ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

初めての梅酒づくり

2016-05-29 19:21:45 | 生活

私は、今年、生まれて初めて梅酒づくりを行った。

梅酒を良いと思ったのは比較的最近で、会社を辞めて義理の母の家でウィトラを開業した時に義理の母が作った梅酒を飲ませてもらってからである。味も良かったのだが、それよりも梅のエキスが体に良いような感じがして、サプリメントを飲むような感覚で梅酒を一日におちょこ1杯程度飲んでいた。義理の母の体力が衰えて梅酒を作らなくなってからは、チョーヤの梅酒などを時々買って飲んでみたが「なんだか違う」と感じていた。

今年は我が家の庭の梅の木に結構梅の実がなったので作ってみることにしたものである。スーパーで売っている梅酒キットのようなホワイトリカーと氷砂糖を買ってきて、庭の梅の実をもいで漬けた。一番大変だったのは梅の実もぎで、整理して梅の木を植えているわけではないのでいろいろな気が混ざっているところで踏み台に乗ってあちこちの方角から取った。そのとき梅の葉が唇に触れると何か甘い樹液がついていた。梅の実は甘くないのにあれは何だったのだろう。

友人からブランデーで漬けるとおいしいと言われていたのだが、初心者なので今年はホワイトリカーにしたしたのだが、来年あたりはブランデーで試してみようかと思っている。1年後くらいには飲めるだろうか? どんなふうになるか楽しみである。


トランク大統領が誕生したら・・

2016-05-29 17:11:47 | 社会

オバマ大統領は伊勢志摩から広島経由で帰国したが、次の大統領選挙は思ったより接戦になってきた。そろそろ政府もトランプ大統領が誕生したらどうなるかを検討し始めるべき時期だろう。

経済は、閉鎖的になり、TPPの批准は遅れるだろうが具体的にトランプ氏がどういう動きに出てくるかは予想が困難である。比較的明らかなのは日本の安保ただ乗り論で、これは具体的に交渉テーマとして挙がってくるように思う。これに関してはある程度準備しておく必要があるだろう。具体的に言ってきそうなのが在日米軍の費用を全額出せ、という話である。

テレビなどでは、「今の安保はアメリカにも役立っている。日本のためだけでなくアメリカのためでもあるのだからアメリカは応分の負担をすべきだ」というような論調が多いが、トランプ氏がこの話題を持ち出すときは「アメリカのために役立っているとは思わない」というスタンスで来るだろう。日本がそれを説得することはできないだろう。それならばどうするか?

「分かりました」と言って米軍の撤退を認めるというのが一つの方法である。その場合に日本の防衛をどうするか、今の自衛隊で十分なのか、多分不十分だろう。自衛隊の軍事力強化をするのか、尖閣列島は取られる覚悟をして、あくまで平和路線を歩むのか、大きな決断が必要になると思う。

今、安保法案に反対している人たちも、大部分はアメリカの保護があるという前提で議論していると思う。それをアメリカの保護が亡くなる前提になったらどうするか、一度真剣に考えておく必要があるだろう。

実際問題としては、アメリカ軍に撤退されたら困るので、日本側の負担を増やすという結論になる可能性は高いと思う。その時に日米地位協定の見直しを提案するのだろうが、そのためには周到な準備が必要だと思う。

政府内部や自民党内部ではこのような議論が始められていると思うが、野党も検討を始めるべきだし、一般国民も酒の肴にこういった議論をしても良いのではないかと思う。


伊勢志摩サミットに見た安倍首相の鈍感力

2016-05-28 10:27:14 | 社会

厳重な警戒網の中で伊勢志摩サミットが行われ、終了した。たいした成果は無く、首相関係者の懇親会という色彩が強かったと思うが、色々な問題で意見交換して認識を共有した意味はあったと思う。大成功ではないが一応成功といえると思う。

私が注目したのは安倍首相が示した鈍感力である。それは「今はリーマンショック前と似ている」という発言のことである。この発言は国内向けで「消費増税を延期する」という意思表示であることは疑いないが、これをサミットで言うのはなかなか勇気のいることだと私は思っている。普通の人は「外している」「経済が分かっていない」などと思われるのではないか、と発言をためらうような内容だと思う。経済が停滞しており、何らかの手を打つ必要がある、という点では認識が共有しているので、それを多少強く押し出して公式発言とし、プライベートに「国内向けだ」と説明したのだと思うが、それをやるにはそれだけ他の国のトップとの交流があり、相手がどう感じるかに対しての感触を持っていたからだろうと私は思っている。この安倍首相の鈍感力は評価できると思う。

