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ジョン・エヴァレット・ミレイ展 Bunkamuraザ・ミュージアム

2008-09-27 | ア-トな話し
2008.8.30~10.26

ジョン・エヴァレット・ミレイ(1829-1896年)は、11歳という史上最年少でロイヤル・アカデミーへの入学を許可された天才。日本で初めての本格的な回顧展。
テート・ブリテン、ゴッホ美術館、北九州市立美術館を巡回し東京へ来た。

「テート.ギャラリー」はロンドンに2館、他にイギリスに2館ある美術館グループである。

所蔵作品の代表は、この「オフィーリア」

今回、それがやってきた。美術館側も力が入ってます。
日本初、世界初とも言える、ジョン・エヴァレット・ミレイをまとめてみる作品展。


ここでオフィーリアの勉強です(笑)

シェイクスピアの『ハムレット』に出てくるオフィーリアは、ハムレットの恋人でポローニアスの娘です。

デンマーク王が急死した。王の弟クローディアスは王妃と結婚し、跡を継いでデンマーク王の座に就く。父王の死と母の早い再婚とで憂いに沈む王子ハムレットは、従臣から父の亡霊が夜な夜な城壁に現れることを知る。亡霊に会ったハムレットは、実は父の死はクローディアスによる毒殺だったと告げられる。

復讐を誓ったハムレットは狂気を装う。王と王妃はその変貌ぶりに憂慮するが、宰相ポローニアスは、その原因を娘オフィーリアへの実らぬ恋ゆえだと察する。
父の命令で探りを入れるオフィーリアをハムレットは無下に扱う。
やがて王が父を暗殺したという確かな証拠を掴んだハムレットだが、王と誤ってポローニアスを殺害する。オフィーリアは度重なる悲しみのあまり狂い、やがて溺死する。

ハムレットの話は、まだまだ続くのですが....。

この絵は、悲しみのあまり狂って溺死するところなのです。

狂ってる顔がすごい。沈みゆくスカートもすごい。
そして対象的な周りの景色、ひとつのひとつの花のリアリティーがすごい。
ここでは、花も、人も主役なのです。
いくら見ていても、あきることのない絵です。

あの夏目漱石がこの絵に出合ったときの感想が名作「草枕」に書かれている。

"余が平生から苦にしていた、ミレーのオフェリヤも、こう観察するとだいぶ美しくなる。何であんな不愉快な所を択んだものかと今まで不審に思っていたが、あれはやはり画になるのだ。水に浮んだまま、あるいは水に沈んだまま、あるいは沈んだり浮んだりしたまま、ただそのままの姿で苦なしに流れる有様は美的に相違ない。それで両岸にいろいろな草花をあしらって、水の色と流れて行く人の顔の色と、衣服の色に、落ちついた調和をとったなら、きっと画になるに相違ない。(中略)ミレーはミレー、余は余であるから、余は余の興味を以て、一つ風流な土左衛門をかいて見たい"

この話や、絵に描かれた花と、その花言葉の説明。この絵のモデルのエリザベス.エレナ.シダルのエピソード、そして彼女が33歳の若さで自殺することも。
これらの事が会場入り口にある、「出品リスト」に書かれています。主催者の意気込みの伝わるリストです。




マリアナ

詩からイメージして描いた作品。
婚約者アンジェロに捨てられ、絶望の中で孤独な生活をおくる女性を描いている。

日常のヒトコマを覗いたような不思議な気持ち。
けだるいような悲しみが伝わってくる絵です。



初めての説教

ミレイの当時5歳の長女エフィーがモデル。
信徒席にしゃちこばって座り、礼拝にふさわしい振る舞いをしようと懸命に努める様子。一生懸命な可愛さが伝わります。


二度目の説教

教会での説教にも慣れてきた様子が窺えます。
前の「初めての説教」と対になってる作品。
行儀が悪くなったのだけれど、可愛い、思わず笑みが出ますね。



露にぬれたハリエニシダ

幻想的というか抽象的な絵です。
近寄ってじっくり見ても、絵の中に劇的な物は、何もない。
一歩下がって全体を見る。
樹木を照らし出す陽の光が見事です。



《ハートは切り札:ウォルター・アームストロングの娘たち、エリザベス、ダイアナ、メアリーの肖像》

スカートの襞、左後方の花、右後方の東洋的な描写。手を抜かないミレイをたっぷり楽しめます。
3人の個性的な表情が楽しい。
肖像画。注文したのは親のウォルター・アームストロング。
娘達の結婚に結びつけばという親心なのだろう。
ウォルター・アームストロングは、数年後に破産し、この作品も売却するのだが、幸いにも、真ん中のダイアナの夫に引き取られた。

素晴らしい作品の数々に出会えます。


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