた人たちである。今回の政府内の議論でも議論を封殺して総理に一任するように押したのは小沢派の閣僚のようである。

今回の政府の決定には結果にも不満だが決定プロセスにはさらに大きな問題を感じる。


道路工事と立ち退き

2010-03-30 08:24:22 | 生活

久々に快晴の朝だが昨夜は冷え込んで水たまりには薄氷が張っているし、畑には霜柱が立っている。3月末とは思えない寒さである。桜も開花後寒い日が続いていたのでなかなか満開にならない。見頃は今週末あたりだろうか。それでも日の出が早くなったので朝日を浴びて歩くのは気持ちがよい。

年度末に向けて道路工事も追い込みの段階である。以前このブログで書いた新しい道路の真ん中に一軒だけあった立ち退かない家がつい先日取り壊された。

どうやらその家の人はどこかに移ったようで私はたまたま取り壊し工事中のところを通りかかったので中をのぞいてみた。

外観は普通の2階建ての住宅であるが、中は様子が違う。玄関の土間が大きく、部屋には障子がある。どうも小さな料亭のような感じで、中に個室があって食事を提供するようになっていたようである。それで夕方に出窓で焼き鳥を売っていたのもわかる気がする。

築50年くらいの木造家屋で坪数で言うと2階も含めて30坪くらいの普通の住宅の大きさである。場所も奥まったところなのでレストランとしては成り立たないのは当然だろう。

あの家がもっと早く立ち退いていたら今年度内に道路が出来上がったかもしれないが、このペースでは道路の完成は来年度になることが確実である。何か騒音が出ないような特殊な工事をしていると看板には書いてある。

この工事は現在の中山町ではかなり大規模な工事であるが、こういう工事をするときに電線の地下埋設とか、水道管、ガス管の整備、通信ケーブルの整備などを全部統一的にやっているのだろうか?

一度区役所にでも行って調べてみたいと思っている。


日本における政治主導の実態

2010-03-29 09:07:02 | 社会

郵政民営化が大きく変貌し、内閣内でも言った言わないでもめている。全く見苦しい限りだと思う。

ところでこの郵政民営化に対する肝心の国民の意見はどうなのだろうかと思う。4年前小泉元首相が郵政民営化を打ち出し、衆議院を解散して総選挙を行った時には、民意は圧倒的に「民営化賛成だった」。亀井大臣は抵抗勢力として自民党を追い出されたのは皆が知るところである。

4年間経って、国民の意見は民営化反対に変わったのだろうか?昨年8月の総選挙では郵政問題は争点の1%程度でしかなく、この問題に対する民意は問われていない、というのが私の認識である。

それにも関わらず、民営化反対だった人が大臣になったからと言って、「元に戻す」といって堂々と発言し、誰もそれを咎めようとしない。亀井大臣の方針が本当に国民の意思なのかどうかは大いに疑問である。

日本の政治主導とはこの程度のものである。政治主導で小沢幹事長は「政治を国民の手に」などと言っているが実態は「政治を政治家の手に」であり本音もそこにあると思う。その時の国民の意見は関係ない。

本来ならば、マスコミが国民の目線で「これは民意に沿っているのか」と問いただすべきである。しかし、現在の日本のマスコミにはその力量はない。ただ政治家同士の意見の食い違いを伝えているだけである。

何度か書いているが、日本は民主主義国家としてまだ未熟なのだと思う。それをどうやって成熟させるか、そのシナリオを考えることができるのは一部の突出した政治家だろうが、それを実行に移す体制を作れるのは官僚だと思う。

民主党政権の4年間で官僚を骨抜きにすると、取り戻すのに20年かかると思う。


「コンクリートから人へ」は正しいのか?

2010-03-27 08:51:54 | 社会

民主党政権に代わって以来、政府は「コンクリートから人へ」の標語のもとに公共事業を圧縮し、子供手当や高校の事業料無償化に財源を当てている。

私は当初は「これは良い考えだ」と思っていたが、次第に疑問に感じるようになってきた。

本来政府とは何をするべきか、ということを考えたときに「国全体のためになるが、民間ではできないこと」というのがその定義になるだろうと思う。

そういう意味では子供手当も定義にはまるのだがどうも違うという気がする。それは国民に政府がお金を与える、ということに対する違和感である。一度こういうことをすると、国民が国からお金をもらうことを期待するようになる。これは国が富の再配分を行っていることを意味し社会主義につながる考え方である。

社会主義が悪いというわけではないが、以前から何度か書いたように、日本ではまだ民主主義の底が浅く、「自分が国を動かしている」という意識は国民の中に低いと思う。そういう状況で社会主義的政策を打ち出すと、政府の援助を求める「たかりの構図」だけが目立って、政府の赤字が膨らむだけという感じがする。