サミット終了直後に、オバマ大統領が広島の原爆ドームを訪問した。日本は被災者を含めて特に「お詫び」を求めるようなことをせず、「一緒に核兵器をなくす方法を考えましょう」という態度だったのは好ましいと思う。しかし、オバマ大統領が広島を訪問したからといって北朝鮮が核開発を止めるわけはなく、この訪問が核廃絶に直接つながるものではないことは明らかである。テレビのレポーターたちは完全に外していたと思う。

重要なことは「70年前の核爆弾一発でもこれほどのことが起こるのか」ということを核爆弾発射の指令を出せる人が目に見て認識したことだと私は思っている。私自身、広島の原爆ドームを見た時には感じるものがあった。ケリー国務長官はそのその態度から何かを感じたことは間違いなく、だからオバマ大統領に広島訪問を勧めたのだと思う。オバマ大統領の態度から何を感じたのかは伺えなかった。クリントン氏が次期大統領になった時に「広島を見ておいたほうが良いよ」と勧めてくれるかどうかは不明だというのが私のテレビを見た印象である。「勧めてくれればよいが」と願っている。

要人の広島訪問は核兵器の行使に対しての抑止力となることは間違いないが、核廃絶には全く別の動き方が必要なことは疑いない。


長寿命の動物は何か?

2016-05-27 08:52:43 | 生活

象の花子が息を引き取った、というのがニュースで流れている。「伊勢志摩サミットが開催されている現在、象の死がニュースになるほどの話題か、よほどニュースがないのだな」と私は思っていたが、ふと「長寿命の動物は何だろう?」と気になった。「鶴は千年、亀は万年」と言われているが、亀が長生きするのは分かるが鶴が長生きするのは理解できない」と思ったからである。

私は長生きするのは動きがゆっくりしたナマケモノのような動物であると思っているのだが鶴は空を飛ぶし、しかも渡り鳥である。激しい運動をするので、とてもそんなに長生きするとは思われなかった。

調べてみると哺乳類で長生きするのは体が大きい草食動物の象やサイ、カバなどで50から70年、次いでゴリラやオランウータン、等のサル類で30-50年だそうである。クジラもかなりの長寿命である。ゆったりした動きで体が大きい動物の寿命が長いようである。クジラの中には200歳以上のものがいるそうである。

鳥類は意外に長く、鷲、鷹、鶴のような大型の鳥類は30年くらい、インコやオームの類も同じくらい生きるらしい。肉食の哺乳類よりは寿命が長い感じである。鳥にとって空を飛ぶというのは意外に楽なことなのかもしれない。

亀は脊椎動物では一番寿命が長く、250歳のカメが観測されたことがあるらしい。他にニュージーランドのオオトカゲは200年くらい生きるらしい。

更に長寿命なのは貝類でミル貝は160年以上、アイスランド貝というハマグリのような貝は500年以上生きたものが居たそうである。もっともこれは貝殻の年輪から推定しているもので誤差があるかもしれない。

極め付きは一部のクラゲで寿命という概念がない不老不死だそうである。これは、子供が自分の体内で生まれて大きくなり親と入れ替わる、新陳代謝をすっと繰り返すということらしい。もっとも若返りが観測されているというだけで若返りの回数に限界があるかどうかはまだわかっていない、ということだと私は考えている。竹は毎年筍ができて一つの個体から次々と若返っているように見えるが百年に一度花が咲くとその後は枯れるという。こういう感じの寿命はあるのではないだろうか?

いずれにしても生命はまだまだ神秘に満ちていると改めて思った。


名局だった本因坊挑戦手合い第2局

2016-05-25 09:47:55 | 囲碁

5月23,24日と井山7冠に高尾九段が挑戦する本因坊戦の挑戦手合い第2局が行われた。第1局目は序盤で高尾九段が優位に立ち、そのまま押し切った感じだったが、この2局目は序盤から激しい戦いが続き大きな変化を繰り返しながらもどちらが優勢か分からないような状況が続いていた。後半、井山名人がやや有利の感じになったがその後も難しい戦いが続き、最後は井山名人が鮮やかに決めた、という印象だった。

