「新・地底旅行」 奥泉光著 朝日新聞社刊
を読む。
「日本ジュールヴェルヌ研究会」が次の会誌で取り上げる題材は「地底旅行」だということ。今月の24日に読書会をするので、よかったらどうですかと誘っていただいた。有難く拝聴させていただくことにした。
それで、ふと思い出したのが以前朝日新聞に連載されていた「新・地底旅行」。連載時は全く読まなかったのだが、この機会にちょっと読んでみようと図書館から借りてきた。
500ページ近い大冊。だが、読み易い。ずっと翻訳本を読んでいると、日本語で最初から書かれた本がとても読み易く感じる。
二次創作ものということで、期待はそれほどしていなかったのだが、思ったよりも面白くて、なかなかのものだった。場所は日本に移されているが、時代設定も当時のもので、リデンブロック教授の甥アクセルの出版した手記を読んでいるということになっている。
ヴェルヌの「地底旅行」の矛盾点や疑問点について、新しく解釈を加えているあたり、なかなか興味深い。もっとも、それをヴェルヌファンが納得するかどうかはまた別の話だろうが。ただ、このタイトルは、別のものの方がよかったような気がする。ヴェルヌの「地底旅行」とは、オマージュが沢山散りばめられているものの、かなり違うものだからだ。じゃあどういうのがいいのかと言われれば、言葉に詰まるが、作中夏目漱石を常に意識し、登場させてさえいるところからも、その弟子である内田百が「贋作・我輩は猫である」を書いたことに倣って、「贋作・地底旅行」とするとか、その方がよかったのではないかとも思った。
この小説は、終りがややあっけない。これは意識的にだそうで、いずれ続編を書いてみたいという作者の思惑だそうだ。