ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

マイクロマネージメントはするな

2013-04-30 14:43:58 | 社会

最近、国会での消費税還元セール禁止のことが時々報じられている。私はこれに関する報道を聞くたびに『マイクロマネージメント』という言葉を思い出す。これは私が3GPPという移動通信の標準化作業をするグループに関わっていた時に知った言葉である。

3GPPは多くの企業からの人が集まって標準を議論する場であるので基本的にそこに出ている人たちに上下関係は無い。しかし、組織運営上、上位組織と下位組織とはあって、組織運営のような話は上位組織が決める。下位組織では主に技術論を戦わせる。この上位組織で時々出る言葉が『マイクロマネージメントはするな』である。要するに上位組織が会組織の細かいことにまで口出しするな、ということである。

3GPPの議論で何か提案が出た時に「それはマイクロマネージメントだ」と言われると、提案者は言葉に詰まってしまう。「マイクロマネージメントだろうが何だろうが、良いものは良いのだからこれをやるべきだ」というような意見を聞いたことは一度もなく、私が知る限りいつも提案者はマイクロマネージメントのレッテルを貼られないように提案を変更していた。3GPPはヨーロッパの人が多いのでヨーロッパでは「マイクロマネージメントをしてはいけない」ということが共通認識になっていると思う。

今回の消費税還元セール禁止法案はマイクロマネージメントそのものである。そしてどういう言い方なら禁止対象となるかなどと言った更に細かい議論をしている。日本ではマイクロマネージメントという概念すら広まっていないと思う。このブログの読者は日本企業の人が大部分だと思うが読者の企業でマイクロマネージメントという言葉が通用する企業は無いのではないかと思う。

「マイクロマネージメントだろうが何だろうが、良いものは良いのだからこれをやるべきだ」という考え方には一理あると思う。小さな企業ならそれでよいだろう。しかし、やはり組織が大きくなると権限を委譲して上の組織ではどこまで決められるかを明確にしておくべきだと思う。京セラのアメーバ経営のようなやり方をしていればそのアメーバ内ではマイクロマネージメントでも問題ないだろう。しかし、そのスタイルではできない大きな話はたくさんある。政治はその典型である。

私は日本にも「マイクロマネージメントはするな」という共通認識が広まることを願っている。


パソコンを買った

2013-04-28 12:37:53 | 生活

昨日であるが、自宅のパソコンが動かなくなった。Windows Vistaが立ち上がらない。NECのパソコンなので121コンタクトセンターに電話して、言われるように色々やってみたが、動かない。それで、新しいパソコンを買ってしまった。前の機種を買ってから5年、再びNEC製を買った。

買ったのはノートパソコンでは無くデスクトップでテレビも見られるものである。前の機種もテレビを見られるものだが、画面のきれいさが全然違う。更にテレビのモデムが3個付いており、テレビを見ながら別の番組を録画できる。前のパソコンでは録画中はその録画番組しか見られないので、私が相撲を見ている最中に画面が突然、子供が録画予約したアニメに変わったりして腹を立てていたものだったが、これからはこういうことはないだろう。録画することを想定してディスクは3テラバイトある。私はテレビの番組を録画したりはしないので、私の感覚ではほとんど無限のメモリーがあるように感じる。

これだけ機能が上がっていて前のパソコンより5万円以上安い。技術の進歩を改めて感じる。Windows 8なのだが、画面はタッチスクリーンではない。テレビ機能を重視していてヤマハのしっかりしたスピーカーがついており、画面に触るという雰囲気では無い。良くコマーシャルに出てくるWindows 8の画面は慣れないので使いにくい。従来型の画面もあるのでそちらで使っている。

Windows 8で強く感じるのはマイクロソフトが自分のクラウドに誘導しようという意思の強さである。Officeのソフトが入っているのだがそれを使えるようにするにはマイクロソフトのアカウントを作らないといけない。私はマイクロソフトのネットワークサービスはOutlookから色々触ったことがあるがどうも好きではない。それでアカウントを作らずに何とかしようとしたのだがうまくいかず結局アカウントを作った。マイクロソフトによるとOfficeソフトで作ったものを自動的にクラウドに預けられるというのだが、これは私はあまり信用しておらず、使わない可能性が高いと思っている。

