ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん96…金沢八景・海の公園の、ゴールデンウィークの潮干狩り

2011年06月04日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 

 首都圏でのゴールデンウィークの、人気レジャーのひとつに挙げられるのが潮干狩りだ。木更津や富津など、房総半島の潮干狩り場が知られるが、横浜市内にも手軽に楽しめるところがある。場所は横浜市金沢区にある海の公園。折しも連休初日の4月29日は大潮ということもあり、自宅から近いので出かけてみることにした。
 11時半の干潮に合わせて自宅を出発、熊手とビニールバケツを持参して、車で近くまで来たところ、あたりはものすごい潮干狩り渋滞だ。幸い、朝一番から掘っている人たちが引き揚げ始める時間帯でもあり、何とか公園に隣接した駐車場に車を停めることができた。サンダルに履き替え、道具を片手にさっそく浜に出てみることに。 
 海の公園は長さ約1キロ、幅約200メートルの砂浜を中心に、隣接して芝生の広場やバーベキューコーナーが整備された海浜公園である。すぐ沖に遊園地の横浜八景島シーパラダイスを望むなど、レジャーゾーンといった雰囲気。周囲には団地や工場群も見られ、潮干狩りができる豊かな海浜ながら、あたりはかなり都会的で開発された雰囲気だ。

 
 というのもこの海の公園、実は人口の砂浜なのである。もともとは乙艫海岸という、風光明媚な天然の浜だったのだが、高度成長期の頃に浜がやせてしまい、昭和40年には金沢臨海地域開発の一環として、埋め立てて臨海公園にする計画が出た。その際に、砂浜を守りたいという市民の声に応えて、公園は埋め立ててではなく人工海浜として整備することとなり、砂浜は千葉県から山砂などを運んで造られたという背景がある。 
 浜が整備された当初は貝類の種苗放流を行っていたが、現在は貝類は自然繁殖しており、アサリをはじめシオフキやカガミ貝、マテ貝など、人工海浜ながらこの海岸で採れる貝類はみんな天然物である。なので採取した貝の持ち帰りは、すべて無料なのがうれしい。千葉方面の潮干狩り場は、多くがそれ用に貝を放流しているため、入漁料がかかる上に持ち帰りにも採取量に応じて料金がかかるのからすると、実に恵まれている。 

 
テーマパークのシーパラダイスを望む潮干狩り場。GWはこのような混雑に
 
 大潮の干潮の時間帯のため、浜に出ると波打ち際まで人、人、人。沖の方では腰まで海に浸かって、じょれんで海底を掻いている人もおり、もうアサリはなくなったんじゃないかと少々心配になってしまう。浜から海岸線を見渡してみると、ところどころ砂浜が海に向けて細長く延びている箇所がある。潮干狩り客はこれに沿って、潮が引くのに合わせて沖へ掘り進めており、すでにあちこちが穴だらけになっている。
 この箇所は「瀬」と呼ばれ、瀬が左右に海中へと落ち込む斜面がアサリの居場所だ。潮の流れがここに引っかかるため、貝がここに留まるのに加えて餌となるプランクトンも滞留するため、粒が大きく味がいいものが数多く採取できるらしい。
 
 自分も遅ればせながら、瀬の斜面に構えて片足を海中に、片足を瀬の砂部に据えて、斜面を熊手で引っかいてみると、小さい貝がパラパラ出てきた。熊手で掘るのが少々じれったく、素手で砂に垂直に手を突っ込んで底へ向けて穴を掘り、手を引き上げながら壁の部分をえぐるように探っていくと、まずまずの粒の大きさの貝が出てきた。少々原始的な方法だが、手の感触で貝の場所がわかるので、熊手よりも粒の大きいのがとれるようにも思える。
 海の公園には、3月中旬から6月頃までの潮干狩りシーズンには、毎年約50万人もの人が訪れる。特にゴールデンウィークには潮干狩り客が集中するため、5月末には砂浜のアサリはほとんど採りつくされてしまうという。しかし、心配は無用。秋には小さなアサリが繁殖して、浜でたくさん見られるようになり、年をまたいで2月頃になると2~3センチの大きさに成長。春から5月になれば、浜には成長したアサリがたっぷり生息するという、豊かなサイクルが形成されているらしい。 

 資源が枯渇しない理由としては、アサリの幼生は海中に浮遊する生態があり、潮干狩りの時季には沖合で浮遊して採られるのを逃れるものがいること、砂浜からやや離れた湾の奥寄りの平潟地区がアサリの繁殖域であること、湾は川が流れ込んでいて塩分濃度がやや低く、アサリが繁殖しやすい環境であること、など、諸説挙げられている。ほか、東京湾はかつて全域が江戸前のアサリの産地だったが、現在はアサリが繁殖できる環境が少なく、湾内で発生したアサリの種苗がみな、ここへ集まってくるという説も。
 海の公園の環境が恵まれているのはすばらしいことだが、それを保護して守っていくには、潮干狩り客も意識することが大切だろう。幅15センチを超える貝採り器具は使用禁止、2センチ以下の稚貝の採取は禁止、採る貝の量はひとり2キロ以内など、決められたルールを守っていかないと、こういう場所はすぐだめになってしまうから大変だ。
 
 
収穫量は少なかったが、バター焼きに仕上げた「江戸前」のアサリ
 
 小一時間砂浜を掘ってみたところで、何とか家族分ぐらいのアサリが漁獲できたところで引き上げて、家に帰ったら貝を真水でざっと洗い、30パーセントの食塩水につけて暗いところに置くこと一昼夜。しっかり砂が抜けきった翌日の夜に、アサリバターに調理していただいた。
 熱した鍋にバターを敷いて、溶けたらアサリをざっと入れてふたをして三分ほど。仕上げに酒と醤油、おろしニンニクを入れてできあがりだ。海の公園のアサリは小粒だが味が濃いことで評判が高く、小さいながらも濃い黄色の身は旨みが強い。 
 短時間で集中して潮干狩りをしたから、採取の経費は駐車料金の300円ちょっとのみと、元手の割にはいい収穫だったかも。今度はアサリごはんにアサリの味噌汁も、一緒にできるぐらいにとれるよう、腰を据えてがんばってみようか。(2010年4月29日食記)

 


町で見つけたオモシロごはん135…赤羽 『しゃもじ家』の、串なし焼き鳥と赤羽ハイボール

2011年06月02日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 このブログでも何度か出てきた食マンガの名作『孤独のグルメ』で、赤羽も紹介されている。早朝の納品を終えた五郎さんが、腹を減らして入った店が、なんと早朝から営業している居酒屋。確か7時ごろなのに店内はホッピー片手にマグロぶつで出来上がっている客でいっぱいで、「俺は、夢を見ているようだ」との台詞にその驚きが代弁されている。
 マンガの印象が強かったせいか、赤羽と言えばまだ日が高いうちから飲み屋がにぎわっている街というイメージがある。先日、仕事で赤羽の飲み屋街マップをつくるために、16時ごろ訪れたのだが、駅から数分の飲み屋街的一角は確かに、すでに十二分にできあがっていた。

 仕事は地図を作る取材なので、路地を隅々まで歩き、全部の店をチェックして原稿に落とすのだが、やってみたら店が想像以上に密集していて、用意したグーグルマップの下図の縮尺ではとても書き込めない。なので目安となる店だけぽつぽつとプロットしたら、あとはデジカメを動画モードにして「赤羽飲み屋街ストビュー」を録画。後でそれを見ながら原稿作りをすることにした。
 飲み屋は主に「OK横町」という、ガッツさんがくだを巻いていそうなイメージのネーミングの(なんだそりゃ?)路地に集中していて、中央にある「八起」という人気店はすでにフルハウス。そして横町を抜けて右に回り込んだ角が、『孤独のグルメ』ファンの聖地「まるます家」だ。こちらもコの字のカウンター席は、すべて酔客でふさがっている。
 作品では酒の飲めない五郎さんが、酒の肴であるイクラどぶ漬けやゆばさし、岩ノリをおかずとして頼み、ご飯を頼むつもりがついうな丼を注文してしまう。これはもともと川魚を扱う店の人気メニューで、あいにく今日は売り切れの張り紙が。

 
「孤独のグルメ」の作品中にもまるます家の店頭が出てくる。確かに似てる?

 この2軒だけでも、昼酒横町の雰囲気が十分漂っているが、さらに先の「一番街」にも、薄暗いアーケードの下に立ち飲み屋がぽつぽつ点在している。おでん、モツ焼き、焼肉など店のジャンルが豊富で、各店では立ち飲み親父たちができ上がっている怪しい雰囲気だが、若い人も入れそうな内装の店もちゃんとある。
 カメラ片手に小一時間ぐるぐると路地を巡り歩いたら、仕事は何とか終了。駅から5分のところの「岩の湯」でひとっ風呂浴びたら、もちろん飲まねば赤羽は把握できない、とOK横町の「しゃもじ家」にて杯を重ねた。夏野菜のトマトやアスパラ、名物の串のない焼鳥がうまく、赤羽ハイボール(ジョニ赤のソーダ割り)が進む進む。  

 
しゃもじ家は家庭的な料理が人気。季節がら野菜がおいしい

 締めのしゃも鍋を平らげて駅に戻ったら、23時と意外とゆっくりしてしまった。ネオンの赤羽で飲むのもいいが、やっぱりお天道様のもとで飲むのが赤羽スタイルなんだろうか? (2011年5月31日食記)