ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

魚どころの特上ごはん71…松江 『五歩屋』の、宍道湖七珍のシジミ料理

2007年04月15日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

魚どころの特上ごはん69 の続きより。

 
前回紹介の、スズキの奉書焼(左)に、ウナギの柳川風(右)

●郷土を代表する魚介・シジミの味付けは… ニンニクと唐辛子!

 松江温泉にある郷土料理の店『五歩屋』で、宍道湖七珍料理を満喫。希少な魚介である「あ」のアマサギも、今宵は飛ばして、いよいよ宍道湖を代表するローカル魚介・シジミの登場である。
 シジミの料理と聞いて、思い浮かぶのはやっぱり、味噌汁。肝臓にいいグリコーゲンが豊富なので、酒を飲んだ後にはもってこいだ。とはいえ、まだ酒宴は序盤戦。シジミ汁の登場には少々早すぎるよう。 酒の締めでなく、酒の肴になるシジミ料理を勧めてもらうと、「じゃ、うちのオリジナルシジミ料理でいきましょうか」とご主人。何と、シジミをニンニクと唐辛子でサッと炒めた料理だそうで、エスニック風というか、スタミナ料理というか、聞くからに食欲をそそる。このシジミのピリ辛炒めと、追加の地酒「豊の秋」生酒ももう1本。シジミが肴なら、少々深酒したって安心か?


 大鉢にいっぱいの、シジミのピリ辛炒め

 貝を素材にした炒め物といえば、居酒屋定番メニューのひとつ・シジミバターが思い浮かぶ。アサリはシジミより大きいから、バターの風味にも負けないけれど、小粒のシジミをニンニクや唐辛子みたいな風味の強いものと炒めたりして、大丈夫なんだろうか。少々心配しているうちに、大きな角皿にたっぷりのシジミが盛られて登場。その粒が大きいことにビックリ、小柄のアサリと言ってもおかしくないほど大きく、殻に厚みが合って丸々、コロコロしている。
 だからかなり濃い目の味付けなのに、シジミ自体の味がこわれることなく、かえってこってりした身の味が強まっているよう。意外にニンニクとの相性がよく、シジミはホクホク、ニンニクの粒がシャリシャリといい「出会い物」の味を作り出している。
 地元・松江に蔵元がある「豊の秋」は、甘くも辛くもない素直な味で、さっきのスズキやウナギといい、個性的な七珍料理の引き立て役に徹している。シジミにものピリ辛タレをいっぱいつけて、2、3つまんでは「豊の秋」の杯をクッ。このタレが実においしく後をひき、シジミの身を食べきった後も空いた殻で、タレとニンニクの粒もすくって残さず頂いてしまった。

●シジミラーメンで締めくくり、二日酔いをシャットアウト

 宍道湖のシジミの特徴は、このように殻がタレをすくうスプーン代わりになるほど、大粒で肉厚なこと。種類はヤマトシジミで、大粒のは湖の北部、小粒のは南岸でとれるという。このシジミ、宍道湖でとれる魚介類のうち実に9割以上を締め、漁獲高は日本でも屈指。日本で漁獲されるヤマトシジミのうち、3~4割は宍道湖で水揚げされるというから、地元でも大きな産業のひとつだ。
 だから、宍道湖七珍の中でも通年食べられる品で、「七珍=シジミ(あとはスズキか?)」といってもいいぐらいの、知名度の高さだろう。さらに値段も手ごろで、有名料亭から庶民派居酒屋まで、どこでも頂けるのがうれしい。ちなみにこの店は、奥さんの弟がシジミ漁師のため、直接安く仕入れており、鮮度のよさも、質の良さも折り紙つき。このような思い切った料理法ができるのも、そのおかげだろう。

小粒のシジミがたっぷり、エキスがよくしみでている

 先に頼んでいた、ウナギの柳川風のつゆにご飯を入れて、締めくくりに鰻雑炊にしようと思ったが、当地ならではの締めの一品を品書きに発見。シジミたっぷりのラーメンだ。締めにちょうどいい小振りのドンで、スープは塩味があっさり。シジミはさっきのピリ辛炒めと違い、小振りのがたっぷり入っている。ダシをきちんととるには、小粒のほうが向いているのだろう。エキスがしっかりと汁に出ていて、酒の後にはほっとする味だ。

●宍道湖「四景」を全制覇すべく、明日は早起きで

 昼間に市街を散策している際、青空の下に輝く宍道湖を眺め、この店に来る前に夕景の幻想的宍道湖も眺めた。あとは早朝、シジミ漁の漁船で賑わう宍道湖を眺めれば、宍道湖の代表的な「三景」をすべて制覇か。シジミ漁は朝6時ごろからやってるから、松江温泉あたりの湖岸に行けば、漁の様子が見られるよ、とご主人に勧められ、明朝の早起きを決めてそろそろ、席を立つ 
 すっかり夜の帳が下りた湖岸を自転車で走り、途中で湖岸に自転車を停めて、酔い覚ましがてら追加の「四景目」をしばし、眺めることに。先ほどは荘厳な夕景にちょっと、あてられてしんみりしてしまったが、今は酔いが心地よく回り、いい気分。湖岸の涼しい風にはっとしてふと、対岸に目をやると、湖に映った松江の夜景がゆらゆら揺れていた。(2007年9月25日食記)