今回のパソコン買い替えでもう一つ感じたのはNECのコンタクトセンターがすんなり電話がつながった点である。以前は待たされてイライラしていたのが、すぐにつながった。運が良かったというより、電話で相談する人が減っているのではないかと感じている。

 


イカ釣り船の一斉休業

2013-04-26 09:11:55 | 経済

全漁連が今日、明日と全国でイカ釣り船の一斉休業を決めた。円安による燃料高騰に対応する措置で妥当な対策だと思う。燃料が高騰して漁に出ても赤字になってしまうとのことで全国一斉休業すればイカの市場への入荷が減り、以下の卸値が上がるだろう。資源保護の観点も含めて、あって良い対応策だと思う。更に円安が進めばもっと休業日を増やせばよい。

ただ、テレビに出てきた人のインタビューを見ると政府から補助金を引き出すためのデモンストレーションという性格が強いようである。これに関しては「なさけない連中だな」という思いを禁じ得ない。円高で古しくなったときに製造業が補助金を求めて政府にかけ合ったりしただろうか。大企業は体力があるなどというが、中小企業だって自助努力をしている。努力の成果もむなしく廃業に追い込まれたところも少なくない。これが生きた経済である。

漁に出なければ収入がない。当たり前である。しかし、産業として先行きが細っているのであれば、イカ釣り船だって、休業して捕獲量をコントロールして市場価格を制御するというような工夫だけでなく、合併するなりして休業期間は別の仕事をすると言った工夫もするべきである。やり過ぎると、独占禁止法で禁じているカルテルとみなされるかもしれないが、養殖では無く天然の生き物を獲る事業にはいずれにせよ何らかの生産調整の行動が必要だと思うのですぐにカルテルだと言われることはないだろう。

ウナギも稚魚が減って価格が高騰していると聞く。それでめったにウナギが食べられないようになればそれで良いではないかと思う。イカに関しても同様である。第1次産業に人たちはすぐに政府の補助金に頼る傾向がある。そして補助金に頼る傾向のある産業はほぼ例外なく衰退していく。自立してほしいものだと思う。

 


米クアルコムの成長

2013-04-25 10:43:24 | 経済

アメリカの半導体会社クアルコムの業績が好調である。株価の時価総額では巨人インテルを逆転している。今年に1-3月期の売り上げではインテルが126億ドル、クアルコムが61億ドルである。インテルは3%減、クアルコムは24%増であるが、絶対額はまだインテルのほうが2倍ある。一方利益はインテルが20億ドル、クアルコムは19億ドルで拮抗している。クアルコムの利益率は非常に高い。こういった点が時価総額に現れている。

クアルコムは研究開発型の会社で製造は行っていない。その分は売り上げよりも利益に効きそうなものだが、利益が大きいのはたいした実力だろ思っている。研究開発は全て成功するとは限らない。失敗の確率の高い事業である。クアルコムはCDMA技術を実用化して有名になり、独自のシステムCDMA2000のチップセットで高い利益率を上げていた。このシステムを広めるために、一時期は基地局も、端末も事業を行っていたが事業が軌道に乗ると基地局、端末の事業は売却してチップセットに特化し高い利益率を確保した。その後WCDMAが広まってくると敵視していたWCDMAのチップセット開発に参入し、全力を投入して圧倒的シェアを確保するに至った。

失敗例もかなりある。モバイル放送を目指して、MediaFLOという技術を開発し、電波をオークションで買い求めてサービスを開始したが、うまく行かないと判断して1年ほどで撤退した。シャープに出資したディスプレイの技術もあまりうまくいかなそうだと思っている。それでも伸び続けているのは、無線チップセットに加えて、メインの処理を行うスナップドラゴンというチップセットが成功しているからである。これはAndroidを提唱したグーグルと組んでいち早くリソースを投入し、無線チップと合わせてシェアを拡大してきており、インテルの地位を脅かすところまで来ている。

