ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカルベジタでヘルシーごはん…『休暇村鹿沢高原』の、嬬恋キャベツの料理2題

2013年09月02日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
キャベツといえば、アニメ主題歌の行進曲で、主菜ができあがったのに「どうした〜?」と唄われたのを思い出す。時としてツマや添え物的扱いも見られる野菜だが、群馬県嬬恋での畑風景は、ひと目見れば主菜として味わいたくなる圧巻だ。浅間山をバックに、高原に見渡す限り連なる若々しい緑の玉の数々。「どうした〜?」ならぬ「どうだ!」との、産地ならではの自信がみなぎっている。

夏でも15〜20度と冷涼な気候、かつ多雨で昼夜の温度差が激しいことが、嬬恋が日本一の産地たる所以という。未明の3時から収穫、しかもひと玉ずつ手摘みする、手間と愛情の賜物だ。嬬恋に近い「休暇村鹿沢高原」の昼食でいただいたキャベツ料理は、まさにその恵みの味。生のままのざく切りは赤味噌、白味噌、バーニャカウダソースをつけ、そのままパリッといく。しっとりながらシャクっと食感が残り、えぐみのない素直な甘さ。ソースをちょん、とつけるだけで、大地の持つ実力が充分堪能できる。

メインのその名も嬬恋キャベツ焼きそばは、千切りキャベツの上にソース焼きそばがのったスタイル。麺と一緒にガバッといけば、ズルズル、シャクシャクとヘルシーに進む。油っぽい麺を瑞々しい千切りがまとめ、温玉のおかげでまろやかな味わい。ざく切りが素材の味なら、こちらは出合の妙での実力発揮だろうか。

甘みがあり柔らかいのが嬬恋キャベツの特徴です、と話す料理長によると、ローカルベジタとして宿の看板料理にすべく、様々なアイデアを試行錯誤しているという。主菜の添え物を越えてキャベツ自体の印象が際立つものが理想、とか、客が近くの畑を眺めたり収穫や調理を体験したら味もひとしおかも、など、キャベツ談義に花が咲く。主菜のトンカツを差し置いて印象に残る、鮮烈なキャベツ千切りができれば最高、とは、ここのキャベツならあながち冗談でもないかも。

ちなみに昨日は村内の愛妻の丘で、「キャベツ畑の中で妻に愛を叫ぶ」なるイベントが開催されたという。畑のど真ん中にある専用台から、村名にちなみ妻への愛と感謝を絶叫するのだそう。略称「キャベチュー」に、今度は同じアニメのエンディングテーマを思い出すような。妻への愛はさておき(?)、場所柄キャベツ畑にも感謝を叫んでみたいところだ。

ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…那須どうぶつ王国『王国レストラン』の、那須の内弁当

2012年11月20日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

 那須高原の高台にある、那須どうぶつ王国に来園して驚いた。駐車場はさらりと埋まり、園内は子供連れでかなりの賑わい。犬を散歩させたり、カピバラと遊んだりと、なかなかの活気にあふれている。那須町は栃木県の最北という場所柄、震災関連の風評被害が懸念されたが、現在は観光客数は震災前の9割近くに戻っているそう。この日は地元への感謝デーで入園無料とはいえ、園内を歩いていると様子を心配してきた自分たちのほうが、元気をもらえる気がする。

 その活気は昼時のレストランも同様で、眼下に広がる紅葉の高原を見下ろす「王国レストラン」は、バーベキューを楽しむ客でほぼ満席である。自分たちもバーベキューにジョッキ、といきたいところ、この視察は那須を応援するのも大事なお題だ。用意されたのは、「那須の内弁当」と称したランチプレート。那須産の農畜産素材を使った9種の料理を、地元八溝杉のプレートに盛るのがお約束で、野菜が中心のヘルシーな見た目が、いかにも高原のランチといった感じである。

 加盟の8施設それぞれでオリジナルな趣向が凝らされ、ここは動物をモチーフにした仕掛けが楽しい。サラダからは、カピバラ君の形のダイコンスライスがこんにちは。セロリにキュウリ、パプリカなどバリバリに瑞々しく、体がきれいになる気がする。主菜の那須和牛炙りステーキは、鳥の巣仕立ての盛り付け。高原で肥育した、赤身の味が濃い銘柄で、脂控えめでこちらもヘルシー。生クリーム入りの白菜スープは「な・スープ」という、これまた地場野菜のスープ。ほか、丸々ジューシーな美ナスのショウガ汁あんかけ、香気が鮮烈な白美人ネギのごまだれかけといった、那須のブランドローカル野菜の実力もかなりのもの。なすべんに用いる野菜は農家からの直納など、専用に流通するため手間がかかり、1日限定20食なのは仕方ないところか。

 ブルーベリーヨーグルトて和えたリンゴをデザートに、最後は酪農の高原・那須の濃厚な牛乳をグッといってごちそうさま。地元食材満載のランチプレートをすっかり平らげて、食べての那須応援といけただろうか。満腹で園内を散策、名物の温泉に入るカピバラ君を見たら、寒さもあってこちらも那須温泉で、食後の一浴したくなってきた。


ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…宇部・楠『農家レストランつつじ』の、地場産野菜の昼ごはん

2012年11月18日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

 取材に出ると、食べ物は魚やご当地グルメに偏りがちで、二日目の昼あたりからお腹の減り具合が鈍くなりがちだ。今回も昨日から今日の午前中にかけ、食取材は宇部の魚介が中心となり、栄養のバランスがあまり芳しくないよう。

