真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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習近平政権の権力的締め付けと対中包囲網

2024年09月09日 | 国際・政治

 95日の朝日新聞、オピニオン&フォーラムの欄に、香港元区議、葉錦龍(サム・イップ)氏の 「雨傘運動から10年」と題する寄稿文が掲載されました。 

 下記のように、中国、習近平政権の権力的締め付けの強化について、自らの悲劇的現実と合わせて書き連ねられていました。

 

香港の民主化を求め若者が立ち上がった2014年雨傘運動の始まりから9月で10年となる。香港人の容疑者を中国本土に引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案に抗議した19年大規模デモの開始からは、5年半だ。自由だった社会がその間、いかにあっという間に変化したかと思う。多くの人の暮しや仕事が犠牲になった”

 デモに参加し、逮捕、拘束され、その過程で負傷もし、民主派の区議となった私もその一人だ

 

そんなさなか、1991日のことだ。警察署近くで横断しようとしたところ、私服警官にいきなり押えられた。公務執行妨害罪などの容疑で36時間拘束された

 

中国政府はさらに反中国的な言動を取り締まる「香港国家安全維持法(国安法)の施行を宣告。20年の立法議会選挙に向けて民主派が行った予備選挙は違法とされた

 

香港の政治状況はますます厳しくなっていった。立法会の選挙制度も変えられ、議員は政府に忠誠を誓わなければならなくなった。「宣誓しなければ逮捕、議員歳費などを返上させられる」といった話も地元メディアで流れた”

 

中国は日本など世界各地に「海外警察」を設け、国外の活動からを監視し、接触しているとれる

 

この夏、東京の街のあちこちで、都知事選などのポスターが掲げられていた。方法はともあれ、候補者たちがそれぞれの考えを持って立候補し、国や町のあり方を自由に訴えるのを見て、この社会がいかに幸せかと感じた。雨傘運動に関わった私たちが最終的に成し遂げたかったのは、まさしく日本の人には当たり前に思える民主政治や自由だ。香港からそれが失われてしまった

 

日本は今、アジアの民主主義のとりでの一つだ。だからこそ、日本が主導権を持って、人権と自由、民主社会を守るために行動をしてほしいと思う

 

 このように、中国がいかに権力主義的な国家であるかということを、あれこれ書き連ねているのですが、葉錦龍の文章の決定的な問題は、そうした中国の政策決定の重要な要素、迫り来るアメリカの対中戦略を全く考慮していないということです。 

 しばらく前には、香港で「学民の女神」などと呼ばれていたという「周庭」氏の記事もくり返し掲載されました。権力主義的な中国の厳しい取り締まりで、自分の国で暮らすことのできない、気の毒な民主派の活動家という印象を読者に与えるような記事だったように思います。

 

 日本を含め西側諸国のメディアは、いつも自らの戦略を隠して、反米的な国の政治や政策を権力主義だ、専制主義だ、独裁だと批判的に論じます。でも民主主義は、少数意見も尊重することによって成り立つものだと思います。少数意見を潰すことは、民主主義ではないと思います。

 先日 「CRIChina Radio International)時評」が、”中国周辺で「対中包囲網」形成、米国の恥ずべき哀れなたくらみ」”と題し、下記のように報じました。

      

米高官による中国および中国周辺への「グループ訪問」がこのほど終了した。シャーマン国務副長官が日本、韓国、モンゴル、中国を訪問し、ブリンケン国務長官がインドを訪れ、オースティン国防長官が東南アジア3カ国を歴訪した。米国の複数の高官は太平洋を渡って中国の家の前で「離間の計」を仕掛け、「インド太平洋戦略」を強引に推し進め、「対中包囲網」を形成しようとしている。そのようなたくらみは誰の目にも明らかだ。

 米国が、中国周辺の大国であるインドと日本だけでなく、相対的に中間的立場をとる東南アジア諸国に対しても、軍事的・政治的資源の投入を増やしていることが分かる。東南アジアの国々は、米国が中国周辺で大々的に勢いや流れを作ろうとしている理由をよく理解しており、それに興味を示していない。

 中国とその周辺国との関係は目下、概ね良好であり、「平和を求め、発展を図る」ことが地域の国々の共通の要望だ。中国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)が提唱した世界最大級の貿易協定の一つである、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の批准で先頭に立ち、ASEAN諸国への新型コロナウイルスワクチン提供で最善を尽くし、東南アジア諸国による地域のワクチン生産・分配センターの構築を支持している。「遠くの親戚より近くの他人」ということわざにもあるように、中国は米国よりもはるかに周辺国が何を考えているのか、何を求めているのかをよく理解している。中国と周辺国を仲たがいさせようとする米国のたくらみが奏功することはないだろう。