スナップドラゴンはクアルコムには珍しく、自社のオリジナルのアイデアは少なく、ARMのアーキテクチャをベースにしている。どちらかというとオリジナルのアイデアを入れるというよりも、効率を高める技術を磨いたという感じである。現在のクアルコムは無線チップとスナップドラゴンを事業の核としながら様々な分野に研究投資を行い、良いアイデアが出ればダイナミックに実用化まで投資を行っている。失敗も多いが、大やけどを負う前に手を引き、高い利益を確保し続けている。

私に取ってライバル会社であったが、敵ながらあっぱれという感じがしている。


0増5減案をめぐる議論

2013-04-24 08:48:39 | 社会

0増5減案が衆議院を通って参議院に行くことになった。これで今国会での成立は間違いないと言われている。この議論を聞いている限り、国会議員には議員定数の在り方をきちんと議論する能力(というよりも人格)が無いと感じる。

私が以前から思っていてこのブログにも書いたこととほぼ同じことが今日の毎日新聞の社説に出ていた。つまり、野党も含めてさっさと0増5減案を成立させ、次のステップとしての抜本的改革の検討を始めるべきである。それがまとまらない場合には第3者委員会に委託すべきである、ということである。

野党は抜本的改革案というのを出している。それなりの根拠はあるのだが短期間に与野党合意が取れるとも思えない内容である。特に原理原則だけでなく詳細についてはそうである。時間をかけて検討チームを作ることを提案せず、国会の場でいきなり議論を求めて自分たちの案のほうが良いと主張するやり方はしかし、否決されることを承知の上でのパフォーマンスのように感じられる。

一方、与党側も、「原則には野党も合意した」というばかりで、「これは緊急避難的措置で、抜本改革体制については法案成立後ただちに体制を作って検討に入る」ということを言って野党の合意を求めるべきなのにそれをしようとしない。維新の会くらいはこういった対応をするかと思っていたが、それもない。増税をする以上議員の痛みも必要という定数削減も含めて、本音では与野党ともやりたくないことが見え透いている。

今回、毎日新聞が社説でこのような意見を出したことは大きいと思う。他のメディアも言葉は違え似たような内容のことを言い始めれば60日間で衆議院再可決で0増5減案が成立する前に、次のステップの呼びかけをする政党が出てくることが期待できる。維新の会かみんなの党あたりに個人的には期待している。

毎日の社説には書いていないのだが、私は最高裁判所にも注文したいことがある。以前書いたような選挙無効訴訟を一本化することと、無効判決を出す場合には訴訟の対象となっている地区の議員では無く、最も重みの低い地域の2倍以上の重みを持つ選挙区からの当選者を失職させる、という判断である。今回の選挙に対しての当選者を失職させる必要はないが次回も2倍を超える違憲状態で選挙が行われた場合には「こういう判決を出すよ」と予告することが大切だと思う。やはり、裁判所の判断は不当に有利な条件で議員になった人物の当選を無効とするべきだと思う。


大学の部屋の引っ越し

2013-04-23 13:26:59 | 東工大

大学の部屋を引っ越した。私が大学に行くようになって2年半、その間で3度目の引っ越し、4度目の部屋である。随分頻繁な引っ越しだと思う。最初は講座の部屋が用意されておらず、他の連携教授と相部屋だった。4か月ほどして講座としての部屋を一つもらい、JR寄附講座の二人の特任教授が一つの部屋に入ることになった。

ところがその部屋はかなり地位の高い人が入る普通の教授の2倍の大きさの部屋を真ん中で仕切ったものであり、しばらくは隣の部屋も空いているから使ってよいと言われた。そこで、私がその予備の部屋に移って一人一部屋で使っていた。1年ほどして私が入っているほうの部屋を使うから空けろ、と事務方から言われた。その時には既にもう一つの部屋には相棒が大量の書籍を運び込んでおり、二人入るのは極めて苦しい感じだった。大学教授の部屋というと多くの人が想像するように壁いっぱいに高い書棚があって本で埋もれるようなイメージがある。私の相棒はそういった部屋の使い方をする人だった。私のほうはほどんど電子データにしていて紙の資料はもらってもどんどん捨てている。簡単に引っ越しできる状態だった。