 するとありがたいことに、昼食は宇部興産の石灰石鉱山への途中、宇部市郊外の「農家レストランつつじ」に立ち寄ってとなった。直売所と温泉を併設した施設の、楠こもれびの里にあり、好きなおかずをトレイに取っていき最後に会計する、大衆食堂方式なのが楽しい。

 天ぷらコーナーからはシイタケ串にさつまいも天を。小鉢からは青菜の白和えに揚げ出しナス、おにぎりは高菜とサケを選び、ついでに地卵のだし巻きも。最後に味噌汁もつけて、しめて1100円ほど也。シイタケは原木栽培で、山の香気が際立つ爽快さ。「高糸」という品種のサツマイモは、栗のように濃厚に甘い。揚げ出しのナスはふっくらした実以上に、パリパリの皮が絶品。おにぎりの高菜の塩加減も程よく、具だくさんの味噌汁とともにきれいにいただき、ごちそうさま。

 好みで料理を選べるため、肉と魚まったくなしの野菜めしとなり、満腹ながらも体は軽い。気分は畑仕事後の農家ごはんといった印象で、いざ午後のもうひと働きといくか。


ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…福島・会津の、生産者の分かる福島の野菜試食会

2012年11月13日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

 ひと頃ほとんど見られなかった福島県産の食材が、少しずつ戻りつつあるように感じる。応援イベント販売や特設マルシェなど、まだまだ特別販売が中心だが、それだけに売る側、買う側いずれも、食材の背景や成り立ちなどの情報への関心が半端ではない。風評被害へのいちばんの対応は、徹底的な情報開示あるのみ。そう考えると福島の食材はある意味、いま最も生産者の顔が見える食材に思える。

 秋葉原で開催された、特定非営利活動法人素材広場主催の福島県外商談会でも、会津の風評被害の現状と県産食材の検査方法の説明に時間が割かれた。現在、県の検査は農業総合試験センターで行っており、高精度のゲルマニウム検査機でキロあたりのセシウムを測定するほか、米は全袋検査を実施している。検査開始以来、基準値を超える数値が出るのは稀で、会津の食材は基準値を超える数値は全く出ていないとのこと。また主催者が運営する「生産者指名買いシステム」では、生産者の情報として畑の土壌と環境放射線検査結果を公開。より徹底して放射線関連の情報を開示している。

 そうした説明を受けての試食会では、「生産者の分かる検査済みの福島の野菜」と称し、生産者名を記した20種の料理を味わった。サバとイカとサケの三五八漬けは、いわきの四ツ倉で唯一再興した干物店のもの。塩と麹と米で魚介の旨味が強化された、山国会津らしい水産加工品である。自分の畑の野菜を漬けたという生産者の、カブの芋床漬けに長芋の醤油漬け、ネギの唐辛子漬けは、野菜の香りと歯ごたえが生きた、ご飯が進む味。郷土料理のイカニンジン漬けは、ニンジンの土の香りがどっしりと芯がある。

 会津の郷土料理に野菜の惣菜と続いた後、ピクルス5種が異彩を放つ。玉ネギ、ニンジン、シイタケに、ミニトマトとリンゴピクルスが酸味を引きたて合い、なかなか斬新だ。説明のビデオでは、主催者が旅館の食事向けに生産者と開発している様子が流れ、これから会津を訪れる旅行者に向けた、新進おもてなしの味、といった印象か。

 いただいたパンフや会場のチラシには、生産者の写真が載っており、顔が見える食材の安心さというか、温かさを感じずにはいられない。「絆」もいいけれど、確かな情報で産地と消費地を、顔が見えるように「繋(つなぐ)」こそ、自分の仕事でできることかも。ほくほくに甘い会津産コシヒカリを頬張っていたら、1年前の風評被害モニターツアーで会った生産者のおばちゃんを思い出し、ふと感じた総括である。


ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…岩国・錦川屋形船の、摘み草料理

2012年10月31日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

 吉川氏の城下町である岩国は、瀬戸内に面していながら、山里の食材が充実している。錦川上流の錦町特産のコンニャク、在来種が起源の岩国レンコンなど。レンコンは古くから万能薬として重宝され、穴がひとつ多く断面が殿様の芙蓉の紋に似ているとも。

 岩国・錦帯橋付近を遊覧する屋形船では、レンコンの三杯酢や辛子仕立てを味わったが、これらの料理は藩主三代の養生料理とのことで、レンコンに続き摘み草の天ぷらをいただいた。竹の器にはナス、オクラをはじめ、様々な葉や実、花までが盛られ、まさに秋の野をそのまま運んできたようだ。

 大ぶりの葉は一枚で手早く衣をつけ、小さな葉や花はまとめてかき揚げ風に。係の方によると、コシアブラやヨモギを先に食べるともたれないそうだが、あいにく季節外れなのでなじみのある野菜から。続いて野草かき揚げ風を、青レモンを軽く絞り、藻塩でさっくりいただく。

 強壮効果のあるノビル、呼吸循環にいいツユクサ、疲労回復のキンモクセイ、風邪の予防のユキノシタ。野の力強い香気のかき揚げをかじるごとに、野草の生命力を取り込んでいるかのよう。青レモンの軽い酸味と、藻塩のまろやかさのおかげもあり、青臭さや渋みは感じられず食べやすい。仕上げにパツパツのクコの実をつまめば、体の毒素が除去されたような、リフレッシュした気分である。

 使った野草は藩の薬草園を復元し、そこで摘んだものという。それを船上で天ぷらにするとは、殿様もうらやむようなご趣向か。締めにモミジの葉の天ぷらをいただけば、船から上がったら殿様の城山の紅葉も愛でたくなるところか。