真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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東京裁判NO1 キーナン首席検事の記者会見と起訴状要旨

2020年07月06日 | 国際・政治

 日本が、再び野蛮な方向に向かっているように思われ、心配です。
 地上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画断念が発表されるとすぐに、攻撃を受ける前に拠点をたたく敵基地攻撃能力の保有を巡る話になりました。政府はこれを、自衛権の範囲にあって、国際法上認められないいわゆる「先制攻撃」と異なるというのですが、敵基地攻撃が許されるという”相手が武力攻撃に着手した段階”は、どのように判断するのか疑問です。あからさまに先制攻撃の準備を進める国があるとは思えません。疑心暗鬼による誤った判断の武力衝突が起きる危険が増すのではないかと思います。
 また、かつて周辺国に大変な被害をもたらした日本が、再びそんな能力を持てば、友好関係を深めることが一層難しくなり、何もいいことはないと思います。

 加えて、見逃せないのが、日本国憲法に基づく戦後の日本を否定するような最近の思想的動向です。「大東亜戦争」という戦中の名称を公然と使い、その正当性を主張するとともに、戦後の日本国憲法に基づく考え方を「GHQ史観」とか「東京裁判史観」と称して批判する人たちが、活発に動いています。東京裁判関係の書籍も、その多くが、「こうして日本は侵略国にされた」とか、「さらば東京裁判史観 何が日本人の歴史観を歪めたのか」とか、「汚辱の近現代史 いま、克服のとき」というようなものが多数をしめるようになり、歴史の歯車が逆回転を始めているように思います。
 かつて航空自衛隊第29代航空幕僚長であった田母神俊雄氏は、「日本をまもる会・大東亜聖戦大碑護持会」会長だそうですが、ブログに 
安倍総理が日本を取り戻すと言って総理になった。それでは日本を取り戻すとはどういうことなのか。多分多くの国民は、再び強い経済力を持った日本を造ると受け止めているのではないか。しかし日本を取り戻すとはそれだけではない。もちろん強い経済力を持った日本を目指すが、併せて戦前の日本を取り戻すことではないかと思う。それが戦後レジームからの脱却である。・・・
 と書いています。間違いではないと思います。

 確かに、いわゆる「東京裁判」(極東国際軍事裁判)にはいろいろな問題があったと思います。でも、「日本国憲法」に基づいてスタートした戦後の日本が否定されてはならないと、私は思います。

 下記は、「東京裁判 大日本帝極東国際軍事裁判国の犯罪 上」朝日新聞東京裁判記者団(講談社)から一部抜粋しました。
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           第一章 敗戦から「裁かれる日」まで

                国際検事団の動き
 敏腕・キーナン検事の登場
 日本の国際戦争犯罪人の処罰ということはポツダム宣言の中で規定されている。したがって日本がこのポツダム宣言を受諾し、降伏したときから日本は国際戦争犯罪人の連合国による裁判、処罰を認めたわけである。
 終戦になって米軍が進駐を開始し、連合軍司令部が東京に設けられるとまもなく、戦争犯罪容疑者の拘引が始まった。この逮捕令を出したのは、連合軍総司令部法律部である。
 進駐以来、二、三ヶ月の間に百名以上にのぼる国際戦犯容疑者が逮捕されたが、日本のほんとの戦争責任者を見つけ出すのは日本国民でも相当困難に思える時期であった。
 こういう情勢のところに国際検事団首席検事に任命されたジョセフ・B・キーナン米検事が検事その他三十八名の部下をひきつれて、1945年(昭和20年)11月6日厚木飛行場着、東京にのりこんで来た。
 主な顔ぶれは主席補佐としてッジョン・ダルシ検事、その他ハンマック、ヒッギンス、ハイダー、モロー(陸軍大佐)、サケットら各検事であった。キーナン首席検事は新聞記者団との初会見で「戦争犯罪人の追及は日華事変の1937年(昭和12年)7月までさかのぼってやる。現在逮捕されている人が必ずしもすべて有罪というわけではない。逮捕にはそれ相応の理由がある。しかし慎重に事実を調べた上、釈放される人も出てくるだろう。裁判は公明正大にやる」と語った 
 キーナン首席検事は米検事総長補という要職にあった人。刑事事件の摘発にその手腕をうたわれたほか、政治的には故ルーズベルト大統領の信任が厚かった。その関係でトルーマン大統領とも関係が深いと言われている。
 キーナン首席検事一行は、旧明治ビルにその本拠を構え、検察に必要な一切の陣容を整備し、一方では総司令部法律部および諜報部の協力をえて、ただちに本格的な活動を開始した。
 一行の各検事の分担、たとえば日本の戦争準備、満州事変、日華事変、太平洋戦争などの受け持ちが決まり、巣鴨にいる容疑者の尋問はもちろん、日本の各界各層の尋問が始まった。キーナン検事は国際検事団の首席検事であり、明治ビルの本拠は国際検事局(I・P・S)と呼ばれるが、実際は米検事団によって代表された。国際検事団の活躍はつまり米検事団の活躍ということである。
 キーナン首席検事は十二月二十二日、あらためて日本記者団と会見し、こう語った。
「私は日本の侵略戦争を計画し助長し、その結果世界に大きな破壊をもたらした日本の主な指導者を裁判する。しかし征服者が被征服者に征服者の意思を強制するようなことは毛頭考えていない。裁判はあくまでも公平に正義にもとづいてやる。将来ふたたび今日のようなことが起こらないようにするのが目的である。裁判の準拠法は文明国間に長年にわたっておこなわれた慣習法である。私はマ元帥に任命された。マッカーサー元帥が連合国総司令官たる以上、私もまた連合国を代表する」

