最近、国会での消費税還元セール禁止のことが時々報じられている。私はこれに関する報道を聞くたびに『マイクロマネージメント』という言葉を思い出す。これは私が3GPPという移動通信の標準化作業をするグループに関わっていた時に知った言葉である。
3GPPは多くの企業からの人が集まって標準を議論する場であるので基本的にそこに出ている人たちに上下関係は無い。しかし、組織運営上、上位組織と下位組織とはあって、組織運営のような話は上位組織が決める。下位組織では主に技術論を戦わせる。この上位組織で時々出る言葉が『マイクロマネージメントはするな』である。要するに上位組織が会組織の細かいことにまで口出しするな、ということである。
3GPPの議論で何か提案が出た時に「それはマイクロマネージメントだ」と言われると、提案者は言葉に詰まってしまう。「マイクロマネージメントだろうが何だろうが、良いものは良いのだからこれをやるべきだ」というような意見を聞いたことは一度もなく、私が知る限りいつも提案者はマイクロマネージメントのレッテルを貼られないように提案を変更していた。3GPPはヨーロッパの人が多いのでヨーロッパでは「マイクロマネージメントをしてはいけない」ということが共通認識になっていると思う。
今回の消費税還元セール禁止法案はマイクロマネージメントそのものである。そしてどういう言い方なら禁止対象となるかなどと言った更に細かい議論をしている。日本ではマイクロマネージメントという概念すら広まっていないと思う。このブログの読者は日本企業の人が大部分だと思うが読者の企業でマイクロマネージメントという言葉が通用する企業は無いのではないかと思う。
「マイクロマネージメントだろうが何だろうが、良いものは良いのだからこれをやるべきだ」という考え方には一理あると思う。小さな企業ならそれでよいだろう。しかし、やはり組織が大きくなると権限を委譲して上の組織ではどこまで決められるかを明確にしておくべきだと思う。京セラのアメーバ経営のようなやり方をしていればそのアメーバ内ではマイクロマネージメントでも問題ないだろう。しかし、そのスタイルではできない大きな話はたくさんある。政治はその典型である。
私は日本にも「マイクロマネージメントはするな」という共通認識が広まることを願っている。