持つべきは・

神、仏は善と信じる。
善と信じるものを信奉して一つ覚る。
人知れず僧として修業し達観した者は、質素に至る。
庵に住み、極めて何も持たない。
これが安らぎであると知恵をもって知っている。
経験による識は知の恵みである。どんなに積み重なっても嵩張ることも無く、
持てば持つほど役に立つ。
それとて、手に余るということもなく、重たくも無く持てなくなるということも無い。
決して無駄になることが無いのが知恵である。
世の中で持ってよいのは知恵だけである。それは、あの世へ逝っても役に立つ。
無くなることがないためである。

いつか、そのうちにと
物を取っておくのは煩わしいものとなる。
無常なものに執着しても疲れるだけ。
物は極力持たないことである。

俗世、所有欲を掻き立てられてすっかりはまり、煩わされる。
して、体も患う。
世の中に、これは私のものというのは何一つ無いものを・。
たとえて、土地を所有し家を所有し車を所有し・・・自分の所有に毎年毎年国に金を納める。
納められなければ取られる。それは、所有ではなく借りているに過ぎない。
人の社会のルールにおいても、所有欲をくすぐって生き苦しくする。
所有するな。すべては借りていると思って人生であるから。
捨て去って楽である。


究めて優れた者は質素をまとい、しかしながら、中をのぞけば煌びやかである。
その艶やかさは、なかなか表には出ていないものである。
金がダイヤが水晶・・が表にないようなものである。

知恵をもって世の中を観る。それは、法則の眼差しである。
見えないものが知らされてくる、知れてくる。
不思議なことだ。
知的者というのは、そのようにして識を得て、
智者いなっていく。