ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん86…横須賀 『釜飯と串焼き とりでん』の焼き鳥&イースターのゆで卵

2007年04月18日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

ニッポンの年中行事に、イースターも参入か?

 ここ数年で、イベントとして盛り上がる年中行事が、ずいぶん増えてきたような気がする。自分が子供の頃は、年末のクリスマスに始まりお正月、節分、ひな祭り、こどもの日、といった程度だったか。それが11月のハロウィンが一般化して、行灯や仮面にするカボチャをテーマに、ケーキやプリン、タルトなどのお菓子が売られるようになった。節分には恵方巻きとかいう太巻きをかじる習慣が広まり、バレンタインデーからホワイトデーと続く、洋菓子の販売攻勢。さらにひな祭りにはちらし寿司と、なぜかイチゴのケーキも。
 バレンタインデーあたりは、自分が子供の頃にもあったような気がするが、記憶にないのは自身が無縁だったからか? でも、こうしてみると、人気の年中行事には、それにまつわる食べ物が必ずある気がする。ハロウィンとか節分の恵方巻きとかは、若干その食べ物の「業界」の販売戦略、という気もしなくはないが。

 4月にそんな年中行事がないのは、新入学や入社、転居など新生活が始まる節目で、人々が多忙だからなのだろう。調べてみると、4月8日は釈迦の生誕日である「花祭り」。あまり一般化していないのは、前述のように世の中が多忙な時期なのが理由なのか、それとも食べ物とのからみが、甘茶では弱いからなのか(失礼!)。
 そしてもうひとつ、こちらはキリスト教にまつわる行事「イースター」もこの期間だ。今年は4月8日と、お釈迦様の生誕日と重なった。京浜急行の沿線案内の小冊子の、イベントガイド欄にこの「イースターの集い」というのを見かけ、家族でぶらりと出かけてみることにした。同じく京急沿線の弘明寺観音で催されている「花祭」ではなく、こちらを選んだのは、甘茶よりゆで卵がうまそうだったから、という訳ではないけれど、小冊子の記事に添えてあった、色とりどりの卵の写真が、何だか楽しそうな雰囲気である。

イベントではなく、正式で厳粛な礼拝に少々、あたふた

 会場は京急の横須賀中央駅そばにある、横須賀中央教会で、入口に入ると「イースターおめでとうございます!」と、子供たちが元気に出迎えてくれた。テーブルの上には、ゆで卵がたくさん入れられた籠が。赤や緑、黄色、中には水玉や縞々など、実にカラフルだ。
 イースターとは「復活祭」のことで、キリストが十字架に磔にされて亡くなってから3日後に、復活したことを祝う祭である。同時に、春の訪れを告げるお祭りでもあり、海外ではクリスマスやバレンタインデー、ハロウィンと並ぶ、知名度の高いイベントなのだ。京急の小冊子によると、この教会ではイースター向けのプログラムが用意されているとあり、バザーやイベントなど期待していたところ、ゆで卵と一緒に聖書と賛美歌の本を手渡されて、2階の礼拝所へと案内される。
 イースター向けのプログラムとはつまり、「イースター礼拝」のこと。賛美歌を唄い、祈りの言葉を捧げ、牧師の方から聖書の話を聞き、と、厳粛な雰囲気の中で進んでいく。クリスマスもお正月も普通に楽しんでしまう、典型的な「無宗教な日本人」の自分も、教会の礼拝に正式に参加するのは、初めての経験。慣れないので、進行にうまくついていけずあたふたしていると、隣席の方が親切に、聖書や賛美歌の該当ページを教えてくれる。

 礼拝の詳細はここでは省くけれど、印象的だったのが、パンと葡萄酒が参加者に配られたこと。キリストが処刑される前夜の「最後の晩餐」で、弟子たちにパンは自身の肉、葡萄酒は血として分け与えたとされる。自分のような、ふらりと訪れたような者が頂いていいものか、あわてていると、「洗礼を受けてない人は、頂けないんです」と、先ほどの隣席の方。
 1時間強の礼拝が終わり、ややホッとして階下へを降りると、入口で再び「よろしければもうひとつ、どうぞ」と、ゆで卵を受け取った。さっきもらったのは緑、今度のは真っ赤で、「怪獣のたまごだ」と喜びながら、水玉模様のゆで卵をもっている子供もいる。
 イースターゆかりの食といえば、このカラフルなゆで卵、みんなでこれをいっぱい食べて… ではない。本場ではイースターの際には、様々なごちそうをつくってみんなで頂いたり、プレゼントやカードを交換したりと、ちょっとクリスマスに似たイベントらしい。イースターエッグと呼ばれるこの卵は、いわば生命の始まりや復活の象徴で、このように着色して飾ったり、子供たちがゲームに使ったりと、キリストの復活に縁のある品として用いられているようである。

ゆで卵を頂き、お昼ご飯は卵の親で焼き鳥で

 もちろん、普通のゆで卵と同様に食べられるのだが、ちょうどお昼時とはいえこれで昼食代わり、では少々足りないか。数集まると彩りもきれいだし、持ち帰って飾ってから、家で頂くことにしよう。子供たちも子供向けの礼拝を終えて、近くの公園で遊んで戻ってきたため、お世話いただいた牧師の方々に挨拶して、そろそろ教会を後に。横須賀中央駅前の「モアーズ」レストラン街で、昼食を済ませてから帰ろう。
 店の選択は子供たちに任せたところ、品書きの写真にひかれて決まったのは『釜飯と串焼き とりでん』という店。子供たちは釜飯に決まっているようで、それぞれたっぷりイクラ釜飯、うなぎの釜飯を注文した。卓上の砂時計で、運ばれてきてから3分計って蒸らす仕組みらしく、何やら楽しそうにやっている。半分食べてから、ダシ汁を入れて茶漬け風で頂くのが、名古屋名物の「ひつまぶし」に似ていて、なかなかおいしそうだ。
 自分はそれほど空腹でなかったので、串焼きの人気5点盛りとビールで、軽く済ますことにした。この店で使っている鶏は、某知事の宣伝効果で話題の「宮崎日南鶏」。肉に張りがあって脂がのりジューシー、と品書きに紹介されている。肉の味が濃いねぎまとつくね、脂たっぷりのボンチリ(鶏の尻尾の先端部)をかじりつつ、昼間から中ジョッキをグッ。
 年中行事と食べ物との関わり云々を冒頭で綴りながら、イースターに参加した後の食事は何だか、年中行事と無関係になってしまったか。まあ、「鳥は、復活の象徴である卵の、さらに生みの親」ということで…。(20074月8日食記)