真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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北方領土問題 千島列島の範囲とSCAPIN第677号

2013年02月24日 | 国際・政治
 日本の領土問題は、北方領土問題のみらず竹島の問題でも、連合国軍最高司令官(SCAP)から日本政府宛てに出された訓令-SCAPIN (SupremeCommand for Allied Powers Instruction Note、スキャッピン)-の内容に関わって論じられることが多いようである。
 大戦直後、行政権の行使に関する範囲に言及したSCAPIN第677号(下記)において、竹島、千島列島、歯舞群島、色丹島が除かれているため、戦後竹島を占拠する韓国と、北方四島(択捉島・国後島・歯舞群島・色丹島)を占拠するロシアが、この文書を自国の領有根拠の一つとしているからであろう。このSCAPIN第677号が、領土を決定する文書ではない、という日米関係者の主張は正しいであろうが、様々な問題を孕んでいるといえる。

 千島列島の範囲の問題を意識してこの文書を読むと、外務省の「日本は、サンフランシスコ平和条約により、ポーツマス条約で獲得した樺太の一部と千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄しました。しかし、そもそも北方四島は千島列島の中に含まれません」という主張は、ひっかかる。
 外務省のいう通りなら、下記,、SCAPIN第677号の(c)「千島列島、歯舞群島(水晶、勇留、秋勇留、志発、多楽島を含む)、色丹島」という表現は、どのように受け止めるべきか。歯舞群島と色丹島は、千島列島に含まれていないから、「千島列島」に続けて、「歯舞群島」と「色丹島」をわざわざ並べて記しているのではないのか。したがって、国後や択捉は、千島列島に含めてとらえていたと考えるべきではないのか。

 もし、国後や択捉が千島列島に含まれないというのであれば、このSCAPIN第677号では、国後と択捉はどういうことになるのか。歯舞群島と色丹島は日本の地域から除かれるが、国後と択捉は飛び地のように日本の地域として残された、というのか。そうした記述が全くないのに、そのように解釈できるとは思えない。

 北方領土の返還を、北方四島が千島列島に含まれていないという理由づけで主張することは、問題を複雑にし混乱させるだけであると思う。返還を求める根拠は、北方領土が、カイロ宣言でいうところの「暴力及貪欲に依り日本国の略取したる他の一切の地域」には入らないからであり、日本固有の領土だからだ。したがって、領土不拡大の精神に反するヤルタ協定が問題なのだと思う。

 「北方領土を考える」和田春樹著(岩波書店)によると、日本がポツダム宣言受諾を通告した翌日、1945年8月15日、アメリカのトルーマン大統領は、日本軍の降伏に関する指示、「一般命令第1号」の案をソ連のスターリンに送った。その案では、ソ連軍に対して日本軍が降伏すべき地域として、「満州、北緯38度以北の朝鮮、サハリン」が挙げられていて、千島列島は含められていなかった。そこで、スターリンはすぐトルーマンに返書を送り、「日本軍がソ連軍に明け渡す区域に、クリミアでの三大国の決定によってソ連邦の領有に移されるべき全千島列島」を含める事を要求するとともに、北海道の北部(北海道東岸の釧路から西岸の留萌に至る一線で2分し両市を含む北側)をソ連軍の占領地域に入れるようにとの提案も行った。そこで、トルーマンは北海道の分割占領を拒絶し、千島列島に対するソ連の要求はのむことに合意する回答をしたというのである。その後(8月22日)、スターリンはトルーマンに手紙を送り、北海道北部占領が拒否されたのは「意外だ」としながら、千島に「恒常的な空軍基地」をもちたいという米国の要求は拒否すると述べたという。したがって、外務省の主張は、当時の米ソの認識とは明らかに異なるものである。

