トシの読書日記

読書備忘録

美しい耳の彼女

2018-11-20 15:40:38 | ま行の作家



村上春樹「羊をめぐる冒険(下)」読了



本書は昭和60年に講談社文庫より発刊されたものです。


さて、「僕」はいよいよ北海道へ渡ります。星形の斑紋を持った羊を探しに出かけるわけですが、何日もかかってあちこち回って手がかりを見つけようとするも徒労に終わります。しかし、秘密を解く鍵は意外なところにあったんですね。「僕」と耳の美しい彼女が宿泊先に選んだ「いるかホテル」の支配人の父親が、世間では羊博士とよばれていて、ホテルの最上階に住んでいるということを知ります。村上春樹が主人公にひんぱんに言わせるセリフ、「やれやれ」がここで非常に印象強く効果を発揮します。


そしてその羊博士に会って話を聞いてみると目的の羊は十二滝町にいるらしいことがわかる。「僕」と彼女はそこへ向かうわけですが、そこには鼠の父親の持っている別荘があって、鼠はそこによく滞在するらしいことがわかります。


で、その別荘に行ってみるんですが、いつでも住めるような状態になっているにもかかわらず誰もいない。それもそのはず、鼠は「僕」達が訪れる1週間前に首をくくって自殺していたんです。何故というに、鼠の中に羊が入ったから。このあたり、説明が面倒なんで省きますが、いよいよ村上春樹のファンタジーのエンジンがかかり始めます。この死んでしまった鼠と「僕」との会話のシーンがこの小説の白眉ではないでしょうか。やっぱり村上春樹、このへんはすごいです。


村上春樹の小説、いつものことなんですが、回収されない謎というのが、もうこの作品あたりから出てきてます。何故、羊は鼠の中に入ったのか?耳の美しい彼女は何も言わずに別荘を出た後、どうなったのか?等々。まぁいつものことなんでこのへんはいいでしょう。


昔、初めて読んだときは、最後の20項くらいをそれこそ夢中になって読んだ覚えがあるんですが、今回はそれほどでもなく、けっこうクールみ読めました。なんでしょうね。それはともかく、自分は村上作品の中で、本書がイチオシですね。村上春樹ワールドが3作目にして一気に開花したという印象です。


次、本書に負けず劣らずすごい作品を連続でいってみます。



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