私は23日はウィトラのオフィスでネット中継を見ながら仕事をしていた。囲碁は長考するときは30分以上局面が動かないときがあり、その間に仕事をして時々局面を見に行く。「自分だったらどう打つか」を考えながら見ていて、外れるとどうして外れたのかを考える、これが参考になる。1日目の序盤から激しい戦いで私の予想はなかなか当たらなかった。大きな石を捨てたりする大胆な戦い方を繰り返しながら、どちらが優勢か分からないような均衡状態が続いていた。

24日は一日外出していたのでネット中継を見ることはできなかったが夜、帰宅してから棋譜を見て、激しい戦いが最後までずっと継続していて、最後に井山名人が押し切った感じだった。囲碁では根を詰めて先を読まないと一気に負けになってしまう緊迫した局面と、大体このあたりが相場で、アマチュアが打ってもプロが打ってもあまり差が出ない局面がある。昔の碁はプロ同士の対局でも勝負どころは1回か2回くらいが普通だったのだが、この碁は勝負どころがずっと続いてきた感じだった。そうなると常に緊迫した状況で読み続けなくてはならず、体力が問題になってくる。若い井山名人が体力的に勝ったということではないかと思っている。

私は中国、韓国の碁をそれほど見ているわけではないが、中国や韓国ではこのような「疲れる」碁が多いので、若い人が勝つことが多いのだと思っている。戦いを仕掛けるには戦いを仕掛けるテクニックがあって、うまく仕掛けないとたちまち不利になってしまう。日本の歴代の第1人者はこの戦いを仕掛けるテクニックが優れている人が多く、形勢が不利な時は次々と戦いを仕掛けてチャンスをつかんでで逆転する、逆に自分が有利な時には戦いを仕掛けないでさらさらと打って終わらせてしまう。従って見るほうとしては、第1人者が負けた碁や負けそうになった碁が面白い、というのが従来のパタンだった。

今、中国では戦いを仕掛けるテクニックを身に着けた人が多く戦いの連続になって、日本のプロ棋士は勝てなくなっていると私は思っている。日本でも若い人で戦いを仕掛けるテクニックを身に着けた人が増えているので、今回のような面白い碁ができる。挑戦者の高尾九段は戦い続けて勝ちきるにはやや年齢が高い(39歳)が戦い続けているのは立派だと思った。


IT最大手企業が掲げるAI First

2016-05-12 08:54:48 | 経済

最近、Microsoft、Google、Facebookの幹部がこぞって「AI First」という言葉を発している。私はこれを単純に「AIは今後発展していく重要な技術だから優先度を高く開発しサービスとして提供していく」程度の意味に解釈していたのだが、どうもそれ以上の具体的な狙いがあり、競争の段階に入っているらしい。それは「ユーザのプラットフォームを抑える」という狙いである。

歴史的にプラットフォームを抑える、という戦略はMicrosoftのOSを抑えるところから始まった。競合他社はOSではMicrosoftの牙城を崩せないのでブラウザを抑える戦略に出た。ブラウザは最近Google ChromeがMicrosoftを抜いたが他の企業はなかなか抑えられない。そこで次にアプリを抑える狙いに出た。SNSがその典型だが、これらはアプリの一つに過ぎないのだが、アプリの中で様々な作業ができるようにしてアプリかな抜けださなくても必要な作業を殆どできるようにした。ブラウザもアプリの一つで、その面ではGoogle Chromeが最も進んでいるが、こういった使われ方を狙っている企業は多い。

そして彼らが次に狙っているのがAIである。ユーザが端末の電源を入れると、まずAIを起動し、そこに要件を入力する。AIは他のアプリや他社のAIなどともネットで連携していて必要な作業は殆どやってくれる。そうすればユーザーは自社のAI常時使い続けをるので様々な形での収入につなげることができる、ということのようである。

なるほど、ありそうな話だと思う。OSもブラウザも、SNSも使われ続けるのでどれが真の覇者になるかという決着はなかなかつかないのだろうが、利便性が高く皆が使うという流れができればその方向に一気に流れていくのだろう。消費者向けには広告収入を狙って大手IT企業は無料でサービスを提供するだろうからAIの普及は一気に進むような気がする。


日本の自動車業界の繁栄もあと10年か?

