ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはんbyFb…那須高原『那須高原ビール』の、長期熟成ビールなど

2012年12月02日 | ◆旅で出会ったローカルごはん

 「熟成」「◯年物」こんな表現にプレミア感を持てる酒といえば、ワインかウイスキーと相場が決まっている。ところが、できたて生をググッといくイメージの生ビールにも、こんな概念が存在するとは。視察の最後、那須高原ビールには、地元の九尾の狐伝説にちなんだ「ナインテイルド・フォックス」というビールがある。これが長期熟成して年月を置くほど味わいが深くなる、ヴィンテージビールだそうだ。

 貴重な品なので1杯だけ試飲させてもらったら、ビールなのにトロリと厚みがある味わい。濃いめの琥珀色の印象通り、麦芽がこなれたトロ甘さが強く、養命酒のような身体によさげな風味が感じられる。説明によると、きちんとした材料・製法の生ビールは、酵母に細胞を活性化する要素や、不純物を排出する要素があるそう。昔のドイツでは飲むクスリ、飲むパンとも称され、何と妊婦の滋養強壮にも進められたとも。

 ここの支配人氏いわく、本物の生ビールは文字通り「生もの」で、常に冷やしておく必要があるという。大手メーカーのと比べ、様々なエキスが除かれずに含まれているからで、おかげで二日酔いはせず、健康や美容にもいい飲み物だそうである。ドイツで王侯貴族のビールと称された、黒ビールのヴァイツェン。栄養価が高く夏バテや冬の冷えに効く、ブラウンのスタウト。いずれも那須山系の良質の水で仕込んだ自慢の品です、と力が入る。

 バナナのようにフルーティなスタウト、愛子さまから名をとったスッキリ軽い「愛」。試飲した一通りそれぞれ味わいがあったが、飲みやすい分熟成ビールのインパクトを、かえって再認識したような。本格ビールを各種飲み比べ、やや酔い気分でミッション終了。そういえばいつしか咳も止まりダルさも抜けたのは、朝に寄った48度の熱湯湯治場の効果か、これら「飲むクスリ」のおかげ様だろうか。


旅で出会ったローカルごはんbyFb…那須 『那須高原今牧場』の、牧場産のチーズ

2012年12月01日 | ◆旅で出会ったローカルごはん

 那須高原の開墾において開かれた土地は、荒地や寒冷地の場所柄田畑には不向きで、牧場や牧草地に利用されることが多かったという。現在、那須で酪農や畜産が盛んなのは、そうした先人の苦労に基づいている。戦後期からの経営者は代替わりして、2代目3代目が継承。中には観光や飲食、物販など事業を展開している方もおり、開拓地から高原リゾートに変貌した那須の今の姿を、象徴しているように思える。

 このたびの視察で訪れた、那須高原今牧場は、1947年に満州からの入植者が開拓したのがルーツだ。1頭の乳牛から始まり、現在は130頭を飼育する酪農家となった。牛舎にはホルスタインとブラウンスイスの2銘柄の乳牛が、飼料を食みのんびり食事中。この数を搾乳するのはさぞ大変か、と思いきや「時間になったら、自分で搾乳舎に行きますよ」と、説明の方が話す。何と自分でゲートに入り、機械が自動で規定量を絞り、終わったらまた牛舎へ戻るのだそう。ハイテク時代の酪農の手法、開拓期の先人が聞いたらさぞかし驚くのでは。

 施設では1日あたり4トン弱の生乳を生産しており、うち250キロほどをチーズに使用している。牛舎に隣接したチーズ工房では、おすすめの2品を試食させてもらった。フレッシュタイプの「ゆきやなぎ」は、牛乳を乳酸菌で固めてサイコロ形に切り、反転させながら自然に水分を落として仕上げている。湯葉や豆腐のようなソフトな味わいで、ひたひたな瑞々しさが文字通りフレッシュだ。もうひとつはカットタイプの「みのり」。サラッと溶ける後味に、軽い酸味が残る。

 説明いただいたのは牧場の3代目で、チーズ工房はこの4月から新たな展開として始めたそうである。おいしいチーズづくりの秘訣を聞いたところ、「自分で走って搾乳舎に行く元気な牛は、乳も良質でチーズの味も良くなる」とか。那須高原の牧場の「今」は、牛の、ひいては後継経営者の元気によって、支えられ活性化しているのかも知れない。