そこで事務の人が配慮して離れた建物に一つの部屋を確保してくれた。これが2度目の引っ越しである。それから更に1年、私のいる建物は耐震工事を本格的にするので、全員別の建物に引っ越すように言われた。この時再び私には一部屋もらう権利がないので返すようにという話しが出てきた。しかし、なんとか部屋を探してもらって今日、3度目の引っ越しを行った。

大学に来て2年半の間に資料もある程度たまっていたが、それでも段ボールに5箱程度だった。引っ越し説明会では資料の多い教授は200個、300個の段ボールが必要と言われて驚いた。段ボールは少ないのだが、折角部屋をもらっているので要らなくなったテーブルや椅子をもらってきて打ち合わせコーナーを作ったりしているので、そんなにガラガラでは無い。新しい部屋は当初は今までと同程度、あるいはむしろ広いくらいと言われていたのだが見に行ってみると真ん中で仕切られていて、半分は理学部の教授が使うことになっていた。新しい私の部屋があるあたりは主に理学部は使うことになっており、その中に工学部所属の私が入ることになっており、工学部と理学部の事務方の思惑がずれていたのであった。普通は部屋の大きさが半分になると大騒ぎをするのだが、私の場合、荷物も少ないし、元々権利として主張できない立場なので、その大きさで受け入れた。それでも机やテーブルを運び込むとかなり狭い感じで、引っ越し業者の人に「先生、業績を上げて広い部屋をもらってください」と励まされた。

この部屋も仮住まいで耐震工事が終わると再び引っ越さないといけない。次の引っ越しは多分来年の今頃だろうと思うが、荷物は増やさないようにしようと思う。


業務用端末の終焉

2013-04-23 07:50:36 | 経済

私の良く行く、大岡山駅前のサイゼリヤで店員が注文を取るときに使う業務用端末が変わった。以前からウェイトレスが無線端末を持っていて注文を受けるとそれを入力し、その瞬間に厨房に注文が届くようになっていた。その端末が変わったのである。注文を言うとウェイトレスの若い女性ががタッチスクリーンで操作している。慣れない様子ででまどっている。「端末が変わりましたね」というと「そうなんです。「iPodタッチなんですけどまだ慣れなくて・・ハイ、これで注文通りました。」と答えてくれた。

無線の業務用端末は十数万円するだろうが、iPodタッチならその1/10くらいの値段だろう。コストダウンにはうってつけである。最近はお金を払う時に使うレジもiPadに変わってきているらしい。レジの場合には現金を扱うので簡易金庫の機能などが必要で簡単には置き変わらないと思っていたが、金庫と、支払い金額の打ちこみは分離しているらしい。それでもまだ金庫機能があるので置き換わるには時間がかかるだろう。

考えてみると、注文を受けた時点で客が支払う金額は確定しているのに、それを紙に打ち出して、レジまで持っていき、レジのところでもう一度入力している。無駄な作業だし、打ち間違いも起こる。混雑しているときには支払いの行列もできる。いずれNFCになって自分のテーブルにカードまたは携帯電話をタッチすると「シャリーン」となって支払い完了。ポイントもつく、というような形態になるのではないだろうか。客の半分がそういう払い方をするようになれば店にとってはかなりの負荷軽減になるだろう。

こういう感じで特殊端末はどんどん無くなっていく。値段の高い業務用端末は大儲けしていたかというとそうでもない。台数が出ないので開発費負担が重かったのである。今回のサイゼリヤの場合にはハードを持たないどこかの会社がiPodタッチ用のソフトを開発して売り込んだものだろう。既存のメーカーは自分の売り上げが減るのでなかなか踏み込めない。新規参入の会社ではないかと思う。従って業務用端末を作ってビジネスをやっていたような企業は撤退に追い込まれるだろう。

決済して売り上げを本社に上げて分析するようなシステムはサイゼリヤのような規模なら自前で持っていて相当な金額をかけているのだろうが、街のラーメン屋のような小規模店舗はどうしているのだろう。レジに連動したパソコンソフトなどでやっていて結構お金がかかっているのではないだろうか。こういうのはクラウドで売り上げ分析サービス、一月三千円くらいだとユーザがつくのではないかと思う。そうなると一番良いソフトを持っているところにシェアは集中する。ネットの発展は仕事を奪う、というのは本当だと感じる。


