ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん35…高山 『高山朝市』の、無添加赤カブ漬けに飛騨牛の串焼き

2006年02月02日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 奥飛騨温泉郷の最奥にある新穂高温泉からロープウェイに乗り、穂高連峰の登山口である西穂高口駅を目指す。ゴンドラの窓からは、正面にそびえる北アルプスの山々を望み、眼下には蒲田川が刻む谷間から山腹にかけて広がる、黒々とした深い森が見下ろせた。ガイドによると、この森には主に飛騨地方に分布している、朴の木も多く自生しているという。飛騨の人々の生活は山とともにあり、といわれるが、狩人や木地師たちにとって、こうした深い森は生活の糧を得るための、恵み豊かな場だったのだろう。

 西穂高口駅を起点にして、千石園地の原生林の中をハイキングしてから、この日に宿を取る高山へとバスで向かった。山歩きをして疲れているため、宿へ戻ってから早々に眠りにつき、おかげで翌朝目覚めたのは7時前。高山名物の朝市見物にちょうどいい時間である。身支度をしたら、朝市が行われている宮川沿いへと国分寺通りを歩いていく。宮川へ近づくにつれ、沿道を歩く人の数も増えてきたようで、鍛冶橋を渡ると、あたりは結構な人出。早朝であるにもかかわらず、ツアーバスの客の姿も結構見られるようだ。

 高山の朝市はここのほか、高山陣屋で行われる「陣屋前朝市」があり、扱う品数の豊富さでは宮川朝市のほうに軍配が上がる。もとは昭和20年代から行われていた交換市がルーツなだけに、野菜や果物をはじめ工芸品や民芸品、衣類など生活雑貨まで、露店の種類は種々様々。観光客向けの朝市、ともいわれている一方、泥つきの山芋や山ゴボウといった地の野菜、使い込むといい色になるというイチイ細工のアクセサリー、格安のこわれもの塩せんべいと、素朴な地の品や思わぬ掘り出し物などもあふれているように見える。

 見たところ山里の朝市だから、漬物を扱う露店が結構多い。千枚漬けや、漬物を刻んだ「めしどろぼう」、茶漬けといった品に並び、目をひくのは高山名物・赤カブの漬物だ。真っ赤なのが店頭にずらりと盛られた露店を見つけ、ひとかけら試食させてもらう。「うちでは化学調味料や着色料、保存料を使わず、味付けは塩のみ。だからあまり余計な味がしないでしょう」と店の人が言うように、えぐ味がなく野菜の味が素直に引き出された優しい味だ。使う野菜も高山郊外で栽培している自家製の有機野菜、漬けるのに使うのもプラスチック桶でなく昔ながらの木桶という、まさにこだわりの漬物である。「漬物はあまり高いと売れないから」と、ひとつ350円は朝市でのみの特別価格。昨日に続いて山の恵みのご相伴にあずかることにする。

 食べながら歩いている人を見かけて欲しくなり、朝飯がわりに「牛政」の飛騨牛串焼きを1本かじり、隣の店の「朝市牛乳」をグイッと頂く。串焼きは醤油ベースのタレで、中は赤いミディアムな焼き具合で柔らか。牛乳は牧成舎の「まぼろしの味」とあり、低温殺菌しているためスッキリした味わい。早起きして健康的に散歩して、朝市で朝ご飯を頂く。山歩きの疲れもすっかりリフレッシュしたところで、今日の散策は山から里へ。上三之町や屋台会館、飛騨の里など、山間の小京都・高山を隅から隅まで歩きまわってみよう。(9月下旬食記)