ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭

料理にワインを
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 樋口誠

有名税

2011年11月08日 03時45分16秒 | ワインの事

例えば野田総理が1,000円の散髪に行ったが、今回は4,500円だった。なんて事がニュースになったり、さる女優が誰それと熱愛中とか、有名になると大変です。

有名税ってやつですね。どうでもいいじゃないか、って話ですのにね。

ワインの世界でも同じです。

それまではホントにワインが好きな方が丁寧に調べて手に入れて、農家の苦労や醸造家の苦心をグラスの中で開花させながら飲まれていたワインが、評論家や漫画が取り上げると一気に人気が出て手に入りにくくなります。

経済は需要と供給ですから値段も上がります。

ワイナリーの出荷価格はそうでもないのに、どんどん上がっていく。

或いは「ワインはさほど好きでもないが、有名だから買っておこう」「有名なものを飲ませればアイツも言う事を聞くだろう」とかいう理由で市場からワインが消えていくのは悲しいかな、と思います。

また、それらがトンデモナイ飲み方をされれば尚更です。

そういったワインの一つがオーパスワンでしょう。

カリフォルニアはナパヴァレーで1979年のヴィンテージで初登場した銘酒です。

ボルドーの雄ムートンとカリフォルニアの名門モンダヴィがジョイントヴェンチャーで始めたワイナリー。

所謂ボルドーブレンドで葡萄品種名を記さないラベルの走りの一つです。

80年代、私も若かった頃、このスターの登場に湧きました。

しかし、まだカリフォルニアなんて、という風潮が強くお値段はフランスの物に比べてお得でしたし、ソムリエがいる店以外では扱っていなかった。

ですから一生懸命「カリフォルニアでもグランヴァン=凄いワインが出来るんだ」と訴えていました。ある意味私達にも責任があるのかな、とすら思ってしまいます。

昨日は、そのオーパスワンの醸造責任者マイケル.シラーチさんがお越しになっていて、70年代からカリフォルニアのワイン造りに携わる彼の懐かしい話を聞かせて頂きました。

彼が師事したアンドレ.チェリチェフ氏、ウォーレン.ウィニアスキ氏など私が勉強しだした頃によく登場した伝説的な名前を聞くだけでも価値のある対面。

そんな彼、ワイン造りは最新の方法が良いとは限らない、人間の感性が重要だ、と言っています。料理もそうですが「感覚」は重要ですね。

私はオーパスワンの多くのヴィンテージを頂きました。若い頃は紹介を兼ねて若いヴィンテージ。ま、若いのしかなかったのですから当たり前です。

そして最近は84年とか87年、95年など。旨い!!バランス、力、柔らかさ。素晴らしいワインです。

他の老舗のカリフォルニアの60年代、70年代もいい熟成をしています。カリフォルニアは若飲み、というのは間違いです。

が、若すぎるうちにデキャンタもせず、温度も白ワインの様に冷たく、グラスも小さい。では価格なりの価値は味わえません。

買ったワインは買った人のものですから、偉そうなことは言えません。

が、有名になった為に本来の味わいを発揮せずに亡くなっていくのは私は寂しいことと感じます。

そむりえ亭はグラスで料理に合わせるお勧めをするお店。わたしから「オーパスワンはいかがですか?」とはいう店ではありません。他の有名なワインについても然りです。

しかし、1000円前後までで買える大量生産型のワイン=日常消費ワインは気楽に飲んでいただくとして、それ以外のワインはちょっと気を使って美味しく成仏させてあげてください。

寒い冬の農作業、灼熱の夏の畑仕事、暗く冷たく湿った地下蔵での仕事、瓶詰までの長い時間。

有名になっても、そこは変らないのです。(オーパスワンだけの話ではありません)

すいません。ちょっと偉そうなことを書きましたね。

ところで今日はいつもの東京での会議です。19時前には戻っています。

今日も宜しくお願い致します。


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