ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカルベジタでヘルシーごはん…銀座NAGANO・長野県原産地呼称管理制度認定米 お披露目会

2015年12月03日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
会は制度のプレゼンに続き、この秋の認定米の中から3品目の試食へと移る。食味の違いは料理との相性に繋がるとのことで、合わせる料理は同じく県産食材のブランド化を目指した、「おいしい信州ふーど(風土)」認定食材によるもの。ご飯とおかずとも、信州所以同士のマリアージュを楽しめる趣向である。

順に、食感と甘みを確かめて合わせるおかずを選ぶべく、まずは一番左の東御市「太陽と大地」のコシヒカリから。コシヒカリは県内の作付面積がトップの銘柄で、東御市は標高750メートルと県内コシヒカリ生産地の最高地になる。この生産者はモミを熱風でなく、自然のままの常温乾燥させているのが特徴。甘みが前に出ているため、キノコの炒め物の甘辛さと相乗な味わいがいい。冬から春先の風に晒されると、さらに甘みが出てより味が良いとか。

続いてもコシヒカリで、安曇野市の「あづみのうか浅川 浅川さんちのお米」。栽培地の安曇野は標高550メートルほど、扇状地の砂壌土で寒暖差が大きい。そのため味が凝縮しており、粘りが少ない硬質米だ。「米粒の感触と甘みを楽しんで下さい」との生産者の方の推し通り、舌触りがしっかりとして厚みのある食味。信州サーモンの塩麹漬けの濃厚な脂甘さを受け留め、ザッとかっ込みたい衝動に駆られる。

そしてもうひとつの「風さやか」は、2013年に品種登録された、長野県オリジナルの品種である。まだ生産量が少なく県内での消費が中心だが、県として今後PRしていきたいという。朝食向きの米との説明があり、確かに瑞々しく爽やか。野沢菜漬けをのせてササッと軽く味わえ、信州の朝ごはんに特化した米として推し出すのも面白そうだ。

認定に至らなかったので参考品です、とのあきたこまちも結構な旨さで、信州の米作のレベルの高さを、かえって実感させられた。日頃追っかけている料理・食材のキーワード「ローカル」、これからはごはんと魚に加えお米もカテゴライズするかな、と思えるほど、深く広いお米の世界。その入口に立った気分になった、長野の原産地呼称認定米の試食会であった。

ローカルベジタでヘルシーごはん…銀座NAGANO・長野県原産地呼称管理制度認定米 お披露目会

2015年12月03日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
先日、表参道で開催された米の官能試験に参加した際、銘柄によって様々な食味の違いがあることを学んだ。主張が穏やかで主菜の味を損ねないのが米の立ち位置、と何かで読んだことがあるが、食べ比べると銘柄ごとに個性があり、各々の存在感が料理の下支えとなっているのを実感。主食とは日本の食の土台たる食材であることを、新たに認識した思いだった。

今日は長野県で取り組んでいる、原産地呼称管理制度に認定された米の披露会で、アンテナショップ「銀座NAGANO」にお邪魔した。ヨーロッパのAOCを手本に、Nagano Appellation Controlle(N.A.C.)を2014年に全国に先駆けて制度化。栽培方法・飼育方法・味覚により認定される県産農産物のブランドで、現在は米、ワイン、日本酒、焼酎、シードルの 5品目が対象となっている。「長野のおいしいものを、一般に広く知ってもらいたい」と県の方が話すように、これが生産者への信頼と消費者へのアピールに繋がることを目指しているという。

米への取り組みは平成16年から開始され、現在400件が認定。この秋の官能審査会で、新たに38品目が追加された。認定は玄米の形で提出された米を、統一規格の精米機で精米した上で、審査員の食味官能評価により判断される。味のみならず、農薬と化学肥料が慣行基準の半分以下であることなど、安全性も重要視。生産者の方によると、土壌と水、気候が米の食味を決定づけるため、同じ銘柄でも栽培地や水系が違うと味が異なるそう。そのため認定も別扱いとなるというから、なかなか緻密な審査といえる。

審査においては評価基準も必要だが、県が認めるおいしいお米の定義づけが、結構難しいとの話もあった。長野県は南北212キロ、東西120キロと広い上、標高差に寒暖差もあり、栽培条件がかなり多様化していることが大きい。一方で「米の味は普段使いのが基準となるので、評価はそれとの差異なんです」との、消費者目線での評価基準を話す生産者の方も。いわば外食するような価値観で評価してほしいそうで、これがこの後の試食で官能評価のポイントになりそうだ。

今年は盆から気温が下がり、全国的には米の出来が今ひとつな中、長野は出来がよいとの話に、試食への期待が高まること。以下、試食会に続く。

ローカルベジタでヘルシーごはん…帯広 『十勝農園』の十勝産の野菜料理あれこれ

2014年09月15日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん
農林水産業と食をテーマに地域を盛り上げる、「フードバレー」を推進している十勝・帯広地方。特に農産品は収穫量が全国屈指の品目が目白押しで、産地ならではのとれたて野菜や乳製品と出会えるのが、この地への旅の楽しみである。

そんな十勝の食材を扱う料理屋として一押しのレストランが、駅から5分ほどの繁華街に位置する「十勝農園」。料理長によると、メニューはまず食材を並べ組み合わせ、そこから五味を加味しながら組み上げるとのこと。あくまで食材のもつ力が主で、中でも野菜料理はこの地の野菜の強靭で雑味のない旨さが、そつなく引き出されていて嬉しくなる。

新ジャガのラクレットチーズ添えの焼き物は、乳製品甘ったるさがホクホクな芋との出合いもの。北海道ではジャガイモは越冬させて甘みを出して食べるもので、とれたての新ジャガはそれがないから仕方なく、というものだとか。とはいえほぼまんま味わうことで、十勝の農産物の実力に迫る料理でもある。