 ヤルタ協定やSCAPIN第677号に関わる米ソのやり取りを踏まえて、下記「日ソ交渉に対する米国覚書」を読むと、冷戦が深刻化するのにともなって、アメリカの主張が変化したと言わざるを得ない。サンフランシスコ講和条約でも、アメリカは日本に、南樺太とともに千島列島を範囲を明確にすることなく放棄させた。それは、領土不拡大の宣言に反するヤルタ協定があったからであろう。

 しかしながら、この米国覚書が発せられた頃には、米ソの対立は深刻化しつつあり、アメリカは日本の「西側」確保のため、日ソ交渉に介入した。いわゆる「ダレスの脅し」として知られているが、二島返還によって日ソ平和条約を締結しようとした日本に、二島返還で日ソ平和条約を締結するならば、「沖縄返還はあり得ない」、と「脅し」、四島返還の方針に転換させたのである。以後、外務省は「北方四島
は千島列島の中に含まれません」
と主張することになったのであろう。
 
 したがって、覚書の中で、「領土問題に関しては、さきに日本政府に通報したとおり、米国はいわゆるヤルタ協定なるものは単にその当事国の首脳者が共通の目標を陳述した文書にすぎないものと認め、その当事国によるなんらの最終的決定をなすものでもなく、また領土移転のいかなる法律的効果も持つものでもないと認めるものである」などと、言い逃れともいえる主張をするアメリカに追随することな
く、日本は、ヤルタ協定そのものの問題を指摘し、太平洋憲章やカイロ宣言の領土不拡大の精神に基づいた対応を米ソに求めるべきだと考える。ヤルタ協定が単なる「当事国首脳者の共通の目標」であったかどうかが問題ではなく、領土不拡大の精神に反するヤルタ協定によって、現実にロシアが対日戦に参戦し、北方領土の不法占拠が始まったことが問題なのである。

 ロシアの北方領土不法占拠は、アメリカの戦略によってもたらされたと言っても過言ではない現実を踏まえて、領土不拡大の精神に基づいた対処を米ソに促しつつ、日本だけではなく、東アジア全体の非軍事化の方向で問題解決を目指すべきだと思うのである。

 下記の「若干の外廓地域を政治上行政上日本から分離することに関する覚書」「日ソ交渉に対する米国覚書」「ソ連は最初北方四島は諦めていた 知られざる北方領土秘史 四島返還の鍵はアメリカにあり」戸丸廣安(第一企画出版)から抜粋した。
資料1------------------------------
若干の外廓地域を政治上行政上日本から分離することに関する覚書
                                  (1946年1月29日)

1 日本国外の総ての地域に対し、又その地域にある政府役人、雇用員その他総
  ての者に対して、政治上又は行政上の権力を行使すること、及、行使しようと企
  てることは総て停止するよう日本帝国政府に指令する

3 この指令の目的から日本という場合は次の定義による。日本の範囲に含まれ
  る地域として、日本の4主要島嶼(北海道、本州、四国、九州)と、対馬諸島、北
  緯30度以北の琉球(南西)諸島(ロ之島を除く)含む約1千の隣接小島嶼
  日本から除かれる地域として  
(a)うつ陵島、竹島、済州島 
(b)北緯30度以南の琉球(南西)列島(口之島を含む)、伊豆南方、小笠原、硫黄
  群島、及び大東群島、沖ノ鳥島、南鳥島、中ノ鳥島、を含むその他の外郭太平
  洋全諸島
(c)千島列島、歯舞群島(水晶、勇留、秋勇留、志発、多楽島を含む)、色丹島

4 更に、日本帝国政府の政治上行政上の管轄権から特に除外せられる地域は
  次の通りである。
(a)1914年の世界大戦以来、日本が委任統治その他の方法で、奪取又は占領
   した全太平洋諸島 
(b)満州、台湾、澎湖列島 
(c)朝鮮及び  
(d)樺太