フィンランドのように教育システムから見直しを行い、新しい教育システムが効果を生むようになってから取り組むべき課題だと思う。

一方、ダムや高速道路、空港、港湾などの大規模土木工事は投資回収までに何十年もかかる事業であり、やはり民間では行い難い。本来政府が行うべき事業だと思う。

これまでの公共事業が問題だったのは、全体の方向性が悪かったのではなく、やり方が悪かったのだと思う。空港がその典型例だが、代議士が地元の意向を受けて空港を作るように動く。その結果たくさんの地方空港ができるのだが、国全体としてのハブ空港の構想などはなく、日本最大の国際空港が滑走路一本しかなく、国内便の発着枠をほとんど取れないという現状が出来上がっている。

現在の政権になって明らかになったように、空港のハブ化が遅れているために海外旅行の中継地をどんどん韓国に取られてあわてている。

要するに低い目線で予算を付けていたために国全体としての最適化ができていなかったという点が問題なのであり、公共工事自体は問題だとは思わない。

しかし、現政権の公共工事を絞り込む動きには賛成である。思い切って絞り込んで、本当に必要なものは何かを議論し、必要なものには予算を付けていくべきだろうと思う。子供手当はできるだけ早く廃止して、扶養控除で調節するように戻すべきだと思う。

このあたりのしっかりした議論を自民党に期待したいのだが、さっぱり出てこないところをみると、自民党自体は政権担当時代も何も考えておらず、官僚提案に乗っかっていただけなのかと思う。


グーグルの中国撤退

2010-03-26 09:22:38 | 経済

グーグルが中国本土から撤退して大きな波紋を呼んでいる。

一企業が撤退することが外交問題にまで発展するのはそれが情報統制と密接に絡んでいるからである。中国政府がグーグル撤退を非難しているかのように報じられているが、もちろん中国政府は撤退を非難しているわけではなく、香港のサイトで自主検閲を外したことを非難しているのである。

しかし、日本のサイトでは自主検閲はしていない訳だから香港での活動を非難することはあたらない。問題があるとすれば中国にいまだにグーグルのサイトがあって、そこから香港のサイトに飛ぶように設定されていることだろう。これは遠からず無くなるものと思う。

人の口に戸は建てられない。いくら情報を隠そうとしても、これだけ資本主義経済で活動している中国で完全な情報管理をするのは不可能だろう。中国政府もある程度は漏れることは覚悟の上でできるだけ都合の悪い情報を遮断しようとしているのだろう。

中国政府のやり方がよいか悪いかという政治論議はさて置いて、経済に対する影響を考えてみる。携帯電話の関係でいうとグーグルが主導しているAndroid OSを使った端末がどうなるかという問題である。

最大手のChina MobileはAndroidを使っていてもGoogle色が外に出ないようにOMSというソフトウェアをかぶせて発売している。ある程度現在の事態を予測していたのかもしれないが、賢明な選択であったと思う。

China Unicomは予定していたAndroid端末の発売を延期して、グーグル色を抜いて発売したそうである。おそらくChina Telecomも同様の対応を取らざるを得ないだろう。

最大手のChina MobileがAndroid+の機能を提供できるのに対して、それ以外のオペレータはAndroid-の機能しか提供できないのでは大きなハンデである。China Mobileの提供するミドルウェアが政府の指導で他のオペレータにも使われ実質中国標準となる可能性もあると思う。


ビル・ゲイツと東芝が新しい原子力発電開発へ

2010-03-25 09:02:07 | 経済

元マイクロソフトのCEO、ビル・ゲイツと東芝が組んで新しい原子力発電を開発するそうである。 新しい原子炉はTWR(Travelling Wave Reactor)という方式で原子力発電の燃料を大幅に節約するものらしい。

その意味では先日、このブログに取り上げた高速増殖炉「もんじゅ」と競合するものだろうと思う。何十年も前から開発が始まっていて10年以上塩漬けにされていた「もんじゅ」よりもこちらのほうが筋が良いのではないかと思う。

ビル・ゲイツはこのプロジェクトに数千億円を投じるつもりで、ビル・ゲイツのほうから東芝にアプローチしたらしい。単にボランティアをやっているだけでなく、色々考えているんだなーと感心する。

ビル・ゲイツと原子力発電を結びつけたのは元マイクロソフトの研究所長だったネイサン・ミアボルトでこの人は元々原子力のバックグラウンドだったようである。ネイサン・ミアボルトとは私も会ったことがあるのだが、金もうけ主義のマイクロソフトにあって哲学をしっかり持った研究所長という感じで印象に残っている。

報道によるとビル・ゲイツの資産は約五兆円で世界第2位になったとある。2年ほど前に私がブログでビル・ゲイツを取り上げた時には約六兆円の個人資産と言われていたので「もう1兆円も使ったか」と驚いたが、考えてみると円高の影響と世界不況によるマイクロソフトの株価の下落が大きいのだろう。

考えてみるとマイクロソフトの株価は不況でもあまり下がらなかったということだろうか、と思う。そこで調べてみると1年前は18ドルだったのが今は30ドルになっている。アメリカ経済の回復は日本よりもずっと足取りがしっかりしている感じがする。


