無意識日記
宇多田光 word:i_
 



そもそも、「初のオールタイムベスト」と銘打った『SCIENCE FICTION』に『ぼくはくま』を入れてない時点で同曲を軽んじられてもヒカルは文句は言えない、という言い方も出来なくは、ない。

これに関しては、何度も書いて飽きてきた感はあるが、『SCIENCE FICTION』は、ヒカルにとっては“過去曲を素材にした2024年の新作”なので、「25年間のベスト曲」をただ選んだ作品にはなっていない。それこそクロニクルでも重視されていた『FINAL DISTANCE』や『Deep River』や『BLUE』も『桜流し』も入っていないし、来週配信される第3回でもしっかり取り上げられるだろう『真夏の通り雨』も入ってない。『ぼくはくま』は、これらの系統の楽曲だ解釈すればわかりやすい。軽んじられるどころか、どちらかというと宇多田ヒカルのレパートリーの中では「重めの作風」に分類した方が、その影響/効果/効能/機能の面では妥当な一曲だ。

ただ、やはり後追いで聴いた人はこの点が伝わり難いかもしれない。こればっかりはリアルタイムでないとなぁ。というのも、まずシングル盤についてた絵本ですよ。あれを読む&見ると、かなり心に来る。ぬいぐるみタッチのくまちゃんとリアルタッチの熊親子の対比とかそりゃもう切ないのだ。あれを読んだ上で歌を聴けばそこに込められた感情の奥行きに気づきやすいのだけど、配信で童謡だけ聴いた人は「箸休めか」とかなんとか思っちゃうよね。或いはアルバムで初めて聴く人は曲順によるインパクト重視の出落ち曲みたいに捉えられちゃう? ここらへん、逆にリアルタイム組はわからない。

当時、というか最早宇多田ヒカル史上と言った方がいいか? タイアップと無関係にあそこまで楽曲がプロモーションされたことはなかった、という事実についても触れとくか。「みんなのうた」採用曲であったが、別にNHKの宣伝の為に書いた曲ではないので基本的に『ぼくはくま』はノンタイアップ曲なのだが、二万通を超えるぬりえコンテストやら合唱コンテストやらそれらに伴うスペシャルTシャツの制作やらそのコンテストやら。たった一曲の為にそこまでする!?という気合の入れようだったのだ。

https://sp.universal-music.co.jp/utadahikaru/kuma/
https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/utadahikaru/from-hikki/index_60.html

つまり、ヒカル本人は勿論のこと、周りのスタッフもヒカルの熱意に賛同してあれやこれやの企画に取り組んだということだ。次のシングル曲『Flavor Of Life』ではこんなことしなかったからね。ドラマで流したらバカ売れしたので何もする必要がなかったともいえるけど。いやヒカルは精力的にテレビ出演して気合いが入り過ぎて歌い出しをトチったりしてたけども『Flavor Of Life』は!

と、いう風な『ぼくはくま』を取り巻く18年前当時の空気感なんて、最近リスナーになった皆さんはわからないのね。で、ヒカルは果たしてそれでいいと思っているのか? sf-kuma.comに続いてツアーグッズにもくまちゃんが大登場しているのだから、本番でも、アカペラワンコーラスのみでもいいから歌った方がいいんでない? …いや私がヒカルと一緒に歌いたいだけなんじゃないかといえば全く以てその通りなんですが(ええおっさんがねぇ)、サブスク世代にこの曲の重要性を正確に伝えるのはやっぱりなかなか難しいので、無理矢理にでも“歌い継ぐ”のが、[うた]としては正解・正道なのかなと。直接歌うのが躊躇われるなら例えば今回の幕間で、『ヒカルの5』の『サングラス』のように、『ぼくはくま』のVTRを流すとかでもいいかもね。って流石にもうSFツアーの幕間に何するかとか決まってるとは思うけど、『UTADA UNITED 2006』の『詩の朗読』(DVDでのタイトルは"Untitled")なんか公演毎に変化していったし、コンサートツアーはイキモノ/ナマモノなんで、好きなだけ変えていけばいいんじゃないですかね!? ヒカルさん、少しばかり考えてみてくださいね。

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