ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

オリンピックの強化策を拡大解釈

2016-08-25 11:01:38 | 生活

リオ五輪で日本勢は史上最大のメダル獲得数で終わった。今回の特徴は銅メダルが多かったという点だろう。私はこれはとても価値のあることだと思っている。殆どの銅メダルは水泳のような大勢で一斉に競技して3位、ではなく、3位決定戦で勝って3位、という勝って終わるパタンだったからである。

全体を見るとイギリスがメダル獲得数2位だった。日本の人口の半分のイギリスが、スポーツ大国のロシアにかなり欠場があったとはいえ、アメリカに次ぐスポーツ大国になったということは立派なものである。これは21世紀に入ってからの宝くじの利益をスポーツ振興に充てる強化策が実ったものだと言われている。これから日本でも東京五輪に向けての強化策の議論が活発になるだろう。

今大会では良かった分野と悪かった分野がはっきり分かれた。良かったのは柔道、女子レスリング、体操、水泳、バドミントン、卓球で悪かったのは陸上だろう。最後のリレーでの銀メダルが無かったら陸上関係者は徹底的にたたかれていただろうと思う。おそらく成功した分野のやり方を研究したり、イギリスのやりかたを研究したりすることだろう。

スポーツ強化にはまず、予算を確保することが必要である。その予算をどう使うか、金額が少ない段階では、オリンピック候補選手のような有力選手の海外遠征や合宿費用をサポートしたり、メダルの報奨金を増やしたり、有力なコーチを海外から招聘したりするのだろう。ある程度予算が増えてくると、すそ野を広げることに予算を使う。インターハイ出場選手の内で有力な選手を強化選手として強化する体制を作る、などである。誰を強化選手にするかはスカウトの眼力の問題だが当然当たりはずれがあるので、最初は広めに強化選手を選んでその中で伸びてくる選手を集中的に強化し、伸びない選手には外れてもらう、というような仕組みを作ることが必要だと思う。

私はスポーツをこのようにして強化することに特に賛成でも反対でもない。やや賛成という程度であるが、本日の主題はこのような考え方を中小企業の育成に導入すべきではないか、という点にある。つまり予算規模によるが、最初は広く薄く支援して、次第に支援対象を成長を続ける企業に絞り込んでいく、このような考え方はスポーツ選手の強化策と類似性が高いと思っている。この考え方は今でもある程度は使われていると思う。

スポーツと違うのは、最後の代表選手を選ぶ段階である。この段階で産業界ではベテラン選手の意見が強く、若手選手の代表入りを阻止しようとする動きに出る。そこを客観的データで若手でも実力のある選手を選ぶということが産業界ではできていない。

一つには産業界ではオリンピックのような大きなイベントがなく、『代表選出』に相当する概念が無いことがある。しかし、私は政府の方針を議論する委員会などの委員選出はこのような代表選出に相当するのではないかと思っている。大企業でも利益を出していない企業は委員から外して、新しく伸びてきた企業の人を委員としてどんどん採用する。オリンピックの代表選出でもしばしば代表選出プロセスの透明性が問題となるが、政府の委員会でも委員選出プロセスの透明性を確保して、政策に若い企業の意見がより反映されるようにすれば、日本企業の新陳代謝も早まるのではないかと思っている。


オリンピックの卓球を見て

2016-08-20 09:35:34 | 生活

リオ五輪も終盤に入ってきているが、日本選手の活躍が目立っている。私は中学、高校と卓球部だったので卓球の放送を良く見たのだが、卓球の放送枠がずいぶん多かった感じを持っている。卓球は「暗い」と言われたマイナーなスポーツだったのだが、最近はメジャーになってきたのだろうか。男子は水谷が個人で銅メダル、団体で銀メダルで、過去最高の成績である。女子も団体で銅メダルを取った。レスリングの吉田沙保里選手が銀メダルで「すみません」と大泣きしていたのに、卓球は銀メダルで大喜び、吉田選手に気の毒な気もするが、戦前の予想と比べて頑張った、ということで素直に祝福したい。

実際、水谷選手は今回、伸びたような気がする。シングルスの準決勝で中国の馬龍と当たった時には簡単に負けるだろうと私は思っていた。春の世界選手権では手も足も出ずに負けていたからである。しかし、2ゲームを取って存在感を示した。実際、馬龍は肝を冷やしただろうと思う。3位決定戦では順当勝ちだったと思う。そして驚いたのは団体決勝で中国側が水谷と馬龍の対決を避けて、馬龍をトップに出してきたことである。卓球の団体はSSWSSと5試合で普通エースは2番目に出てシングルを2回戦う。他の二人はシングル1回、ダブルス1回という戦い方である。中国の2番手許キンにも過去に水谷は勝ったことがなかったので、これでも勝てると読んだのかもしれないが、実際水谷は許キンに勝った。水谷のシングルスの戦いぶりや団体のドイツ戦での戦いぶりを見て監督が「リスクが高い」と判断したのだと思う。これまでは中国との間にレベル差があった感じだったが、水谷は差を埋めて「中国にも勝つかもしれない」という感じを与えてくれたのは大きかった。

