ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

異装は好き?嫌い?

2015-09-08 08:51:42 | コント

 コント大会で上演する『マラソン大会』、ただひたすら走る中年ランナーと不可解に絡む大会スタッフの若者という設定、これだけでも十分面白いのだが、もう少し膨らませたいと黒子二人を登場させた。最初は、文字通り黒子、看板持ったりゴールテープ持ったりするだけだったが、稽古するうちに勝手に動き始めて、自分たちだけのギャグを連発するようになってしまった。

 その原因は、この全身黒タイツ!よくあるやつさ。こういうの使うのってあまり好きじゃなかった。変な恰好するだけで笑いとるって子ども騙しって気がするんだよね。巨大なかぶり物とか、滑稽なメイクとか、あり得ない衣装とか、それはそれで有りなんだけど。子どもミュージカルではさんざっぱらかぶり物やらゲテモノ衣装作って来たからね。ナスやニンジンなんて当たり前、トマト君は主役張ったし、他にもカップラーメンマンとか、うどん屋どん兵衛とか、団子3兄弟、ケーキシリーズもいろいろやった。ケーキ怪人と無敵のジュースマンとの対決なんて、受けたなあ!子どもたち大笑いしてくれた。包丁君とか、山神山姥の夫婦なんてのもあった。そうだ思い出した!マータイ星人なんてうんこ帽子被らせちゃったもの。これも子どもたちは大騒ぎ、子ども下ネタ大好きだもの。

 さらに思い出したゾ!シニア二期生公演『ラ・グリンシャ クロニクル』じゃぁ、巨大な蟹とかサザエとか出した。出る必然なんかまるでないのにね。ただ、なんかナンセンスで面白いってことだけで。そうなんだ、僕の創造力の片隅には、ナンセンスっていうかわいい怪物がしっかり巣くっているんだった。忘れちゃなんねえゾ!

 ってことで、前科は10犯にも20犯にもなるんだが、ことコントに関しては、筋立てとせりふと仕草で勝負したいって思いが強い。こだわりって言うか、コンセプトって言うか、粋がりって言うかね。だから、最初は黒子もごく控えめに、仕方ないから最小限使うか、程度だったのだが、いざ、出てきてみると、このナンセンスギャグの小悪魔が騒ぎ出したってわけなんだ。

 届いた全身黒タイツ、黒子役に着せてみた。やっぱり、面白い!たかだか薄っぺらな布なのに、身体全体をぴったり覆うことで、なんか別人格が浮き出てくる。人格というより、異生物って感じだろうか。面白い。何気なく感じとっているその人の個性って、日頃着ているものとかの影響、相当大きいってことなんだろう。もろ体型そのものだって、その人のものなのにね。今回の二人はどちらもスリムでスタイル悪くないから、意外感は比較的小さいけれど、これがメタボ体型だったりしたらもっと滑稽に感じられるだろうし、女性だとぐっとセクシーになるんだろう。

 さて、二人の黒子、一人は喜々として着込み飛び回っていた。まるでタイツが人格さえ変身させてしまったように。一方の一人、嫌々感がもろ出ている。別に体型が無様ってわけでもないのに。なるほど、なるほど!人間には、こういう異装を好む人と嫌がる人がいるってことなんだな。その違いは、変身願望のある人とない人ってことか?羞恥心のあるなしか?なんて言ったら喜んでる方に失礼だ。あるいは、自らを滑稽に見せることへの意識の違いかもしれない。人に笑ってもらうことに無上の喜びを感じる者と、笑われるのが好きでない者と。

 役者としてどっちが使いやすいかって言えば、そりゃ変身願望派だろう。作者や演出の妄想をためらいもなく演じてくれる方が重宝には違いない。でも、羞恥心派だって、変身への憧れはぜったいあるわけだ。別の人生を生ききるってことに役者の醍醐味はあるわけだから。滑稽はお断りってことなのかもしれない。でも、これだって、笑ってもらいたい願望は、誰にだってあるわけで、その笑われ方の質が問題なのかもしれない。さらに問題なのは、じゃぁどっちが面白くなるか?っていうと、これがどっちとも言えないってところが、実に笑いの微妙なところなんだなぁ。

 二人の黒子、注目だ。おっと、でも、主役はランナーと大会スタッフだから、そこんとこ忘れないように!

コメント
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