東京で、ごく一部のルートであるが、自動運転タクシーの実証実験が始まった。タクシー大手の日の丸交通が、自動運転の開発ベンチャーと組んで大手町と六本木ヒルズの間を自動運転タクシーで運転するという話である。私が驚いたのは、料金を取るという点である。実験なのでてっきり無料だろうと思っていたのだが、料金を取るということは事故を起こした場合の責任分解などもある程度用意ができているのだろうか。公道を自動運転のタクシーが走るのは世界初とのことである。
自動運転の分野では日本はかなり出遅れていると言われている。アメリカではGoogleが自動運転車を既に100万Kmを優に越えるくらい走らせていて、小さな問題を起こしそれをデータとして取り込んでアルゴリズムの改良を繰り返している。しかし、いまだに有料サービスは認可されていない。これに対して、今回の日本の実験サービスにはどんな意味があるのだろうか? 私には「日本もやっている」という印象付けの目的しか感じない。これでそれほどデータ取得に役立つとも思えず、出遅れている技術を回復できるのだろうか、と疑問に思う。
道路事情は国によって異なるので、アメリカで自動運転が認可されたからと言って、日本でも同じ条件で認可できるものではない。日本の事情を考慮した認可条件があるべきだろう。このようなスタンドプレーを見ると、むしろ実態の検討が遅れているのではないかという危惧をもってしまう。トヨタが自動運転の制御技術を外販する発表をしたように、メーカーは世界で事業を行っているので出遅れてはいても着実に手を打っている印象だが、政府系が焦って、目立つ発表をしている気がして、気になるところである。