女子ではシングルスに出られなかった15歳の伊藤が鍵を握っていたと思う。シングルスの代表は国から二人なので石川、福原が代表になっていたが、私は内心、伊藤のほうが福原より上ではないかと思っていた。伊藤は「全然固くならない」とよく言われているが、今回のオリンピックでは精神面の影響が出たように思う。準決勝のドイツ戦で、伊藤はトップだった。監督は伊藤での「勝ち」を計算していたと思うが、ソルヤに負けた。そして、ダブルスも負けた。石川が2勝してエースの仕事をしたのだが、2-2で最後の福原戦に回れば、相手はドイツのエースなので苦しい、と監督は思っていたはずである。福原は善戦してぎりぎりのところだったが最後にエッジで決められてしまった。福原は「私のせい」と言っていたが伊藤をかばう気持ちがあったと思う。3位決定戦では4番目で出てシンガポールのエースで世界ランキング4位の選手に勝った。ダブルスで勝っており、自分が負けても、最後の石川が勝ってくれる、という安心感があったのだと思う。格上の選手に堂々と打ち勝った。伊藤は今回の大会では「勝たないといけない」と思ったときの苦しさを味わったと思うが、水谷と同様に中国の選手と対等に戦える可能性を秘めた選手だと思う。

福原は「苦しいオリンピックだった」と言って涙を浮かべた。シングルスと団体合わせて5敗しており、その気持ちは理解できる。しかし、卓球が大きく扱われるようになったのは福原の貢献が大きいと思う。次の東京オリンピックの時には引退していると思うが、「ありがとう」と言いたい気持である。


土曜日のプチツアー

2016-08-14 16:05:31 | 生活

今年に入って、私は土曜日の午後に外出することにしている。始まりは「今年は囲碁を年間100局以上打とう」と心に決めて、学士会の囲碁部に入ったことである。

朝、いつものように1時間半くらいの散歩をしてウィトラのオフィスに行きテレビを見たりパソコンをやったりしながら11時頃から自作のサラダと焼き飯とワインの昼食を作って食べ、12時頃には出かける。桜の季節には千鳥ヶ淵などの桜の名所を通って1時半くらいに学士会館に行き、5時頃まで打つ。大体、4時半を過ぎると次を打とうという人はいなくなるので遅くとも6時には終わる。8段で登録して毎週土曜日に神保町にある学士会館に行って2-3局打つ。毎月10局以上打っているので目標は達成できそうだし、次第につまらない間違いで負けることもなくなってきた感じがする。会合は月、水、土と行われており、約2か月のリーグ戦で勝ち星の多い人が優勝となる。負け数はカウントされない。私は殆ど負けることは無いのだが、土曜日にしか行っていないので優勝などはできず昇段は難しい。

このリーグ戦が8月は休みなので、8月に入って土曜日の午後は近場の観光地を歩いている。第1週は関内からフェリス学院のほうの丘を登って「港の見える丘公園」を通って根岸森林公園に行った。三渓園まで歩こうと思ったのだが疲れてきたので根岸駅から帰ってきた。中華街までは何度か行ったことがあるがその南のほうに行ったのは初めてで横浜の景勝地を堪能してきた。

昨日は、北鎌倉から鎌倉にかけて歩いた。北鎌倉で横須賀線を降りて、円覚寺、建長寺から天園ハイキングコースを少し歩いて鶴岡八幡宮に出た。円覚寺、建長寺はともに臨済宗のお寺で、私の父の墓がある京都の妙心寺も臨済宗なので若干似たところがある。但し、京都は繊細で美しく、鎌倉は壮大で静かという感じがする。庭園などははるかに京都のほうが良いが、全体の雰囲気は鎌倉も好きである。

鶴岡八幡宮に行くまでは観光客もちらほらで静かな感じだったのだが、鶴岡八幡宮はたくさんの観光客が居てお祭りのような感じだった。特に鎌倉駅までの小町通は、浴衣を着た若い女性や、デートの男女などでごった返していた。観光地だけでなく、おしゃれな店がたくさん沿道にできているところが人を集める魅力になっているのだろうと思う。若い女性は「見せる」ことを意識した服装で来ているので見ていて楽しかった。

そこから大仏、長谷寺と歩いた。こちらもかなり混んでいる。私の中では建長寺と大仏は同レベルの観光地、というイメージがあったのだが、観光客数は大仏のほうが10倍くらい多かった。長谷から江ノ電で藤沢に出て小田急で中央林間、そこから東急であざみ野に帰ってきた。鎌倉に行ったのも20年ぶりくらいで、楽しめた。

 


天皇陛下のビデオメッセージについて

2016-08-12 09:59:38 | 社会

天皇が自らの気持ちをビデオメッセージとして広く国民に伝えた。天皇の在り方についてかなり踏み込んだ発信だったと思うが、私を含めて大部分の国民は好意的に受け止めたと思う。ニュースでもいろいろ解説されているし、多くの人が発言しているので今更私が何か言うことも無いのだが、あまり世の中で言われていないと思える点について書いてみようと思う。

