気にはなっていたものの、今迄あまり縁のなかったシベリウスの交響曲全集を、フィンランドの大指揮パーヴォ・ベルグルンド3度目の録音を購入しました。
シベリウスといえば、「ダイハード2」でも音楽に使われていた「交響詩フィンランディア」で知られる、フィンランドの国民的作曲家です。同映画は監督のレニー・ハーリンがフィンランド出身ということで、使われていましたが、それほどこの曲は同国のイメージを象徴しているようです。
というか、フィンランドって行ったことないし、ムーミンやガラス食器のイッタラ以外にはあまり具体的なイメージが湧かない国かな。
でもシベリウスはヴァイオリン協奏曲や交響曲2番などを、度々FMで耳にしていて何となく気にはなっていた作曲家です。
グリーグやニールセンなど北欧の作曲家というのは、空気の冷たい地域独特の透明感があるのですが、それにしてもシベリウスという人の音楽は不思議としか言いようのない響きを持っています。
このベルグルンドの「シベリウス交響曲全集」もそうなのですが、驚いたのは交響曲1番と2番くらいは、耳に残る旋律…メロディがあるのだけど、あとのものは極端な言い方をすると音色以外ないような音楽とでも言いましょうか。
何度か聞いているとちゃんとした旋律があるのはわかるのですが、さほど長い曲でもないのに、耳に残る旋律がない。それなのに、聞いている間はその音の世界にどっぷり浸かって幸福感を味わえる音楽なのです。
シベリウスは交響曲1番を発表した時、チャイコフスキーに比べられ心外だったようで、「自分とはまったく違う音楽家だ」と言っていたそうです。
たしかに1番はチャイコフスキーの系譜に聞こえる音楽なのですが、ほかのものはまったく違い、シベリウス以外には考えられない響き方をしています。
あまりに不可思議な音楽なので、滅多に目を通さないライナーノートを読んでみたら、おやおや、ベルグルンドのインタビューが載っているではありませんか。
それによるとフィンランドの巨匠でありながら、シベリウスの本質はフィンランドではないと書いてあり、愛国心や自然に関する解釈はむしろ不必要だとまで言っています。オーケストラも欧州の若手名手たちを集めて結成した、ヨーロッパ室内管弦楽団を起用しているのも、フィンランドに関する余計な先入観がないからなのだとか。
なるほど、これは目からウロコですね。
ベルグルンドはフィンランドに対する愛国心は、他国の音楽家がシベリウスを演奏する上での障壁にさえなる。日本やアメリカで人気があり、ドイツなどヨーロッパの特定の国々で演奏されないのはそういうわけだと言ってます。
今、制作中のヘビロテは「シベリウス交響曲全集」の4枚なのですが、まだどんな音楽なのかよくわかりません。
特に3番以降、7番までの音楽は謎すぎて、どう形容してよいのか言葉が見つからないのですが、北欧の森から星空を眺めるような、透明な音の響きが美しくて何度聴いても飽きないのが素晴らしい。
シベリウスって、もっと暗いイメージがあったのですが、この演奏についていえば、それがみじんもないですね。
北欧にまったく興味なかった私ですが、このシベリウス交響曲全集は本当に素晴らしい!
万人にオススメではありませんが、ご興味ある方はご一聴いただければと思います。