囲碁、井山六冠の特集番組

2013-04-21 18:28:52 | 囲碁

囲碁で井山裕太氏が史上初の6冠となった事をNHKの教育テレビで取り上げ、6つ目のタイトルの棋聖戦の勝負どころの感想を解説していた。番組は師匠である石井九段が「この手はプロでも驚いていたけど、どの辺りから考えていたの?」と聞いてそれに井山氏が答える形で棋聖戦挑戦手合いの勝負所を解説していた。囲碁の解説というよりは、プロでもほとんどの人が気が付いていなかったような点を、どういう気持ちで打っていたのかという人間性のようなものを引き出そうとする番組だったが、プロ同士の会話なのでかなり強い人でないとぴんと来なかったかも知れない。

私が感心したのは第5局で、黒ががっちり地を固めて白番の井山氏が攻めに行ったあたりで、私は井山氏が苦しい局面だと思っていたのだが本人は苦しいと思っていなかった点である。一見して黒字が多く、白は黒石を攻めることはできそうなのだが攻めてどこに地を作ればよいかが見えない局面で、相手の石を取ることもできそうになかった。しかし、井山氏は「互角以上」という感触を持っていたようである。それは攻められる黒石は捨てられないほど大きく、周りの白石にも弱みが無いからだった。こういうところの感覚は井山六冠と残る一つのタイトルを持っている山下名人に共通している感じがする。実際、その碁は白が上手く攻めて勝った。

番組の中で様々な人の井山評が出てきたが私が普段感じている「井山氏は江戸時代の本因坊秀策と似ている」と言った人は居なかった。本因坊秀策は「ヒカルの碁」でサイとして出てきた江戸時代の名人である(実在の人物)。囲碁の名人クラスは誰でも考え方が柔軟で構想力がある。構想を立てるのだが相手のいることなのでそれを邪魔してくる。そのときにプランBを用意しておいて邪魔するならプランB にする、という考え方が柔軟でかつ上手いのである。そして結果として相手を攻める形になることを好むあたりが秀策と似ていると思うのである。攻めは好きな名人クラスの人として過去に藤沢秀行とか大竹英雄とかいう人たちが居たが、こういう人たちよりも井山氏のほうに秀策との近さを感じる。

日本国内では無敵の井山氏も韓国、中国にはなかなか勝てない。彼が韓国、中国の棋士をどう感じているのかを聞いてくれるともっと良かったのだがそこが少し残念である。


安売り規制について思うこと

2013-04-20 14:59:52 | 社会

最近、消費税還元セールについて政府が規制をかけようとして経済界と議論になっている。政府は強行するつもりのようだが、私は反対である。いわゆる「マイクロマネージメント」で細かいことに口を出し過ぎだと思っている。そういう低次元の話では無くもっと大きなレベルでの安売り規制をするべきではないか、という思うことがあり、今日はそれについて書いてみたい。

私が気にしているのは具体的に言うとグーグルの動きである。グーグルは検索ソフトを始め、Android、ユーチューブその他の多くのサービスを無料で提供している。便利な機能が多く、私自身も愛用しているのだが、「本当にこれだけの物を無料で提供して良いのか?」という思いがある。

以前にも書いたことがあるのだが、このことが業界全体としてマイナスではないかという思いがある。実際には価値のあるものを極端な低料金で提供することに対して違和感を感じている。昨日も書いたことで最近、日経ビジネスで読んだのだが、21世紀に入って技術革新が人の職場を奪っているという話しである。インターネットベースの技術革新は瞬く間に世界に広がり、それまで人が行っていた作業がネットで行えるようになる。作業が効率化された分、人手は不要になる。普通の技術革新ではそれに代わる仕事が生み出されるのだが、最近の技術革新の速度は効率化が先行しているという話しである。

グーグルの場合で言うと殆どあらゆるサービスを無料で提供する経費は広告料で集めている。グーグルは世界で圧倒的なシェアを持っているので広告料で十分に賄えて、利益も出ているのだが、業界全体でいうと、規模は縮小していると思う。情報サービスの会社や放送局などがあおりを食っている。