気になったのはビデオ公開前のNHKの取り扱いである。ニュースの時間に盛んに「天皇は政治的発言を禁じられているので、自ら退位に関して積極的に発言はしないはずです」と繰り返した。明らかに天皇の発言に対する牽制球だと私は受け取った。「これがニュースで流す内容だろうか?」「世論操作ではないか?」と私は感じていた。私はNHK自らがアナウンサーにあれを言わせたというよりは自民党の一部からの圧力があったのではないかと想像している。

発言内容に関しては穏やかな表現ながら象徴天皇に対する陛下自身の考えがかなり明確に出ていたと思う。それは天皇という地位のあり方というよりも、天皇として国民に負うべき義務を考えている、という感覚である。そして義務を果たせなくなったら交代すべきだ、という考えがにじみ出ていた。「国民に義務を負う」というような感じの発言をした天皇は歴代初めてだと思う。

私は自分自身が天皇の臣下だと感じたことは無い。君が代の歌詞に違和感を持っていることも以前書いた。それでも今の象徴天皇制には賛成だし、象徴天皇の在り方を考え抜いた今の天皇はそれを体現していると思う。日本人の良さを自ら体現して、見識、人格、マナー等世界のどこの元首と対談しても日本人の良さを感じさせる存在になる、そのために常に国民に触れ、国民の心を知る、というのが私の受け止め方である。自民党の憲法草案では天皇を象徴天皇から日本の「元首」とするとある。各国の国王に相当する地位だと思う。元首になると実際的にどの程度象徴天皇から地位が変わるのかは不明だが、いま日本は十分にすばらしい象徴天皇を持っていて、それを変える必要は無いように思う。


政府の作る人工知能研究拠点

2016-08-01 10:29:26 | 経済

東京都知事選挙は小池百合子氏の圧勝に終わった。私は増田氏や鳥越氏のような不自然な出馬をした人が当選しなくてよかったと思っている。今日のテーマは都知事選挙ではなく、今朝の日経に出ていた経産省、文科省、総務省が共同してスマートシティ「柏の葉」の設立する人工知能の研究拠点に関してである。

今朝の日経新聞には3人の大臣が握手をする写真と一緒に結構詳しく出ていたのだが、ウィトラのオフィスに来てネットで確認しようとしたらその記事が見当たらない。多少うる覚えの情報になるが、ご容赦願いたい。おそらく経産省が主導していると思うが、人工知能は今後社会に与える影響が非常に大きいと判断して、国としても力を入れて研究開発を行うということで、この方向性は正しいと思っている、人工知能は既にビジネスになり始めているので、この研究機関は今話題の「ディープ・ラーニング」のさらに先を研究するという。具体的にはディープ・ラーニングのように大量のデータを学習させなくても学習ができる仕組みを研究するということである。日本人は実物のキリンを見ることは殆どないが、キリンを認識することができる。この点には現在のアルゴリズムとは異なる論理があるだろうという推測はおそらく正しく、狙いも悪くない。しかし、私には二つの点で気がかりに思うことがある。

一つ目は国の研究所(私の良く知る総務省関係で言えばNICT)がそれぞれの省庁の研究組織から人を出し合って研究母体を作るという点である。省庁の横ぐしを通すことは大変結構なことなのだが、「オールジャパン」で果たして世界と戦えるのか、という疑問が残る。今の日本の研究レベルは世界トップとは言い難い。研究ツールも「柏の葉」にスーパーコンピュータを導入するなどを考えているようだが、果たして世界のクラウドを戦えるレベルになるのかが疑問である。私はこのような日本の得意分野ではないが今後の世界の主流になっていきそうな研究分野の研究はアールジャパンではなく、グローバルR&Dとして世界の知恵を集められるような体制づくりが不可欠だと考えている。この点のビジョンが今のところ見えていない。

二つ目の懸念は成果の実用化プロセスである。研究所を設立する目的は日本の産業競争力を高めることのはずである。しかし、日本の国の研究所は成果の実用化に関して成功例が少ないと私は思っている。産総研のような経産省系の研究所は良く知らないが、NICTという総務省系の研究での実用化の成功例はほとんど知らない。これまでのハードウェア中心の研究でもあまりうまくいっていない上に、人工知能の研究成果はソフトウェアになるはずであり、一層難しい。仮に日本の研究所が画期的なアルゴリズムを発明したとしても、実用化までには実際の課題に適用してみて何度もフィードバックをかけることが不可欠のはずであるが、このような仕組みはこれまでの国の研究所ではできていなかった。ソフトウェアは特許で抑えることは極めて難しく、アルゴリズムの提唱者が実ビジネスの勝者になるとは限らない。今話題のディープ・ラーニングもカナダの大学がアルゴリズムの提唱者だが、カナダが人工知能の分野で存在感を示している感じは無い。新しい研究所がどのような出口戦略を描いているのか、ここの図を描かずに始めてしまうと、国としての投資は失敗に終わる可能性が高いと思う。

人工知能は極めて重要なテーマだけに、うまく進めてほしいと思う。