 大きな手がかり・木戸日記
 年が明けて二十一年一月になると国際検事局の陣容は、一層強化された。東條大将らの尋問は連日のように巣鴨でおこなわれ、国際検事局はのち、市ヶ谷の旧陸軍省、極東軍事裁判所に移ったが、ここには、岡田大将、米内大将、若槻男爵、宇垣大将ら大物をはじめあらゆる要人から官僚の下っ端、街の人までが姿を見せた。喚問された人士は起訴状が出るまでに百数十名はくだるまいとみられ、その調書も多大なものになった。
 この喚問は五ヶ月にわたった。その間、日本の戦争責任、国際戦争犯罪の実体はどこにあるかということが明確に、検事団の手に把握された。この検事団の検察に大きな助けになったものの一つに木戸日記がある。
 ・・・

 裁判憲章の公布
 これら第一級戦犯者を裁くチャーターは、一月十九日マッカーサー元帥の名でマ総司令部一般命令として公布されたが四月二十六日改正された。
 極東軍事裁判所──「極東」の名は、これが世界的観点に立っていることを強く印象づける点で、きわめて効果的だが、あくまで「軍事裁判」であることを示しているのは重要である。
 チャーターの第一章は、裁判の構成を定め、第二章は管轄および一般規定をおき、第三章に被告人に対する審理、第四章に裁判所の権限および審理の執行を定め、第五章に有罪、無罪の判決と刑の宣告を定めている。ようするに、あらゆる国際法、自然法、一般条約の基礎に立って、この裁判に付せられる犯罪がどのようなものかの実体法を規定し、さらに、この裁判の進行について公平と迅速を期するための手続法を合わせたものである。
 ・・・
 裁判管轄──この裁判所の扱う犯罪は㋑平和に対する罪──侵略戦争の計画、準備、開始、実行またはそのいずれかの共同謀議の罪。㋺戦争法規または慣例に違反した罪。㋩人道に対する罪(戦前・戦中の殺戮、殲滅、奴隷的虐使 追放その他非人道的行為)の三つである。そして、この三つの犯罪のいずれかを犯そうとする、共通の計画、または共同謀議の立案または実行に参加した指導者、組織者、教唆者と共犯者は、この遂行上おこなわれた一切の行為について、それが何人がなしたかを問わず、責任があるとしている。
 ・・・
 公正な裁判のために第三章で、起訴状を平易にして被告に渡すこと、日本語の使用を公認すること、弁護士を自由に選択できること、弁護士なしでは裁判はすすめられないこと、証人を尋問し、証拠の申請をするなどの被告の権利も認めた。
 ・・・

 二十八被告を起訴
 起訴状は四月二十九日、終戦後初めて迎える天長節に公表された。起訴された者は、
 荒木貞夫、土肥原賢二、橋本欣五郎、畑俊六、平沼騏一郎、広田弘毅、星野直樹、板垣征四郎、
 賀屋興宣、木戸幸一、木村兵太郎、小磯国昭、松井石根、松岡洋右、南次郎、武藤章、永野修身、   
 岡敬純、大川周明、大島浩、佐藤賢了、重光葵、島田繁太郎、白鳥敏夫、鈴木貞一、東郷茂徳、
 東條英機、梅津美治郎
 の二十八名。
 原告はアメリカ、中国、イギリス、ソ連、オーストラリア、カナダ、フランス、オランダ、ニュージーランド、インド、フィリピン、の十一カ国である。
 起訴状全文は非常に長文なので、その要旨を掲げるにとどめるが、まず基礎理由は、