2016-05-09 09:33:39 | 経済

現在日本の産業界をけん引しているのはトヨタをはじめとする自動車業界であることには異論のある人は少ないだろう。様々な問題、新技術の開発による業界の変化などを経ながらも特にトヨタは世界の自動車業界で存在感を増してきている。これはトヨタの社風(カイゼン)という人材育成システムによるものでそう簡単に崩れるものではないだろう。

その一方で、日本の自動車業界に大きな危機が迫ってきていることも私は感じている。それは付加価値の源泉が製造現場ではなく、開発現場、それもソフトウェア開発現場に移りつつあると感じるからである。トヨタの強さはその工場にある。しかし、工場が付加価値の源泉で亡くなれば強さは失われる。その時期は着々と近づいている感じがする。

最近、日本の半導体企業ルネサスが車載半導体で世界シェア3位に転落したと報じられている。1位はNXP(フリップス系)、2位がInfineon(インテル系)だそうである。1位のNXPはモトローラ系の半導体企業Freescaleを買収したことによるものらしいが、トップに躍り出たらしいが、Infineonにも抜かれているのはルネサスの不調を示すと考えて良いだろう。

ルネサスは自動車メーカー毎に半導体(マイコン)をチューニングして製造し納品していたので世界シェアトップであったにもかかわらず利益が出ていないという状態だった。それが自動車業界も徐々に大手の規格に中小の自動車メーカが合わせる標準化が進み、ルネサスのシェアが落ちるという状況となって表れているらしい。

今の自動運転技術の急速な進歩を見るとこの状況は加速し、ルネサスのシェアはますます落ちていくだろう。自動車のCPUもスマホやタブレット端末のCPUが用いられるようになっていき、それにGPUによる人工知能エンジンが追加されるというような状態になっていくと思われる。そうなっていくと自動車の付加価値に占めるソフトウェアの比率が増える。つまり、自動車のコストに占める開発費の比率が増大することになる。

ソフトウェアの開発比率が大きくなると開発費を抑えることが極めて重要になる。そのポイントはハードウェアとのインターフェイスを標準化して、できるだけ共通ソフトを使えるようにしておいて、その共通ソフトに対して思い切った開発投資をすることである。そうなってくるとビジネスモデル自体が変わってくる。パソコンのマイクロソフトやスマートフォンのグーグルのようなソフトウェア専業の企業の存在感が大きくなってくることも考えられる。最近、グーグルとクライスラーが

自動運転技術で提携したが、この動きは注目に値すると思う。私の予想では、中国、韓国、インドの自動車メーカーや、テスラなどもグーグルと提携する可能性が高いと思う。これらの企業はグーグルが開発したソフトウェアプラットフォームを共用するので開発費負担が低くなりコスト競争力が高まる。この現象が目に見えて自動車の販売シェアに反映されてくるのは、今から5年から10年くらいの期間ではないかと思っている。


メディアの取材力の変化

2016-05-07 11:20:31 | 生活

私の家では20年ほど前から日経新聞と毎日新聞の2誌を購読している。それまでは朝日新聞だったのだが自衛隊のPKOに関する報道で朝日が非常に偏った報道をしたと感じたので止めることにして日経に切り替えた。ところが「日経はチラシが入ってこない」と家内からクレームが出たので、日経と毎日の2誌購読をすることにしたものである。

2誌を読み比べていると、非常にゆっくりであるが取材力に差がついてきている感じがする。毎日の取材力が下がって、日経の取材力が上がっている感じである。変化はごくわずかで20年前は毎日100対して日経90という感じだったのが今は日経100に対して毎日90になった、という程度の感じである。熊本の地震などに関しても、毎日は被害の大きなところに他社と一緒に群れている感じだが、日経は部品供給網など独自の時点で取材している感じがある。日経は経済に関しては国内ダントツという意識があるので、独自視点で取材しているのだろうが、毎日は「他社に負けるな」という意識に感じられる。

近年、若者は独立して家から離れた時に新聞を購読しない人が多い。購読するとすれば日経という人が多いのではないかと思う。各社、テレビ局も持っているが、若者のテレビ離れも著しい。そしてネット対応も日経が進んでいる感じがする。日経はイギリスのFinancial Timesを買収するなどグローバルにも目が向いている。高齢者は惰性で読売、朝日、毎日などの大手新聞を購読していると思うが高齢者が亡くなって高齢世帯が減ってくると、読売、朝日、毎日の凋落はこれから加速するのではないかと思う。これまでは1年で1%程度のゆっくりした変化だったのがこれからは1年に2%程度に変化の量が上がるだろうと思う。

新聞各社のガバナンスもかなり怪しげである。現在は外国人が大手メディアの大株主となることに関しては規制がかかっている。この規制が新陳代謝を阻む機能を果たしているのではないかと思う。もっとも怪しげなのは読売で、渡辺恒雄という人物が好き勝手に動かしている感じがする。NHKのガバナンスは政府が監視しているはずだが、それもかなり怪しげである。メディア企業のガバナンスに関して国会で議論すべき時期に来ているのではないかと思う。


安倍首相とメルケル首相の会談をどう見る?