続く品はマッシュルームと聞いて、穀倉地帯の十勝でキノコとは、意外と感じる方もいるのでは。ツブ貝とマッシュルームのエスカルゴバター焼きは、シコシコの歯ごたえに特有の木屑香が炸裂。潮の香りがあっさり目のケツブというツブ貝が、山の香気のマッシュルームと相性がいい。丸ごとのフライは、熱で活性化された香りが衣で封印されていて、ひと口でいくと口の中ではじけ広がっていく。

十勝マッシュとの銘柄のこのマッシュルーム、そもそもは香川の醤油醸造会社である鎌田醤油が、だし醤油に使うのに当地に支社をつくり栽培したのが起源という。一般的にマッシュルームは稲わらを堆肥にして栽培するのだが、帯広では本場のフランスと同様に麦わらの堆肥を使っている。供給元は何と、ばんえい競馬の馬の厩舎。工場のそばを流れる札内川の清流も生かしているそうで、帯広の地に根ざしたこれから期待のローカルベジタといえる。

地場野菜の実力をダイレクトに思い知るひと皿が、色とりどりの野菜ののバーニャカウダだ。ニンジン、セロリ、キュウリ、パプリカなどを、もろみ、マヨネーズ、黒ニンニクのアンチョビソースなどをつけ、パキッとひとかじり。どれも雑味のないピュアな瑞々しさで、体の中がスッキリ浄化されていく。パプリカは店用に栽培したもので糖度が8度と、まるで果物のような甘さがする。

「どの料理にも、当地の食材をひとつは加えたい」との、料理長の思いが詰まった品々を味わうごとに、ああ十勝にいるのだなとの実感が沸き起こってくる。料理の「理」も見事だが、それに生かされる「料」の素晴らしさを堪能できる、十勝を食でいざなってくれる一軒である。

ローカルベジタでヘルシーごはん…帯広 『十勝農園』の、焼きキャベツ

2014年01月18日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん

帯広は「とかちフードバレー」を推進しており、食による地域産業の振興を展開している。農業、畜産、酪農いずれも盛んな土地柄、食材のバリエーションは実に豊富。その質の良さもあり、素材とそれを生かした料理によって人を呼び寄せる力は、充分なものがある。

そんな当地の食材を使った料理を味わうべく、訪れたのは帯広にある「十勝農園」という地産地消レストラン。繁華街の中で店頭のトラクターが目を引き、レンガ倉庫を改装した店内は天井が高くホールのよう。店構えからして、十勝のスケールの大きさを感じさせる。

地場の野菜を用いた料理、ご当地の銘柄肉や畜産加工品、道東の魚介など、品書には周辺の産品を集めた料理が並ぶ。十勝に来たならやはり、味わうべきは肉と野菜。ブランド牛の十勝和牛に加え、野菜の補給に焼きキャベツをセレクトした。

先に運ばれてきた焼きキャベツは、熱々の鉄皿にざく切りのキャベツがたっぷりのった、品書まんまの料理。オリジナルのハーブオイルをさらりとかけ回して、そのまま数枚、まとめて口に運ぶ。シャクシャクかみしめると、その自然な甘さに驚愕。混じり気のない素直さに、頭で言葉を探しても見つからず、「自然」の意味の深さに思い入る。目を閉じると地平線までひたすら続く、十勝の大地のキャベツ畑。その光景がリアルに浮かぶ、想像力を掻き立てる甘さ、とでも言おうか。

総料理長の馬渕さんによると、今の時期の野菜は道内各地産を使っていて、アスパラは出初め、春掘りのゴボウがそろそろ、越冬して甘みの出たジャガイモなどが中心だそうである。十勝産の野菜が出回るのは6月頃からで、メニューにも地元野菜を使った料理が増えるという。十勝の「野菜力」の真髄を計るには、グリーンシーズンの再訪必須である。


ローカルベジタでヘルシーごはんbyFb…表参道 『LA FIOLITA』の、茨城県産野菜のパレット仕立て

2013年09月08日 | ◆ローカルベジタでヘルシーごはん



 料理とは、材「料」と調「理」からなる言葉、と聞いたことがある。料におもねるあまり、理が疎かになってはいけない。理に走りすぎて、料の持ち味を損なってはならない。二つの漢字が同格で並立してこそ、美味かつ滋味ある食が成立するといえる。

 昨日、表参道の「LA FIOLITA」で開催された「いばらき流イタリアン」の試食会では、茨城県産野菜のパレット仕立てが、最もインパクトある一皿だった。そのまま手で食べて下さい、との気軽さに、馴染みのある野菜から順に味わってみることに。

 パキッと歯ごたえ軽やかな金時ニンジンに、ホクホクのジャガイモ「インカのめざめ」は、土甘さが懐かしい。甘草や辛子菜など葉物は歯ごたえシャクシャク、爽やかな草うまさ。自然薯とウルリの強い粘りは、食べるからに滋養を取り込んでいるように感じられる。

 どれもゆがいただけです、とシェフの眞中秀幸氏は説明するが、野菜ごとに食感と風味がベストな加減が見切られているのが、実に見事。アンチョビとホタルイカのピュレも、アミノ酸と塩っぱさのおかげで、野菜の持ち味が浮き立ってくるような味加減になっている。

 茨城の「料」の素晴らしさもさることながら、それを演出する眞中シェフの「理」の、出過ぎず卓越した技。野菜の持つ生気がスッと体内に入り、体の中がきれいになる思いがするこの料理、両者がハイレベルに並立した逸品である。