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バドゥラ=スコダ演奏会

2006-05-22 | Weblog
 ドイツ正当派最後の巨匠と言われるパウル・バドゥラ=スコダの演奏会に行ってきました。グルダ、デームスと一緒に括られて「ウィーン三羽烏」とか言われてますが、そんなのは日本だけの評価でしょう。来年で80歳、この人若い頃はフルトヴェングラーとも共演をしていて録音も残っています(モーツァルトの2台協奏曲)。モーツァルトやベートーヴェンの楽譜校訂も沢山行っており、そちらの分野でも世界的な大家です。前から一度聴きに行きたいと思っていたのですが、なんだかんだでチャンスが無く、今回やっと聴くことができました。79歳という年齢を少し心配していたのですが、その振る舞いは年齢などを全く感じさせず、優雅なお辞儀と笑顔を振りまいてくれる気品溢れるお爺さんでした。
 さて演奏ですが、前半のモーツァルトのロンド2曲と幻想曲とベートーヴェンの悲愴ソナタは、モーツァルト時代の鍵盤楽器「フォルテピアノ」による演奏。音量は小さいけれどデリケートな音質で、特にモーツァルトの演奏が心地よかったです。ただベートーヴェンには迫力不足かな。フォルテのパワーが足りない。ベートーヴェンは生涯を通じて新しいピアノを渇望し続けて、その作品は常にその時代のピアノの能力を凌駕していたので、ベートーヴェンのパワーを解放するには現代のピアノの方がいいなと思いました。スコダ氏の演奏ですが、脱力に脱力を重ねて抜けきった感じの音で、バックハウスの晩年の演奏を思い起こさせました。私が一番好きなタイプのピアノの音色ですね。技術もモーツァルトは全然問題なし。しかし悲愴ソナタになると途端にミスタッチが目立って、後半のシューマン謝肉祭とか一体どうなることやらと不安になってしまいました。しかし、モーツァルトは本当に絶品。協奏曲ですがCDも買ってしまいました。前半のアンコールはモーツァルトの「トルコ行進曲」。
 後半はまずシューベルトの即興曲から4曲でしたが、これがプログラムの中で一番感動しました。後半からはスタインウェイのピアノを用いたのですが、現代のピアノは音量があって音色の変化が多彩。スコダ氏はシューベルト独特の古典風味とロマン風味の入れ替わりを、絶妙な音色の変化で区別して、これにはブラボーを叫びたいくらいに感動しました。突然フッと音色が暗くなったり、さっと光り輝いたり。私はこういうのが大好きなのです。心配していたミスタッチも殆ど無し。ベートーヴェンでの不調はフォルテピアノの鍵盤が軽いため逆に指がもつれたのではないかと思います。シューマンの謝肉祭も若い時のシューマンらしい溌剌としたロマン的な演奏。あんな長い曲(20曲)を全部スラスラと弾いた後にサッと立ち上がって、さらにアンコールも3曲(最後はショパンの練習曲エオリアンハープ!)、おまけにサイン会までしてくれて(勿論頂きました。ダンケシェーンが通じますた。)、この人のスタミナは一体?と思いました。お客さんもスコダ氏のことをよく知っている人ばかりだった感じで、その鳴り止まない拍手に応えるスコダ氏の笑顔が忘れられません。とにかく全てを通していい演奏会でした。久々に幸せな音楽会でしたよ。

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