2016-05-05 16:31:56 | 社会

訪欧中の安倍総理がドイルのメルケル首相と会談した。安倍総理の目的は伊勢志摩サミットで経済対策を共同で打ち出したいという考えから、ドイツにも一致して財政出動をお願いする、という趣旨で感触を探ったものだと言われている。安倍首相が「機動的な財政出動が求められている」と発言したのに対し、メルケル首相は「投資、構造改革、適切な金融政策の3つが必要だ」と応じたと言われている。一見方向性はあっているように聞こえるが現地の日経の記者は「ドイツに補正予算を組んで財政出動する意図はなく、ゼロ回答と解釈している。

安倍首相がどう受け止めたかは分からないが、この日経の記者の見方は正しいと思う。メルケル首相は日本が財政出動することに反対はしないが、ドイツは景気刺激策として財政出動はしない、という姿勢を伊勢志摩サミットでも貫くと思われる。会談前に安倍首相は「ドイツが世界で一番財政出動余力がある」と語っており、期待していたのだろうが、実現はしないだろう。ドイツはEUの危機やギリシャ問題に対しても一貫して「緊縮財政にして財政赤字を減らすべきだ」という態度を取っている。これは王道であり、王道を保つのは一つの見識だと思う。ドイツが王道を守れるのは少なくとも、通貨統合しているEUの中では突出した産業競争力を維持しているからだと思う。

財政出動すれば一時的に景気は良くなるが、結局は負担を先送りしているだけである。政府がお金を使って何をするかが問題で、役に立つことに使うのであれば意義はあるが、役に立たないことに使う、いわゆるヘリコプターマネーのような感覚で使うのは問題の先送りにしかならない。使われないような公共設備を作る公共投資は後で維持費がかさみ、マイナスになる可能性も十分にある。政府は国の将来に必要な投資をする、という基本姿勢以上のことはあまりやらないほうが良いだろう。

それでは、日本もドイツのように緊縮財政にするべきだろうか? 安倍総理が日銀と一緒になって金融緩和と財政出動を行ってきたアベノミクスは一定の効果を生んだことは間違いない。やっていなかったら今頃はもっと不況感が強かっただろうと思う。しかし、総理が言うように「インフレ期待が高まり、国民がため込んでいたお金を投資に回すようになって経済全体が良い方向に回りだす」ということは起こっていない。円安になったので一時的に景気が良くなったが、為替の揺り戻しが来るとまた不況感が高まってくる。これは日本企業の国際競争力が全体として低下傾向にあり、この傾向は止まっていないからだと私は考えている。この点に関して日本政府は有効な手立てを打てていない。手を打とうとしていることは感じるのだが有効打が出ていないという感じである。

ドイツは産業政策としてIndustry 4.0という方策を打ち出した。これは世界中に大きな影響を与え、世界各国がなにがしかの対抗策を出そうとしている。これに相当する、世界最先端を狙う産業育成の動きは日本では感じられず、むしろ農業や観光などの世界と比べて遅れていた分野を普通のレベルに上げる動きに注力している感じである。これはお手本があるのでやりやすいが、力強さにはつながらない。

Industry 4.0は大きな話題となったが成功するかどうかは不透明である。シリコンバレーに対抗するのは容易なことではなく、この1年間Industry 4.0はハイプサイクルの頂上を過ぎて熱が下がってきた感じを私は持っている。しかし、ドイツの狙いは中小企業のシステム化にあるので、ニュースリリースするような大きな話は無いが裏では進んでいるのかもしれないとは思う。今年のハノーバーメッセがあまり話題にならなかったことから停滞しているのかとも思う。

いずれにせよ、Industyr 4.0が話題になれば対応する組織を立ち上げる、人工知能が話題になれば対応する組織を立ち上げる、といった今の日本政府のやり方では、しょせん後追いが続くだけで、国際競争力低下を上に向かせることはできないのではないかと思う。