「一、1928年(昭和3年)一月一日から1945年(昭和20年)までの間、日本の対内、対外政策は犯罪的軍閥によって支配され、また指導された。
 (イ)対内政策。日本国民に組織的な民族的優越性の思想を餓えつけ、政治的には日本の議会制度にナチ党あるいはフィシスト党と同様の組織を導入し、これを侵略の道具化した。また経済的には、日本の資源の大部分を戦争目的に動員した。また政治に対する陸海軍の威令と制圧を強化し、翼賛会を創設、国家主義的膨張政策を教え、新聞ラジオに厳格な統制を加えて国民の世論を精神的に侵略戦争に備えさせた。
 (ロ)対外政策。ナチ・ドイツならびにファシスト・イタリアの統治者の参加をえて、侵略国家による世界の支配と搾取獲得のための共同謀議をし、平和諸国家に対し国際法、条約に違背して侵略戦争を計画し、準備し開始しかつこれを実行した。
一、こうして世界的紛争と、侵略戦争を起こし、他方捕虜虐待等の戦時法規違反および一般民衆に対する残虐行為をあえてした」

 となっている。被告らは、このような犯罪的軍閥それ自身であるか、またはそれらとの共同謀議者ということになる。しかも被告ら個人の責任については、検事側は、

「国際法の侵犯は戦争法規に対し、実際に特定の違反行為をおこなった下級者のみでなく、その決定によってこのような行為を起こした上級者にも個人的な責任のかかる犯罪だとみなそうとするものである。また法的に正当な理由なくして人を殺すことは殺人罪であると主張する。合法的な交戦状態は正当な理由となるであろうが、日本の交戦状態は侵略禁止の諸条約をおかしかつ宣戦布告なくしてなされたものだから非合法とみなしている」

 とキーナン検事は同日の声明書であきらかにした。
 そこで起訴状では犯罪を第一類、平和に対する罪。 第二類、殺人。第三類、通例の戦争犯罪および人道に対する罪の三類に分け、訴因として五十五項目をあげ、付属書ASWこれらの訴因を正当づける主要な事実を十節にわたって列記、また付属書B、CおよびDで日本が侵犯した条約の主要なもの、さらに日本が違反した公式の保証また戦争法規を列挙、付属書Eで、三類にわたる犯罪で対する個人的責任を被告の略歴によって摘発した。ニ十八名の被告らは、犯罪的軍閥ないしその共犯者として罪があるばかりでなく、戦争にともなう殺人また陸戦法規の違反について、個人的にも罪があるということになっている。これが起訴状の眼目である。
 
 「罪はあまりに深い」
 ウェッブ裁判長の開廷の辞。ひどく柔らかい語調でたんたんと進む。
「本日ここに集合するに先たち、当裁判所の各判事は法により、なにものをも恐れず、公正、かつ外より影響されることなく裁きをくだすことを誓った共同宣誓書に署名した。われわれは責任がいかに重大であるかを十分認識している。
 今回起訴され当法廷に出頭している各被告は、過去十余年の間、日本の国運隆々としていた当時、指導的立場をしめていたものばかり、元首相、外相、蔵相、参謀総長、その他の日本政府部内の最高の地位にあった人びとがふくまれている。起訴されている罪状は世界平和に対し、戦争法規に対し、人道に対しあるいはこれらの罪を犯すべく陰謀したことに対する罪等である。 
 これらの罪はあまりりにも深い。これを裁くのに適する法廷は国際的性格をもった軍事法廷、すなわち日本を破った各連合国代表をもって構成する裁判所にすればよかろうということになった。被告たちは従来、いかに重要な地位にあったにしても、それがためにうける待遇はもっとも貧しい一日本人兵卒とかわりはない。しかし、訴追された罪状の数および性質により、本法廷は提出された証拠物件、適用できる法令について、もっとも慎重な審理をおこなうことを被告に約束する。
 この重大な職責を遂行するに当たって、われわれ一同白紙の態度をもって真実と法の命じるところにぶつかっていく。犯罪事実に一点疑問の余地なく、これを立証することは検察当局の責任である。本裁判所は公正迅速な裁判ができるが、二か国語を使用しなければならない関係で、裁判が長引くことは避けがたい。
 われわれは近く検事団および弁護団の出廷を求めて、実際の論争を必要としない書類や事実はこれをただちに是認するように申し合わせ、これによって訴訟手続きを短縮したいと思う」

 ・・・
  


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