 米国の政策決定者は、中国の関心事と主張を真剣に検討し、その極めて誤った対中認識と極めて危険な対中政策を変えるべきであり、中国を「仮想敵」にすることを二度としてはならず、協力に言及する裏で対抗するようなことをしてはならず、全世界での「対中包囲網」形成を放棄すべきだ。健全で安定した中米関係は、双方の利益に合致するだけでなく、国際社会の共通の期待でもあることを、知っておく必要がある。(CRI論説員)

 

 同じように、ウクライナ戦争に関しても、アメリカを中心とするNATO諸国の戦略や取り組みはほとんど報じられず、ロシア側の攻撃の問題ばかりが報じられたと思います。だから、プーチン大統領は、「悪魔のような独裁者」として受け止められてきたと思います。

 プーチン大統領がウクライナ領土に軍を進める前に演説した内容は、全く報じられませんでしたが、アメリカを中心とするNATO諸国が、レッドラインを超えて、迫ってきたと語っていたのです。

 だから私は、イラン政府報道官ジャフロミー氏の、「アメリカは善悪を逆さに見せることにおいて先端を走っている」という指摘が、頭から離れないのです。

 

 香港元区議、葉錦龍が、” アジアの民主主義のとりでの一つだ”という日本の岸田首相が、アメリカのバイデン大統領と会談し、帰国するや否や、日本では何の議論もせずに、財務大臣と防衛大臣に、防衛費の大増額を一方的に指示しました。それが、民主主義国アメリカと日本の現実であることも、見逃さないでほしいと思うのです。

 だから、葉錦龍の文章は、現実の一面をとり上げて、日本には選挙制度があり、自由に投票できるから民主的なすばらしい国だ、と決めつけるものであり、まさにアメリカの戦略に則った文章だと思います。

 アメリカが、さまざまな経済制裁や軍事的圧力をかけている現実や、中国包囲を構築し、中国の習近平政権の転覆、弱体化を狙っていることを無視して、 「国安法」や「海外警察」の問題を論じるから、習近平政主席も、プーチン大統領同様「悪魔のような独裁者」となるのだと思います。

 習近平政権の権力的締め付けの強化は、その背景に、アメリカの対中包囲網による締め付けの強化があることを見逃してはならないと思います。

 先日、「ロシアを敵とする戦争で利用される選手」で引用したように、アメリカは、下記のような 、政権転覆を、世界中でくり返してきたのです。

モサッデク政権は、”それまでイラン国内の石油産業を独占的に支配し膨大な利益をあげてきた英国資本のAIOC(アングロ・イラニアン・オイル会社、現:BP)のイラン国内の資産国有化を断行した。イラン国民は熱狂的にモサッデクを支持した。しかし、1953年、アメリカのCIAや英国の情報機関、イラン軍の一部、カーシャーニーなどがシャーを担いクーデターを決行、モサッデクは失脚させられてしまった。

  

 「香港国家安全維持法(国安法)」に関していえば、日本にも「外患誘致罪」が、刑法 第81条で定められていることを忘れてはならないと思います。”外国と通謀して日本国に対し武力を行使させた者は,死刑に処する”とあるのです。

 でも、日本はアメリカの同盟国であり、事実上属国のような国です。だから、政権転覆の心配はなく、取り締まる必要性がないだけの話だと思います。

 反米的な国が 圧倒的な軍事力と経済力、また、それを背景とした組織力や情報操作力を駆使するアメリカの内政干渉、搾取や収奪、政権転覆に対処することは、簡単なことではないのだと思います。

 

 下記は、「全米民主主義基金(NED」に関するアジア記者クラブ(APCの情報ですが、NEDは、民主主義を促進するという口実のもとに、他国の国家権力の転覆を主導し、他国の内政に干渉し、分裂と対立を扇動し、世論を誤解させ、イデオロギーの浸透を行ってきたというのです。

 そのNEDは、2002年に、下部組織の一つである「全米民主国際研究所(NDI」の香港事務所を設立しています。20164月にそのNDIの支援を受けて、「香港衆志」という政党(英語ではDemosistō、日本語では「デモシスト」)が組織されたということですが、そのデモシスト創設者の一人が、周庭(Agnes Chow Ting、アグネス・チョウ)だというのです。

 だから、私は、アメリカを中心とする西側諸国が「民主派」として高く評価する葉錦龍周庭のような活動家は、多くの場合、反米的な政権を転覆する工作員に思えます。

 

 

  

 


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