ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

イネの力

2015-09-19 08:08:45 | 農業

 いよいよ稲刈りの季節到来だ。畦の草を刈り、水漏れ防止の波板シートを外し、明日からの稲刈りに備える。ずっと雨もよいの日々が続いていて、どうなるかと思ったが、やはり自然は正しく回っている。明日から1週間、晴れマークが続いてるぞ、よし。

 もちろん、とっくの昔に水は落としている。実り未だしの水口の青いイネを見ると、もう少し水入れておこうかと心もゆれたが、ぬかるみの中で機械を動かし、足を取られながら稲束を運ぶ苦労を考えれば、田は乾かすことが優先だ。未熟のイネは、もう、諦めるしかない。

 そんな中、諦めない田んぼがある。我が家が貸しているSさんの田だ。いつ刈るつもりかわからないが、今日も水を引き込み、たっぷりと満たしている。そう、彼の田は自然農法で作っているのだ。

 耕さない、肥料をやらない、もちろん、除草機など押さない。田植えは固くしまった田面に一株一株穴を掘り植えた。田植機なら40分の田に3日かけて田植えを終わらせた。移植した苗は、栄養不足ですぐにひょろひょろになり、他の田んぼがぐいぐいと茎数を増やしていく中で、寂しく貧弱な姿をさらし続けた。まっ、このままなら、2割も収穫があればいい方だろう、8月の出穂の季節の時には掛け値なくそう思った。

 今年の極端な水不足が生育遅延にさらに拍車を掛けた。なんせ、代掻きしていない田は、畑も同然、水をかけるそばから吸収されてまるっきり溜まらない。一晩掛け流ししても、どうにか一部に水たまりができる程度。こんなはずじゃないんだが、Sさんも頭を抱える。以前彼が手がけてきた田は、きっともっと水持ちの良い低地の田だったのだろう。水を抜くのに苦労するようなトロトロの田んぼなら、代掻きしない自然農法でも上手く行っていたのだろう。でも、ここは山裾の傾斜地だ。代掻きした田であっても、朝満杯の水が、夕方には干上がっているという田んぼだ。ここじゃ、無理なんだよ。

 ところが、8月も末に来て、少ないながらも茎数も増え、細くて短いながらも穂が出て、なんとか実りの様相を呈してきた。これにはちょっと驚いた。初期のあのみすぼらしい姿からはとても想像できない。もちろん、有機栽培の我が家の田んぼとは、すかすかで比べるべくもないが、2,割ってことはない。3,4割くらいは行くかもしれない。

 改めてイネの力を思い知った。耕さず、まったくの無肥料でも、この実り!大学時代、イネは放任栽培でも2,3割はとれるものだと教授から聞いたことがあった。それがイネの底力だ。そう、そうなんだ。この逞しさがあったからこそ、イネは他の雑草を抜きん出て、主食の地位を手にすることができたわけなのだ。人間の立場からみれば、そんな凄いイネを見いだせたことが、ここまで多くの人口の増加と文化の発展を保証したとていうことなのだ。

 イネの力、改めて感動!改めて感謝!

 でも、その力をさらに高めた人々の努力もまた偉大なんだ。代掻き、そして、肥料、先人の努力も忘れたくはないな。

コメント
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