無意識日記
宇多田光 word:i_
 



timeとcryは対の言葉なのだ。老いと若さ、諦観と情熱、過去と未来。この歌では(そして他の幾つかの歌でも)そんな"時の無常"とは無縁の不変な場所として青空/blueskyが現れる。だから冒頭の「泣いたって何も変わらない」とは老人が若者に"青空の絶望"を諭す場面だといえる。導入部で至極簡潔に歌の世界観、舞台の展望(cry,time,blueskyの位置関係)を描写している訳だ。一方最後に光はそれでも"雨に負けないで"と云う。雨は不変の青空の嘲笑を請け負った激動の使者であり僕らのcryの投影でもあるのだった。光のdebut曲に相応しい知性溢れる歌詞である。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




15歳とは思えないよね。時間がたてばわかる、って生まれてから大して時間経ってないヤツに言われたかねぇよと苦笑してはぐらかすしかない位、この歌の詞は説得的だった。老人の様な達観を幼い歌声で僕らに語りかけてくる様子を私は嘗て「既に1度人生を経験してきた少女の歌」と形容した事がある。timewilltell.時を司る神は老人の姿で描かれる。然しそこに居たのは15歳の少女だった。彼女は素直に「泣きたいだけ泣けばいい」と促す。泣くのは若さ幼さの特権だ。時間の不思議と諦観を知った上でそれでも"Cry"と勧めてくれるからこのコは特別なのである。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




には、timewilltellとKiss&Cryを並べて聴き較べるのがよいだろう。オリジナリティ溢れる光のライブラリの中でも歌メロが比較的同系統といえるからだ(似ていると迄は言い過ぎかな。符割や構成が共通する、という程度)。9年の歳月を経ても揺るぎないメロディメーカーとしての個性と、飛躍的に成長したシンガー,アレンジャーとしての技量。何より圧倒的にサウンドのスケールが増し、包容力が出てきている。『立派な大人になったねぇ』と親戚のオジサンモードで感慨に耽りたくなるよ。そしてやっぱり、人に寄り添い聴き手に優しい歌声と詞が、変わらず弱い僕等を励ましてくれてるのが何より嬉しい。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )