リオ五輪で日本勢は史上最大のメダル獲得数で終わった。今回の特徴は銅メダルが多かったという点だろう。私はこれはとても価値のあることだと思っている。殆どの銅メダルは水泳のような大勢で一斉に競技して3位、ではなく、3位決定戦で勝って3位、という勝って終わるパタンだったからである。
全体を見るとイギリスがメダル獲得数2位だった。日本の人口の半分のイギリスが、スポーツ大国のロシアにかなり欠場があったとはいえ、アメリカに次ぐスポーツ大国になったということは立派なものである。これは21世紀に入ってからの宝くじの利益をスポーツ振興に充てる強化策が実ったものだと言われている。これから日本でも東京五輪に向けての強化策の議論が活発になるだろう。
今大会では良かった分野と悪かった分野がはっきり分かれた。良かったのは柔道、女子レスリング、体操、水泳、バドミントン、卓球で悪かったのは陸上だろう。最後のリレーでの銀メダルが無かったら陸上関係者は徹底的にたたかれていただろうと思う。おそらく成功した分野のやり方を研究したり、イギリスのやりかたを研究したりすることだろう。
スポーツ強化にはまず、予算を確保することが必要である。その予算をどう使うか、金額が少ない段階では、オリンピック候補選手のような有力選手の海外遠征や合宿費用をサポートしたり、メダルの報奨金を増やしたり、有力なコーチを海外から招聘したりするのだろう。ある程度予算が増えてくると、すそ野を広げることに予算を使う。インターハイ出場選手の内で有力な選手を強化選手として強化する体制を作る、などである。誰を強化選手にするかはスカウトの眼力の問題だが当然当たりはずれがあるので、最初は広めに強化選手を選んでその中で伸びてくる選手を集中的に強化し、伸びない選手には外れてもらう、というような仕組みを作ることが必要だと思う。
私はスポーツをこのようにして強化することに特に賛成でも反対でもない。やや賛成という程度であるが、本日の主題はこのような考え方を中小企業の育成に導入すべきではないか、という点にある。つまり予算規模によるが、最初は広く薄く支援して、次第に支援対象を成長を続ける企業に絞り込んでいく、このような考え方はスポーツ選手の強化策と類似性が高いと思っている。この考え方は今でもある程度は使われていると思う。
スポーツと違うのは、最後の代表選手を選ぶ段階である。この段階で産業界ではベテラン選手の意見が強く、若手選手の代表入りを阻止しようとする動きに出る。そこを客観的データで若手でも実力のある選手を選ぶということが産業界ではできていない。
一つには産業界ではオリンピックのような大きなイベントがなく、『代表選出』に相当する概念が無いことがある。しかし、私は政府の方針を議論する委員会などの委員選出はこのような代表選出に相当するのではないかと思っている。大企業でも利益を出していない企業は委員から外して、新しく伸びてきた企業の人を委員としてどんどん採用する。オリンピックの代表選出でもしばしば代表選出プロセスの透明性が問題となるが、政府の委員会でも委員選出プロセスの透明性を確保して、政策に若い企業の意見がより反映されるようにすれば、日本企業の新陳代謝も早まるのではないかと思っている。