スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

名人戦&一文の意味

2007-07-02 21:37:32 | 将棋
 6月28日と29日に指された名人戦七番勝負第七局は,振駒で後手となった森内俊之名人が郷田真隆九段を破り,名人四連覇を果たすとともに,通算で5期目の名人位を獲得,一八世名人の称号を合わせて獲得しました。
 戦型は角換り相腰掛銀。ただし後手が6一の金の動きを保留して△4二飛と回ったので,よく指される先後同型にはなりませんでした。対して先手が穴熊に組替えるという工夫を見せ,組まれてはかなわないと後手から先攻。息の長い戦いとなり,後手の桂得となったのですが,優劣は不明でした。
 77手目,▲4七歩の馬取りに△7四歩の返し技。ここから▲6三歩成△7五歩▲5二とと大駒の取り合いに進展。これは後手に分があったようですが,84手目の△6六歩はミスで,ここは△5六馬とした方がよかったようです。本譜の進展はこの5六の銀が6七に引く形になったので,先手の玉が固くなりました。97手目の▲8九同玉まで進んでみると,また優劣不明になっています。
 101手目から▲6四歩と攻め合いに出たのはまずく,ここは▲8三角のようにさらに息長く指すべきだったようです。△同銀に▲7二龍と入ったものの△6三角で後手を引いてしまいました。
 109手目▲2四桂では▲7六桂か▲7七桂と受けに回った方がまだよかったかもしれませんが,▲6四歩からは攻めを目指しているわけですから,ここでまた受けに回るのは指し辛かったのだろうと思います。
 ここからは後手の勝ち筋。144手目の△8三飛に▲8四歩と打ったのは最善の受けでしたが,ここから▲9七桂△7四金の交換は入れずに▲7三銀△8三飛▲2三角成△同玉▲8四金と進めた方が難しかったようです。ただしこれも正しく指せば後手が勝つそうです。これについては片上五段の解説を参照してください。
 将棋の名人位は江戸時代からありましたが昭和中期まで世襲でした。実力制になってからの永世名人は,木村義雄,大山康晴,中原誠,谷川浩司に続いて5人目ということになります。

 明日は寛仁親王牌の決勝。並びは佐藤-伏見-成田-岡部の北日本,永井-小嶋の中部に手島,荒井-渡部の西国。永井選手の先行と考え,小嶋選手◎と手島選手○が本線。不発なら伏見選手▲と佐藤選手△。一発なら荒井選手でしょう。

 ここまで考察してくると,ここで問題としている第二部定理一七備考の一文に,スピノザが託したかった意味のようなものがおぼろげながらも浮かび上がってくるように思います。すなわち,人間の身体というのはほかの物体を刺激し,またほかの物体から刺激されるということに対する適性が非常に高い物体であり,この適性の高さのゆえに人間の精神は多くのものを表象する,すなわち,人間の精神のうちに多くの混乱した観念が生じるのですが,少なくとも表象が混乱した観念であることに気付いている限り,いい換えれば表象を真理と思い込まない限り,この表象を人間自身にとってのある力であると考えることができるわけです。
 実際,表象が人間が現実的に生活をしていく上で大いに役立っているということは,知覚について考えただけでも明らかでしょう。もしも人間が多くのものを知覚することができないとしたら,人間の生活はあまりに危険に満ち満ちたものとなります。したがって表象というのは,混乱した観念であったとしても,人間が生きていく上では絶対に必要なものであることは間違いないと思います。
 ただし,そうはいってもこれはあくまでも混乱した観念なのです。したがって,もしも人間が知覚したものについてそれを真理であると信じ込むならば,その人間が誤謬を犯しているということもまた事実であるのです。いかに表象が力であると考えることができるにしても,これだけはよくよく間違えないようにしなければいけないと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする