ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

みち草@尾道

2021年03月20日 | 旅で出会った食メモ
このたびの旅のスタートの一献は、尾道駅前のこちらから。家族経営で気取りがなく、瀬戸内の鮮度のいい地魚を安く味わえることで、もう5回ほどリピートしている大衆酒場だ。4~5席のカウンターに座敷が2つほどある程度のこぢんまりした店で、ほとんど地元の常連らしく、広島ローカルな雰囲気にあふれる。暖簾をくぐると「おかえりなさい」、注文したものを出してもらうたび「遅くてすみません(←全然遅くない)」との、親父さんの朴訥なお約束対応も、相変わらずである。

「小イワシ」「タコ」「フグ」「カキ」の瀬戸内広島もの定番は、どれも1000円しない良心的な値段。魚料理は刺身、天ぷら、唐揚げのほぼどれでも調理してくれ、いつものタコフライと小イワシの刺身で腰を据える。タコは三原港の主たる漁獲で、早潮でもまれ身が締まりエビカニを食べて身の味がよい、はお決まりの題目。プツプツとキレの良い歯応えに詰んだ甘みがあふれ、ジョッキ一杯目を瞬時に蒸発させてくれる。

小イワシとは、カタクチイワシのこと。広島では一般的な庶民的な魚で、家庭料理や居酒屋のメニューで登場する。とれたてを刺身で食べるのがうまく、時期柄脂のノリはほどほどながら、青魚らしい身のコクがあり、「酔心」冷酒が進んでいく。瀬戸内ローカル魚のアナゴにもいきたいところだが、撮れ高十分につき節約して締めに。中継ぎで頼んだだし巻きが、卵の味をそのまま引き出した優しい味わいで、締めくくりに嬉しい逸品だ。

店を出るとすぐ正面の踏切越しに、古寺めぐりコースの入り口が見える。明日は朝から、きっちり坂の街を歩きましょう。