漂着の浜辺から

囁きのような呟き。

兇天使

2012年03月29日 | 読書録

 最近は、読書はかなりしているが、感想をアップすることは少なくなっている。読む本のほとんどが、日本のエンターテイメント小説、あるいはヤングアダルト向けの小説なので、ちゃんと感想を書こうという気にまではなかなかならないせいかもしれない。なぜそうした本ばかり読むのかといえば、いろいろな小説をさらりと大量に読んでみたくなったからで、特に意味はない。日本の小説が多いのは、やはり翻訳ものは読みにくいから。長い間翻訳小説ばかり読んできていて、最近こうして日本の小説ばかりまとめて読んでいると、改めて翻訳小説の読みにくさを感じる。光文社の古典新訳文庫のように、単に漢字を減らして平易な言葉を使った書き方をすればいいというのではなく(何冊か読んだけれど、これではかえって読みにくいと感じることがあった)、もっと別の、根本的な問題なのだろう。
 
 「兇天使」 野阿 梓 著
 ハヤカワ文庫 早川書房刊

を読んだが、舞台がヨーロッパにも関わらず、さすがに読み難さは感じない。これは随分と昔の作品で、刊行当時は萩尾望都の表紙で、二分冊されていたのを憶えている。高校の頃、めったに大賞を出さないSFマガジンの大賞を受賞した、同じ作者の「花狩人」を読んで、なんだか読みにくいなあと感じたのは、その少女漫画のような耽美的な世界観のせいだったのだろうと思うが、相変わらず萩尾望都的な少年愛趣味満載とはいえ、今ではほとんど気にならないで読めた。今でも余り古く感じないのは、さすが独自の世界を描き続けている作家だけのことはあるのだろう。