無意識日記
宇多田光 word:i_
 



という感じなので、暫くハイレゾ推し押しは封印しようかなぁ、とも思う。私自身はそれに価値を見いだしているが、客観的に観てコストパフォーマンスがよくない。

ただ、やはり「兎に角手に入るうちで最上の音質を手にする」事の大切さは踏まえておきたい。勿論、オーディオシステムの方を凝りだしたらキリがないのだが、音源に関してはハイレゾさえ買ってしまえばそれで王手なのだから、何というのだろう、踏ん切りや諦めがつくとでも言っておこうかな。つまり、「もうこれでいいじゃん」と取り敢えず言い切れるのだ。


今回、ハイレゾに関して調べる為に久々に"ネット・サーフィン"をしてみたのだが、ひとつ気が付いたことがある。音楽が奏でられてから聴き手の耳に届くまでをしっかりと総て概観出来ている人は極めて少ない。これではハイレゾに関して混乱が起こるのも仕方がない。

「音がよくなった」と感じた時にその原因を特定するのは極めて難しい。私がハイレゾSCv2収録の"Be My Last"を聴いて音がよくなったと感じたのは何故だったのか、キッチリ私は間違えた。

様々な論理的可能性があるのだ。それはリマスタリングのコンセプトのお陰かもしれないし、ハイレゾのお陰かもしれないし、マスター音源の高音質に依拠するかもしれない。もしかしたらたまたまその日に私の気分がよかったり、はたまた集中力が高まっていたりしてもうそれだけで"よく"聴こえてしまったのかもしれない。その日の温度や湿度のせいで再生機器の様子がいつもと違っていたのかもしれない。或いは私の耳が、その日それまでに聴いていた音楽に耳を馴らされていたせいでいつもと違って聞こえたのかもしれない。言い出したらキリがない。

しかし、ハイレゾを本気で語る為には、そういった、楽器や声帯が音を奏でてから聴き手の鼓膜を震わせるまでのプロセスがどうなっているか、おおざっぱにでも把握しておかなければいけない。いや、鼓膜までじゃ実は足りない。ハイレゾを語る時に必須なサンプリング周波数やビット深度が何故あの数値になるのかについては、外耳中耳内耳を経て、蝸牛の有毛細胞の仕組みにまで立ち入らねばならない。そこでフーリエ解析にあたる処理が為されている事や、それに留まらない非線形要素の挙動についても知っておかなければならない。

勿論、アナログからデジタルへ、デジタルからアナログへという変換で何が起こっているかも把握していなければ解釈をすぐに間違う。こちらでもフーリエ解析の数学的知識と電気回路の基礎(電気力学)を把握していなければならない。でないと間違う。


こんな事をくどくど言っているのは、サンプリング周波数だのビット深度だのと皆語っているのに、Hzが時間の逆数である事や、デシベルが対数で、即ち無次元の量である事など、基礎的な事すら踏まえていない記述を沢山見たからだ。ハイレゾなど音質について語るにあたって、それらのうちどこかひとつでも間違えばそれ以降の議論の信憑性が劇的に下がる。何とも勿体無い。

音質について語るには、数学、物理学~電気力学、大脳生理等の神経科学、音響心理学等、幅広い知識が必要だ。それらを総て概観出来て初めて「何が原因でいい音が鳴ったと思えたか」について議論できる。そして、多分そんな人は日本には殆ど居ない。


そちらの道で考えるのは無意味である。私達が欲しい情報は、どのハイレゾ音源を買えばいいのか、再生機器はどれがいいのか、ヘッドフォンやイヤフォンは何を買えばいいのか、そもそも、何をどこまで揃えればいいのかという具体的な情報、いや、指示である。

現代のネット社会における最大のストレスは選択だ。毎日々々自分が何をクリックすべきかタップすべきか迫られている。何にも考えずにただダラダラとネットサーフィンするのは確実にそのストレスを減らす。多すぎる選択肢。多すぎる可能性。そんなのは面倒だ。

我々に今必要なのは、昔の昭和のラジオやテレビのような少ない選択肢である。チャンネルを4つ5つたぐって、その中から自分の好みを選ぶ。それ位の気軽さで高音質音源を楽しめるようにならなくてはならない。そういった発想が、今後は必要になってくるだろう。

だから暫くハイレゾおしは控えようと思う。もっとシンプルに話が出来るようになるまでもっと学ぼう。私なら最初から最後まで話を追える筈だから。

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うぉう、これだけ間があくのは久しぶりだな。今年もよろしくお願いしますm(_ _)m


さて休んでた間にハイレゾ関連のチェックをしていたのだが、現時点では「マニア以外必要なし」というシンプルな結論に至った。それ以上特に言う事はないのだが、それなりにつらつらと書き留めておく。


先月「Be My Lastのサウンドが極端に向上している。マスター音源の音質が高いからか?」という話を書いた。それを検証すべくハイレゾファイルのビットレートを下げて聴き比べてみたのだが、ビットレートの多少より遥かに"マスタリング"自体の効果が大きい事がわかった。即ち、マスター音源の高音質はひとまず関係がなかったのである。

次に今回発売になったMastered For iTunesのSCvol.2に収録されているBe My Lastとも聴き比べてみた。なるへど、こちらはこちらでULTRA BlUE収録分ともハイレゾとも違うマスタリングだ。(総体的な)低ビットレートに対して開き直ったというべきか、どこを聴かせてどこを諦めるかという方針がよりハッキリしている印象がある。

まとめると、ハイレゾ効果よりも、マスタリングによる差異の方が大きい。と言い切ってしまったがここらへんは難しいところで、今のところいちばんフェアに判定出来るのは「First Love」アルバム収録の4曲のみだろう。この4曲に対しては、3種類(以上)のCD音源と2種類のハイレゾ音源がある。このサンプル数をどうみるか、だ。困った事にこの4曲は元楽曲の性質上ハイレゾ効果が薄い。打ち込み主体で音像に空間的な隙間に乏しいからだ。「ハイレゾの魅力とは鳴っている音よりもそれが響いている空間を感じ取れること」と以前指摘したが、そもそも空間が全然空いてないのである。

なので、出来れば今後のオリジナルアルバムの、ハイレゾ音源化も勿論だが、FL15でやったようなプラチナSHM&プラチナCD向けのリマスタリングにも期待したい。今回のリリースの欠点は、SC1&2のCD版のリマスタリング音源が発売されなかった事だ。故に何が理由で音がよくなったのかわからなくなってしまった。まぁそれはいいか。今回は自前でダウンコンバートしてみたんだし。取り敢えず、昨年のトーンから若干の軌道修正をしておきますね。

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