「火星年代記」 レイ・ブラッドベリ著 小笠原豊樹訳
ハヤカワ文庫NV 早川書房刊
この本も再読するのは随分と久しぶりだ。もしかしたら、ちゃんと読むのは高校生の頃以来かもしれない。
ブラッドベリは、熱狂的に読んだ時期があるのだが、ある頃から急に読めなくなって、それ以来全く興味がなくなってしまった。多分、そういう人は多いのではないかと思う。つまりブラッドベリとはそういう作家なのだろうとずっと思っていた。だから、最近ブラッドベリの作品が沢山出版されているのを見ても、手にとろうとさえしていなかった。ブラッドベリは、僕にはもう完全に通り過ぎてしまった作家だった。
だが、久々にこの作品を読み直してみて、やはり面白いと思った。みずみずしく読めたことが嬉しかった。多分、かつて好きだった「華氏451」とかは、今読んだらもうそれほど面白いとは感じないのだろう。だが、この「火星年代記」は、今なお優れた作品としての価値を失っていない。この作品は、基本的に連作短編集だが、中に収められたいくつかの作品に流れているノスタルジックな抒情は、昔読んだときと変わらず、今でも強く胸を焦がす。舞台は火星だが、根底に流れる原風景は西部開拓時代であり、日本人の僕でさえこれほど懐かしく感じるのだから、アメリカ人にとってはいかほどであろう。そんな風に思った。
この作品はブラッドベリの最高傑作であるのみならず、SF小説のオールタイムベストのひとつである。ややファンタジー寄りではあるものの、SF小説の入門書として、最適なのではないだろうか。
昼から夜へと移りゆくほんの一瞬。
不思議な時間が流れている、美しい写真ですね。
昏く明るい空、黒い森、白い小屋。
絵になる風景です。
こんな時間帯に三鷹に行かれたんですね。
そうです、これは三鷹の国立天文台で撮った写真です。
去年の写真なんですけれども。
こうした風景を、ノスタルジックっていうのかなと思ったりしますね。
『華氏451度』が当時は一番好きで、就職活動の作文などにも書いたりしました。
でも、『火星年代記』がやっぱりブラッドベリらしいという気もします。ブラッドベリは本質的に短篇の人だと思いますし。
『火星年代記』は、僕も久々に読んで、随分忘れていることに気づきました。読んでて、「そうそう、こんな話があったな」と。
最後の「百万年ピクニック」のラストシーンは、知っていても、やっぱりゾクッときました。