アメリカの医療保険法案可決

2010-03-24 09:03:14 | 社会

アメリカの医療保険法案が昨日下院で可決され、今日上院で可決されたと報じられている。

これは日本でいえば国民健康保険に相当するものである。この法案はオバマ大統領の最大の公約ともいえるものであるが、大変な難産の上での成立だった。

難産の理由は共和党の猛烈な反対キャンペーンであり、民主党の中にも反対者が出たというのが最大の問題点だろう。日本でも企業の健康保険と国民健康保険があり、企業の健康保険に入っている人にとっては国民健康保険は必要ない。これを導入すると財政赤字が拡大する、というのが反対派の主張である。

日本の子供手当などに比べるとはるかに意義の高い法案だと思うのだが、それでも他人のために金を使うとなると強烈な反対キャンペーンが巻き起こる。今日の日経によると、実は上院での審議過程で法案は次々と骨抜きにされていってオバマ大統領は実よりも名を取ったとある。

病気にかかっても、お金がないので医者にかかれない人がたくさんいる。そういう個人個人に自分が医療費をたてかえるのは抵抗感があるが、保険料が、あるいは税金が若干高めになってそのお金で困った人が助かるのならまあいいか、というのが私の感覚である。

アメリカ人は逆に親しい人には自分が出してあげる、しかし知らない人のために自分の金が使われるのはまっぴらだ、という感覚なのだろう。

日本とアメリカの国民性の違いをつくづくと感じる。


年度予算消化の指示

2010-03-23 08:52:30 | 社会

昨日から今日にかけて「コメントしたいな」と思うようなニュースがいくつかあった。

アメリカの健康保険法案可決、グーグルの中国国内サイト閉鎖の発表、ビル・ゲイツと東芝が共同で原子力発電開発、などである。しかし、今日は日本国内の小さなニュースを取り上げたい。

それは行政刷新会議が「年度予算消化の指示が出た」という内部告発の事例を公表したというニュースである。

このやり方がはたして妥当なものかどうかはわからない。
内部告発というのは本来軽軽しく公表すべきものではないし、今後内部で犯人探しのようにならないことを十分に配慮する必要がある。それでも、官庁の予算の使い方に対する現在の政府の本気度が現れていて、私は好感を持っている。

これまで、官庁では「予算をたくさん獲得すること」「予算を計画通りに使い切ること」が業務上の重要な評価尺度だった。今はそれに代わって「業務効率」という尺度を持ち込むことが必要になっていると思う。

本来ならば、尺度の見直しとセットで予算消化の考え方を指示するのが望ましい。しかし、民間企業でもそうであるが、まず無駄な支出を減らす、というアプローチは十分にあり得ることである。

行政刷新会議が官庁の仕事ぶりに対する新しい評価尺度を議論する、といった議論をしているのかどうかは分からない。なんとなくそのような議論はしていないように感じる。

一般的にリストラをするときは無駄の削除と将来の展望を組み合わせるのが成功につながりやすい。ぜひ行政刷新会議が建設的な議論をして官庁を刷新する動きをしてもらいたいものだと思う。


日本のデジタル携帯電話PDC

2010-03-22 11:21:45 | 昔話

ヨーロッパでのGSMの議論に刺激されて日本においてもデジタル携帯電話の議論が加速した。この時期の議論の中心は無線伝送方式と音声符号化だった。

移動通信は後発のサービスだったので割り当てられていた電波の量が少なく、少ない周波数をいかにうまく使うかという周波数有効利用が最大のカギとなる。そのカギとなる技術のひとつが音声符号化である。

音声符号化とは電話の音声をデジタル化した時に圧縮して送る技術であるが、当時64Kbpsであった固定電話の音声を1/10くらいに圧縮する方法が世界中で研究され、技術コンペが行われた。当時はこの研究は他のグループで行われていたので私は直接タッチしていなかったが、ぐんぐん音質が改善するのに驚いた記憶がある。

私が担当していた無線伝送のほうは、あちこちから電波が反yさしてくる環境で、いかにして安定した伝送をするかが鍵だった。高速の伝送をしようとすれば受信のための信号処理回路が複雑になる。伝送速度が遅いと今度は変化に追従するのが、難しくなる。なかなか良い方法は見つからなかった。

結局日本は波形等化という複雑な信号処理を必要としない、低速の伝送方法を選択したのだが、アメリカはほとんど同じ方法を選択したにもかかわらず、波形等化を必須とした。これがアメリカのデジタル携帯電話の普及が遅れた一つの理由だと思っている。

当時私は研究所にいて要素技術を研究しており、標準化の会議には出席していなかった。しかし、さまざまな技術のバランスを考慮して実現可能な最先端技術を求める流れは社内からも、学会からも伝わってきてバランスを重視するという考え方の重要性はひしひしと感じた。そしてそれは私自身の目指す方向と合致していた。