ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ポーラ美術館レオナール・フジタ展2

2012年01月03日 | てくてくさんぽ・取材紀行
ポーラ美術館のレオナール・フジタ企画展の続き。

 展示の後半は、先ほどの「乳白色」を用いた子供や少女の画が中心となる。ただ、最初に見た裸婦画が柔らかかったのに対し、子供たちの表情はどこか鋭角的に感じる。なんというか、笑顔がなく、無表情で能面的というか。希望や和みより、内面に抱えた虚無感のようなものが伺える。

 その、子供たちを様々な職種に描いた「小さな職人たちシリーズ」が、このたびの企画展での初公開も多い、主たる展示のひとつだ。正方形のタイル画にそれこそ様々な職に携わる少年少女を描いている。パン屋や魚屋、洋品店など商店主、左官や指物師、椅子職人といった技術者、さらに弁護士や医者、学者なども。旅人に写真家、印刷工など、我々に親しみ深い? 職種も。

 さらに、手品師に猛獣使い、心霊療士といったややオカルトチックな職種、さらにスリにどろぼう、浮浪者、守銭奴(!)なんて、もはや職業じゃないネガなのもあり、興味深いというか、絵の題材が子供だけに怖いというか。

 これらはほぼ「プティ・メティエ」と呼ばれる、下層民のしがない職業である一方、パリの街の象徴であり風物詩でもあったという。フジタ氏は第一次大戦後、国からの送金が断たれて困窮していた時期があり、こうした職種の人々に「友人」として親しみを持っていた、とも解説に記されていた。とはいえ、同情のような風刺のようなブラックなような、解釈の難しい画だ。前述のように、子供たちの表情が虚無的なので、なおのこと。

 写真はまた、閲覧用の公式図録から借用させていただきました。私の好みで、魚屋さんを選びました。

ポーラ美術館レオナール・フジタ展1

2012年01月03日 | てくてくさんぽ・取材紀行

昨日、ポーラ美術館に参観に行ったレオナール・フジタの企画展について、覚書的に鑑賞記を少々。

 氏の画風の大きな特徴は、「素晴らしき乳白色」と称される魅惑的な白。硫酸バリウム等と膠を加えた地の上にシルバーホワイト(鉛白)を塗り、その上に下書きする、という仕組みで、人物を表現することの難しさから独自の作風を突き詰めてのことだそうである。

 この白による肌と、面相筆での炭線による輪郭の描線の組み合わせが、女性や子供の独特ななまめかしさを描き出している。「タピスリーの裸婦」は、キスリングやモディリアニらエコール・ド・パリの他の画家とは異なる、いわば白ではない人肌の白さが魅惑的だ。一方で「パリの要塞」「巴里城門」といった風景画は、どこか重く暗いのが対照的。

 また氏は戦争に翻弄され、画家活動と金銭面ともに苦しんだ時期があるという。戦後に日本とフランスの間で揺れ動く心情を表わした作品は、動物を擬人化したものが中心となっていた。「犬の円舞」「ラ・フォンテーヌ頌」は、どこかシュールでブラックな印象が、裸婦や少女の絵と一線を画している。迷いというか、心の闇というかが、獣と人間を一体化させた虚偽の生き物を作り上げているようだ。

 また、この企画展は子供たちを描いたタイル画「小さな職人たちシリーズ」がメインだったが、これはまた別途。 ※写真は閲覧用図録より拝借しました。