要するに産業全体の規模がグーグルのおかげで小さくなっていると思うのである。アマゾンに対しても同様な危惧を感じている。アマゾン自身は優良企業でも、それのあおりを受けて業績が悪化している企業は多く、業界全体としては縮小している感じがする。

光通信に関しても同様の印象がある。1980年から2000年にかけて光通信の分野は急速に技術革新が進み、需要を大きく上回るネットワークが構築されてしまったためにしばらく需要が無くなり、光通信の事業を行っていた企業は大部分がおかしくなった。いわゆるネットワークバブルがはじけたという現象である。それが最近のネットワークブームにつながっているのだが、光通信の事業に関わっていた人達は巨大な技術革新を生み出した割には報われなかったと思っている。これも価値のあるものを極端に低い価格で提供した結果だと思っている。

光通信の場合には自滅であるが、グーグルやアマゾンでは他の業界の人達が困っている。それで、価値のあるものを極端な低価格で提供することに対する規制が必要ではないかと思うのである。自由経済の原則に反することだし反作用も大きい。実行も難しいだろう。私の中でも結論は出ていないのだが、価値のあるものを極端な低価格で提供することを抑えるような仕組みがあったほうが良いのではないかと思うことがあるのは事実である。


将棋でコンピュータが名人に勝つ日は近い

2013-04-19 13:53:17 | 囲碁

将棋界で電脳戦というコンピュータプログラム上位5種とプロ棋士5人が戦う企画を行っている。

プロ棋士側は、阿部4段〇、佐藤(慎)4段X、船江5段X、塚田9段は引き分けで1勝2敗1引き分けである。最後の三浦8段が勝って全体として引き分けとなる。三浦8段以外はトッププロとは言えず、塚田9段も団井は9段だが過去の人になっているのでまだ名人に勝つレベルにコンピュータがなったとは言えないが、総統に近いレベルまで来ている。注目の三浦8段の対局は明日である。

この勢いだと2年後くらいには名人と互角、その後はコンピュータのほうがどんとん強くなって人間は離させる一方ということになるのではないだろうか。幸い、囲碁の世界ではまだ人間のほうが大分強い。先日、プロ棋士の石田芳夫9段が4子置かせて負けたというのが話題になっている。石だ9段に4子で勝てると言えばアマチュアでは相当強いほうに入る。しかし、これも対局を繰り返すとコンピュータの癖を人間が掴んで人間側の勝率が上がる感じがしている。

チェスの世界では1996年に世界チャンピオンが初めて人間に勝ち、その後は離される一方である。最近はコンピュータがグランドマスター相手に駒を落として良い勝負になっている。チェスの世界ではプロの団体は無く、基本的にアマチュアである。選手をランク付けする仕組みはあり、世界の大会などで好成績が続くとグランドマスター(GM)という称号がもらえる。但しグランドマスターは世界に1000人以上いるので、GMに駒落ちで指したからといって世界チャンピオンに駒落ちで指せるとは言えないだろう。

チェスの世界はプロでは無いのでまだ良いのだが、将棋のようにプロでありながらコンピュータに勝てないとなると果たしてスポンサーが続くのだろうかというのが心配になる。今は珍しがっているが、人とコンピュータの対戦やコンピュータ同士の対戦では今一つ盛り上がらないのではないかと思う。コンピュータ同士の対局の棋譜にどれくらいの人がお金を払うだろうか。スポンサーがつかなくなって日本将棋連盟は解散してしまうのではないだろうか。コンピュータが職業をなくすことに複雑な思いがある。

考えてみればコンピュータにつぶされた職種は他にもたくさんある。これからもどんどん出てくるだろう。21世紀に入ってからは技術イノベーションが人の職業を奪っているという統計がある。20世紀までは技術イノベーションによって職を失う人がいても、それよりも新たに生み出される仕事が多く、全体としては職業は広がっていたのだが21世紀にはそれが逆転しているという。人の仕事というものの将来像を考える哲学を議論する必要がありそうである。