5 この指令にある日本の定義は、特に指定する場合以外、今後当司令部から発
  せられるすべての指令、覚書又は命令に適用せられる。

6、この指令中の条項は何れも、ポツダム宣言の第8条にある小島嶼の最終的決
  定に関する連合国側の政策を示すものと解釈してはならない。


資料2-------------------------------

日ソ交渉に対する米国覚書

 米国覚書 最近ロンドンにおけるダレス国務長官との会談に際し、重光外相からなされた要請に応じて、国務省は今回の日ソ平和条約交渉に提起された諸問題につき、とくにサンフランシスコ平和条約の署名国としての米国の利害関係に照らして、検討を行った国務省は、この検討に基づいて、次のとおり意見を開陳するものである。

 米国政府は、日ソ間の戦争状態は正式に終了せしめられるべきものであると信ずる。元来この戦争状態は、ソ連邦がサンフランシスコ平和条約の署名を拒否した1951年当時から、つとに終了せしめられていなければならなかったものである。日本はまた日本が加盟の資格を完全に有する国際連合に、久しい以前から加盟することを認められていなければならなかった。さらにまた、ソ連邦の手中にある日本人捕虜は、条約条項に従って久しい以前に送還されていなければならなかったのである。

 領土問題に関しては、さきに日本政府に通報したとおり、米国はいわゆるヤルタ協定なるものは単にその当事国の首脳者が共通の目標を陳述した文書にすぎないものと認め、その当事国によるなんらの最終的決定をなすものでもなく、また領土移転のいかなる法律的効果も持つものでもないと認めるものである。

 サンフランシスコ平和条約ーこの条約はソ連邦が署名を拒否したから同国に対してはなんらの権利を付与するものではないがーは、日本によって放棄された領土の主権帰属を決定しておらず、この問題は、サンフランシスコ会議で米国代表が述べたとおり、同条約とは別個の国際的解決手段付せられるべきものとして残されている。いずれにしても日本は、同条約で放棄した領土に対する主権を他に引渡す権利は持ってはいないのである。このような性質のいかなる行為がなされたとしてもそれは、米国の見解によれば、サンフランシスコ条約の署名国を拘束しうるものではなく、また同条約署名国は、かかる行為に対しては、おそらく同条約によって与えられた一切の権利を留保するものと推測される。

 米国は、歴史上の事実を注意深く検討した結果、択捉、国後両島は(北海道の一部たる歯舞諸島および色丹島とともに)常に日本の領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本国の主権下にあるものとして認められなければならないものであるとの結論に到達した。米国は、このことにソ連邦が同意するならば、それは極東における緊張の緩和に積極的に寄与することになるであろうと考えるものである。(1956年9月7日ワシントン国務省)


 http://www15.ocn.ne.jp/~hide20/ に投稿記事一覧表および一覧表とリンクさせた記事全文があります。一部漢数字をアラビア数字に換えたり、読点を省略または追加したりしています。また、ところどころに空行を挿入しています。青字が書名や抜粋部分です。

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1 コメント

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6B3Afl42 (かぐや)
2013-03-02 12:04:12
6B3Afl42
かぐやと申します.。.:*・゜从n0^~^)η゜・*:.。.ミ

☆えっちな話が苦手なので、男の人の友達がいません(つд∩)
よろしくしてほしいです( ´∀`)σ)∀`)
かぐやは本名です。歳は、19歳と53ヶ月です(〃▽〃)
身長は149で、重さは内緒です(  ̄ー ̄)40キロ台ですけど~。
仕事はホームヘルパーをしてて、休日は不定期です。
好きな食べ物は、お肉です♪
お野菜よりも、お肉がたいそう好きです゜・*:.。.
こういうの初めてで、とても緊張してて、何を書いていいのか
わかりません。なので、お歌を歌いますね♪川n・-・)η゜・*:.。.ミ ☆
きいてください。堂本光一がよく歌う事で有名な、
宇宙刑事ギャバンです♪

男なんだろう、グズグズするなよ♪
胸のエンジンに火を付けろ♪
~~♪

お肉を食べながら、連絡待ってますヽ(°▽°)ノ
仲良くなりたいです゜・*:.。.(´ー`) .。.:*・゜
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